晩御飯を終え、雑用を済ましたウチはお布団に入る。
おかあちゃんが、おやすみと言って明かりを消しても、
きゅっと目を閉じても、なんだか眠られへんかった。
ののは、おにいちゃんが好きや。
ウチもおにいちゃんが好き。
せやけど、ののの好きとウチの好きは違うんか?
ののは、おにいちゃんに惚れてる。
惚れてる?ウチはおにいちゃんに惚れてるか?
でも、兄妹やん。そんな感覚になるのがおかしいわ。
そのときふと、おにいちゃんの笑顔があたまに浮かぶ。
のの、なんでやねん……。
なんでおにいちゃんに惚れるねん。
なんで他の人とちゃうねん。
そんなことを考えていたウチは、もう眠れなくなっていた。
どんどん、ののとおにいちゃんとの妄想が頭の中に浮かんでくる。
ののとおにいちゃんが恋人同士になってもええんやろうか。
ごはんができたのれすよ。
なんて言ってお口にあーん。なんてことしたりするんやろうか。
その姿を想像するだけで、なんか気恥ずかしかった。
「やっぱ、嫌やわ……」
ウチはぽそりと呟いた。
「何がや?」
「ええ?」
ウチは驚いて、飛び上がる。
ふとみると、暗がりの中におにいちゃんの影が動いていた。
「なんで、帰ってきたん?」
「あかんのか?」
「いや、あかんわけとちゃうけど」
そういって、着替えを済ませたおにいちゃんはお布団に入ってくる。
「嫌なことがあったら、ちゃんと言いや」
と、おにいちゃんは言いながら、ごそごそと掛け布団をかける。
「あ、うん……」
ウチはのののことを話そうかどうか考えていた。
おにいちゃんはののに惚れてるの?
のののことどう思ってるの?
ウチよりのののことが好きなん?
ウチはのののおにいちゃんになって、とは言ったけど、
ののの恋人になって、なんて言ってへん──
言うべきやろうか、言わないべきやろうか。
せやけど、ののがほんまに惚れてるなら、
ウチがこんなこと言ったらののに悪いし。
でも、嫌や。
ののじゃなくても嫌や。
おにいちゃんに恋人ができるなんて嫌や。
やっぱり、言おう。
そう思って、
「なあ、おにいちゃん……」
と、声をかけてみた。
「おにいちゃん?」
暫くしても返事が無い。小さな寝息をたてておにいちゃんは眠っていた。
なんやねん。嫌なことがあったら言えと、言ったんちゃうんか?
せっかくウチがずっと考えて、やっと言おうと思ったのに。
ウチは、おにいちゃんの寝顔を眺める。
疲れてはいるが、安らいだ表情。
ウチといると安心するんかな?
そんなことを思ってみる。
そしておにいちゃんの鼻をきゅっとつまんでみる。
しばらくして苦しげな表情をするおにいちゃん。
なんか、その顔が可愛らしくて、くすりと笑う。
「おにいちゃん……。恋人なんかつくっちゃ嫌やで……」
ウチはそう耳元で囁くと、おにいちゃんの体にぴたりと体を寄せて目を閉じた。