「テヘテヘ・・・!」
テレビの画面の中で辻が笑っている。その笑顔を見る度に
俺の心が締め付けられるように痛みだし、思わず頭を抱え込む。
日を追うごとに、俺はその屈託のない笑顔を避けるようになっていった。
俺の夢は叶ったんだ。1日だけ、辻と同じ時間を過ごせたんだ。
でも、それは現実に叶った事なのか、それとも夢の中での出来事
だったのか、俺にはもう分からなくなってたんだ。
ただ、昼間の眩しい海の青と、水平線に沈む夕日の赤と、それを
眺める辻の横顔が、今も俺の脳裏にはっきりと焼きついているんだ。
テレビでミニモニのアルバムのCMが流れて、思わずスイッチを切る。
俺は頭を抱えながら、うわ言の様に何度も繰り返す。
(きれいだったよな・・・あの海、きれいだったよな・・・辻・・・)
涙が出てくるんだ。なんでかわからないけど、涙が止まらないんだ。
俺は今度、雲ひとつない晴れた日に、またあの海に行ってみようと
思ってるんだ。その時、隣に辻がいてくれたら・・・!
本当は俺、辻はもう現れない気がしてるんだ。でも、行くんだ。
鮮やかな”青”と”赤”を、1日中、眺めて過ごすんだ。
でもやっぱり、隣で辻が笑ってくれてないと、きれいな海も霞んで
見えるのかな。俺は1日中、泣きながら海見てるのかな・・・。
俺は、海を見に行く。この前辻と一緒に見た海を、この目でちゃんと
確かめるんだ。テレビで笑ってる辻の顔が、ちゃんと見られる様になるまで・・・。
そしたら俺、テレビの奥でテヘテヘ笑ってる辻に、ちゃんと伝えるんだ。
「俺、海見てきたよ。この前みたいに、すごくきれいだったよ!」
「行こうよ、辻!あの海、また一緒に見に行こうよ!」