モーニングクエスト�U

「何やってるんですか？警部。」
１年前に起きた事件の資料を引っ張り出して見ているナッティを覗き込んで、マリリン刑事が言った。
「・・・これだ・・・マコト・・・か。」
ナッティが１枚の写真を手に取る。それはアパート惨殺されたカップルの写真だった。
「え？何がこいつ・・・？」マリリンにはさっぱりわからない。
「あ、いや、何でもない・・・で、何か用があったんじゃないのか？」
どうせ信じないだろうと、マリリンには話さないことにした。
「あ！そうそう、署長が呼んでましたよ。昨日の事でまた説教くらうんじゃないですか？」
そう、ナッティは昨夜の事件でマコトに殺された5人も”事故死”と言う事で提出したのだ。
「わかった、すぐ行くよ。」
そう言うと、ナッティは写真を机に置き、席を立った。

署長室につくと、ジョンソン署長はすでに怒っているようだった。
「何で呼ばれたかは・・・言わなくてもわかるだろ。」
葉巻をくわえながら署長が言う。
「だからあれは事故ですよ。ラリったチンピラ同士でやり合ったんです。」
「ウソをつくな。女が”窓から飛び降りる黒服の人物”を目撃してるんだ。
お前なにか隠してないか？」
詰め寄る署長。しかしナッティは何も言わない。
「フン、まあいい。お前にはしばらく謹慎してもらう。」
署長のその言葉ではじめてナッティが動いた。
「なんだって!?謹慎？ふざけるな！」
つっかかるナッティに署長は
「クビにならないだけありがたいと思え。ま、せいぜいゆっくり休むんだな。」
と言うと葉巻を灰皿に押し付け、火を消した。

深夜――街の中心部にある廃ビルに麻薬組織”Ｊ”のメンバーが集まっていた。
中央の長いテーブルに17の椅子が置かれ、それぞれに男が座っている。
その中には腕を包帯でぐるぐる巻きにしたゴウの姿もあった。
17の椅子のうち六つは空席になっている。
正面に立った男が言った。
「昨夜、また4人死んだ。チョナン、マサキ、イノ、マーサだ。ついでにバーのマスターも死んだ。」
一同がざわつく。
「おそらく、ゴウがやられたのと同じやつだろう・・・で、その犯人なんだが・・・」
男は少し笑いながら言った。
「死人だ。」
一同さらにざわつく。
「フザケた話だが・・・オーノ、1年前にお前らがやった奴だ。」
そういいながら男は、斜め前に座るすまし顔の男を見た。
「ショウ、ニノ、お前らもだ。」
言われた3人は顔を見合わせうろたえ始めると、再び男が言った。
「心配するな、イカレた化粧野郎に好き放題やられるのは気に食わん。奴をもう一度、
墓に戻してやる・・・。」
その時、窓の外からカラスが覗いていたことに気付く者は誰一人いなかった。