モーニングクエスト�U

残弾数を確かめると、マコトは２階へ向かう。その肩にはいつの間にかカラスが一羽とまっていた。
階段を上り、２階の廊下に出ると左側に２つ、突き当たりに１つドアがある。
まず一番近いドアを蹴破った。薄暗い部屋の中に人の気配は無い。
「・・・・・」
次に隣のドアを蹴破ると、ベッドで裸の男女が寝ていた。
「誰だてめぇ！？」
男は枕の下から銃を出し、マコトに向けながら叫んだ。
「男が逃げて来なかったか？」
「知らねぇなぁ。」
「探させてもらうぞ。」
そう言うとマコトは部屋中探し始めた。
「おい、知らねぇって言ってんだろ！死にてぇのか！」
喚く男を無視して最後にシャワールームを調べ終えると、「邪魔したな。」
そう言ってマコトは部屋を出た。
残った最後のドアの前に立つと、後ろから先程の男が叫んだ。
「おいコラ！好き勝手やりやがって、ただで帰れると思うなっ！！！」
マコトが振り向くと同時に男は発砲していた。
「・・・・・」
胸に銃弾を受け、２，３歩後ずさった。
「ヒャッヒャッヒャ！！バカが！人をナメやがって！」
しかし男の目の前でマコトのキズは見る見る塞がっていく。
「へ・・・！？」
顔を上げニヤリと笑うと、マコトはショットガンを男に向ける。
「バ、バケモノかっ・・・！？」驚きで動けない男に、
「いや、ただの死人だ。」
とだけ言い、マコトは引き金を引いた。
体中に散弾を受けながら、男は階段を転げ落ちていった。

廊下の突き当たり、最後に残った扉の前に立ち、残弾を確かめると、マコトはそのドアを蹴破る。
薄暗い部屋の中央にあるテーブルには数本の注射器が置いてある。
奥にはベッドがあり、その上では上半身裸の男が銃を構えていた。
（傍らで寝ている女はノノの母親ユウコだが、マコトと面識はない。）
「ここに男が逃げてきたはずだが、見なかったか？」
マコトが相変わらずの口調で訊くと、男はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、いきなり発砲してきた。
「・・！！！」２，３歩後ずさり膝を着くマコトだが、すぐに立ち上がる。
「きゃああっ！！」悲鳴をあげてシャワー室へ逃げ込むユウコ。
それを確認するとマコトは男に照準を合わせた。
しかし男は依然、余裕の笑みを浮かべている。
――突然、後頭部に衝撃があった。倒れながら後ろを見ると、バットを振り上げるマサキの姿だ。
しかし咄嗟に向けた銃は叩き落され、次の一撃はマコトの肩にヒットした。
「・・・グッ・・・！！！」
キズはすぐに治るが、痛みはあるようだ。マコトの意識が薄れかけたその時だった。

「動くな!!」
部屋にいた２人とは別の声がした。
「手に持ってるものを床に置け!・・・早く！！」
男たちは渋々、銃とバットを床に捨てた。
次の瞬間、その銃を拾ったマコトがマサキを撃っていた。
胸に空いた３つの穴から血を吹き、マサキは倒れた。
「キサマ！！動くなと・・・」マコトの顔を見て言葉を失ったその人物は、通報を受けて駆けつけた
ナッティ警部だった。
マコトはニヤリと笑みを浮かべると、ショットガンを拾おうとしていたもう１人の男を撃った。
銃弾は男の側頭部を見事に撃ち抜いた。
「・・・う、動くと撃つぞ!!」
そう叫ぶナッティも戸惑いを隠せない様子だ。
「シャワールームに女がいる・・・助けてやってくれ。」そう言い残し、マコトは窓から飛び降りた。
「おぃ、まて！」
ナッティは慌てて窓に駆け寄り外を見るが、そこに人影は無く、ただカラスが一羽飛んでいた。

誰もいない深夜の通りをスケボーで疾走するノノ。
ふと見ると、街灯にもたれかかる一人の男がいた。
「どうかしたの？」
何気なく話し掛けてみる。こんな時間にこんな所にいるやつなんて、いつもなら避けて通るのだが、
何故か大丈夫な気がした。
「・・・いや、大丈夫だ・・・。」男は答える。ノノは知らないが、それはマコトだった。
「君こそ、こんな時間に出歩くなんて・・・母親が心配するぞ・・・」
「・・・しないよ・・・帰ったってどうせいないもん・・・。」ノノは俯いて言った。
「大丈夫・・・すぐに戻る。」
「え？」ノノが顔を上げた時、すでに男の姿は無かった。

次の朝、ノノが目を覚ますと、部屋に何やらいい匂いが漂っている。
それはノノの大好物・焼きそばの匂いだった。
「・・・？？？」
眠い目をこすってキッチンへ行くと、どこか懐かしい後ろ姿があった。
「あ、ノノちゃんおはよ。焼きそば食べる？確か太い麺のが好きだったわよね？」
ノノに気付き振り返ったその人が笑顔で言った。小学４年までは毎日のように見ていた笑顔
・・・それは”母親”ユウコの姿だった。
「・・・朝から焼きそばはキツイよ・・・」
そう言ってユウコに抱きつくと、ノノは何年ぶりかに泣いた。
それを見守るユウコの目からも涙がこぼれていた。