モーニングクエスト�U

深夜―――静まり返った街の通りに、３人の男の姿があった。
３人ともかなり酔っているようだ。
「まだ９月だってのによう、けっこう冷えますねぇ〜。」
そう言ったのは眉の太い男・・・１年前マコトとアイを襲ったメンバーの一人だった。
「まったくだぁ、酔いが醒めちまう。」
３人の中では兄貴分らしいもう１人の男が答える。
「・・・んぁ・・・？」
残る一人が急に振り向いた。
「ゴウ、どうした？」
「カトリのアニキ、いやね・・・何かに見られてたような気が・・・。」
ゴウと呼ばれた目つきの悪い男は眉間にしわを寄せ、しきりに後ろを気にしている。
２人も振り向いて辺りを見回すが、動くものは特になかった。
「飲みすぎじゃねぇのか？はっはっはっはっはっ！」
「・・・そうかな、まあいいか。ひゃっひゃっひゃっ！」
３人ともゴキゲンで、いつも寝蔵にしている空き倉庫のある裏路地に入っていく。
その時背後で１羽のカラスが飛び立っていったことなど、３人は全く気付かなかった。

３人が倉庫の前に着いた時、「よぉ、調子はどうだ？」背後から声がした。
振り向く３人―――そこに立っていたのは髪を振り乱し、
顔に悪魔のような化粧を施したマコトだった。
「化粧ヅラが何の用だぁ！？あぁ？」
ゴウは今にも飛び掛りそうな勢いでマコトを威嚇する。
「用があるのはそいつだけだ。お前ら２人に用は無い、消えろ。」
マコトは眉の太い男を指差し、言った。
「ジュン、こいつ知り合いか？」
カトリが訊く。
「いや、見た事も無い。」眉の太い男は答えた。。
「お前なんか知らねぇってよぉ！」
そう言いながらマコトに殴りかかるゴウ。
それを難なくかわしその腕をキメながら、マコトは言った。
「お前に用は無いと・・・言ったはずだ。」
マコトは表情一つ変えずに、ゴウの腕に力を込める。
・・・ボキッ！と音をたて、ゴウの右腕は折れた。
「ぎゃああああああ・・・・・っ！！！」
転げまわって苦しむゴウを気にもせず、歩を進めるマコト。
「・・・こ、こいつ・・・」
焦るカトリは銃を抜き、マコトに向けた。
「調子に乗るなよイカレ野郎が！！」叫びながら引き金を３度引く。
銃弾を受けたマコトは２メートルほど吹っ飛び、仰向けに倒れたまま動かなくなった。

「ヘヘ・・・バカが、丸腰でいきがってんじゃねぇよ・・・ヘヘ・・・」
安堵に満ちたカトリの顔が、再び恐怖に引き攣った。
至近距離で３発の銃弾を喰らい、死んだはずのマコトが起き上がったのだ。
「・・・・・な、何だキサマ・・・バケモノか！？くそがぁぁぁっ！！」
パニックに陥ったカトリは、残る全弾を撃ち尽くす・・・が、そこには誰もいない。
「こっちだ。」
耳元で声がした直後、後頭部に激しい衝撃を受け、カトリは気を失った。
「ジュンというのか・・・」
その光景を呆然と見ていたジュンは、はっと我に帰る。
マコトはジュンを１発殴り、胸座を掴んで言った。
「人殺しめ・・・」
「人殺し？何の事だ・・・俺は誰も殺しちゃいねぇ・・・！！」
真顔で答えるジュン、しかしマコトは続ける。
「思い出せ！１年前・・・アパートのカップルを殺しただろう!!」
「・・・へっ、そーいやそんな事もあったっけ・・・あの女、けっこうヨかったぜ・・・ヘヘ」
「クッ・・・！」マコトの顔が怒りに満ちていく。
マコトが怒りに支配された一瞬の隙をつき、ジュンは懐からナイフを出す。
「殺しはやめられねぇ・・・楽しいからな!!」
言いながらジュンはマコトの首筋めがけナイフを振り下ろす―――
が、我に返ったマコトのほうが速かった。
ナイフが首に達する前にその腕を掴み、そのままジュンのほうに向けた。
「クソッ・・・！！」
必死に抵抗するジュンだが、マコトの力が強かった。
「・・・ぐ・・・ぎぃ・・・・・」
ナイフはゆっくりとジュンの眉間に刺さっていく。
「殺れば殺られる・・・憶えておくんだな。」
マコトがそう言った時には、すでにジュンの腕に力は無かった。

ナイフが根元まで刺さり、小刻みに痙攣していたジュンの身体も完全に動かなくなると、
折れた腕を押さえて逃げようとしているゴウに言った。
「仲間に伝えろ。邪魔すればこうなるとな。」
マコトは立ち上がり、倒れているカトリの首を思い切り踏みつけた。
グゴッ・・・鈍い音がして、カトリの口から血しぶきが飛んだ。首の骨が潰れたようだ。
「ひぃぃぃぃっ！！」それを見たゴウは転がるように逃げていった。
カトリの身体もしばらくピクピクと動いていたが、やがて動かなくなった。