モーニングクエスト�U

第４話

ここは「サマーナイト町」。高校の生徒会長にも不信任案が提出されるようなごく普通の町、
その町にあるのが「ムーンライト学園」。
職員・生徒数あわせて10万人、一般教養も含め科目は666科目、
クラブ同好会は1600部会というごく普通のマンモスハイスクールである。

その日、ムーンライト学園は学園史上最大の危機に見舞われていた。
昨年度までの生徒会長が卒業し、今年度から新しく会長になったイイダ先輩(3年生)の
”不信任案”が可決されたのだ。

＜解説しよう！ムーンライト学園の生徒会長は絶対であり、生徒達は必ず会長の指示に
　従わなければならない。そのため生徒達は一人一人が計り知れないほどの野心をもっており、
　会長の座が空くと必ず大きな争いが起こるのだ！

そんな中、次期会長の座を狙おうという猛者が続々と生徒会室に集まってきていた。
ここで立候補者の受付を行い、審査に通ったものだけが立候補できるのだ。
一年朝組からは誰も立候補しなかったが、マコトが「ちょっと見に行ってみようよ!」
と言ったので、アイ・ノノ・アサミは4人で生徒会室を覗いてみた。
「・・・・・・・・・！！！」
室内は早くも殺気と熱気に満ちている。
候補者受け付け担当のイシイ先生も必死の形相だ。
「あ！！ヨシザワ先輩！！」アイが思わず叫んだ。
「おぉ！アイくんじゃないか。キミも立候補するのかい？」
目をギラつかせる猛者たちの中、ヨシザワ先輩は一人だけ優雅な雰囲気を発していた。
「い、いえぇ！！とんでもないですよぅ！！」
アイは赤くなって首をふる。
「ヨシザワ先輩は立候補するんですか？」
横からマコトが訊くと、
「ああ、クラスの皆が薦めるから後に引けなくなってしまったんだ。」
ヨシザワ先輩は笑顔で答えた。
「応援してるんで頑張ってください！！」「がんばってくださいね！！」
アイたちは口々に激励する。
「ありがとう。がんばるよ。」
そう言うと、ヨシザワ先輩は再び猛者たちの中へと消えていった。

翌日、ホールに”生徒会長立候補者”が貼り出された。
面子はヨシザワ先輩、現会長のイイダ先輩、ヤスダ先輩の名まであった。
「そうそうたるメンバーですな。いひひひ」
それらの名前を見ながら教務主任のワダ先生がチャーミー先生に話しかけている。
「そうですね、今回も壮絶な死闘が繰り広げられそうですね。」
淡々と答えるチャーミー先生に、ワダ先生がボソッと言った。
「・・・もしよろしければ今夜お食事でもどうですか？いひひひ」
「遠慮しときます。」
チャーミー先生は欽ちゃん走りで去っていった。

その日から候補者達の選挙活動が始まった。
他人のために尽くす者、ライバルを闇討ちする者、廊下で一騎打ちする者など様々だ。
そんな中ヨシザワ先輩だけはいつもと変わらず優雅に振舞っていた。
「先輩、いいんですか？何もしなくて」
心配になったマコトが言うが、
「大丈夫さ。」ヨシザワ先輩は余裕の笑みを浮かべる。
その時廊下で男子生徒が叫びながら走り抜けた。
「お〜い！渡り廊下で一騎打ちだぞ〜！！」
それを聞いた一同は渡り廊下に向かった。

渡り廊下では一年夜組のユウキと２年勝組のゴトウ先輩が対峙していた。
「ヨシザワ先輩、あれ！」
アイはゴトウを指差した。
「あいつら・・・姉弟そろって立候補したのか・・・」
ヨシザワ先輩はヤレヤレといった感じだ。

＜解説しよう！この姉弟の喧嘩はすさまじく、毎回多くの野次馬が集まるのだ。
　ちなみにこのゴトウ先輩、V３の仮の姿である。

１時間後、ゴトウ先輩の延髄切りが決まり、ようやく決着がついた。
保健委員に担架で運ばれるユウキは「ちきしょう！」と何度も呟いていた。
「・・・・・・・・」
あっけにとられるアイやマコトたちにヨシザワが言う。
「ほらね、こうやって勝手に減っていくから何もしなくていいのさ！」
「(・・・ズ、ズルイ！！！)」
アイたちは少しだけヨシザワ先輩がわからなくなった。