モーニングクエスト�U

第３話

ここは「サマーナイト町」。クラスメイトが変身ヒーローだったりするごく普通の町、
その町にあるのが「ムーンライト学園」。
職員・生徒数あわせて10万人、一般教養も含め科目は666科目、
クラブ同好会は1600部会というごく普通のマンモスハイスクールである。

「くらえ！！」
「ぐぎゃああ！！」
――その日もいつものように怪人が出現し、エンジェルハートがそれを倒し、事件を解決していた。
「ありがとうエンジェルハート！またよろしくね！」
毎度の如く手を振って見送るマコト・アサミ・ノノ。
するとエンジェルハートは去り際に何か落としていった。
「あ！・・・何か落とした・・・」それに気付き、拾い上げるノノ。
しかしすでにエンジェルハートは校舎を突き破り、どこかへ去ってしまっていた。
「どうしよう・・・・・・ま、いいか。」そう言ってポケットにしまう。
ノノの頭の中は、この後の夕飯のことでいっぱいだった。

＜解説しよう！ノノが拾ったのはアイの学生証である。同じ学校なら普通は気付くのだが、
　入学式で受け取って以来ずっと自宅の机に置きっぱなしのノノは全く気付かなかったのだ！

体育器具室で変身を解いたアイは学生証が無いのに気付く。
「きっとさっきの戦いで落としたんだ・・・どうしよう・・・」
少し泣きそうになっていると、ヤスダ先輩が通りかかった。
「あら、こんな所で会うなんて奇遇じゃないの。泣きそうな顔でどうしたのかしら？
ムーンライト学園のマドンナであるこのヤスダ ケイが聞いて差し上げますわ。」

＜再び解説しよう！実はこの時期、ムーンライト学園では生徒会長選挙があるのだ。
　多くの生徒達がその座を狙う中、学園のマドンナを自称するヤスダも当然、会長の座を
　狙っているのだ！無論この行動も点数稼ぎのためである。

「ヤスダ先輩・・・実は・・・・・」
アイはヤスダ先輩の目をまっすぐ見つめ、話しはじめた。
「うっ・・・！！・・・こ、この澄みきった瞳は・・・まるで・・・・・」
アイの澄みきった瞳に見つめられ、野望に満ちたヤスダの心が浄化され始める。
「どうかしたんですか・・・？」
「えぇい！おぼえてらっしゃい！！」
更に目を合わせてくるアイに耐え切れず、ヤスダは走って逃げていった。
「・・・・・どうしてだろ・・・？」

立ち尽くすアイの頭にに更なる疑問が浮かぶ。
さっきから部活の準備らしき男子生徒が度々通りかかるのだが、なぜかアイを見ると皆前かがみに
なるのだ。
「？？？」アイが混乱していると、そこにノノが通りかかった。
「あれ？アイこんなとこでどうしたの？っていうかなぜ半裸？？」
そういわれて初めて気付くアイは、真っ赤になりながら慌てて服を着た。

＜またまた解説しよう！アイは変身を解いたところで学生証紛失に気付いたのだが、
　変身を解く＝エンジェルハートの衣装を脱ぐということなので、まだ服は着ていなかったのだ。
　アイはスタイル抜群(ﾖｼｻﾞﾜ先輩談)なので、それを見た男子生徒が前かがみになるのも
　仕方のないことなのだ！

「ありがとうノノ・・・」
服を着て、改めてノノに礼を言うアイ。
「なぁに、当然のことをしたまでよぉ。」
そう言いながらも何かくれ！とばかりに手を差し出すノノ。
――ふと見るとその胸に光るものがあった。
「あ・・・それ・・・・・」アイが指差したそれは、紛れもなくアイの学生証だった。
「これ？これね、さっきエンジェルハートが落としてったの。・・・欲しい？」
アイは少し考えてから、「うん、ほしい！」と答えた。
「じゃあ後で学食おごってね！はい！」
アイの学生証は以外にあっさりとアイの元に戻った。
「ありがと！」
するとノノはニヤニヤしながら近付いてきた。
「アイってもしかしてエンジェルハート―――」
アイの全身に緊張が走る。

「――のファン？」
「・・・・・・・・」
「・・・・・・・・」
「・・・あ、そうなの！大ファンでさ！！１度でいいから会ってみたいなって・・・！！」
「やっぱりね。」明らかに不自然なアイに気付く様子もなく、ノノは「あとで学食ね！」
と言って購買のほうへ走っていった。
「ふう・・・でもよくバレなかったな〜・・・・・写真も名前も書いてあるのに・・・」
ホッと胸をなでおろすアイは自分の学生証を見ながら思った。

＜解説しよう！証明写真は油断した顔で映っていることが多いが、
　アイの場合もとても本人とは思えないほど油断した顔で映っていた。
　しかも名前はローマ字表記だったため、ノノには読めなかったのだ。