新・一緒に暮らすならどの娘?part6(何でも有り
>>863-864のつづき
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「丸一年も想いつづけたのになぁ……」
僕はいま高校二年生なのだが、石川さんとは一年のころから
いっしょのクラスだった。
はじめて彼女を意識したのはその年の夏、僕が国語の授業で教科書を
忘れてきたときのことだ。
僕は当時すごく引っ込みじあんで(いまでもその傾向は完全には
抜け切れてないが)、クラスメイトに教科書を見せてもらうこともできず、
一人でオロオロしていた。
「教科書ないの? じゃあいっしょに勉強しようよ」
当時隣に座っていた石川さんは、そんな僕を見て机をくっつけてくれた。
もちろん石川さんが僕にだけ親切だったわけではない。
誰が教科書を忘れていても、自分から見せていただろう。
彼女は学級委員だったし、みんなに対して優しかった。
それはわかっていたのだが、彼女の整った横顔、茶に染まっているサラサラの髪、
品よく切られた形のいい爪、他の女子より少しだけ大きい胸のふくらみを
間近で見ていると、好きにならないわけにはいかなかった。
「なに物思いにふけってるのよ!」
矢口のイラついた声で我に返った。
「うじうじしてんじゃないわよ。あんたねえ、さっきから聞いてると
別にふられたわけじゃないじゃん。石川さん、だっけ? その人に
好きな人がいた、それだけでしょーが。彼女があんたのことをどう
思ってるかは直接聞いてみないとわかんないでしょ。希望はあるんだから
元気を出しなさいよ!」
目がすわっている。この女、酒乱だ。
「だけどさぁ……」
「あー、もういい! これ以上しゃべってもどうせ鬱になるだけなんだから
これでも飲んで忘れなさい」
そう言うと矢口は手に持っていた焼酎のロックを突き出した。
悪いことに、僕もかなり酔っていて判断能力が失われていた。
僕はなみなみとつがれていた焼酎を受け取ると、そのまま一気飲みした。
それからのことを、僕は憶えていない。
……目覚めると、見なれた天井が視界に入ってきた。
僕は自分の部屋のベッドで寝ていた。
頭がひどく痛い。
(気持ち悪い……。オレゆうべ何やってたんだっけ?
そうだ、酒を飲んだんだ。するとどうやって家まで帰ってきたんだろ?
思い出せないや……)
胸がムカムカしてきたので僕は考えるのをやめた。
猛烈に水が飲みたい。
僕はベッドから起き上がろうとして体勢を変えた。
と、そのとき、
トン
何かが僕の左手に当たった。
それは柔らかくて、すべすべしていた。
(何だこれ?)
僕は自分がふれたものが何なのか確かめるため、かかっている毛布を
上げてみた。
「!!!!!!!!!」
僕が目にしたのは女の背中だった。
それも一糸まとわぬ真っ裸だ。通称マッパ。
上品に言うならばヌード。お下劣な表現を試みるならスッポンポン。
呼び方はなんでもいいがとにかく裸の女が僕の隣で寝てるのだ。
その女が誰なのか、後ろからでもはっきりわかる。
あの金髪、どう見ても矢口真里じゃないか!
「ん……おはよ、マサト」
なぜに下の名前で呼ぶのだ?
当然の疑問が僕を襲った。
(こ、これってもしかして……酔った勢いってやつですか?)