95 :
一:
「これは?」
校長が言った。
「青白い光でしたね。水でしょうか。水は真っ青だと聞いてい
たんですが、思ったより淡い色でした」
ニダーナは首を傾げて言った。
「ノゾミが火、カライが水か。我が校から二人も現れるとは」
校長はいつもの威厳を忘れたように早口に言った。
「先生、どういうことですか」
ノゾミは自分が化け物にでもなったような気がした。だが、
教師達はノゾミの問いに答えなかった。
「こんなに、その、いるものなのですか」
「いえ、わたしも実際に指輪の光を見るのははじめてなんです。
しかし、光は魔力の大きさに比例して強くなるということですから、
二人の力はすばらしい。特にノゾミ君の方は放っておけば目をつ
むっていても失明するほどの強さになったんではないでしょうか」
「そうすると、ノゾミとカライは……」
「ええ」
ニダーナは口ごもった。そこで、黙り込んでいた副校長が何かを
思い出したように校長の肩を叩いた。すると、校長は
咳払いして、二人の生徒に言った。
「今、行なったことはひとまず二人の胸にとどめておいてくれないか。
どういうことか、すぐに二人に知らせるようにするから、今日はこれで
教室に戻ってもらうよ」
「いえ、校長先生、今日、例の実験をしてみたいのですが」
ニダーナが遠慮する様子もなく、校長に言った。
「……失われた呪文をですか? しかし、二人に説明してからでない
と。二人とも驚いているだろうし、落ち着いてからの方が」
「いえ、安全な呪文があるんです。それなら、怪我をすることはまずな
いです。マリッペ様がそうおっしゃっていました」
「そうですか。しかし、ここでというわけには行かないですよね」
「ええ、そうですね。どこか広い場所の方がいいですね」