ち よ こ っ と L O V E

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「アパラゴヤーナには何があるの」
「さあ。学校があるんでしょう」
 カライの冷めた口調を気にすることなくノゾミは言った。
「同じような魔法学校があるのかあ。わたしにすごい力があるって言ってたわね。
火の力って。手から火でも出るのかしら。そんなわけはないか。――でも、すご
かったわね、あの光。怖かった」
 彼女はそこまで言ってカライのはめた指輪から出た青白い光がかつて彼の手
のひらから出た光に似ていることに気づいた。
「ねえ、ひょっとして――」
 しかし、言いかけて彼女はやめてしまった。校長室で見た彼の笑みが何となく
すべてを物語っているように思われた。
「カライの光は青白かったね。あたしは赤。情熱の赤ってわけね、まさにぴったりだわ」
 冗談を言って取り繕おうとしたが、カライは無表情で、彼女が照れただけになった。
アパラゴヤーナという言葉に、彼女は現金に反応していた。トリラ村を離れたくないの
はたしかである。だが、一度でいいから、自分の国の首都を見てみたいという思いが
あった。
「でも、仮に火が出たとしたら、何に使うのかしら。火が必要な職業といったら、鍛冶屋
とか。あーあ、鍛冶屋なんかやだなぁ。だって、鍛冶屋のおじさんって怖いでしょう、カ
ライは知ってる村のセッシンていう鍛冶屋のおじさん。知らないか。……怖いんだから。
そりゃあ、鬼のようよ。水が出たら、どうする? 庭草の水撒きなんてどう。庭師に喜ば
れるわよ」
「……」