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522第3章:???保田編
アレ、石川じゃない?
こんな廊下のソファでナニやってるの?

「石川っ!」
呼ばれた本人は、声のほうに顔を向けたが、
声の主が誰かわかると、またうつむいた。

「あぁ、保田さんかぁ〜」

「『保田さんかぁ〜』って失礼ねっ!」
「あ、ごめんなさい」

「下っ腹抑えて、おなかイタイの?」
「い、いえっ、大丈夫ですっ」

あんまり大丈夫そうに聞こえないわね。
保田は、石川の隣に腰掛けた。
523第3章:???保田編:03/01/29 22:56 ID:PleioQ9a
「あのぉ保田さん、中澤さん見かけませんでしたか?」

「はぁ?ナニ言ってるのよっ!
 今日は、MUSIXの収録日っ!
 ゲストでもないのに、裕ちゃんが来てるわけないでしょっ!」

「そーですよねぇ・・・は〜ぁ」

ホント失礼な子ねっ!
中澤さん、中澤さん、そればっかり。

『今の石川があるのも、中澤さんのおかげですぅ!』
確かにそーだとしても、テレビで言うことないじゃないっ!

あんたが裕ちゃんにゴマすって、そんなこと言うから、
『教育係だった頃の保田は、何やってたんだろう保田』
なんて書かれるのよっ!
524第3章:???保田編:03/01/29 23:00 ID:PleioQ9a
「裕ちゃんに何か用なの?」
「いえ、別にぃ・・・」

いったい何なのよっ!
あやしい、あやしいわっ!

こないだのハロモニの収録の後も、石川ニヤニヤしながら
スキップで裕ちゃんの楽屋に駆け込んでいったの見たし・・・。


あな〜る。
石川は裕ちゃんといつも、綿密なネタ合わせしてるんだわっ!

関西出身の裕ちゃんから、あのブリっ子&空回りキャラを
どーやったら笑いにつなげられるのか、教えを受けてるのよっ!

そーよ、そーに違いないわっ!
525第3章:???保田編:03/01/29 23:01 ID:PleioQ9a
生意気だわっ!

笑いの指導なら、ワタシだって珠代ねえさんから、
毎晩浴びるように飲んで・・・いや、受けてるわよっ!

ワタシより数段かわいくて、黙ってたって目立つ石川が、
なんで笑いまで取ろうとするのよっ!不公平じゃないのよっ!

ん?いや、ちょっと待てよ・・・。

ワタシも来年の春には、モーニング卒業して女優に、
ってことになったけど、果たして大丈夫なの?

悪いけど紗耶香みたいにはなりたくないのよね。
でも・・・今のワタシの人気では、その可能性も十分あるわっ!
526第3章:???保田編:03/01/29 23:02 ID:PleioQ9a
それに比べて石川は、2冊目のソロ写真集の売れ行きも絶好調。
ごっちんが抜けて、一般ファンにとっては娘。の次期エース。

ヲタ人気も、超新星=紺野に追い上げられつつあるるとはいえ・・・
ううん、キモヲタ数ではあいかわらずダントツのトップだわっ!


暴走機関車・保田の思考は、いっこうに止まらない。


この石川に、かつての教育係の偉大さを再認識させて、
『石川を育ててくれたのは、保田さんですぅ!』
なんてテレビで言わせることができたら・・・。

そーなったら、ワタシの卒業ライブの客席は、
『ケメコ畑がいっぱいだよぉ〜!』なんてことに・・・。
527第3章:???保田編:03/01/29 23:05 ID:PleioQ9a
そーよ、このチャンスを逃すことはないわっ!
何を悩んでるのか知らないけど、相談に乗ってあげるのよっ!

どーせ石川のことだから、どーでもいいようなこと、
ウジウジと悩んでるに決まってるわっ!

『ポジティブ、ポジティブ!』って例の呪文を唱ればすぐに、
『そーですよねっ、石川、すっきりしましたぁ!
 さすが保田さんっ!一生ついていきますぅ!』ってなるわよっ!

うふっ!ケメコ、あったまイイーっ!


ここまでの保田の思考時間は、わずか0.3秒。

保田の唇の両端は引き上げられ、眼球は今にも飛び出しそうだった。
もし万が一、心臓疾患を持つ者が見たら、間違いなく命の危険を
感じるにちがいないような形相になっていた。