90 :
レクイエム:
シートに腰掛けた平家はモニターで柴田を見ていた。形勢逆転ってやつね。
平家の唇が笑みの形を作っていた。数メートル先に立ち尽くす柴田もまた笑っていた。
「まさかこんなモン持ち出してくるとわね。やれやれだぜ。」名作のセリフをマネして余裕を
示そうとしたがとりあえず認めよう。ヤバイ。柴田はH&Kを取り出すと(温存するつもりだった。)
撃った。ダダダダダダダッ!戦車のボディに弾丸が命中して火花が散った。それだけだった。
その時、砲台がキリキリと動きだし、銃口が柴田を睨んだ。「まずい!」瞬間的にバッ、と左に
飛びのいた。その直後に真横の地面に砲弾が激しくめり込み爆発した。その衝撃で柴田の体は
軽く吹き飛ばされた。地面に投げ出されながらもすぐ立ち上がるともう1回H&Kを撃ってみる。
やはり火花が散って終わるだけだった。こっちの攻撃は全く通じないであっちの攻撃は一発でも
喰らったら即死。スピードもパワーも段違い。さてどうしよう・・・。
さっきは・・・さっきはよくもやってくれたわね・・・!平家は肩の傷をおさえた。
今度はあんたがやられる番よ!エンジンを踏み込むと戦車は走り出した。
フン。逃げても無駄よ!ズドオオオオンッ!!!軽い衝撃が機体に伝わって砲弾が発射される。
・・・外したか。柴田はその時既に森の奥へと走っていた。この戦車の時速は60キロ。
余裕で追いつける!だが、ここに問題が一つあった。平家は戦車はおろか車の免許も持っていない。
はたしてこれを上手く扱えるか。平家は車体のスピードをあげていった。
91 :
レクイエム:02/06/07 17:53 ID:qE6e28z9
足場が悪いせいかよく揺れる。それはいいとしてモニターが背を見せて逃げる柴田をとらえた。
今度こそ!再び撃とうとすると柴田はすっ、砲台の死角へと移動した。
モニターから柴田の姿が消える。「何ッ!?横か?」車体を横に向けようとするができない。
「なんで曲がらないのよ!?」ギュウルルルル・・・・!!やがてマシンは止まった。
どうやらキャタピラに異常が生じた様である。実はこの戦車、欠陥品で廃棄処分される所を
安値で買ったものだった。こんなゲームのために新品の戦車を買っていたら明らかに予算オーバー
になってしまう。(つんく♂談)
「動け・・・動け・・・今動かなきゃ意味がないの・・・動いてよッ!!」
平家の言葉に答えて戦車は再起動・・・する分無くやがて全ての機能が停止した。
やがて平家の頭上からガゴッ。と音がして天井の蓋が外された。
そこから柴田が覗き込んでいた。「短い栄冠だったわね。あんたの歌手生活と同じ・・・。」
柴田は哀れむように言うとコルトガバメントのトリガーをひいた。
乾いた音が森中に響いた。そして銃をしまうと汗をピッと指で払った。
冷や汗だった。戦車が欠陥品じゃなかったら自分が死んでた・・・。
柴田は肩をすくめて見せると森の中を進んで言った。
平家みちよ 死亡 残り15人
92 :
レクイエム:02/06/07 18:10 ID:qE6e28z9
現時刻PM7:26分 (1日目)
〜現時点での死者〜
大谷雅恵・村田めぐみ・斉藤瞳 柴田のH&Kを全身に浴びて死亡。
新餓鬼 里沙 柴田のコルト25オートを胸部に被弾。後に鮫に喰われる。
飯田圭織 後藤に脳天を刺されて死亡。
保田圭 顔面に矢を刺される。
石川梨華 ナイフを喉に刺して自殺。
ミカ・タレッサ・トッド アヤカにグロックを撃ちこまれ死亡。
高橋愛・小川麻琴 後藤にボウガンを撃ちこまれる。
平家みちよ 頭部に被弾。柴田に殺される。
中澤裕子 つんく♂にワルサーで撃たれる。
93 :
レクイエム:02/06/07 18:35 ID:qE6e28z9
現時刻PM7:26分 (1日目)
〜現時点での生存者とその行動〜
アヤカ・安倍なつみ・矢口真里 つんく♂のいる指令基地を壊すため爆弾を製作中。
紺野あさ美 市井と一緒に行動中
カントリー3人 不明
藤本・松浦 吉澤を見送った後・・・?
石井リカ 不明
加護亜依 聞き分けの悪い辻に怒って単独行動中
辻 希美 加護と別れて一層不安に
吉澤ひとみ 元々4人でいた傾斜道に戻ろうとしている
柴田あゆみ 先ほど平家を射殺。今は森を抜けようとしている
後藤真希 市井に撃退される。相当怒っている様子
94 :
レクイエム:02/06/07 18:36 ID:qE6e28z9
〜この戦いのシステム〜
優勝者はつんく♂の新ユニットに加入。メンバーは今までの優勝者達。
それが表向きの理由で実は政府の人間の賭けにも使われている。小泉総理は後藤がお気に入り。
制限時間は3日。それを超えても優勝者が決まらなければ地雷が爆発して全員死刑。
特別ルールにグループは3人までとなっている。
〜それぞれの違い〜
参加者の中には当然戦いを止めようとするメンバーがいる。
しかし中には進んでメンバーを殺す者もいる。柴田や後藤が代表的。
ただし、柴田は生きるために、死なないために戦っていて
後藤はただ快楽をえるためだけに戦っている。
95 :
レクイエム:02/06/08 05:40 ID:q6Ohz3yZ
貯水池の横には管制塔が建っていた。その管制塔は島で最も古く最も高い建築物だった。
ビルの4階建てに相当する管制塔の屋上。そこからさらに伸びる高台。
その高台の上に少女がたたずんでいた。見た目はとても愛くるしいのにその心は汚れきっている。
夜風が吹き、後藤真希の長い髪が風に揺れた。後藤は両手を脇にぶら下げたまま静止していた。
全く動こうとせず、瞳も閉じたまま島中が見渡せるこの高台で後藤は寡黙していた。
ダダダダダダッ・・・後藤の耳が聞き覚えのある銃声を聞いた。すると瞳がそっ、と開かれた。
視界にうつったのは緑の平野に置かれた小さな固まり。軍事工場跡だろうか。
そこから少し東に目線を泳がせる。そこにある広い緑の固まり「森」。
銃声はそこから聞こえた。次の瞬間に森の中心がポウッ。と光り、より大きな音が響いた。
「キタッ。」後藤は低めの声で言うと体を宙に躍らせる。
2回目の銃声が響く時、後藤の体は既に5・6メートルの高台の下にあった。
そして床に置かれた2つのディパックを肩から下げると屋上の階段を駆け下り、あっと言う間
に管制塔のドアからその姿を現せた。そしてその恐ろしく冷たい目で周囲を見まわすと
貯水池から姿を消した。