加護ちゃんのクローン手に入れたらどうする?part2
かなりの勢いで走りつづけるふたり乗りの自転車は、ようやく僕の見慣れた景色まで無事戻ってくることができた。
一心不乱にペダルをこいでいた僕はおもいきり息があがっていた。激しい息使いの僕とは対象的に、後ろにいる
加護は僕の背中につかまったまま大人しくしている。あまりにも静かなので僕は背中越しに声をかける。
「加護・・・・・。加護、起きてるか?」・・・返事が無い・・。少し振り向いて聞き耳をたてると、加護の寝
息が聞こえる。見事な眠りっぷりに、本当に加護は大物だな〜と、思わず笑顔ががこみ上げてくる。僕の背中が
そんなに心地良いのかな―
僕は自転車のスピードを落として、ふたり乗りを楽しむように街灯がつきはじめた道をドライブ気分で進む―。
「おーい加護。寝てるのか〜?」僕は小さめの声で、加護が寝ていることを確認するかのように話しかけた。今度も
また返事がない。寝ているのを確認した僕は、いままで話せなかった僕の正直な気持ちを言おうと思った―。
「あのさ、加護。今日な一緒に行ってくれるって言ってくれた時、凄く嬉しかった。俺の無茶な計画に乗ってくれて、
本当に嬉しかった。たぶん加護がいてくれなかったら、成功しなかったと思う。本当に、ありがとうな、加護・・。」
「・・・うん・・。」それが寝言なのか返事なのか解からなかった・・
僕はゆったりと進む自転車の速度にあわせるように、鼻歌で「I WISH」を歌う。頭の中で歌詞を描きながら。
人生って すばらしい ほら 誰かと 出会ったり 恋をしてみたり―
Ah すばらしい Ah 夢中で 笑ったり 泣いたり出来る―
自転車は加護の家のもう側までやってきた。公園の前で自転車をとめて、加護を起こすことにした。
「ついたぞ、加護。起きろよ」
「・・・・うん。まだ少し寝ぼけてるからベンチで休んでもいい?」
「うん、いいよ」
公園はかなり多くある街灯のおかげで夕暮れ前のように明るい。ベンチに二人ですわって、何を話すでもなく時間
が過ぎていく。少しあいた二人の距離がうれしいようなもどかしいような、そんな気分だ。でもとてもうれしさで
いっぱいだ。
「「あのさ、!!」」二人同時に話しかけて、お互いにゆずり合う。
「なに?」加護がいえば、僕も「加護こそなんだよ?」ふと目があって、加護も僕も少しはずかしそうにうつむく。
「さっきね、鼻歌で歌ってたの I WISH でしょ?」
「うん。何だよ起きてたのかよ」
「うーんと、ちょっと夢心地だったかもしれない。すごく心地がよくて、それにとっても好きな曲だから・・」
「うん。オレあのフレーズがすきなんだ。くり返しくり返し歌いたくなる!」
「うんうん、加護もだよ。それとね、終りの方も好きなんだ」
そう言うと、加護は立ち上がり少し前に出て歌い始めた―
人生って すばらしい ほら いつもと 同じ道だって なんか見つけよう!
Ah すばらしい Ah 誰かと めぐり会う道となれ!
でも笑顔は大切にしたい 愛する人の為に…
また僕たちは目が合って―。僕には言葉がなくて―。どうすればいいのかさえも解からなかった。