【T・E・N】 第0話 エピローグ
紅蓮。
真っ赤な炎が、満月で明るい夜空をさらに照らす。
今にも崩れ落ちそうな屋敷の周囲を、火の粉が死者をとむらう蛍のように
舞っている。
ぱちぱち。ごうごう。
自分たちがさきほどまで中にいた豪邸が、音を立てて燃え上がっているのだ。
数人の元モーニング娘。のメンバーが、それを茫然と見上げている。
この屋敷で目撃した、信じられない現象。
2発の銃声が鳴り響き、そこで発生した殺人事件。
この日、この山奥の屋敷にいるのはメンバーだけ。
殺されたのも、殺したのもかつての「仲間」だった。
その仲間たちが灼熱の炎に包まれた、屋敷の中にいる。
奇妙な運命の輪に巻き込まれた女たちが―――。
屋敷の外にいるメンバーは、それをただ見守るしかなかった。
5年振りの再会。
和気あいあいとした雰囲気で終始すると思われていた同窓会で、まさかあん
なことが起こるとは誰も予想していなかった。
いや、この計画を立てた、ただ一人を除いては。
自慢のロングヘアーが、炎と汗でほつれた糸のようにボロボロになっている
飯田。その服の袖を、地面にへたりこんでいるメンバーのひとりが引っ張って
たずねる。
ほんとうにこれですべてが終わったんでしょうか、と。
飯田はゆっくりと目を閉じて、うなずく。
その時だった。
真っ赤な炎を衣のようにまとっていた屋敷が、地響きと共に崩壊した。
5年前、武道館で起こった世間を震撼させた惨劇。
2年前に、アメリカであのメンバーを襲った悲劇。
そして今日、この洋館で起こった不可解な出来事。
あの娘の口から吐き出された、事件の真相の数々。
飯田は思った。
たった今、本当の意味でモーニング娘。は「解散」したのだと。