ゴマキ新曲ジャケットに履いてるのはルーズ?

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150鮪乃さしみ ◆vDQxEgzk

【T・E・N】 第18話 紺野と飯田

「飯田さん、オニギリ食べないんですかぁ? 美味しいのにぃ」

 助手席に座っている飯田は、とてもじゃないが紺野から差し出されるオニギ
リを口に運ぶ気にはなれなかった。

 山奥の洋館で開催されるモーニング娘。同窓会へ向かう途中、ひとやすみの
つもりで路肩に停車したクルマの中。
 遅くて、危なっかしくて、しかも車酔いするという最悪のドライビングセン
スの持ち主である当の紺野は、何食わぬ顔でピーナッツとオニギリをむさぼり
食っている。
 飯田はシートをリクライニングの状態にして、しばしこの緊張から解放され
たことを素直に受け入れようとした。

 カーラジオからは、モーニング娘。の最後のシングル曲が流れている。
 事件直後に発売された、このラストソングはダントツの話題性だけでなく、
その楽曲の完成度とともに大ヒットを記録した。
151鮪乃さしみ ◆vDQxEgzk :02/06/05 06:16 ID:hTtLtGIj

「ハイッ!
 モーニング娘。でしたっ! それでは“やっぱり☆ねこのじかん”そろそろ
 今週もオシマイですよ〜。エンディング曲は、世界の歌姫・犬神音子さんの、
 わははは、新曲“ナカマダチ”を聴きながらのお別れです。
 おかげさまで先週のオリコンチャート初登場なんと21位!
 皆様、ああとーございます! 来週もまた〜ヨロシク〜!

 やけに声の明るいDJ。
 他人事ながらもなにかイイことでもあったのだろうか、と紺野は思った。
 紺野は、歌唱力を買われてモーニング娘。に加入したわけではない。歌に関
しては、まったくといっていいほど思い入れがない。だが、それを口にするこ
とは決してなかったわけだが。
 しかし今日集まる初期のメンバーや高橋などは純粋に歌が好きだから、そし
ていつかはソロで、ということを夢見ていたメンバーがほとんどだった。
 バラエティーやトークといった歌に直接関係ない仕事に日々振り回されなが
らも、いつかはこのDJのようにシンガーとして生きていくことを夢見ていた。
 しかしモーニング娘。を卒業したメンバーの誰一人として、あのラストソン
グを超える曲を歌う者はついにあらわれなかった。そしていつしかモーニング
娘。といえば、その事件性ばかりがクローズアップされ、数々の名曲も人々の
記憶の底に埋もれていった。
 紺野は、時の流れの残酷さを感じずにはいられない。
152鮪乃さしみ ◆vDQxEgzk :02/06/05 06:17 ID:hTtLtGIj

 長時間の運転に、体力に自信のある紺野もさすがに疲労を覚えてか車の外に
出た。初秋のすがすがしい空気を思いっきり肺いっぱいに吸い込んで、体全体
を伸ばす。
 その時、あるものが紺野の目に飛び込んできた。

「飯田さん、大変です」

(何よ・・・)

 助手席の窓から、面倒くさそうに身を乗り出す。
 紺野が車体の下を指さしている。

「なんか運転しづらいと思ったら、タイヤがパンクしていたみたいです!」

 飯田は、眩暈で倒れそうになった。


【18-紺野と飯田】END
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