格闘小説〜餓娘伝

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91格闘娘。

5.

それから三人は、店の奥にあるエレベーターに乗せられ地下に下がっていった。
一体どのくらい深いのかは、解らないが、かなり深いところにあるのだろう。
降りた瞬間少し、ひんやりとしていた。
「さあ、この奥にオーナーがおります。どうぞ。」
その責任者はそういうと、またエレベーターに乗り引き換えしていった。
圭織達の目の前には、巨大な鋼鉄製の扉があった。
圭織は、躊躇なくそれをあける。
ギイィ
扉が開く音がした。明かりがないため良くわからないが、かなり広い
ホールであった。
その時突然ピアノの音がそのホールに響き渡った。
まるで地獄のそこから響いてくるかのようなような旋律がホールに響き渡る。
そして、突然そのホールにまぶしい光がともされ、ピアノの奏者の姿が見えた。
その奏者は矢口 真里であった。その知力、武力を背景に紅鶴楼のオーナーに
収まり表では、店で儲けまた裏では、麻薬などの売買で莫大な富を得ていた。
しかも自分の名前は絶対に出さないという念の入れ様であった。
92格闘娘。 :02/06/16 01:47 ID:DkSY+Ead
「矢口!てめえは許せねぇ」
圭織が言った。
「はは、久しぶりの再開だってのに随分な挨拶だね。」
「酒に毒を入れるとは、随分せこい真似するじゃねぇか。」
「はは、なにも飲むとは、思ってないさ。」
「だろうな、あたしの鼻は犬並の嗅覚だからな。」
圭織はそこまで言うと一歩退き半身に構えをとりだした。
6.

「あたしのメッセージを受け取ってくれて感謝してるよ。」
「無関係の者まで巻き込みやがって・・・」
「あんたが、逃げまくってるの悪いのさ、情けない伝承者だね。」
「ああ、あたしの甘さがこの悲劇を引き起こした、だからこそ、その悔いを断ちに来た。」
「けど、あんたあたしと闘う資格は、あるのか?」
「なに?」
「逃げている間にあんたの拳が錆付いていないかということさ!それを確かめてやるよ」
矢口はそういうとパチッと指を鳴らした。
すると奥から大きな娘が現れた。身長は圭織よりも15センチは高く体型は1.5倍くらいは
あり両の拳にボクシングのグローブをつけていた。
「そいつは、ダニエルって言ってね。今はあたしの店で用心棒してもらってるけど
 元は、ハワイのボクシングのチャンピオンだよ怪我がなければ全米チャンピオン
 になってたはずさ、どうだ?そいつとやるか?」
「二人とも下がってろ。」
圭織は、希美、梨華にそういうと、すっと構えを取った。
93格闘娘。 :02/06/16 01:48 ID:DkSY+Ead
7.

「最初に言っておいてやる。あたしに触れると死ぬぞ!矢口に組するものはあたしが直接葬ってやる。」
圭織が言った。
ブーンッ
その警告を無視するかのようにダニエルの左ジャブが圭織を襲った。
圭織は、それを後ろに引いて逸らす。
しかし、なおもダニエルは、打つ、打つ、打つ。
気がつくと圭織は、後ろの壁まであと数センチというところまで追い詰められていた。

「飯田さん!」
梨華がたまらず声を挙げた。

「どうした?もう逃げるところはないよ。」
ダニエルは、そういうと渾身の右ストレートを圭織に放った。
だがその拳は、圭織の左手に手首の辺りをキャッチされた。
ギュッ
圭織は左手に軽く力を込めた。
「ギャッ」
ダニエルはそのつかまれた右手に稲妻のような激痛を感じた。
(う・・・)
そして次の瞬間に圭織の左右の指がダニエルの胸部のやや下の辺りを突いた。
94格闘娘。 :02/06/16 01:49 ID:DkSY+Ead
「ゲイッ!!」
そしてそれを始めとし、圭織は、目で追えないほどの速さでダニエルの
体のいたるところを突いた。
「ほあたたたたたたたた。」
圭織の声がホールに響き渡った。
「うっくっ・・・」
ダニエルは、その瞬間己の体の全てから力が抜けていくのがわかった。
「当門・・破・・挿」
ダニエルは死の間際にその圭織の言葉を聞いたが全て聞き取れはしなかった。
「お前の体の骨を全て砕いた。あの世で藤本が待っている!」
その言葉はダニエルの耳にはもう届いていなかった。

「きゃははは、良かったよ飯田!あんたの拳が錆付いていなくてさ!」
矢口は、そう言うと圭織のほうに向かってきた。