格闘小説〜餓娘伝

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79格闘娘。

3.

「相変わらず凄まじい技の切れやな。」
矢口の後ろから声がする。即座に矢口は振り返った。
「加護か。」
「こいつで、飯田に縁のあった奴は、あらかたつぶしたはずや、
 誰も奴の居所を知らんちゅうのはどういうことや?」
「あいつを最後に確認できたのは石黒を倒したとこまでだよ、それから先は行方知らずだ。」
「もう、こっちから追っかけるのは疲れたで。」
「あたしもだよ、だからこそこいつには、メッセンジャーになってもらう。」
「上手くいくんか?」
「奴のことだ、きっと来る。」
「・・・なあ。」
「なに?」
80格闘娘。 :02/05/30 01:02 ID:FYpqo31p
「なに?」
「ウチはもう一人でやらしてもらうで、ウチはウチのやり方で飯田を殺る。」
矢口は、暫くだまったっまま何か、考え事をしていた。
そして、ゆっくりと口を開いた。
「ああ・・・好きにしな。」
「そうさして、貰うわ。ウチとあんたどっちが先に飯田を見つけても恨みっこなしやで。」
「解ったよ。」
それだけ言うと加護は、すぐその場を去った。
「加護・・・」
矢口は、その立ち去る姿をぎゅっと拳を握り歯を軋ませながら睨んでいた。
81格闘娘。 :02/05/30 01:02 ID:FYpqo31p
1.

池袋にある巨大なビル郡その中に心水館の本部道場がある。
日本はもとより海外からも強くなりたいと思うものが集まる。
6階建てのその最上階に館長室・・・最も現在館長は、不在であり。
館長代理室となっている。その館長代理は中澤 裕子が勤めていた。
2.
心水館の二階には、事務室がある。そこには金銭面を管理している
事務員が働いているが、夜6時を回ると通常もう人は、いなくなっているが
7時を過ぎた今でもまだ働いてるものがいた。
飯田 圭織であった。上京し、知り合いである中澤に相談したところ
この職を紹介してくれた。
(これをすれば、終わりか・・・)
そう思っていたときにガチャリというドアの開く音がし、中に人が
入ってきた。館長代理 中澤 裕子であった。
82格闘娘。 :02/05/30 01:04 ID:FYpqo31p
「よっ!おつかれさん。」
「裕ちゃん。」
「圭織、ええんか?こんな遅くまで働いてて、希美が腹すかせてまっとるで。」
「いいんだよ、あいつ最近食いすぎだから、この位でちょうどいいよ。」
「まあ、格闘家は体が、資本やからな。おおめにみたれ。」
「うん。」
「そんなことは、おいといてや、お前ホンマにここで、働き続けるんか?」
「えっ!なんで?あたし役に立っていないかな?」
「そうやない、お前が狙われとるのは、知っとる。こんなに目立つとこに居てええんか?」
「大丈夫、大陰は朝廷に隠れ、中陰は街に隠れる・・・人ごみの中の方が反って目立たないよ。」
「そうか、ならええ。」
「それにもし裕ちゃんに迷惑がかかるようだったらすぐに去るよ。」
「心配するな大丈夫や。」
83格闘娘。 :02/05/30 01:04 ID:FYpqo31p

3.

「さてと・・・」
「どっかいくの?」
「ウチの道場の後援会の人と飲むんや。こうみえて空手の道場を経営してくっちゅうのは
 なかなか大変なんや」
「そう・・・頑張って!」
「ああ、お前もはよ帰れ。」
中澤はそういい残し出かけていった。
(やるか・・・)
圭織は、中澤を見送った後、再び仕事に取り掛かった。
それから暫くして、圭織は、つけていたテレビから聞き覚えのある名前を耳にした。
「昨夜未明、横浜市鶴見区の公園で裸の女性の死体が見つかりました。
 女性は無職、藤本 美貴さんで首の骨を折られており、背中には”Y.M”という
 文字が血で書かれて・・・・・・」

ガタッ

その瞬間圭織は立ち上がり体を小刻みに震わせながら、テレビのモニターをじっと
見ていた。

「矢口・・・・」
84格闘娘。 :02/05/30 01:06 ID:FYpqo31p
4.

飯田 圭織は仕事の休日に希美と梨華と共に中華街に来ていた。
その中に紅鶴楼という高級中華料理店がありその中に三人はいた。
しかし何故か他の客はおらず圭織達三人だけであった。
「飯田さんいいんですか?こんな高そうなお店で。」
梨華が不安そうな顔で圭織の顔を見る。
まだ三人とも上京してきたばかりで、生活が安定しておらず金銭に余裕などない。
「大丈夫、心配ないよ。」
「お姉ちゃんが、こんなに気前いいなんて、絶対なんかあるのれす・・・」
「のの!あんた、つまんないこと気にしてんじゃないよ。」
くすくすと梨華の笑いが漏れる。
「それにしても何でお客さんが居ないんでしょうね?」
梨華が言った。広い店に自分たち三人しか居ないということに
不安を感じている。
「さあね。」
コッコッと人の歩く音がした
85格闘娘。 :02/05/30 01:07 ID:FYpqo31p

ウエイトレスが紹興酒を持ってきており、テーブルに置かれたグラスにそれを注いだ。
希美と梨華は、それを飲もうとグラスに手を伸ばし口に近づけた。
その刹那圭織は、二人に対し手で制した。
そして圭織はグラスを手に取りそれを鼻に近づけた。
「臭ぇな!この酒、お前飲んでみろ!」
圭織がウエイトレスにグラスを差し出した。
「そ・・その紹興酒は多少独特のにおいがしますが、風味もよく・・・」
「ありがたいな・・・だがいいから飲め!」
「うっ・・・」
「どうした?まさか毒でも入っているのか?」
「ひっ・・・ひいい」
そう悲鳴をあげウエイトレスは、一目散に逃げ出していった。
希美と梨華は、その様子を理解しきれていない。ただ圭織の
方を見ることしか出来なかった。
それからすぐに圭織達のほうにこの店を任されてるであろう責任者らしき
人物が来た。
「大変失礼いたしました。オーナーが謝罪したいとのことです。申し訳ございませんが
 ご同行願えませんでしょうか?」
「ああ、行こうか」