135 :
格闘娘。 :
5.
「ええか!吉澤気ぃつけえや!圭はお前もねらっとるかもしれんで!」
「あたしが?最後の弟子だから?」
「そうや、奴が今頃姿をみせたいうんは、平家流の奥義を狙ってのこと」
「なんだよそれ?」
「平家流の古くから伝わる殺人術をまとめたもんや!けどみちよは、そのあまりの危険さに
それを後世に伝えるのをやめた・・・」
中澤はそこまで言うと煙草に火をつけ再び話し始めた。
「ええか!圭はみちよがお前に平家流を伝えたのを良く思ってはおらん!
奥義を知るものは一人でいいと思っとるはずや・・・」
「つまりあたしの存在が邪魔だってことだろ?」
「まあ、そうや」
「心配ないよ!返り討ちにしてやるよ!」
「無理やな・・・」
「無理?あたしが勝てないってこと?」
「ああ・・・100・・・いや200%勝ち目は無い!奴が身につけとる拳法は死神の拳と恐れられた
最強の暗殺拳やお前死ぬで・・・」
136 :
格闘娘。 :02/09/16 14:45 ID:F2jyl4XU
「じゃああたしは、どうすればいい・・・」
「逃げるしかないな・・・」
「逃げる?あたしは武道家だ!そんなことは、できっこない!」
「まあ、そう言うとおもっとった。なあ?吉澤、ある人物の稽古を受けてみんか?上手くいけば
身を守れるくらいにはなれるかも知れん・・・」
「上手くいって身を守れる程度か・・・まあやんないよりマシってとこだね・・・で誰なの?
その人物ってのは?」
「後藤真希!」
137 :
格闘娘。 :02/09/16 14:46 ID:F2jyl4XU
第8章
1.
吉澤は中澤に教えられた住所に来ていた。
多くの雄大な自然が残された大地にその場所はあった。
北海道富良野市の中にある森林の中を抜けるとそこに広大な屋敷があった。
中に入るとそこには、大きな庭がありそこには、巨大なドラム缶や木に吊るされた
ロープが目に付いた。
(一体どんな奴が・・・)
吉澤は、これから自分にどんな試練が起こるのかを思い身震いしていた。
暫くは扉の前に立ちすくんでいた。やがて意を決して扉を開けた。
「すいませ・・・」
吉澤がそう言い扉を開けると長い廊下が目に入った。
そしてその廊下の奥からドドッという走る音が聞こえた。
一人の娘が必死な顔で吉澤の方へ走ってきてた。
「紺野〜〜〜〜っ!待て〜〜〜」
その紺野と呼ばれた少女の後ろからもう一人の娘が走ってきていた。
「待てません。」
「いいじゃん!乳揉ませろよ〜〜〜っ」
「いやです。」
138 :
格闘娘。 :02/09/16 14:47 ID:F2jyl4XU
吉澤はその光景をただあっけにとられて見ているしかなかった。
紺野と呼ばれた娘はその後いたるところを逃げ回った後、再び玄関の前に
戻ってきたところを後ろからタックルをくらい倒されてしまった。
紺野を追いかけていた娘は後ろから紺野を抱きしめると紺野の豊かな胸を
揉み解し出した。
「いいねぇ!今日の乳も最高だね!」
「ちょっと・・・お客さんが来てますよ。止めて下さい。」
紺野にそういわれると娘は玄関に目をやった。
吉澤と目が合うとその娘は紺野の胸を揉みながら言った。
「あんた誰?」
「吉澤ひとみ、後藤真希に会いに来た。」
「ああ!あんたか裕ちゃんから話は聞いてるよ,今あたしは、紺野と楽しんでるんだ、ちょっと待ってな。」
(こいつが後藤真希?)
吉澤は呆れて物も言えなかった。自分の命の鍵を握っているのがこんなにもふざけた
人物であったのかと思い憤りを感じる。そしてそれは、怒りへと変わっていった。
「あんたちょっとそんな事してる場合なのか?真面目にやってくれよ」
吉澤はそう言うと後藤につかみかかった。
「無粋っ!あまりにも無粋っ!」
後藤の目がそれまでの目から変わった。
それは、格闘者としての目であった。
139 :
格闘娘。 :02/09/16 14:48 ID:F2jyl4XU
後藤のその迫力に吉澤は気圧され後退した。気がつくと後ろには扉があった。
後藤は己の人差し指をすっと扉に対し突いていった。
吉澤はその瞬間信じられないものを目の当たりにした。10センチ以上はあるかと言う
鋼鉄製の扉が後藤の指により穴が開いた。
吉澤はその凄まじさに身震いしていた。
(殺される・・・)
後藤の指が次に吉澤の額に向けられてることに気付いた。しかし吉澤は、そのあまりの恐怖に
動くことが出来なかった。
死が吉澤の目の前に迫った。
「ごっちん!やめて!」
後ろから紺野が叫んだ。
「大体ごっちんが悪いんだよ。その人遠くから来てくれたんでしょ?それなのに
そんな態度とったら誰だって怒るよ!」
「ああ・・・ごめん」
「失礼しました。私は紺野あさ美、こちらが後藤真希でございます。遠いところからよくおいでくださいました。」
紺野の丁寧な挨拶も吉澤はあまりに信じられないことがおこりすぎて耳には入っていなかった。
140 :
格闘娘。 :02/09/16 14:49 ID:F2jyl4XU
2.
気がつくと吉澤は、ソファに座っていた。目の前には後藤がゆったりと腰をかけている。
そして、ただこちらを見ていた。吉澤は後藤と目を合わせられず、部屋をぐるりと見回した。
広い部屋にただソファとテーブルがあるだけであった。
吉澤は、紺野がお茶を持ってきてくれているのに気付いた。
「どうぞ」
「ありがとうございます。」
「遠いところからよくお越しくださいました。」
「いえ・・・」
それから暫く三人は無言のままであった。
その空間を切り裂いたのは、後藤であった。
「あんた狙われてるんだって?」
「ああ・・・」
「あたしに守ってもらいたいのかい?ならだめだね、あたしは紺野以外の人間は、助けてやんない。」
「ごっちん!」
紺野がじろりと後藤をみる。
「誰も守ってくれとは言ってない。ただあんたに身を守るすべを教えてもらいたい。」
「んあ〜めんどくさい・・・」
141 :
格闘娘。 :02/09/16 14:53 ID:F2jyl4XU
「ごっちん!そんなこと言わないで。」
「いやだね。」
「・・・すまなかった。藁にもすがる思いで来たがどうも招かざる客みたいだったみたいだね。」
吉澤はそう言うとくるりと背を向け立ち去ろうとした。
ドアのノブに手をかけた瞬間に後ろから紺野がつかんだ。
「すいません・・・後藤の非礼は私がお詫びいたします。ですが後藤の腕は確かで
ございます。どうかあなたもここで、身を守るすべを学んでいって下さい。」
吉澤は、くるりと振り返り紺野を見た。その目に涙が流れていたが吉澤には
その涙の意味がわからなかった。
142 :
格闘娘。 :02/09/16 14:54 ID:F2jyl4XU
3.
「紺野さん・・・?」
吉澤は、思いがけない紺野の涙により吉澤は立ちすくすしかできなかった。
ドンッ
吉澤は思いがけない強い衝撃を体に感じ紺野と共に床に倒れてしまった。
それは、急にドアが力強く開けられた衝撃だった。
あけられたドアの向こうには銃を持った娘がいた。娘は部屋にはいると
銃を後藤に向け構えた。
「後藤死ねっ!」
しかし後藤は、身動き一つせずソファに腰掛けたままであった。
パンッ
乾いた銃声が部屋中に響きわたった。
そしてその軌道は後藤の額を目指していた。
「奥義、二指真空把!」
後藤の声がした。
吉澤はその時信じられないものを見た。暗殺者の放った銃弾が後藤の二本の指にキャッチ
された。さらに銃弾はそのまま暗殺者の方にむけ放たれていた。
143 :
格闘娘。 :02/09/16 14:55 ID:F2jyl4XU
ざくりという鈍い痛みをともない頬に大きな傷が出来た。
さらに倒れていた紺野がすばやく起き上がると暗殺者の首の後ろを突いた。
「経絡秘孔、解唖門天聴を突きました。もうあなたの意思と関係なく話します!
誰の命令でごっちんを狙いに来たのですか?」
「うっ・・・・・くっ・・・ぐはっ」
「言わないとあなたの毛細血管から血が噴出しますよ!」
「い・・・・石川・・・梨華・・・です・・・」
「そうです・・・それでいいのです。」
紺野はそう言うと先ほどと同じ箇所を突いた。
「ごっちん!今までに聞いたことの無い人だけどどうするの?」
「なあにどうせそいつも誰かの下っ端さ!ただこいつにはメッセンジャーになってもらう。」
「ごっちん・・・」
「紺野・・・いけないか?」
「いえ・・・やむを得ません・・・」
ズドッ
紺野のその声と同時に後藤の指が頭蓋骨を捉えた。
そしてその指は頭蓋骨を陥没させていた