126 :
格闘娘。 :
3.
その日は、朝から大雨であった。それは、夜になってもやむことはなく
雨脚はさらに強さを増していっていた。雨は時に雷も交え、その音があたりに
鳴り響いていた。平家みちよはそんな中道場で座禅を組んでいた。
もう格闘家としては、退いたつもりであったが、毎日の鍛錬だけは、欠かしたことは
なかった。その平家のいる道場は雨音の激しい音で支配されていたが、平家は集中を
切らさなかった。しかし平家は、この雨のため石段を上がってくる音には気付かなかった。
ゴロロッ遠くで稲妻が落ちた音と、道場の扉が引かれたのは、まったくの同時刻
であった。稲妻の光によりその娘のシルエットがくっきりと浮かび上がった。
平家はまったく動じることなくその方向に視線をやった。
娘は平家の方を見ている。
その娘と平家は、その場でにらみ合っていた。
127 :
格闘娘。 :02/08/25 12:50 ID:XUHJ4d7W
「師よ!久しぶりだが、挨拶はなしだ!」
「圭かもうくるころかとおもっとったで。」
「死合でまけたそうだな・・・何故だ?平家流の奥義をもってしても勝てなかったというのか?」
「圭!ウチは、この技術をお前に授けたことを後悔しとる。お前を破門にしてしばらくたつが
その後、お前は、拳法をやってたらしいな・・・」
「あたしの事覚えててくれて感謝してるよ。その後のことも気にしててくれたとはね。」
「そして伝承者に選ばれなかったこともな。」
「伝承者などあたしにとって問題ではない。」
「ならば、何を目指す?」
「あたしが、目指すのは、この世で最強であること。それだけだ!」
「なるほど、平家流の巻物が欲しくなったか・・・」
「そうだ、平家流の殺人術の奥義秘書を貰いに来た。」
「恐ろしい娘や・・ウチは恐ろしい娘を作り上げてしまった。お前はまた、無意味な破壊を繰り返すのか?やはりウチがお前を止めんと・・・」
平家はそういうと、すっと立ち上がり保田圭と相対した。
ドーンッ!
遠くで雷鳴が鳴る音が聞こえていた。
128 :
格闘娘。 :02/08/25 12:51 ID:XUHJ4d7W
4.
「師よ手加減は、無しだ!」
そう言うと保田は己のこめかみの辺りを左の親指と人差し指ので突いた。
すると保田の表情が狂気を帯びたものに変貌していった。
「これは?」
「狂神魂!わが流派では、狂気を最高までに高め闘争力を最大までに高めることをことを
奥義とする。」
「是非もなしか・・・」
ブーン
保田の拳が放たれた。
平家は、その拳をかわすと保田の死角に回り込みながら己の気を込めた掌をうつ。
「グハッ!」
その掌は保田の顔面にヒットした。
しかし、保田はひるむことなく、さらに平家に打撃を見舞う。
だがそれも、平家に軽くかわされただけであった。そしてさらに今度は胃に掌を貰った。
今度は、平家から仕掛けた、平家は常に保田の死角から、死角に移動しながら
保田を攻め立てた。
129 :
格闘娘。 :02/08/25 12:52 ID:XUHJ4d7W
保田の全身は、すでにいたるところ平家の打撃により腫れ上がり、顔はおびただしい
血が流れていた。また平家のほうも息切れを見せていた。
否、その激しい動悸は、攻め続けた疲れからくるものでは、なかった。
「圭・・・心配するな何もお前を殺そうとは思わん、ただお前の拳を封じるだけや。」
「くっ」
保田は、そういわれてもなすすべなく膝を突いているだけであった。
「いくで!」
ズン
その音は平家の膝が床についた音であった。
「く・・・こんな時に・・・」
咳をしながら口を手で押さえる。しかしその手の隙間をぬって血が溢れる。
「そうか・・・師よ・・・病か!ふっ・・・天はやはりこの保田圭を選んだっ!」
「・・・圭よ魔道に堕ちたか・・・」
これが平家のこの世での最期の言葉となった。
保田は立ち上がり平家に対し己の最大の力を込めた拳を打った。
「ぬーーん!」