格闘小説〜餓娘伝

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112格闘娘。
10.

「くっ・・・」
「解るか矢口?お前の拳はもう見切った!もうお前に勝ち目はない!」
「あたしを見下したようなセリフは許せねえ」
シュ
矢口は、さらに己の指を振り回す。しかしその攻撃はもはや圭織の薄皮一枚切るのが精々であった。
「きゃはは、切れろ、切れろ。」
「・・・・」
「と・・・留め!」
矢口がそう叫び己の指を一直線に真上から振り下ろした。
しかし圭織は矢口の指の軌道が直線になるのを狙っていた。
113格闘娘。 :02/08/04 02:53 ID:6ANqtTQZ
すっ
圭織はそれを最小限の動きでかわした。そして一気に矢口との間を詰める。
(ああ・・美し・・・)
ガシッ
矢口はそう思った瞬間に顎に電流に似た衝撃を感じた。
圭織の足が顎にヒットしていた。自分の体を回転させ相手に蹴りを加える大技
、いわゆるサマーソルトキックが矢口の顎を砕いた。
「うぐっ・・・」
矢口は、それでも倒れない。朦朧となりながらも本能だけで立っていた。
「矢口 真里・・・イ爾已經死了!」
ズッ
圭織の放った手刀は深々と矢口の胸に突き刺さっていた。
114格闘娘。 :02/08/04 02:54 ID:6ANqtTQZ

11.

「く・・・不覚・・また、あんたの動きに心を奪われて・・・けどねあたしは
 こんな死に方はしないよ・・・」
矢口は、そう言うと突き刺さってる圭織の手を引き抜くと圭織の胸にもたれるかのように
倒れていった。
「あたしは、いつもあんたの影を追っていた・・・そしてあんたの拳をね。
 でも・・・駄目だったね、所詮あたしは伝承者の候補にもなれない屑星・・・
 飯田 圭織・・・あたしが知る最も美しく、もっとも強い娘・・・せめて最期は
 その腕の中で・・・・」
圭織は腕の中の矢口から力が抜けていくのがわかった。そして圭織は矢口をずっと
抱きしめていた。
115格闘娘。 :02/08/04 02:55 ID:6ANqtTQZ

12.

「お姉ちゃん!」
「飯田さん!」
希美と梨華が圭織の元に近寄ってきた。
圭織は矢口をそっと床に置き二人から間を取った。
そして手で二人を制した。
「待て動くな!」
圭織が言った。
「お姉ちゃん?」
「のの!下がってろ!」
すっ
圭織は再び戦闘態勢に入った。
「てめえは誰だ?」
「はっ?何を言ってるんですか?飯田さ・・」
「とぼけるのか?それじゃあ聞くが何故さっきの酒はお前のグラスには毒が入ってなかった?」
「うっ・・・」
「そしてもう一つ!何故お前の体からは、石川梨華の匂いがしない・・・姿形はそっくりだが
 匂いまでは、無理だったな。」
「くっ・・・いつから解っていた・・」
梨華が・・・否梨華の影武者が言った。
116格闘娘。 :02/08/04 02:56 ID:6ANqtTQZ
「道場でお前とあった時からさ!」
「それでは、あたしは泳がされてたのか?」
「ああ!そのうちお前が尻尾を出すんじゃないかと思ってね気付かないふりしてやってたんだよ。」
「ちぃー」
「言え!お前の後ろに居るのは誰だ?そして梨華はどこにいる?」
「はっ!」
梨華の影武者がスッと右腕を動かしたと同時に服の袖に仕込んでいた巨大なナイフで切りかかった。
ドン
圭織は、それを苦もなく交わすと喉を突いた。
「うぐぐ・・」
「言え!矢口をそしてお前を操っていたのは誰だ?」
「くっ・・・」
梨華の影武者の口から赤い血が流れてきた。舌を噛み切っておりすでに事切れていた。
圭織は、無念の表情でその娘。を睨みつけるしか出来なかった。