1 :
名無し募集中。。。:
ミキティー飲みたくない?
おいすぃーよ!
2 :
2:02/05/02 00:56 ID:MmthLnsi
2
3 :
名無し募集中。。。 :02/05/02 00:56 ID:sXLxBJYi
(´・д・`)
う〜む
名スレの予感。
ノトーリ
どうしても書きたい小説があるんだが。
ここで書いてしまっても良いのでしょうか?
>>1 禿同
(●´ー`●)<1じゃないけどOKだべ
10 :
前置き:02/05/06 00:09 ID:E6Iss+Uh
ヒソーリと小説を書きます。
これは元々某モーヲタだけど〜スレッドで書いてたものでしたが
スレタイが板違いだった為削除されてしまい、中断していたものです。
前スレは削除ですので、必要最低限の手直しを加えて最初からあげます。
題名は「Uえもん(仮)」で。ふざけてるわけじゃないんですが。ではすたーと。
11 :
ななし娘。:02/05/06 00:10 ID:E6Iss+Uh
第一話
『空回りI miss you』
12 :
ななし娘。:02/05/06 00:11 ID:E6Iss+Uh
大きい家ってゆうのは寂しい。
お母さんとか、ユウキとかは喜んでたみたいだったけど。
リビングが広ければ広いだけ、一人で見るテレビが味気なくなる。
家に一人でいる、ってのは好きじゃない。
だけど、こんな仕事してたら友達を気軽に呼んだり出来ない。
だからあたしは一人きり。
急な休みはしょうがない。
どうせ誰か帰って来たって、部屋入っちゃってそれっきり。
皆広い部屋欲しがってたもんね。良かったね。
13 :
ななし娘。:02/05/06 00:13 ID:E6Iss+Uh
何だか切ないな。
あたしは自分の部屋に戻る事にした。
一人だけなら、どこにいたって一緒だから。
──あれ?
ドアを開けた瞬間、何か違和感のようなものを感じた。
目を凝らすと、ベッドの上で青いシーツが不自然に盛りあがっていた。なんだろ…?
ドアを閉めると同時に、シーツが跳ねあがった。って誰!?ユウキ?
「毎度!助けにきたでぇ!」
「ちょ、ちょっと何?誰?」
女の人の声?ユウキのイタズラじゃない、ていうかどうやって入ったんだろ…?
「ウチはな、二十二世紀から来た酔いどれ型お化け、『Uえもん』や!どないやねん!」
14 :
ななし娘。:02/05/06 00:14 ID:E6Iss+Uh
聞き慣れた関西弁。
裕ちゃんはシーツを被ったまま立ち上がった。
よーく見ると穴が開いていて、そこから手と顔が出ている…
いやいや、出ている…じゃなくてさ。
「いや〜自分遅いわ。ずっと同じ態勢やったから腰痛いし。」
「ていうか、何してんの裕ちゃん…しかもあたしのシーツ…気に入ってたのに…。」
「裕ちゃんちゃうわ!ゆ・う・え・も・ん!あんまりアレやったら裕ちゃん怒るで!」
「いや、自分で言っちゃってるし…。」
「しっかし、えらいええ匂いやな。自分のベッド。」
そう言ってにやにや笑う顔。
まるで変態みたいだった。言えなかったけど。
ところで何ごっこなんだろう?
15 :
ななし娘。:02/05/06 00:15 ID:E6Iss+Uh
くつろぐつもりだろうか。裕ちゃんはベッドに腰を下ろした。
シーツをすっぽり被ったその姿は冷静に見るとかなりおかしかった。
楽しくなってきたあたしはちょっとだけ付き合ってあげる事にした。
そう言えば、裕ちゃんとゆっくりするのって初めてかも。
「あはは…。」
「何や、楽しそうやな家主。何のお構いもせんと。」
「じゃあ、何か持ってくるね。おやつでいいかな?」
「ああ…何でもええでぇ…ただしバナナだけはあかん!」
余りの語気の鋭さにちょっとビックリした。
いきなり大声をだしたせいか、裕ちゃんは肩で息をしている。
顔も真っ青だ…てナンで?
「何やその面ぁ、自分さてはバナナ持ってこようとしたやろ!?正座せぇ!」
16 :
ななし娘。:02/05/06 00:16 ID:E6Iss+Uh
そんな事はないんだけど。
何故か正座させられることになった。
理不尽にも程があるけど、リーダーだった頃からそんなトコもあったし。
気付かれないように座布団を下に敷いといた。
裕ちゃんはまだフーフー言ってる。猫みたいだ。
「バナナはあかんて、バナナだけはあかんて…。」
「いや、バナナ持ってくるなんて言ってないじゃん。そもそも。」
「何や自分、バナナバナナ言うなや!」
連呼しているのは自分の方だったけど。
涙目になってる裕ちゃんが何かかわいかったんで、慰めてあげることにした。
「そんな怒んないでよ。バ……駄目なんだよね。」
「そやねん…バナナだけはな…。あんな事さえなけりゃ…。」
17 :
ななし娘。:02/05/06 00:17 ID:E6Iss+Uh
そう言うと裕ちゃんは顔を伏せた。真剣なカオ。
何かあったのかな。ただ嫌いなだけだと思ってた。ちょっと興味を惹かれた。
「もし良かったら聞かせてよ。何があったの?」
「ウチがな…あれは確か高二の春やった…部室でな…っと、これ以上は…。」
「いや、まだ何にもわかんないし。」
「恥ずかしいねんて…。誰にも言わんといてな…。」
色っぽい声。裕ちゃんの顔が赤くなった。
心なしか眼も潤んできてるように見える。
あたしは正座したまま、座布団ごと滑るようにしてにじり寄った。どきどきした。
「突っ込まれたわけや…口にな…。」
「な、何を?」
「バナナをや。」
「バ…ナナ…誰に?」
「ちゅうか、棒状の物を。」
「いや、どっち?それってかなり重要だと思うんだけど!?」
18 :
ななし娘。:02/05/06 00:19 ID:E6Iss+Uh
裕ちゃんは答えてくれずに、にやっと笑ってあたしの顎を撫でた。
撫でられたあたしは、誰だってそうだと思うんだけど、むかついた。
というか、ホント何なの?あたしをおちょくりに来たの?
「なあ、灰皿あるか?」
「無いよ…。」
「なんでちょっとキレてんねん、あ、この空き缶つかわしてもらうで。」
人の気も知らないで。
大体、人ん家でその態度は何?まるで自分の家……あれ?
「そういえば、どっから入ってきたのさ?」
「それは…言われへんな…お前の為にもな。」
「…ってゆうかさっきからずいぶん意味深なんだけどさ、何しに来たの?」
煙草に火を点けようとしてた裕ちゃんは、そのままの格好で五秒程硬直した。
やがて、息を深く吸い込むようにして、更にそれを吐き出した。
そして、息を深く吸い込むようにして…
「いや、答えてよ。息とかいいからさ。」
「あぁ、うちはな、お前を助けに来たんや。正確にはな。」
「正確には…?使い方おかしくないソレ?」
「忘れとった。ほしたら、早速助けんとあかんな。」
19 :
ななし娘。:02/05/06 00:20 ID:E6Iss+Uh
さっきから全く質問に答えてもらってない気がする。
裕ちゃんは何か頷くと、口に煙草をぶらぶらさせながら立ち上がった。
「ちょっと何?何すんの?ていうかあたし助けなんて頼んでないよ?」
「広い意味で言えばな、お前を助ける事により、裕ちゃんが助かんねん。」
「ところで、助けるって何?あたし別にピンチでもないしさ、悩みだって…」
「何やて!?自分!なめてんのか!?」
怒鳴られても、実際助けがいる状況じゃないし。
強いてあげれば今この状況がピンチかも。何か怒られてるし。
「なめてないけど…でも、何でそんな怒んのさ?」
「お前なぁ、お前ちゃうわ、お前の心がピンチやねん!!」
安いセリフだったが、あたしの耳はジーンとした。
大声だったから…ってのもあるんだけど。
「お前の心が大ピンチやねん!!」
「言い直すんだ…。」
「待っとれ、いくでぇ…裕ちゃんレボリューション22!」
20 :
ななし娘。:02/05/06 00:21 ID:E6Iss+Uh
裕ちゃんは叫ぶと同時に両手を振りかぶった。
その瞬間、裕ちゃんの持ってたジッポが後ろに飛んだ。
火がついたままのジッポは、綺麗な放物線を描くとカーテンを直撃した。
まるで、映画のワンシーンみたいに、カーテンから鮮やかな炎が舞い上がった。
………消さなきゃ!
「何してんの!裕ちゃんのバカ!早く消さないと!!」
「あかん…あかんでぇ…。」
「ちょっと、広がってるって!駄目!」
「裕ちゃんの炎は…叩いた位じゃ消えへんでぇ!」
「ちょっと、何その手柄ヅラ!もういい、逃げないと!」
21 :
ななし娘。:02/05/06 00:21 ID:E6Iss+Uh
翌日、スポーツ新聞の一面に「後藤真希御殿、全焼」の文字が踊った。
あたしは片っ端から読んで、片っ端からくしゃくしゃにしていった。
家の方は、どうやら保険がおりる事になったとかで、新しく建て直せるみたいだったが
当面は仮住まいという事で前の家に戻る事になった。
警察のヒトとかには、あたしが料理してて、その不始末って事にしておいた。
何でか知らないけど、あんまり怒られたりとか、詳しく聞かれたりとかしなかった。
ホントは、裕ちゃんに対して凄いむかついてたし、よっぽど訴えてやろうかと思ってたけど。
家具も全部運び出しちゃってがらんとしたリビング。
絨毯も敷いてない床はごつごつしちゃって座りづらかったけど
部屋の隅に直に置いたテレビをユウキと二人で見ながら
一緒に笑ったり、指差したり、
お母さんが加わったり、
してるうちに、
何かね。
「真希、バナナ貰ってきたけど、食べる?」
もう来ないのかな。
あたしは、山積みのバナナを見ながら、逃げ回る裕ちゃんを想像してちょっとぞくぞくした。
22 :
ななし娘。:02/05/06 00:22 ID:E6Iss+Uh
第二話
『あの夜のお相手は』
23 :
ななし娘。:02/05/06 00:24 ID:E6Iss+Uh
なっちは孤独だ。
ドラマの撮影現場で時々耳にするヒソヒソ声だったり
遅刻して楽屋入りした時のカオリの困ってる様な顔だったり
後藤ばっかりがちやほやされてるのを見たりした時なんかに
それを感じる。
たかがアイドル如きが調子に乗ってドラマなんて出ちゃって悪かったね。
元メインだったからっていつまでもビップ気取りで遅刻しちゃってゴメンね。
後藤、いつまでもちやほやされてるとおもったら大間違いだからね。
口には出さない。
分かってる。
なっちは嫌な女だ。
本当はごっつぁんなんて呼びたくない。
本当はツートップ扱いなんかされたくない。
でも、歌番組なんかで絡まなきゃいけない時もある。
だからなっちは笑顔を作る。
作り笑いに見えるのは作り笑いだから。
作り笑いに見えるのは、本当は誰かに気付いて欲しいっていうなっちの甘え。
分かってる。
なっちは甘えてるだけなんだ。
人に言われんのはヤだから、自分で言う。
でも、頑張ってるなっちの事も、やっぱり気にかけて欲しいです。
24 :
ななし娘。:02/05/06 00:25 ID:E6Iss+Uh
なっちは孤独だ。
仕事が終わると誰よりも早くお疲れ様と告げる。
嫌われちゃうかもしれないけど、しょうがない。
もう嫌われてるのかもしれないけど。
真正面から向き合って嫌われるのはとってもショックだから。
だからなっちは斜に構える。
今日も一番に楽屋を後にして、こうして一人でタクシーを待っている。
一人になって、何も考えずに眠る事を想像しながら。
馬鹿みたい。
家についたら、またいつもみたいに考えすぎて眠れなくなるって分かってるのに。
分かってるのに…。
分かってることばっかりなのに。
何でなっちはうまくいかないんだろう。
何でなっちは一人きりなんだろう。
タクシーが来た。もうやめよう。
あたしは最後に、明日の孤独なドラマ収録に向けて溜息を一つついた。
乗り込んだ。
あとは行き先を告げるだけで帰れる。
何も考えずに。
と、思ってたのに。
タクシーは突然、行き先も聞かずに走り出した。
25 :
ななし娘。:02/05/06 00:26 ID:E6Iss+Uh
「…な!どこ行くんですか?」
あたしはびっくりして顔を上げた。
運転席にいたのは、青い…布…?誰よぉ?
運転手じゃない事は確かだ。さらわれる!?
「と、止めて、止めてよぉ!」
きぃっと音を立てて、タクシーはあっさりと止まった。
拍子抜けした。
何かのどっきりだろうか。だとしたら抗議してやる。徹底的に。
そんなあたしの怒りは、すぐに恐怖にとってかわった。
車が止まった場所は袋小路みたいになっていて。当然夜だから人気も無くて。
運転席の青い布から、手がこっちに伸びてきた…。
「ちょ、ちょっと、何ですか?」
26 :
ななし娘。:02/05/06 00:27 ID:E6Iss+Uh
「強盗や。見たら分かるやろ。」
「その声!裕ちゃん?驚かさないでよ!」
「あんな自分、そんな事で怒ったらあかんで。ゴメンやけど。」
「ゴメンやけどって、怒るよ普通!大体ここどこ?」
「あとな、自分勘違いしとるわ。うち裕ちゃんちゃうねん。」
そこで裕ちゃんは言葉を切った。
青いシーツみたいなのを被ってて、確かに強盗みたいだった。
裾の辺りが焦げてる。
何のつもりなんだろう。はっきり言ってウザイ。
「何で運転してんの…何なのその格好?」
「よう聞いてくれた!ウチはな、二十二世紀から来た…」
「ゴメン」
遮ったのは疲れてたから。遊びに付き合う気分じゃない。
「あたしさ、ちょっと疲れてんだ…戻ればまだ中に皆いるからさ。」
「疲れてるて…関係ないやんか。それより説明の邪魔すなや自分。」
「関係ないってどうゆうこと!?」
あたしはわざと怒った声を出した。
裕ちゃんも遠慮してくれる筈だった。今までみたいに。
27 :
ななし娘。:02/05/06 00:28 ID:E6Iss+Uh
だけど、裕ちゃんは大袈裟な溜息をついて、
「あんな自分、強盗やゆうてるやんか。強盗がそないな都合聞いてくれるか?普通。」
「いやだからさ、ホント疲れてんだって。」
「よし!もう説明はええわ!とりあえず携帯よこさんかい!おとなしく出さんと…」
言葉を切るとにやっと笑って右手をかざす様に見せてきた。
握られているのは…拳銃?
「はぁ…ちょっと待ってよ。何のつもりなのこんな…」
「ええから携帯!そう!ちゃっちゃと出さんか!」
仕方ない。
あたしは携帯を渡すと、長引きそうな予感にうんざりした。
裕ちゃんはにやっと笑うと、あたしの手から携帯を奪い取った。
「よし、ええか、おとなしくしとれよ。逃げたら撃つでぇ?」
車を降りて、運転席のドアに寄りかかるようにすると、裕ちゃんは携帯をいじり出した。
とりあえず、あたしとしてはおとなしく強盗ごっこに付き合うつもりはない。
冷静になって考えたが、本当に撃つとも思えないし。
何より、早く帰りたい。あたしは携帯を捨てて逃げる事にした。
裕ちゃんの様子を窺う。どうやら携帯で何か探しているようだ。熱中している。
隙をついてこっそりドアを開けようとした。
…びくともしない。
窓越しに声が聞こえる。
「言い忘れたけどな。お巡りさんを見習ってな、内からは絶対開けへんねんこの車。窓も。」
あたしは唇を噛むと、ドアを蹴りつけた。
裕ちゃんはそ知らぬ顔で、あたしの携帯でどこかにかけ始めた。
28 :
ななし娘。:02/05/06 00:29 ID:E6Iss+Uh
「もしもし……なっちだけど…うん、ちょっと話あるからさ。」
びっくりした。
それはまるで裕ちゃんの声に聞こえなかった。
それはまるで…あたしの声。電波を通して聞くあたしの声。
「そう…角を曲がってさ、そしたらタクシー止まってるからさ。来てよ。」
誰にかけてるんだろう。怖くなった。
あたしそっくりな声。それにあたしの番号が通知されてるはず。
電話の向こうの相手を、勘違いさせる位簡単だろう。
裕ちゃんが電話を切ったのを見て、あたしは窓をどんどん叩いて呼んだ。
「ねぇ、誰か呼んでたでしょ。なっちの名前使って。」
「使った…声もやけどな。」
「ていうか誰にかけてたの?マジやめてよ!」
「すごいやろ?そっくりやったやろ?なぁどやった?」
その得意げな顔といったら、思わず殴りたくなるほどのものだった。
必死で言葉を噛み殺した。とりあえず従っておこう。早く終わらすんだ。
「…そっくりだったよ。ところでさ、誰呼んだの?それだけ…」
「おお、来よったで。」
フロントガラスの向こうには、一番見たくなかった姿があった。
何の警戒もせずに近付いて来る後藤に、躍りかかる青い影。
29 :
ななし娘。:02/05/06 00:30 ID:E6Iss+Uh
「おいコラァ!強盗や!動かんとけや!」
「あれ、裕ちゃん!?なっちは?何してんの?」
「裕ちゃんちゃうゆうてるやろが!」
「あ、あたしのシーツ!まだ使っててくれたんだ!」
「なんで半笑いやねん自分!強盗やご・う・と・う!ちょっとはビビれや!」
あの二人ってあんなに仲よかったっけ?
何で物事ってのはあたしの知らない内に何でも進むんだろう。いつからだ?
「ええから乗らんかい!」
「あれ?ぴすとるだ。本物なのコレ?」
「そんなもん内緒に決まっとるやろ!アホか自分!」
「ふ〜ん、アホとか言うんだ。いいのかなけーさつに言っちゃうよ?」
「何がやねんな…」
「あたしん家燃やしたの裕ちゃんだって。」
…燃やした?
そう言えば火事になったってのは聞いたけど。
何だか知らないが、裕ちゃんは怯むどころか怒鳴り始めた。
「アホか!?いやアホや!?どっちやねん!ええ加減にせぇ!」
「嘘だって、そんな怒んないでよ。あたしもう別に気にしてないしさ。」
「裕ちゃん違うゆうてるやろ!『Uえもん』や!」
「あ、そっちなんだ…。」
30 :
ななし娘。:02/05/06 00:31 ID:E6Iss+Uh
まるで質の悪い漫才みたいなやりとりに、ぽかんとしてたあたしはふと現実に戻った。
後藤なんて呼んで、一体どうするつもりなんだろう。
全く展開の読めない裕ちゃんの行動。
あたしにとっては最悪の展開となった。
「!」
「いや、乗ればいいんでしょ。」
ドアが開いて、後藤が乗ってきた。
あたしは逃げるのも忘れて、呆然としていた。
「あ、なっち。」
裕ちゃんはドアを閉めると、そのまま角の向こうに消えていった。
31 :
ななし娘。:02/05/06 00:31 ID:E6Iss+Uh
あたしは後藤が嫌いだ。後藤もきっと同じだろう。
仕事以外で口をきく事なんて数える程しかなかった。
あたしは後藤が苦手だ。後藤もきっと同じだろう。
あたしは後藤を見下してる。後藤もきっと同じだろう。
あたしは後藤に嫉妬してる。後藤は……。
二人きりの場をつなぐには、あたしは疲れすぎていた。
いつもの愛想笑いのかわりに
ネガティブな思考だけが頭の中で踊る。
あたしは今どんな顔をしてるんだろう。
そして、どんな顔をすればいいんだろう。
無言のまま、しばらく放心していた。
32 :
ななし娘。:02/05/06 00:33 ID:E6Iss+Uh
雰囲気から逃れるように、後藤がはしゃいだ口調で喋り出した。
「それにしてもさ、いつまで待たせんだろね。ちょっと喉乾いちゃったよ。
ジュースでも買ってこよっか。自販機あるといいんだけどさ。なっち何飲む?」
「開かないんだってさ」
あたしは出来るだけ冷たい声を出した。
裕ちゃんが何を考えてるのか知らないが、こんな茶番に付き合わされるのは御免だ。
そんな気持ちを知ってか知らずか、更に後藤は続ける。
「そう言えばさ、なっち。話って何?」
「あれは裕ちゃんが、あたしの声色と携帯使っただけ。話とかは無い。」
説明しただけのつもりだったが、棘が刺さったようだ。さすがに後藤も黙り込んだ。
口をききたくない、とは思ったが、この沈黙は違う。
非常に気詰まりな種類の沈黙。しょうがない。ちょっと位の会話は。
「…そう言えば、さっき何か言ってたけど。家、燃やしたとか。」
「そ〜なんだよねぇ。裕ちゃん、じゃないやUえもんだっけ?どっちにしてもゆうちゃんだ。」
「どっちだっていいから。」
「そうだよね。」
後藤は続けようとしたみたいだが、あたしの視線がよそを向いているのに気付いて諦めたようだ。
あたしはずっと、裕ちゃんが去って行った角を見つめていた。裕ちゃんを待っていた。
悪い夢。早くおわればいいのに。
33 :
ななし娘。:02/05/06 00:34 ID:E6Iss+Uh
どれくらいそうしていただろうか。
あたしは横目でぼーっとしている後藤を見た。
愛されてる後藤。
よその現場でも、きっとうまくやってるんだろう。幸せそうな顔ばっかりが頭をよぎる。
そのくせ独りでも平気だ、って顔。
あたしはどうだろう。嫉妬しているだけの、孤独な悲劇のヒロイン。
後藤がこっちを向いた。目が合ってしまった。しかたなくあたしは口を開いた。
「で、どしたって?さっきの続き。」
「あ、そうそう。何かこないだいきなり部屋いてさ。どっから入ったの?とかっつっても教えてくんなくて。
で、助けたる!とかゆってライターばぁって投げて、カーテンに燃え移って全焼。って感じだった。」
「…ごめん、意味わかんない。」
聞きながら、あたしはおかしな事に気が付いた。
いつから後藤はこんなに、裕ちゃんの事を嬉しそうに喋るようになったんだろう。
家を燃やされたっていうのに。この表情。まるで感謝しているかのような口ぶり──。
なんだかとっても苛々した。なぜだろう。
吐き捨てる様に呟いた。
「ねぇ、なんでそんな楽しそうなわけ?普通むかつくっしょ。」
「そーなんだけどさ。それであたし…何か照れるな。」
後藤はちょっと口篭もると、まるで独り言を言うかのように言葉を重ねていった。
「いや、あたしさ、独りっきりって苦手、ていうか、実は寂しいのとかヤでさ。」
「最近とかたまに、一人の仕事とかあって、ドラマとかって結構、ほら、寂しくなる時あんじゃん?」
「だからさ、家でも一人で、ってのがイヤでさ。でもさ……。」
照れ笑いの中で繰り広げられたその独白は、あたしの心に大きな楔を打ち込んだ。
大きな、あったかい楔だった。
34 :
ななし娘。:02/05/06 00:35 ID:E6Iss+Uh
あたしもだよ、って言葉を、何回のみこんだだろう。
馬鹿にしながら聞いていた筈のあたしは、いつのまにか全ての感情に共感していた。
見下しあっていた筈の二人は、こんなに似ていた。
大事なことを思い出した気がする。
痛いのも、寂しいのも、みんなみんな一緒だって。
他ならぬ後藤がそうなら安心できた。
独りじゃないって事で、あたしはこんなに安心できた。
やがて言葉を切った後藤に対し、あたしは初めてあったかく笑いかける事ができた。
裕ちゃんはいつまで経っても戻ってこなかったし、助けてくれそうな人も通らなかった。
あたしもいつのまにか出ようとする気持ちを無くしていたみたいだった。
気付くとあたし達の話は途切れることが無くなっていた。
決して歩み寄れなかった筈の二人だから、二人の話は尽きなかった。
あたしは、この日初めて独りじゃなくなった。
35 :
ななし娘。:02/05/06 00:35 ID:E6Iss+Uh
「あ〜あ、ドラマあるんだよね明日。行けなかったらどーしよ。」
「そしたら言えばいいじゃん。」
「何て?」
「青いシーツ被った強盗に…」
「襲われましたって?」
あたし達はまた笑った。
さっきから笑ってばっかりだ。
「強盗ってゆってたけど、何強盗なんだろね。」
「ね〜。こないだはお化けとかゆってた。」
「一体何がしたいんだろうね?目的がわかんないよ。」
あたしはまた笑った。
でも、後藤は笑っていなかった。真剣な顔で。
「きっと裕ちゃんはね。」
何だろう。
「なっちを助けに来たんだよ。」
36 :
ななし娘。:02/05/06 00:36 ID:E6Iss+Uh
全く意味は分からなかったけど、そう言うと後藤はとっても楽しそうに笑った。
そして、その横顔を照らすかのように光が射した。
朝になったみたいだ。
「あぁ…朝日…昇っちゃったよ。」
「昇っちゃったかぁ…。許せないね。」
「こっから出たらふくしゅーしようよ。」
「ふくしゅーね。いいね。なっち考えとくよ。」
こんな明るい気分で朝を迎えたのはいつ以来だろう。
憂鬱で仕方なかった筈の収録も、今なら乗りきれる気がした。簡単に。
まぁ、行けそうにないんだけどね。今んとこ。
皮肉なもんだね。前向きにやれそうだって思えた時がこんななんて。
でも、全然不安じゃないし。これがほんとの前向きって奴なんだね。
あたしは、それを教えてくれた先生に感謝した。
先生は、運転席でなにかごそごそしていた。
「ってゆうかさ、コレもしかしたら開くんじゃん?」
その言葉と同時に、運転席のドアががちゃっと音を立てて開いた。
37 :
ななし娘。:02/05/06 00:37 ID:E6Iss+Uh
あたし達は笑った。
明け方の住宅街に、目覚ましよりもけたたましい笑い声が響いた。
涙がでる程笑って、顔を見合わせてまた笑った。
「やっと出れた!」
「あぁ!?携帯落ちてるよ!」
「やっぱ置き去りにされてたんだ!ちくしょぉ!」
「見てよ、もうすぐ六時だって、何時間いたんだよぉ!」
「なっちたちバカみたいじゃん!」
「バカみたいだったねぇ〜。」
「あれ?」
なんとなく、なんとなくだけど思った。
もしかしたら後藤は最初から気付いていたのかもしれない。
そう言えば、後藤は一度も車から出ようとしてなかったし。
…まぁ、どうでもいいか。
38 :
ななし娘。:02/05/06 00:38 ID:E6Iss+Uh
まったく、何だったんだろ。
裕ちゃんも裕ちゃんだし、後藤も後藤だ。
こんな茶番に付き合わしてさ。
お蔭で眠れなかったし、お腹も空いたしで、お風呂だって…。
「どしたの?なっち。やっぱ怒りが込み上げてきた?ふくしゅー思いついた?」
ふくしゅーには賛成。
全然怒ってないけどね。
だって茶番に付き合ってもらってたのは、多分こっちの方だったからね。
あたしは、最後にもう一度大きく笑った。
空はとっても眩しかった。
39 :
ななし娘。:02/05/06 00:40 ID:E6Iss+Uh
とりあえずここまでで。
時間が出来次第続き行きます。
再開(●´ー`●)ありがとう。
っていうか、縁あるなぁ…。
再開望む声、統合スレでもあがってたので再び紹介してもオケ?
41 :
名無しミキティー:02/05/07 03:59 ID:qiO/qCy+
オケよ!
と言いつつDAT落ちを防いでみたりする。
42 :
ななし娘。:02/05/07 08:14 ID:H1dFj9pZ
勢い込んで始めたはいいが
歯痛で更新が滞っております。鬱だ。
>>40 (●´ー`●)なっちひさしぶり
勿論です、てかお願いします。自分でいくのは恥ずかしいような
>>41 ミキティーありがとう、気が向いたら読んでちょーだい
あと出来ればsage進行でいきたいっす
43 :
:02/05/08 00:36 ID:gV7eWrC4
ミキティミキティミキティミキティミキティ!!
44 :
プリンスひつじ。:02/05/08 00:37 ID:YJH4hu2J
ミキティ好きです。
45 :
:02/05/08 00:39 ID:mstOQ0ne
日本茶の方が好きだから・・・
46 :
ななし娘。:02/05/08 04:34 ID:gIUELweV
乗っ取るスレをまた間違えたか?
続き行きます。
47 :
ななし娘。:02/05/08 04:35 ID:gIUELweV
第三話
『取り留めのない言葉』
48 :
ななし娘。:02/05/08 04:36 ID:gIUELweV
『ねぇ見て見て!圭ちゃんのコート!』
『うわ、すげぇ!野獣みたいだよ!うわぁ!』
『何よアンタ達!言い過ぎでしょ!』
──サブちゃん、似合ってるよ。
『リーダー。優しいねぇ。イヤミじゃないよね?』
『ていうかさ、飯田さんちょっと着てみてよ。』
『うん…カオリが着たら似合う気がする。』
──え…ちょっと。
『うわぁ、かっけぇ…。』
『すごいカオリ、やっぱスタイルいいわ…。』
『悔しいわね…。』
──あ…。
49 :
ななし娘。:02/05/08 04:37 ID:gIUELweV
『いいらさ〜ん、あそんでよぉ。』
『こら、辻!あんたまた何か食べてたでしょ!?』
『まぁまぁいいじゃないですか、やぐちさ〜ん。』
『加護もだよ!もう。カオリからもなんか言ってやってよ!』
──あんまりね、お菓子ばっか食べてるとね…。
『さっきたべたのおかしじゃないもん!』
『そーゆー問題じゃねぇだろ!ほら、リーダーの話だぞ!ちゃんと聞け!』
『こっちのリーダーはおこったりしませんよ。やぐちさんと違ってね。』
───カオリだってねぇ、たまには怒るよ。
『ごめんなさい…。』
『いや、別に、こいつらもそこまで悪気があったわけじゃないんだよ。』
『いいすぎました。すいません。』
──あれ…?
50 :
ななし娘。:02/05/08 04:44 ID:gIUELweV
移動中のバスの中で、いつのまにか夢を見ていたらしい。
考え事をしてたら眠ってしまってた。いつもの事だけどさ。
寝起きで霞んだ視界を満開の桜が掠めた。
窓を流れる景色からでは、目を楽しませてくれるまでにはいかないけど…。
それでも春の訪れと、それに伴うある種の喜び──と呼べるかな──は感じる事ができる。
いつかテレビで紗耶香が言っていた。忙しすぎて季節を感じる余裕さえ無い生活、って。
だけど、感じ方は人それぞれだし、少なくとも今日のあたしは「春」を感じた。
窓からあたたかに射し込む、日射しは何だかとっても優しくて、あたしは浴びる様に顔を向けると
目を細めた。
「まぁたいいださんがぼぉっとしてる。梨華ちゃんつっついてみてよ。」
「しっ!飯田さんは交信中だから、邪魔しちゃ駄目でしょ!」
加護と…石川だ。そっか。バス乗ってたんだっけ。
そうだ、タンポポで仕事があったんだ。…今からあるんだっけ?
矢口もいるはずだね…寝てるみたい。まぁいいや。
何だか嬉しくなったあたしは、この喜びを伝える事にした。
「ねぇ、加護、石川。春ってさ…………」
51 :
ななし娘。:02/05/08 04:45 ID:gIUELweV
難しく考える事なんて何もない。
なのにどうしてこの二人は、眉間にシワを寄せてまで考え込んでるんだろう。
大体、そんな顔してちゃ駄目でしょ。アイドルなんだから。
アイドル…。国民的アイドル。誰がここまで来るって思った?
あたし達は国民的エンターティナー集団。
ドラマ、バラエティ、映画、ミュージカル…今や仕事はきりがない位。
国民のみんなが、あたし達によるエンターテインメントを楽しんでくれてる……?
歌は…?どこ行っちゃったの?
「あぁ…眩しいな…。何、まだ着かないの?」
人の気も知らない寝起きののんびりした声。矢口、それでいいの?
あたし達は、アーティストじゃなかったの?歌う事が好きで集まったんじゃなかったの?
何だか怒りを覚えたあたしは、この憤りをぶつける事にした。
「ねぇ、矢口。あたし達ってさ…………」
52 :
ななし娘。:02/05/08 04:50 ID:gIUELweV
人間って、そんなまたすぐに眠れるもんだろうか。矢口を見てるといつもそう思う。
余程疲れているんだろう。いびきまでかきだした。かわいそうに。
考えた事が無い訳じゃない。考えてもきりがないから考えない様にしてる。
だけど、大切な仲間がこんなにぼろぼろになってるのを見るとどうしても思い出してしまう。
あたし達は、このまま使い捨てられていくんじゃないかって。擦り減って無くなるまで。
だけど、あたしはこの道を降りられない。
あたしはまだ好きな空を目指している。
特別でありたい、という気持ちはあたしの中では多分すごく大きな物だから。
終わりを想えば悲しいけど、始まりの喜びだって忘れてないから。
何だか切なくなったあたしは、この決意を表明する事にした。
53 :
ななし娘。:02/05/08 04:50 ID:gIUELweV
「ねぇ、矢口…」
「がぁー。ぐぁー。」
そっか、寝てたんだよね。心なしかいびきが大きくなったみたい。
それにしても、いびきで返事なんて……。やだ、マンガみたい。ウケる。
「ねぇ、加護…」
「♪」
あ、ウォークマン聴いてたんだ。いつの間にって感じ。
それじゃ呼んだって聞こえないよね。それにしてもすごい音洩れだね。
「ねぇ、石川…あれ?気分でも悪いの?」
どうしたんだろう。顔が真っ青だ。もしかして石川も疲れてるの?
眉を八の字にして首をぶんぶんと振るその姿は、何だか…笑っちゃいそう。
どうしたんだろう。今度は加護の服掴んで揺すってる。
でも加護は気付いてないみたいだ。ノリノリだね。加護。
「石川、大丈夫?無理しちゃダメだよ。カオリも昔ね……」
「いえ…あ!飯田さん、着いたみたいですよぉ!みんなも!」
54 :
ななし娘。:02/05/08 04:57 ID:gIUELweV
矢口…。眠るのも早かったけど。起きるのも早いね。
加護…。ノリノリだった割には随分反応いいね。若いからかなやっぱ。
石川…っていつの間にバス降りたの?
「よし!仕事だ!いくぞ加護ぉ!」
「おやびん!いきましょぉ!頑張るぴょん!」
珍しいね、プライベートで「ぴょん」とか使うの。
でもさ、ちょっと待ってよ、カオリまだ荷物しまってなくてさ…。
あぁ、降りちゃった。リーダーを置いてくなんてメンバー失格だね。あとでお説教決定。
さて、カオリも急がなきゃさ…。あ。
誰かバス乗ってきた。誰だろ。
ねぇ、ちょっと待ってよ。みんなさぁ…。
55 :
ななし娘。:02/05/08 04:58 ID:gIUELweV
「おっと、降ろす訳にはいかんな。残念やったな!」
うわぁ、何か青いの被ってる。ファンの人かな。ていうか何で誰もいないの?
「といっても心配はいらんで自分。ウチはな、どっちかって言うと助けに来とんねん。」
オンナのヒト。あんな格好で恥ずかしくないのかな。カオリだったら…ちょっとやってみたいかも。
「言っとくけど大声出しても無駄やで。ここにはもう誰も来ぃひんからな。」
でもさ、企画とかでやらされるんだったら開き直れるからいいけど、プライベートだったらねぇ…。
「ウチは!二十二世紀から来た!…ってちょっと聞いてますか?」
でも、モーニング娘。のリーダーが、いきなりこんな格好してたらやっぱりうけるよね。
「なぁ、自分わかっててやってるやろ?頼むわ、放置だけはあかんて…。」
56 :
ななし娘。:02/05/08 05:00 ID:gIUELweV
「オトコのヒトだったらぎゃーって言ってたけど、オンナのヒトみたいだったからさ。」
「…まぁええわ。それよりな。ウチはな…。」
「ストップ!当てるから!」
「当てるて…。」
えぇと、関西弁で、オンナノヒトで、青い服で、青い服……?。
「妖精さん?」
「うわぁ、マジやな自分きっついわ…。」
違うのかな。あとヒントは…助けに来てる……?
「あ、そうだ!助けてくれるんだよね!」
「せや!悩みとかあるんやったら早よゆうてくれや!助かるわ。」
悩み。そうだ。そう言えば。
「何かね、ちょっとずれてるの。」
「あぁ…分かるわ。それめっちゃよう分かる。確かにずれとる。」
「みんなが。」
57 :
ななし娘。:02/05/08 05:01 ID:gIUELweV
「何かカオリの言ってる事とかがあんま伝わんないみたいなの。」
「みんなが…ずれとると。そうおっしゃるわけやね…。」
「そうなの例えばね、あたしがすっごい打ち解けた感じで、ギャグとか言うじゃない?
ミーティングが緊迫してる時とかさ。すっごいとげとげしい感じで。笑わさなきゃ、って思って。
誰だってさ、楽しく仕事したいじゃん?…でもね、みんな何か引いちゃうの。新しい子たちなんか特に。」
「そら引くわ…いや、そら大変やね…。」
「でもね、それはナメられてないってことだから、カオ的にはおーけー。わかる?」
「あぁ…そうなんや…。」
「やっぱリーダーとしてさ、ナメられちゃダメなのよ。だけどね……」
「もぉええわ!日が暮れるっちゅーねん!」
何で怒ってんだろ。
第一、日が暮れるのはフクロウが…。
「要約するで、ずれとんのやろ?ほしたら、直しといたるわ!」
58 :
ななし娘。:02/05/08 05:04 ID:gIUELweV
……いつのまにか夢を見ていたらしい。
考え事をしてたら眠ってしまってた。いつもの事だけどさ。
寝起きで霞んだ視界を満開の桜が掠めた。
窓を流れる景色からでは、目を楽しませてくれるまでにはいかないけど…。
それでも春の訪れと、それに伴うある種の喜び──と呼べるかな──は感じる事ができる。
いつかテレビで紗耶香が…ってあれ?
「まぁたいいださんがぼぉっとしてる。梨華ちゃんつっついてみてよ。」
「しっ!飯田さんは交信中だから、邪魔しちゃ駄目でしょ!」
何だろう、この感じ。今までに無いこの感じ。
窓から射し込む光すら既にどっかで見た事あるような…?
…それにしても陽射しが優しいな。やっぱ春っていいよね……。よし。
「ねぇ、加護、石川。春ってさ………」
59 :
ななし娘。:02/05/08 05:10 ID:gIUELweV
「そうですよねぇ…ええなぁ、春は…。」
「すっごいわかります!石川もそぉ思ってました。」
「でしょお?」
同じ喜びを、同じく分かち合えるってゆうのは何ていい事なんだろう。
やだ、ちょっと涙ぐんじゃいそう。
仲がイイってのはいい事だよね。ホントに。
ね、加護。年なんて関係ないよね。チームワークが売りだもん、ウチ等はさ。
ね、石川。あたし達は少数精鋭で…精鋭?ちょっと待って石川!
歌唱力も無いのに精鋭だなんて!
歌も歌えないエンターティナーなんて!
そんなの、ただのピエロじゃない!?
「あぁ…眩しいな…。何、まだ着かないの?」
矢口、答えて。あたし達は…。
「ねぇ、矢口。あたし達ってさ………」
60 :
ななし娘。:02/05/08 05:12 ID:gIUELweV
「カオリ、それは違うよ。ウチ等はアイドルでも、エンターティナーでも無い、
勿論ただのピエロなんかでもない。アーティストでも無いけどね。」
「だったらさ、矢口は何だと思うの?」
「モーニング娘。だよ。」
「そうですよぉいいださん。モーニング娘。じゃないですかぁ。」
「石川もそう思ってました!モーニング娘。ですよ!」
ああ、皆分かってくれてたんだ…。カオリ嬉しいよ…。
「カオリもあんまり心配しなくていいんだよ…」
『ちょっと、来ないと思ったら…』
──矢口、ありがとう…。
「リーダーはやっぱおとなだなぁ…」
「尊敬します!」
『うわ、完全に寝てますね。大丈夫かなぁ…。』
──加護、石川、ありがとう……
『ち、ちょっと、かおりぃ…。起きてよぉ…。』
『いいださぁん…。』
──みんなありが…あれ?何だよぉ…
「飯田さん!!起きて下さい!」
61 :
ななし娘。:02/05/08 05:13 ID:gIUELweV
……いつのまにか夢を見ていたらしい。
考え事をしてたら…ってどっからどこまで夢なの?
ちょっと石川、揺らしすぎ。
「起きた!カオリ、着いたよ。仕事行くよ!」
「矢口…。あたし達ってさ…。モーニング娘。だよね…?」
「うわ、寝ぼけてるよ。いいから早く!」
「はるですねぇ…。」
「そうなの!加護、春っていいよね!石川も!」
「いいですよね…どうでも。」
「そろそろ出た方がいいと思います!」
62 :
ななし娘。:02/05/08 05:13 ID:gIUELweV
何て事だろう。
それに何て儚いんだ。人の夢って。やだ、カオリって詩人。
それにしても、結局伝えられてなかったって事ね…。
みんなに感謝した自分が何だかかわいそうで、でも…。
「あ、ちょっと。」
あたしを引っ張って歩き出そうとする矢口。
「みんなさ、心配してくれたんだよね。」
不思議そうに頷く石川。
「ありがとう。」
照れたみたいに顔を逸らす加護。
夢でもいいんだ。ひとつ伝えられたから。
だから、妖精さんにも。
ありがとう。
フカーツありがとう
まあ頑張って欲しいわけだが。
漏れも待ってたよん。きのうは何故か上がっちゃってたのねん。
66 :
名無し娘。:02/05/09 23:13 ID:FUkY9+mu
やっと辿り着いた。遅ればせながら復活おめ。
そしてやっぱりUNICORNマンセー!と言ってみたい。
スレタイでワラって中身で感動した
なんか狩板みたいだ
昨日発見して一気に読んだ。感動した
なっちの話が特に感動。
といいつつ、もうすぐ圧縮sage保全
もっと読みたい人はどうすればよいんだすか?
70 :
名無し保全:02/05/14 20:46 ID:Wl2JUwXc
Uえもん
71 :
ななし娘。:02/05/15 02:17 ID:D00Xa+PD
第四話
『毎晩二人、溜息ばかり。』
72 :
ななし娘。:02/05/15 02:19 ID:D00Xa+PD
「あいぼん」
「ん?」
「やせないねぇ」
「やせない。」
「あいぼんこないだまたおこられてなかった?」
「マネージャーな。やせられないのは〜しょうがないけど〜」
「あぁののもおんなじこといわれた」
「せやろあいつおんなしことばっかゆうねん」
「ふとってくのはなんとかしてとめないと、って」
「そんなことゆわれたってなぁ」
「ねぇ」
「うちらのせいじゃないもんなぁ」
「そう…だよね!あいぼん!」
「ん?」
「おかしがあるからわるいんだぁ!」
「はぁ…ののはこどもだなぁ」
73 :
ななし娘。:02/05/15 02:20 ID:D00Xa+PD
「あんまゆってるとなぁ」
「やぐちさんとかにきかれるとねぇ」
「そういやふたりだけってひさしぶりかも」
「いそがしいよねさいきん」
「うえもしたもおるとつかれるわぁ」
「おばちゃんみたいだよ」
「それはゆうな」
「それにしてもいつまでまたせんだろ」
「しゅうろくはじまんのもうちょっとかかるってさっきいってたし」
「こんなじかんがもったいないなぁ」
「あ、ノック。だれかきたみたいだよ」
「いがいとはやかったねぇ」
「どぉぞ〜」
74 :
ななし娘。:02/05/15 02:22 ID:D00Xa+PD
「毎度ぉ〜Uえもんやでぇ〜。二十二世紀から助けに来たでぇ〜。」
「あ、なかざわさん、おはようございます。」
「やぐちさんとかならきょうはべつですよ。」
「いや、早いわ自分。まぁ自分等に説明しきろうとも思っとらんからええけど。」
「どしたんですかそのかっこう?」
「だめだよあいぼん、ひとのふぁっしょんをそんな。」
「…まぁ自分等に説明しきろうとも思っとらんからええけど。」
「ただし!…えぇか、ウチは『中澤さん』ちゃうねん。『Uえもん』が正解です。さぁゆうてみ?」
「みそじぃ。」
「おばちゃん。」
「しかし、自分等やっぱかわいいな…。しかも笑いってもんをわかっとる。」
「てへへ」
「ありぁとーございますっ!」
「まぁ、とりあえずしばくけどな。」
75 :
ななし娘。:02/05/15 02:24 ID:D00Xa+PD
「いたーい」
「いたいよぅ」
「まぁええ、自分等の為にな、今日はええもん持ってきた。裕ちゃん頑張ったでぇ。」
「ほんとに!?」
「あぁさっきたべんじゃなかった」
「食い物ちゃうわ!お前等そればっかやないか!」
『体重計レボリューション22!!』
「なんだコレ?」
「たいじゅうけいだよ、きっと。」
「正解や…って今思いっきり言うたやん。」
「ていうか、かごもってますよ」
「ののも」
「いやいや、普通の体重計に見えるやろ?実はちょっとちゃうねん。」
76 :
ななし娘。:02/05/15 02:25 ID:D00Xa+PD
「これはな、どうしても痩せたい人の為に開発されたもんでな。
本人のデータをここに入力してやね、乗るとここが揺れ出すわけや。
余分な体脂肪とか付き過ぎた筋肉なんかを落としてくれる、ちゅー代物やで。」
「ふーん」
「タイシボウ?」
「…説明はええか。ちょっと乗ってみ?…いや、どっちからでもええて。二つあるがな。」
「あれあれ?」
「うおぉぉ」
「そうそう、これをこなす事によってな、測りながら痩せられるわけや!
な。普通の体重計?全然ちゃうやろ!これがハイテクちゅーやっちゃ。」
「あぁあぁあぁあぁ」
「こぇがふるぇるぅ」
「どや!すごいやろ?自分等にぴったりや、まさに体重計の針に痩せる思いやでぇ!」
77 :
ななし娘。:02/05/15 02:27 ID:D00Xa+PD
「大体十分くらいで測り終わるからな…ちょっとの辛抱やで…て降りてもうとるやないか!」
「つかれた」
「よっちゃった」
「そんな事でええ思とんのか?」
「なんかあれみたい、つうはんの」
「なんだっけアブなんとか」
「その先はゆうたらあかん!裕ちゃん怒るで!」
「大体子供が深夜番組なんか見たらあかん!」
「だってねぇ」
「なぁ」
「なんや、自分等子供ちゃうゆうんか?」
「えむのもくしろくとか」
「はろーらんどもはじまるし」
78 :
ななし娘。:02/05/15 02:28 ID:D00Xa+PD
「……だいじょぶですか?」
「うわぁおばちゃんくしゃくしゃだぁ」
「誰が…くしゃおばちゃんやねん…」
「いってないれすよ」
「ハンカチ」
「ありがとなぁ…。」
「まだゆれてる…スイッチどこですかぁ?」
「うわぁとまんないよ」
「そんなガンガン叩いたらあかんて…。」
「あぁあぁあぁあぁ」
「あごだけのっけるのもいいよね」
「いや、おもちゃちゃうねんから…。」
「あいぼんこれ、こうすればいいんだよ」
「そやな、はねとったらよわないなぁ」
「そんなドンドン跳ねたら壊れるて…。」
79 :
ななし娘。:02/05/15 02:30 ID:D00Xa+PD
「わぁ、みてみてあいぼん!65キロ!」
「うわ!やらしてやらして!ウチもめっちゃ出したい!」
「いや、ちゃんと測れてへんやん…。」
「ふぉお!」
「ふぁあ!」
「何やろな…この倦怠感は…。まぁええか。頑張るんやで!」
「いっちゃった。」
「おもしろいねぇ〜」
「なぁ、のの…。」
「ん?」
「やせたい?」
「じぇんじぇん」
「まぁええか。」
「うん!」
80 :
ななし娘。:02/05/15 02:36 ID:D00Xa+PD
第五話
『ぬくもりひとつTWILIGHT』
81 :
ななし娘。:02/05/15 02:38 ID:D00Xa+PD
「保田はほんとオマエあれだな」
「ちょっと待って下さいよ!アイドルなんですよ一応」
「アイドルだぁ!?」
「ほらぁまたそうやっていっつもけーちゃんばっかりぃ」
「おっ、きたな〜吉澤」
「はははは」
「あたしにもCG使ってくださいよぅ」
「子泣き」
「写真集出したんだべ?」
「Keiだぁ!?」
「そうですよ」
「そうなの圭ちゃんねぇ…面白いんですよ」
「ちょおっと待ってください!きっくえんど…」
「ははは」
「吉澤はわけわかんねーなぁ」
「まぁ、そこがよっすぃのいいとこなんでしょうね」
迷子になりたい。
そんな思いを、仕事中のあたしはあっさり無表情で閉じ込める。
そうして、いつのまにかあたしはあたしを無くした気がする。
82 :
ななし娘。:02/05/15 02:39 ID:D00Xa+PD
「お疲れ!」
「お疲れ…あとちょっとしたらリハだってさ…」
「マジで?」
「休む暇もないねぇ」
「まぁ忙しいのはいいことだからさ」
「…お疲れ。」
「あ、吉澤…」
「なに。」
「…いや、なんでもない」
「あ、よしこさぁ、今日めちゃくちゃ元気だったよねぇ…」
「ごめん。ちょっと、トイレ。」
「あ…うん。」
なにしろ会話が煩わしい。
最近のあたしはいつもぼーっとしている。
春のせいかどうかは、知らない。
83 :
ななし娘。:02/05/15 02:42 ID:D00Xa+PD
──はい、もしもし…
──母さん?あたしだけどさ
──あぁひとみ?元気でやってるの?
──元気だよ、忙しいけどさぁ
──大丈夫?ちゃんと寝てるの?
──大丈夫だってぇ。そんな心配しなくてももう大人なんだし
──ならいいんだけどねぇ…。
──あ、ところでさ、次休みとれたら帰るから。
──あら、じゃあみんなに言っとくから。そう言えばあんたこないだテレビで…
──ごめん、結構急ぐんだ。また。
──そう…風邪ひかないようにしなさいね。傘は持ってる?
──雨?ちょっと前にやんだみたいだけど。
──こっちはまだ降ってるのよ…。
84 :
ななし娘。:02/05/15 02:43 ID:D00Xa+PD
電話を切ってそのままバッグにしまった。
誰かがドアをノックした。
あたしはそれにノックで答えた。
早くもどらなきゃいけなかったんだけど
トイレに腰掛けたまま、あたしはしばらくぼーっとしてた。
頭の中でベランダを雨が濡らした。もう傘なんていらないのに。
再びノックが聞こえた。
あたしは大量にトイレットペーパーを引き出した。ガラガラ鳴った。
全部突っ込んで流した。
トイレの中じゃ浸れない。
溜息をひとつついてドアを開けた。
そこには青いシーツみたいのを被った中澤さんがいた。
…青いシーツみたいのを被った中澤さんがなんでここにいるんだろう?
そのシーツみたいのには穴がうまいこと開いていて手がにょきっと二本出ていて
それでその手がいきなりあたしの口を塞いだ。
85 :
ななし娘。:02/05/15 02:45 ID:D00Xa+PD
「おっとぉ怪しいもんちゃうでぇ」
「む!」
「まぁええから、騙された思ってちょお来い。悪いようにはせんから。」
反射的に逃げようとしたあたしは抱きしめられるようにして個室に連れ戻された。
中澤さんが足でドアを閉めたみたいだ。そして鍵がかかった。
「もがもが」
「ん?あぁ、大声ださんって約束したら離したるからな。」
「もぐ」
「ええ子や…。素直なんが一番やでぇ。」
その台詞にあたしは昔見たドラマを思い出した。
確か相当つまんなかった。
すっと手が離れた。向き合ってあたしは口を開いた。
86 :
ななし娘。:02/05/15 02:47 ID:D00Xa+PD
「どしたんすか?」
色々な意味をこめたつもりだった。
中澤さんは真剣な顔で答えてくれた。
「助けに来た。」
そっけない声と答えに、あたしはちょっと拍子抜けした。
よく見るとシーツの裾がドアに挟まっていた。
「二十二世紀からな。」
中澤さんは真剣な表情のまま続けた。
おそらく矢口さんあたりなら的確につっこむところだろう。
中澤さんと二人きり。
慣れないシチュエーションに、あたしはひたすら気まずかった。
87 :
ななし娘。:02/05/15 02:49 ID:D00Xa+PD
「自分をやで。助けに来てやったんやで。」
「助けにきてくれたんですか」
「二十二世紀からやで。」
「二十二世紀からですか」
何度も確かめるように、あたしの顔を覗きこむようにして続けた。
あたしはそれを声でなぞりながら、でも視線は壁にあった落書きをなぞっていた。
「まぁええ…。ところで、誰と電話してた?」
「誰と…?」
「今しゃべっとったやろ?こんなトイレまで来るくらいやから見当はつくけどなぁ」
勘違いを訂正する暇もなく、あたしのバッグに手が突っ込まれた。
割とぼーっとしてた頭が一気にクリアになった。あたしはその手を掴んで言った。
88 :
ななし娘。:02/05/15 02:51 ID:D00Xa+PD
「ちょ…っとまってくださいよ。いくら中澤さんでもヒトのプライベートを…」
「中澤さんちゃうわ、ウチUえもんやねん。」
「詮索……Uえもんってなんすか?」
ちぐはぐなやりとりの中、気付いたらあたしの携帯は中澤さんの手にあった。
あたしはいつのまにか後ろから抱きしめられた格好で動きを封じられていた。
誰かに見られたらどう思われるだろう、あたしは何故かちょっとわくわくした。
「…なんや、自宅て実家かい…。」
リダイヤルの、ディスプレイの文字を見て中澤さんはホントに残念そうに呟いた。
あたしはその手をふりほどくと携帯をもぎ取った。と言ってもむかついてはいなかった、不思議と。
89 :
ななし娘。:02/05/15 02:53 ID:D00Xa+PD
「そもそもいきなり何するんすか?こんな狭いトコで」
「ここやったら聞かれたない話もできるやろ?」
「別に聞かれたくない話なんてしたくないっすよ」
「ほう…。したらこそこそ電話してたんは誰や?」
「だ…」
言葉につまったあたしを見て中澤さんはにやにや笑った。
「安心せい、助けに来たって言うたやろ?ちょっと待ってな…」
青いシーツの下に手を突っ込むと、何やらごそごそ探している様子だ。
一体あの中はどうなっているんだろう?不思議なことは他にもあるけど。
どうやら目当ての物を探し当てたらしい。にやっと笑って取り出したそれはウォークマンだった。
90 :
ななし娘。:02/05/15 02:57 ID:D00Xa+PD
イヤホンを右耳に押し込まれた。スイッチを押すような音。
そして聞こえてきたのは音楽じゃなくて声だった。
「……最近…あんまり……」
「よしざ……ぼーっとしてる…心配…」
「悩み……寂しそう…」
圭ちゃん…あとごっちんの声だ。
間違いない。盗聴だ。
盗聴!?
「こんな会話聞かされた日にゃあ、助けたくもなるわ。」
聞かされた…と言うか?
ところでこんなもん聞かされてあたしは一体どんな顔したらいいんだろう?
呆然としてるあたしに気付いたのか、中澤さんは煙草を一本、取り出すとゆっくりと口を開いた。
「自分あれやろ?最近みんなとよう喋ってへんねやろ。何かあったんか?」
91 :
ななし娘。:02/05/15 02:58 ID:D00Xa+PD
何もかもが…嫌だ。
心配されるのだって大きなお世話だ。
ところで、何であたしはわざわざトイレまできて家に電話なんてしたんだろう?
「言いたくない…みたいやな。その表情を見る限りは。それとも。」
『吉澤はわけわかんねーなぁ』
『まぁ、そこがよっすぃのいいとこなんでしょうね』
「自分でも、ようわかってないんと違うか?」
迷子になりたい。
傘はもういらない。
「…まぁ、そんくらいの歳やったら色々あって当たり前なんやけどな。
でもまぁ、心配しとる奴がおるっちゅうことは知っといて損はないわな。」
中澤さんはそこで言葉を切ると、煙草に火を点けた。
狭い個室に二人で。黙ったまま立ち尽した。
92 :
ななし娘。:02/05/15 03:01 ID:D00Xa+PD
俯いてた、あたしは顔を上げた。とっても優しい横顔が見えた。
まばたき一つ。その右手の、細い指先が、ゆらゆらと煙を描いた。寂しくなった。
赤い──サイレンみたいな──光がトイレを廻るように照らした。
ってかサイレンだった。
「あかん!火災なんたらが発動してもうた!」
「えっ、えっ!?どうなるんすか?」
「アイドルが便所で喫煙…エライことんなってまうわ!」
「いや、あたし吸ってないっすよ!?」
「わかっとる!ウチに任せんかい!」
そう言って中澤さんはドアを威勢良く蹴り開けた。
幸いにもウチ等以外の利用者はいなくてトイレ内は無人だったけど
なんだかパタパタ足音が聞こえてきた。やばい!?
「失礼します!どうしました!?」
「裕ちゃんレボ…ちゃうわ、まぁ何でもええ!食らえやゴルァ!」
93 :
ななし娘。:02/05/15 03:03 ID:D00Xa+PD
まるで時が止まっているみたいに感じた。
交錯する二つの青い影。
あたしはちょっとの間、その完璧なラリアットに見惚れていた…。
うん、見惚れてる場合じゃないね。
「どや?」
回転する光の中、無言のままトイレの床に崩れ落ちる警備員さんと
こっちをみて得意気ににやにやする中澤さんの脇を素通りすると
極力無表情であたしは呟いた。
「盗聴はよくないっすよ。」
それだけ言うと、あたしは楽屋へと向かった。
無表情はいつもより大変だった。
「おぉいちょお待てって!ん?ええんか。早よ逃げぇ!」
「うぅ…不審者めぇ!」
「あぁん?ウチのラリアット食らって立ちあがるとはなかなかな警備員やなぁ!」
「三階女性用トイレにて不審者!」
「って何応援呼んどんねん!そらウチかて逃げるっちゅーねん!」
94 :
ななし娘。:02/05/15 03:04 ID:D00Xa+PD
「よしこぉどこ行ってたの?」
「ごめんごめんトイレ行ってた」
…迷子になんかなりたくない。
「吉澤来た?」
「もうリハーサルはじまるみたいだよ」
あたしは、どうやら自然に笑った。
「圭ちゃんごめん」
あたしの頭、髪の毛が掻き回された。
「あんたはほんと最近ぼーっとし過ぎよ!」
「あぁ、」
何だか初めて怒られた時を思い出した。
まぁ、心配されるってのも気分はいーもんだ。
「もうちょっと…ぼーっとしてみようかなって。」
「はぁ!?ていうかアンタ目があか」
みんな何となくだけどいつもより優しかった。
「お願いしまーす!」
「ADさん来たよ!さ、行かないと!いつもの!」
「……それじゃ」
「頑張っていきまー」
「しょい!」
あたしもいつもより大声だった。
95 :
ななし娘。:02/05/15 03:10 ID:D00Xa+PD
こんな調子でした読みづらいのが二つ続きますがご容赦。
やっと前スレの分が埋まりました訂正は結局殆どしなかったです
待たせてゴメンレスありがとうこれからは早めにあげるよう心がけます
歯が痛いんでこんな糞レスでスマソ、では逝ってきます。
うわーい。ありがとう!
97 :
名無し娘。:02/05/15 13:54 ID:O0XldFRz
新作キター!
98 :
名無し娘。:02/05/16 18:19 ID:vGMX2RRZ
第五話は正直よくわからんかったが。
この雰囲気はかなり好きだ。頑張って下さい。
99 :
名無し募集中。。。:02/05/16 22:52 ID:z92eVk5O
999999999999999999999
100 :
名無し:02/05/17 17:28 ID:xBet3hKT
100
101 :
ななし:02/05/17 17:38 ID:738C0UkQ
ミキティーって何だよ?
細かい状況描写によって登場人物の心理を表現するなんてすげぇよ、この人。
>「あぁあぁあぁあぁ」
>「あごだけのっけるのもいいよね」
これと、
>あたしはそれを声でなぞりながら、でも視線は壁にあった落書きをなぞっていた。
のとこが大好き
ミキティー飲みながらマターリ
104 :
ななし:02/05/19 23:24 ID:IvipJzPe
ほぜむ
保全
みんなで保全
保全
保全
今日も保全
第六話
『大丈夫、愛してる。』
「紺野ぉ!ちょっと!」
レッスン室に響き渡った声はとても張りがあって、今まで練習していた疲れをまるで感じさせないものでした。
私はこんな時でもその事に少し感動してしまいました。
「紺野、カオリの話聞いてないだろ?こないだ言ったよなぁ!」
他のメンバーの方達はまるでその大声が聞こえてないかの様にくつろいでいて、
見まわしても不思議なことに誰とも目が合いませんでした。
思い思いに束の間の休憩を楽しんでいる皆さん。邪魔は出来ません。
「大体、なんで言うこと聞けないの!第一振り付けを覚えられないってことは
時間をそれだけ無駄にしてるってことでしょ!?時間無駄にしてるってことは
すごいもったいないってことなの!わかりやすく言えばトリが飛ぶときに……」
すいません、リーダーの休憩を奪ってしまって。
私はせめてもの償いとして、一生懸命そのお話に耳を傾けました。
「……そしたら、フクロウが夜飛べるでしょ?朝飛ぶフクロウなんて聞いたことある?ないでしょ?」
最後の質問に対し、私は首を縦に振りました。
飯田さんはにっこり笑うと頭を撫でてくれました。
「わかってくれたみたいだね…。カオリ嬉しいよ。さっきは怒鳴ってゴメンね…。」
涙がちょっとだけ滲んだのは、優しさに触れたからだと思います。
お話は殆ど理解出来ませんでしたが、優しさに種類は問えません。
「大丈夫?」
小さな可愛い声。愛ちゃんはいつも私に優しくしてくれます。
あたしは返事のかわりににっこりと、頬の肉を引きつらせないように心がけながら笑いました。
愛ちゃんも笑ってくれました。
「はいみんないくよー」
張りのある声と共に、束の間の休憩が終わりました。
モーニング娘。は忙しいです。
スケジュールは基本的に仕事、空いたらレッスンといった風に毎日詰め込まれています。
やらなければいけないこと、覚えなければいけないこと、日々が勉強であり試練です。
追われるような毎日ですが、それでも私、私たちはまだ幸せだと言います。
音楽がとまりました。
「はい、じゃあ紺野と高橋、二人だけでちょっとやってみて。」
汗が体中からふきだしています。拭うタオルももうぐしょぐしょです。
それでも足を上げ、体を振ります。
「紺野、また違う!どこ間違えたか分かってるか?」
声が出ません。私はなんとか声を絞り出して「すいません」と呟きました。
背中に飯田さんの視線を感じました。
「もう一回!高橋も出来てないぞ!」
二人だけの練習はそれからしばらく続きました。
疲れはほとんど限界にも思えましたが、私も、愛ちゃんも体を止めませんでした。
それはどうにか形になったらしく、また全体での練習が再開されました。
私はもう必死で、食らいつくように踊りましたが、それでも
音楽がとまる度に呼ばれる名前はそのほとんどが私のものでした。
やがて時間になり、レッスンが終わると同時に膝が笑いました。自然と体が崩れます。
しばらく動きたくない、そう思いました。隣では愛ちゃんがうずくまったまま肩で息をしています。
まだ仕事のある人や、帰る人が引き上げて行く中、飯田さんがこちらを見ているのに気付きました。
目が合いました。怒られるかと思いましたが、飯田さんは何も言わずそのまま行ってしまいました。
私は、なんだか今日が一番疲れたように思いました。
随分長いこと寝転がってたままだったと思います。
ゆっくりと立ちあがろうとして、愛ちゃんが手を出してくれているのに気付きました。
「今日は疲れたねー、最近忙しいから、なかなか振り覚えらんないよ…。」
スタジオを出てすぐ、バッグを振り回しながら、愛ちゃんが呟くように言いました。
その表情には疲れこそ見えますが、明るい声でした。愛ちゃんは前向きです。
心地よい夜風が静かな街を渡ってゆきます。遅いので人通りもありません。
「でも、やっぱすごいよね先輩は。あたし達より忙しいのに完璧だもんね。」
愛ちゃんは実に嬉しそうにそう言いました。
合わせて笑顔を作った私の頭に、さっきの飯田さんの顔が浮かびました。
その顔は何か言いたそうでもあり、ただ怒ってるだけのようにも見えました。
私はなんとなく、このまま二人でずっと歩いていたいな、そんな気分になりました。
低いエンジンの音が聞こえました。車道からの光が愛ちゃんの横顔を照らしました。
愛ちゃんはそのまま手を上げました。横付けされたのは一台のタクシーでした。
私は愛ちゃんの後に次いでタクシーに乗り込みました。「えっ」と言う声が聞こえました。
一瞬戸惑いましたが、それは確かに愛ちゃんの声でした。素でびっくりしている時の。
「えっ」
また間抜けな声がしましたが、それは私の声でした。
「なんで?」
愛ちゃんと顔を見合わせるように麻琴ちゃんが、助手席には理沙ちゃんが乗っていました。
二人ともに先に帰ったはずでしたが…。
ドアが閉まりました。
疲れのせいか、もやがかかっていたような頭が一瞬にしてクリアになりました。
「おぅ、待ったで。」
運転席に座っていたのは、いつもの白い手袋のおじさんではありませんでした。
ドスの利いた関西弁。視線を通さないサングラスにマスク。そして青いマン…ト?
とにかく、危険人物であることにかわりはありません。
娘。に、そして芸能界に入ってもう一年に届こうとしていますが、流石にこれほどびっくりしたのは初めてでした。
状況はわかりませんが、とりあえず逃げた方がよさそうなことに気付きました。
ならば車がとまったままの今がチャンスです。
私は体をひねるようにすると、ドアノブに手をかけました。…動きません。
「中からじゃ開けへんよ。」
読まれていたのでしょうか。気付かれないように気をつけたのですが。
それにしても、すでに何度も説明しているかのような口調です。慣れてるともとれます。
巻き起こった数々の悪い想像に、体が冷えていくのを感じました。
「さぁ、おとなしくしててな。車だすでぇ…。」
車が動き出してすぐに、愛ちゃんのポカンとした表情に気が付きました。
そうです。このままではいけません。まずは状況を把握しないと。
「ところで、どこ行くんですか?できれば説明してもらいたいんですが…?」
…それは麻琴ちゃんの声でした。
なにやら異様な緊張感を感じるのは気のせいでしょうか。
「何にも言わずに連れ出すなんて、なんか誘拐みたいですよ。」
理沙ちゃんが続けました。その口調はなぜか少し得意気に聞こえました。
愛ちゃんは相変わらず驚いたような顔で固まっています。
「人聞きの悪いこと言いなや。こっちは助けに来たんやっちゅうねん」
助けに来た。確かにそう聞こえました。
つまり………まるで想像がつきません。家まで送ってくれる、ってことなのでしょうか?
「まぁ、誘拐なんやけどな。」
そう言って車内を見まわしたその顔は、サングラスとマスクの上からでもわかるくらい嬉しそうでした。
あぁ、ミス続きだった一日でしたが、まだまだ長くなりそうです。
タクシーは大きな道路を流れるように進んで行きます。
夜も遅いせいでしょうか、車はほとんど通りません。静かです。
低いエンジンの音、それに混じってささやかな寝息、音といえばそれくらいです。会話はありません。
私は薄目を開けたまま車内の様子を窺いました。
愛ちゃんはいつのまにか眠っていました。きっと疲れているのでしょう。
他の二人も黙ったまま、窓の外に顔を向けています。
しかし私は眠るわけにはいきません。
車内を包んでいたのは明らかに気だるい雰囲気でしたが、私は緊張を切らすことなく寝たふりを続けました。
先程曲がった角から二十三個目の信号で、タクシーは右に曲がりました。
道はどんどん細くなっていきます。どうやら住宅街にはいったようです。
閑静という言葉がぴったりな、上品で穏やかな街並みです。
北海道に住んでいた時に思い描いていた「都会」のイメージを思い出しました。
やがて一軒のマンションの裏でタクシーは止まりました。それは小さいけど綺麗なマンションでした。
こんなところに住みたいと思いました。こんな時でなければ家賃などをチェックしたいところでしたが。
「着いたで〜。って寝とるか…。」
私は不覚にもびくっとしてしまいました。正直慌てましたが寝たふりがばれるのは望ましくありません。
まるで今起きた風によそおうことにしました。果たして成功したのかどうかはわかりませんが。
「お、起きとったか。ちょっと待っててなすぐ戻ってくるから。逃げてもムダやで〜。」
それはひどく軽い口調でした。まるで子供をあやすような感じに多少拍子抜けがしました。
携帯を片手に出ていったその青い背中を私は呆然と見送りました。
運転席のドアが閉まると同時に、囁くような声が聞こえました。
「行った?」
麻琴ちゃんの声でした。
「うん…。一体なんなんだろうね?」
今度は理沙ちゃんの声です。
「えっ、ていうか聞いてないの?二人も?」
愛ちゃんです。
どうやら皆起きていたようですが…?
とすると寝たふりだったのでしょうか。私は軽い混乱をおぼえました。
「アレ…中澤さんだよね?」
「間違いないでしょ…なんだっけ?えーと…」
「ゆうえもん?とか言ってなかった?」
「そうそうソレ。何かのロケかな…って思ってたんだけどちがうっぽいし。」
「なんなの?ゆうえもんて?あとここどこ?」
「「知らない。」」
理沙ちゃんと麻琴ちゃんの、歌入れの時でも見せないくらいの綺麗なハモリで会話は閉じました。
私も?マークが頭を廻っていたのですが、口を開こうとした瞬間にドアが開きました。
「おっ、逃げへんかったみたいやな。感心感心。」
危険人物改め、中澤さんはまた運転席に乗り込むと嬉しそうに言いました。
言われてみるとその声は確かに中澤さんの声でした。
「今、アレ呼んだったからな。もうちょい待っててくれや。」
アレ…とはなんでしょうか?色々と聞きたいことはあったのですが。
多分誰か聞くだろうと思ったので黙っていることにしました。
…誰も口を開こうとしません。
「しかしなんや、えらいぼーっとした感じやな。自分。」
おかしなことに、四人に話しかけてる、というよりはその言葉は
私だけに向けられてるもののように感じました。
私は何気なく車内を見まわしました。
三人とも皆一様に、さっきと同じような態勢でじっとしたままです。所謂寝たふりです。
「どした?きょろきょろして。」
理由はわかりませんが、ただひとつ言えることは、
今はある意味中澤さんと二人きりという状況だってことです。
言うまでもなく初めての経験です。
とりあえず無言は体によくありません。私はおそるおそる切り出すことにしました。
「中澤さん…だったんですね…。」
中澤さんは座席にひじをかけるようにしてこちらを振り向きました。
サングラスの奥でその目が光った気がしました。勿論気のせいで、見えたはずがないですが。
ちなみにマスクはいつのまにかアゴの方にずらされていました。
私は会話の展開を考えながら、中澤さんの言葉を待ちました。
「いや、中澤さんちゃうて。Uえもんや。せや自己紹介まだやったっけ。」
ばれたか、気付いてなかったんかい、そんな予想は見事に砕け散りました。
私の口は金魚のようにぱくぱくしました。自然にです。
「二十二世紀から助けに来ました、誘拐犯のUえもんです。こんなもんでどや?」
自己紹介は終わったようです。私の自己紹介に比べても、そのインパクトは抜群でした。
「誘拐…は、よくないですよ…。」
聞きたいことは山ほどありましたが私の口から出たのはそんな間抜けな言葉でした。
疲れていたのもそうですが、緊張と混乱のため頭がまわっていないようです。
「まぁな。言うても金目的やあれへんから、そんな心配はいらん。」
「だったら、何目的なんですか…?」
辛うじて会話が噛み合ってきたようです。私はちょっとだけほっとしました。
中澤さん(?)は、まるで私に合わせるようにゆっくりと話してくれました。
「色々考えたんやけどな…。どうやって助けたろうかなってな。まぁええわ。
いや、今自分等めっちゃ忙しいやんか。下手したら倒れてまうくらいやろ?
若いから多少の無茶ぁ効くのかも知らん、ただ倒れへんかったらええって
もんでもないやろ。せやから、休みやろうと思ってな。ええ考えやと思わんか?」
言葉が切れても、私は黙ったままでいました。随分意外な言葉に驚いていたのもそうですが。
頭の中で、誘拐と休みがうまく結びつかなかったから、というのもあります。
「今アレ呼んだから。こいつ等を無事に返して欲しかったら、休みやれぇ言うて。
ま、一応リーダーやから、多少の発言力はあるやろ。説得力はしらんが…。」
やけに嬉しそうに聞こえました。アレ、と言うのは多分あの人のことなのでしょう。
私はやはり黙ったまま、その明らかにめちゃくちゃな計画が成立する可能性を考えていました。
「うわぁっ」
急に響いた、それは麻琴ちゃんの声でした。
「あっ」
びっくりする間もなく、続いて愛ちゃんの声がしました。
その視線を、追いかける様に振り向いた中澤さんはそのま固まっていました。
私もそちらに目を向けました。とってもシュールな光景が目に飛び込んできました。
車はマンションの裏口近くに止まっていて、そこはいわば裏道であり街灯もまばらなのですが、
丁度その裏口のあたりにある街灯の下に一人の女の人が立っていました。きょろきょろしながら。
そしてその右手にはどうやら武器らしき…。一体あれはなんなのでしょうか?
こちらから見ると逆光になっていて顔こそよく見えませんが、誰かははっきり分かりました。
「まぁ話し合いでケリつけよう思てたが…。アレはあかん…殺す気や…。」
中澤さん(?)は諦めたように呟くとドアを開けました。どうやら計画は失敗に終わったようです。
「あ、こないだの妖精さん?もしかして。」
そんな声がしました。正直わけがわかりません。
「お、ヒサブリやなぁ。どした?こんな夜中に。」
あくまで自然を装う声は、この状況にはあまりにそぐわないものでしたが。
「なんかねー、ウチのメンバーがさらわれちゃったっていうから。」
あっけらかんと言い放つその口調は、まるで子供みたいでもあり…。
「…そいで、助けに来たってわけや…話し合いの余地もなく…。」
「うん、どうせ話し合いなんてムダって思って、カオこんなの持ってきたの」
「こんなのよぅ持ってきたな自分…。」
「カオ鍛えてるからさ。見る?力こぶ。」
「ていうか、何で家に持っとんねん…。」
「ねぇ怪しい奴見なかった?女の子四人くらい連れてる」
「怪しい奴は知らんけど、女の子四人やったら…コレちゃうか?」
中澤さんがこちらを指差しました。
ぽかーんと口を開けたままの愛ちゃん。
何やら納得いかない、といった表情を浮かべる麻琴ちゃん。
欠伸を一つして時計を眺める理沙ちゃん。
そして、駆け寄ってきてドアを開けてくれる飯田さん。
「大丈夫みんな!?なんもされてないよね?カオリ来たからもう安心だかんね?」
私達は開いたドアからぞろぞろと、一列になって車を出ていきました。
「怪しい奴は?」
「あ、逃げたみたいですけど…。」
私は一応そう言っておきました。
確かに、中澤さんはいつのまにか姿を消していました。
「よかったー。ホント心配したよ。知らないヒトについてっちゃ駄目だって、東京はね…」
運転席からやっと理沙ちゃんが這い出すように出てきました。
「……殺人事件だからさー、なんてったって東京はさー……」
私はそのお話を聞きながら、ぼんやりと飯田さんの右手を見ていました。
街灯に照らされたその巨大な傘は、何だかとてもカラフルに見えました。
結局飯田さんの家に泊めてもらうことになりました。あのマンションです。
家賃を聞いてびっくりしましたが、飯田さんは笑って言いました。
「安いもんだよ。カオリはねー、こんな街に住むのが夢だったからさ…。」
その後は、北海道の話などを少ししてから、割とすぐに眠りました。
ミス続きの長い一日でしたが、私にとっては大事な、忘れられない一日になりました。
今回はこんな調子でした、保全の一つ一つに感謝。感想もありがとう。ほんとに。
こんだけのコピペに一時間以上かかりました。病気です。
マターリしすぎですね。ごめんなさい。頑張ります。
ヤター!
待望の新作ありがとうございます!
ガンガレ!民生マンセー!
勝手ながら中断させていただきたいと思います。放棄じゃないよ。
保全してくれた人、感想くれた人、読んでくれてた人、どうもすいませんでした。
>>132 放棄じゃないならいいんすけど…何故ゆえに?
134 :
蛇足:02/05/24 23:28 ID:vah8X3Sx
この話は割と軽い気持ちで書き始めました。最初は全五話くらいの予定でした。
一、二話が割と好評だったため、長くしてみようと思いました。
三、四話まではするするいきました。
五、六話は、読み返すのが怖いくらいです。時間かかった癖にです。
このままだらだらいくより、充電させてもらおうと思いました。
死んでも続きは書きますので、よろしければ忘れないでいて下さい。
なお、このスレッドにはもう保全の必要はありません。
>>130 いつもありがとね。ごめんなさい。
>>131 前スレからいた人だね。ありがとう。
他の皆さんにも、勝手なこと言って本当にすいませんでした。
了解しました。続き、楽しみに待ってます。
137 :
131:02/05/24 23:53 ID:5w/iR5xf
自分の思うままにやってくれたら良いさ。
良いネタを読ませてもらってこっちが礼を言うべき立場だからな。
とりあえずココまで乙。
まずはお疲れ様でした。
またーり待ちますんで、またーりがんがってください。
とても残念だけど、素直にお疲れ様でしたと言いたい。
でもしばらくの間の辛抱かな?
今度は正規スレで見れたらいいなぁ。
ななし娘。さん本当に本当にどうもアリガトです!
一応ね
ミキティーおかわり
142 :
:02/06/03 21:32 ID:Cu+/+db7
___ | \ \
/ / )))) |
/ /_ ⊂ノ | ヽヽ |\
/ / / i 、、 | ヽヽ |\ | \
/ / \ \ ∧ ∧ ド ド |ヽ |\ | |
/ / \ \( ゚Д゚) / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
/ / ヽ ⌒\ < 3ゲット!!
/ ノ /> > \____________
/ / 6三ノ
/ / \ \ ` ̄
― / ん、 \ \
―― (__ ( > )
⌒ヽ ’ ・`し' / /
人, ’ ’, ( ̄ /
Y⌒ヽ)⌒ヽ、 ) |
\_つ
保全
みんな保全してくれてるのね。マターリと。
保全
保全
hozen
保全
ho
151 :
k:02/06/21 22:36 ID:od4a582/
na
久々に保全
保全
hozen
保全
157 :
:02/07/01 17:02 ID:q12LKhir
歩前ね
ほ
ホゼン
160 :
_:02/07/08 00:39 ID:3OcLr9WU
保全目的age
161 :
保:02/07/10 03:03 ID:01SbBB5/
全
162 :
携帯:02/07/12 11:27 ID:sPykIcxh
保全
墓前
164 :
今日も:02/07/13 16:59 ID:pnLm/j8d
保全
保全
保全〜
ho全
168 :
マサ:02/07/19 16:20 ID:E0aOZt+g
レモンスカッシュ略してレスカ
アイスコーヒー略してアイコーまたは冷たいコーヒーなので
レーコー
オレンジスカッシュ略してオスカ
169 :
名無し募集中。。。 :02/07/19 16:21 ID:Xn8keMWl
170 :
名無し:02/07/19 17:55 ID:CsE9Sm6M
171 :
保全:02/07/21 00:15 ID:2vh8SY/c
緊急
保全
町のはずれでシュビドゥバー保全
夢にまで見たマイホーム保全
保全
176 :
ミキテー:02/07/26 18:58 ID:Yl01Ig6t
ミキテーに明日会える!
178 :
ミキテー:02/07/26 20:51 ID:m4xmoEbO
>>177 残念だったな。
今日も会ってきちゃったのよ。(w
証拠の合言葉は「オサム」
ドーヨ?
保全します。
保全しる
保全命
保全圭
183 :
名無し娘(するよ):02/07/31 21:29 ID:j0S//8g1
おい。↑脱退発表前にこれって・・・・。
保田命
全
185 :
:02/08/03 10:26 ID:gFYDoepP
いだけるあのむすめ保全。
hozen
ほぜん
浮かれ保全
ロマンティック保全
ほぜん
カントリー保全
メロン保全
赤道ガール保全
24時間テレビ保全
石川ド下手保全
197 :
:02/08/18 13:14 ID:IHNACjMj
..∋oノハo∈ ∞ノ ヽ∞
川*・-・) (( ∬(・e・ )∬
(__⊃目~ 目⊂ と__)
し__)_)┳━━━┳ (_(___ら
konkon niinii
hozen
MUSIX見忘れた保全
保全なげまくり
中学生の時に好きだった娘に似てんだよー・・・・。
ほぜn
補是
保全〜
保全だ!
ho-zen
207 :
:02/09/03 14:05 ID:x0Pit4cL
保田
全速
209 :
保全目的:02/09/06 02:14 ID:mJNwxQDt
圭ちゃん圭ちゃん圭ちゃん圭ちゃん
ほぜ
ほ
保 田大名神 全
ほぜん
保田
完全無欠
215 :
ミキテー:02/09/17 07:28 ID:XuT1n/AB
握手会お疲れ保全
h
217 :
名無し募集中。。。:02/09/19 20:33 ID:7b958bI2
大丈夫か?ageなくて保全
第七話
『気の抜けた綱渡り』
どんよりとした日のことでした。
「紺野はさぁ、声がちっちゃいんだよね、声量?が足りない時がめだつって
言うか。あたしもそんな時あったけど、でも地声が小さいとかそういうので
やっぱり自分が控え目になっちゃいけないと思うのね。あたしもこの世界
はいって気付いたんだけど、やっぱりネガティブ…っていうとみんな笑うけど、
でもそういうのってやっぱりなんかよくないと思うから。あたしとかはテニス部の
部長なんかやっててそういう色々なこととかもわかってたけど、紺野はさ、
やっぱり…いてっ」
後ろからぶたれました。矢口さんでした。
「えらそうに説教してんじゃねーよ、石川のくせに」だそうです。
あたしは「そんなぁ、矢口さんひどい」と言いました。
それで、紺野も矢口さんも笑いました。
「ねぇよっすぃそう言えばこないだすごいいい店みつけたって言ったじゃん、
もうかわいい服がいっぱいあってすごい絶対オススメのとこでさぁもう
多分よっすぃだって気に入るはずだから行こうよ……
あ、そうなんだ、ごっちんと……
いやいや、全然いいよそんなの、急に誘ったみたいなもんだし
…約束したのに…
いやいや、なんでもないからさ、うん」
よっすぃは行っちゃいました。
見ると、高橋となんか楽しそうに喋っていました。
高橋が「とっておきのメイクなんです!」とか言ってます。嬉しそうね。
「飯田さん聞いて下さいあたしこないだのドラマですごい褒められたん
ですけどやっぱり前向きに頑張ったからだと思うんですよそれって。
飯田さんがやっぱり教えてくれたことがすごいなんか残ってる、って
言うか、いつもアタマのどこかにあって元気づけてくれる、っていうか…」
飯田さんは手をあたしの前に出して、
「石川、うるさい」にっこり笑ってくれました。
中学生の子達は集まってはしゃいでいました。
安倍さんはごっちんと珍しく二人で楽しそうに喋っています。
みんな楽しそうです。あたしはちょっと手持ち無沙汰って感じになりました。
そう言えば、保田さんが見当たりません。飲み物でも買いにいったのでしょうか。
あたしも、やけに喉が乾いていました。
保田さんを探そう、ついでにジュースも買おう、そう思い、楽屋を出ました。
廊下の突き当たりには自動販売機がいくつか並んでいて、ベンチや
灰皿などが据え付けられてちょっとした休憩所のようになっています。
保田さんの姿は見えませんでした。
自販機の前で小銭を取り出したその時、どうしてかはわかりませんが
なんだかとっても寂しい気持ちになりました。
小銭を入れボタンを押してからジュースが落ちてくるまでの間、ずいぶん
色々なことを考えたように思います。
メンバー全員からやっぱりうっとうしがられてるんじゃないか。
いじられてるんじゃなくていじめられてるんじゃないか。
そして、あたしは駄目なまんまなんにも変わっていないんじゃないか…
そんなネガティブな思いが、アタマを駆け巡っていきました。
ジュースはなかなか落ちてきません。
よく見ると、ランプが消えていました。
…自動販売機までがあたしを馬鹿にするなんて…
ちょっとショックでしたが、120円くらいで大騒ぎするとまた何を
言われるかわからなかったので、泣く泣く小銭入れを取り出しました。
……小銭は表示されないどころか、返却レバーを何度押しても
戻って来ませんでした。
踏んだり蹴ったりとはこの事ね…あたしはなんだか笑えてきました。
人間の悲しみを激しく実感しているその時、後ろから声をかけられました。
「どした、買わんのか」
「これ、壊れてるみたいなんですけど…!」
苛々していたせいなのか、語尾がちょっと震えてしまいました。
「壊れてる…?なるほど。」
その青い服の人はつかつかと自販機に駆け寄ると、短く叫んで
投入口のあたりに綺麗なハイキックを叩き込みました。
がしん。ものすごい音が響いて、あたしはびっくりしました。
「どや!直ったやろ、入れてみんかい!」
どこかで聞いたことのある声でしたが、とにかくあたしは震える手で小銭を入れました。
やはり表示もされませんし、返却レバーを押してもうんともすんとも言いませんでした。
「駄目でした…」
「なんやて?エライ頑固な自販機やな…よし、もいっぱつ」
「いや、もういいですから!」
というか、中澤さんでした。一瞬わかりませんでした。
なんか青いマントのようなものをスッポリ被っていたからです。
良く見ると顔だけ出ていました。
「もういいんです…あたしなんてどうせいっつも我慢してればいいんです」
「馬鹿なこと言ったらアカン!」
われんばかりの大声でした。
「120円言うたら大金ちゃうんか?自分勘違いしたらアカン!
額の問題ちゃうで!120円を笑う者は120円に泣く、これ覚えとき」
「でも…」
大金ではないですよね、危なく言いそうになりました。
そんなあたしを見て、中澤さんはにやりと笑いました。
「安心せぇ、ウチが来たからには問題ナシや。自分を助けに来たんやで?」
そう言うと眉間にシワをよせて、ぶつぶつと何事か呟き始めました。
あたしはなんだかドキドキしながらその様子を見守っていました。やがて。
「裕ちゃん、ええこと思いついたわ。」
「ええか、整理さしてもらうわ。自分何でここ来たん?」
「いや、ジュースを買おうかなって思ったから…」
「せやろ。重要なんは、なんでジュース買おう思ったか?言うことや」
中澤さんはまるで演説でもするような口調でした。
あたしはおそるおそる言いました。
「喉が…乾いたから?」
「『喉が乾いた』正解や。」
正解だったようです。何故か非常に緊張します。
「次。自分はなんでそんなジュース買えへんかったくらいでおちこんでんねん」
「…なんか寂しい気分だったんです、あたし、実はさっきも…」
「『ネガティブだから』正解や。」
今度は、端折られてしまいました。
「最後の問題。ネガティブな人間が喉乾いた時、言うのは、どないするんが
一番ええと思う?…いや、直感でええから答えてみ?」
「あたし直感とか、そういうの苦手なんですよぉ…」
「答えはこれ!『石川レボリューション21!』」
やたらテンポのいい会話とともに、あたしの右手にはいつの間にかコップが
握らされていました。おそらく、「飲め」ということなのでしょう。
断ろうかな、とも思いましたが先ほどのハイキックの鮮やかな軌道が
頭をよぎりました。第一あたしが中澤さんに逆らうなんて、無理というより無茶。
「これはな、裕ちゃんが22世紀からわざわざ持って来たモンでな、実は
めっちゃ高いねんで。飲みやすさが売りの…あぁ、ええから飲んで、ホラ。」
なみなみとつがれた無色の液体を、あたしは目を瞑って一気に飲み干しました。
「まずいもんやないやろ?むしろ元気が出てきたハズやで」
確かに、なんだか熱くなってきたような、気がしました。
「ところで、中澤さんはこんなとこで何をやってるんですか?」
「中澤さんに見えるやろ?ウチはUえもん言うてな、
よく間違われるんやけど、実は中澤さんちゃうねん。」
「えーでもさっき自分のこと裕ちゃんって言ってたじゃないですかぁ?」
「Uえもんかてゆうちゃんやないか!」
「そうですけどぉー」
「まぁそれはええわ。しかしめっちゃええタイミングやったわ…
助けにきたら、丁度困ってるところだったなんてまるでドラマやで。」
「よくわかんないれすけど、チャーミーかんげきです!」
「…おっと、効いてきたみたいやな。アレや、人間元気が一番やからな
辛気くさい面しとったら周りもなんや辛気臭くなってまうねん。
さて、ゆっくりしててええんか?お前の元気を見せるええチャンスやで…」
「あたしもそんなきがしれきました!そろそぉいかなきゃ!」
「完了…やな。」
楽屋のドアを開けるとさいわいまだ収録は始まってませんでした。
みんなはすごい仲良くおしゃべりしたり雑誌いっしょに読んだりしてました。
「あ、石川さん。さっきはありがとうございました…」
「どこ行ってたんだよー、もうすぐ本番はじまるぞー。」
「ごめん、さっきカオリ考え事してたからさー。」
「梨華ちゃんさっきの店の話だけど…」
みんながあたしの方を向いて、声をかけてくれました。
こんな嬉しいことはありません。やだ、泣いちゃいそう。
「みんな!」
あたしは嬉しくて、この嬉しさを伝えたくなって。
「ハッピーー!?」
両手を広げて、叫びました。
「うおっ、梨華ちゃん酒くせぇーぇ!」
「えっ、…ほんとだ!オマエ、何飲んでんだよ!?もうすぐ収録だぞ!」
「カオリ!カオリ大変だって!ちょっと目ぇ覚ましてよ!」
「酔っ払い梨華ちゃん?」
「お待たせしましたー!モーニング娘。さん、お願いしまーす!」
「お願いしますってやばい、ADさん来ちゃったよ?」
「ちょっと、ちょっと待っててください、すぐ行きますんでドア閉めて!」
みんながあたしを心配してくれました。
辛うじてドアを閉めた飯田さんが、ゆっくりとこちらを振り返るのが見えました。
そこから先はよく、覚えていません。
幸い顔にそこまで出なかったのと元々酔っ払ってるようなもんだし大丈夫という失礼な理由で
あたしはなんとそのまま収録に参加したそうです。
収録中のあたしはと言えば訳もなく笑いだしたりアドリブを連発したりそしてそれはむしろ
台本よりアドリブの方が多いんじゃないか位の勢いだったそうですが、殆ど覚えていません。
全て後から聞いた話です。勿論オンエアは怖いので見ません。
矢口さんによると「かなり面白かった」そうです。
収録後、緊急ミーティングが開かれましたが、あたしはもうその頃には素面に戻っていました。
飯田さんのお説教は2時間に及びました。
「まぁ、面白かったからいいや、なんならいつも飲んでからこいよ、キャハハ」
矢口さんのその言葉でミーティングはお開きになりました。
アタマが痛かった、それだけははっきり覚えていました。
こんな調子でした。
保全してくれた人には激しく感謝しています。
ありがとう。待たせてごめんなさい。では次。
第八話
『Do you think so?』
家に帰ったら裕ちゃんがいたけど、あたしはそんなに驚かなかった。
「おぉ、お帰り」
「…ただいま」
「いただいてるでぇ〜」
「どうやって入ったの」
「しかしなぁ〜豪華な部屋やなここは。」
「うん、ありがとう、その前に」
「無駄に、やけどな」
「…帰って。」
「だいたい勝手に人の部屋はいって、酒飲んで待ってるってどうなの」
「固いこと言っとったらアカンで」
「なに、なんか急用?」
「ものすっごい急用やで、自分聞いたら驚くんちゃうかな」
「えっ、何よ」
「まぁええがな、とりあえず座っとき」
「いや、ここあたしん家だし…まぁいいや、あたしも飲もうかな」
「乾杯しとこ!乾杯!」
「うわっ、これ全部空けたの?一人で…だよね?」
「待ちくたびれたわ、ホンマ…」
「いや、いつからいたのよ?」
「ここはええなぁ…いっその事ココ住んでまうか…」
「いや、困るからさ」
「冗談やて、じょーだん」
「本気っぽくて、恐いんだけど」
「そない邪険にすることないやんか…裕ちゃんえらい寂しいわぁ」
「いきなり来るのとか初めてだよね。で、急用ってなんなの」
「裕ちゃんがぁ…来た、言うたら…アレに決まってるやろ…」
「まさか…チューしに?ま、まさかね」
「それは無いな。」
「わかってたけどさぁ…」
「さて、そろそろ始めるか」
「なによ、いきなり立ちあがって」
「22世紀から助けに参りました、Uえもんです」
「あぁ、わかったわかった」
「なんやそのリアクション」
「ごっつぁんがこないだ言ってたよ、Uえもんさんがどうこうって」
「話通ってんのかい、したら早いな。ウチは」
「家燃やすのはやめてね、マジで」
「…なんか悩みとか、ないんかいな」
「ないよ」
「ところでさ、そのカッコ、なに」
「これか?…まぁ、ユニフォーム、ちゅうか」
「ユニフォーム…なんかの罰ゲーム、とかじゃないよね」
「罰ゲームて自分、ちょっと待てや。なわけないやないか…」
「違うんだ」
「ウチがなんかえらい恥ずかしい格好しとるみたいに聞こえるで」
「恥ずかしくないの」
「恥ずかしいことあるかい!」
「ならいいんだけどさ」
「なぁ〜。なんかあるやろ悩み。」
「ないよ」
「助けに来た言うてる人間に対して『悩みなんてないよ』って自分きっついな」
「ていうか、お酒飲みにきただけでしょ?そうなんでしょ?」
「しかし、ええ酒もっとるな、流石」
「もらいもんばっかだけどね」
「タダ酒か…ええなぁ、自分大人気やないか」
「…大人気(…今、だけのものだけど)」
「なんやて?」
「なんでもない、氷とって」
「あぁ、よっと」
「マドラーも」
「…なんでちょっとムッとした感じやねん」
「べつに」
「なぁ、なんかつまみないの?」
「まだ飲む気?弱いくせに」
「弱い?アホなこと言ったらあかんで、酒豪のウチを捕まえて弱いて」
「ていうか、さっきからもうぐでーってしてんじゃん」
「腰が痛いだけや、まだまだ全然イケルで」
「…んじゃ、ちょっと待ってて」
「…なんや、これ」
「ホルモン焼き、レトルトだけど」
「…」
「んで、こっちはナンコツの唐揚げ、レトルトだけど」
「…」
「最後は、白子の」
「もうええわ!どうせなら枝豆とか持ってこいや!」
「枝豆?え〜っと、…ごめん、それしかないや」
「珍味野郎やで…ホンマに」
「はいはい、好きなこと言ってなさい」
「…ねぇ」
「ん」
「そんなとこで寝ないでよ」
「誰も寝てへんわ!ちょっと休憩や休憩」
「絶対ウソだよ…」
「ウソちゃうで」
「…」
「う〜ん」
「なんかお腹掻いてるしさ…」
「そう言えばさ」
「ん?」
「裕ちゃんってさぁ、どうだった?」
「なんや?」
「…やめる、時さ」
「知らん」
「…?知らんって何」
「『中澤さん』に聞いたらええやん」
「あのねー、ふざけてる場合じゃなくてさー、こっちはマジメに」
「ウチかてマジメや、っちゅーねん」
「(どこがマジメなのよ)」
「大体人のことなんていくら聞いたってわからんのちゃうんか」
「そうかもしれないけどさぁ」
「とりあえず自分だったらどう思うのか語ってみぃ、話はそれからや」
「あたしが…どう思うか?」
「いや、いまいちピンとこないよ、卒業ってやつ自体が」
「…」
「あたし、中学しかでてないからさー。」
「…」
「丁度ね。高校やめる時がこんな、感じだったかもしれない…
あたし、今でこそ歌手にね、なりたくて高校やめたみたいな
話につなげちゃってるけど、当時はそこまでのしっかりした
決意じゃなかった気が、今となっては、してる。」
『(酔っ払っているせいだろうか、とりとめのない話が口を滑って行く。
裕ちゃんはそれを目を伏せたまま黙って聞いていてくれてる。それで、いい。』
「不安はあるけど、現状が変わるってことがなんだか嬉しい。
ドキドキするし、それにいつかは来る日だってわかってたからね。」
「…」
「だけどさ、寂しいってのは勿論でさ、やっぱり……」
「…」
「…ねぇ」
「…」
「…ババァ」
「…誰がババァやねん…」
「寝てても、わかるんだ…すごいな」
「むにゃむにゃ…痛っ!」
「ごめん、力入りすぎた」
「めっちゃ痛いわ!なにすんねん人が気持ちよう寝とるっちゅーのに…」
「ていうか、やっぱ寝てたんじゃん…一人で喋っちゃったよ鬱だ…」
「いや、話長いわ…自分マジで」
「つーか助けに来たとか言ってなかった?」
「せやけどやなぁー」
「愚痴くらい聞いてくれてもいいでしょ!」
「…元気でたみたいやないか、裕ちゃんも嬉しいわ…」
「つーかもう寝ていいよ…布団敷くからそこで待ってて」
「なんや、結局力になれんかったみたいで、スマンなぁ…」
「泊まっていけばいいのに」
「裕ちゃんかて忙しいっちゅーねん…あっ」
「ほら、よろよろしてんじゃん、せめてタクシー呼ぶから待ってて」
「大丈夫やて、ほらほら」
「まぁいいけど、気をつけてよ…ホント何しに来たんだか」
「…」
「何、あんまジロジロ見ないでよ」
「まぁ……頑張りや。」
ドアが開いて、閉まるまでの間に、その言葉があたしに染みていった。
ほんと、何しに来たんだか。散らかったリビングを見ながらそう思った。
お酒のせいか、最後に見せてくれた笑顔が目の奥でくるくると回っていた・・・。
こんな調子でした、思い入れナシでは書けなかった
保全のいらないスレ作りを目指して頑張ります、ほんとすいませんでした
やっちゃいました。
>>245の下2行は脳内であぼーんしてもらえると有り難いです。下書きが残ってた…。
ヒサブリにキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
全体的にマターリしてる感がE
民生のNewAlbumもE
俺は知ってるぜこの小説が面白いってことを。
だからそんなに謝らないでくださいませ。
やったー!!やったよ!!
待望の待望の小説・・・・。
保田
257 :
名無し:02/09/28 23:59 ID:CxcQNbNs
保全します
258 :
ミキテー:02/09/30 06:10 ID:L9SHtFe3
大明神
259 :
ミキテー:02/10/01 23:15 ID:6ilSAnB2
だんご安倍
260 :
名無し:02/10/04 14:43 ID:GmCCCYDS
保全
相思相愛保全
262 :
名無し:02/10/06 23:49 ID:w6xBe1H7
保全
263 :
_:02/10/07 00:13 ID:FJyeo2Hz
保全あげ
保田
ごまっとう保全
266 :
名無し:02/10/12 00:31 ID:Gkaa2kHM
ツインテールのミキティー萌え
267 :
大好き:02/10/12 03:11 ID:KpmRsuEJ
ごまっとう
268 :
名無し募集中。。。:02/10/12 03:12 ID:NPsQJDcd
ミキティーって何がはいってるんですか?
ミルクで良いの?
>>268 美貴茶はそのままでお召し上がり下さい。
6期増員決定保全
衝撃のあややにキスされ保全
保田圭
保田お圭さん
保全
圭
全
277 :
ヘギョン:02/10/26 04:55 ID:4FSUEyqw
圭ちゃんは労働党で働くべきだと思います。
278 :
名無し:02/10/27 23:14 ID:Kx+zK7+q
保田
279 :
名無し募集中。。。 :02/10/29 01:08 ID:W6usWoG5
っていうか飲んだのはあんただろ!と言いたい。
281 :
名無し募集中。。。:02/10/31 09:56 ID:HV/xzvj5
ミキティのミルク入り・・・(;´Д`) ハァハァ
保
田
圭
ち
ゃ
ん
288 :
名無し募集中。。。:02/11/05 18:39 ID:mw0eL68Y
290 :
:02/11/07 02:00 ID:0kl/bNgx
保全
圭ちゃん!!!
保
大宮あややコン保全
295 :
名無し募集中。。。:02/11/19 06:46 ID:0rIHRcQm
保全
圭ちゃん!
高嶋彩
保田保全
300
ho
鳩尾に食い込むような話キボン保全。
303 :
名無し募集中。。。:02/12/04 04:26 ID:7KqBmJbj
保全
304 :
:02/12/04 23:42 ID:jmWyUJNG
ふ 普段は
じ 地元の彼氏に
も もっともっととねだる
と とてもじゃないが
み みんなには言えたもんじゃない
き 金玉大好き女
圭ちゃん遅れたけど誕生日オメ!