86 :
LOVE:
なち真里小説―Sweet Lover―
裕ちゃんがここに来る予定時刻まであと10分。
みんなは裕ちゃんを笑顔で迎えようと、なんだか変なテンションではしゃぎ
あってる。―――と、少し遠くで車のドアがばたんって閉まる音がした。
その音に、全員が全員の顔を見まわす。
「こんばんは―。お待たせしました、嬉楽ですけど〜」
裕ちゃんの声が響く。
スタッフから指示があって、みんなは予定通りに体育館のステージに並んだ。
もうすぐ、ここに裕ちゃんが来る。卒業式が終わったら、
残された10人の時間はあと少し・・・。
裕ちゃんの声がしてしばらくして、学校のドアが開く音がした。
少しずつ、少しずつ足音が近づいてくる。
そして――
体育館のドアがそーっと開き、体育館中央にスポットライトがつく。
87 :
LOVE:02/05/13 19:28 ID:XB3nC2Xn
なち真里小説―Sweet Lover―
「ただ今より、中澤裕子の」
「卒業式を始めます」
加護ちゃん辻ちゃんの声でステージの幕が開く。
そして、ゆっくりとステージを降りた。
裕ちゃんの前に並んで、まずは圭織が折り紙で作った首飾りと名札を渡す。
圭織がもとの場所へ戻るの確認してから裕ちゃんのところへ、真理達が作ってきた
オルゴールを持っていく。
「はい、裕ちゃん。これは、みんなで作りました。」
そっと裕ちゃんに手渡す。
裕ちゃんはなっちからオルゴールを受け取ると、それを見つめて涙を一滴落とした。
「開けてみて。」
裕ちゃんにそう言うと、裕ちゃんはそっとオルゴールのふたを開けた。
オルゴールからは、LOVEマシーンが流れ出す。裕ちゃんの瞳からは止めど
無く涙が溢れる。
88 :
LOVE:02/05/13 19:29 ID:XB3nC2Xn
なち真里小説―Sweet Lover―
なっちが自分の並ぶ場所に戻ると、圭ちゃんが裕ちゃんへの思いを話しはじめた。
圭ちゃんは涙声になりながら、それでも瞳から涙を溢さないように時々天井を見
つめていた。
「裕ちゃんとは、たくさん想い出を一緒に作ってきた・・・」
圭ちゃんの次は真里の番。真里は、裕ちゃんを見つめて話しつづける。
「・・・これからはみんなで頑張るから、裕ちゃんも頑張ってね」
裕ちゃんは涙を流しながらも微笑んで、真里の言葉に何度も頷いていた。
そして、加護ちゃん・辻ちゃん・梨華ちゃん・よっすぃ〜・ごっちん・圭織の順番
で、一人づつゆっくりと裕ちゃんへの思いを話していく。
圭織が終わって、ついになっち。
絶対…絶対泣かないよ。「泣きません」って決めたもん。
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LOVE:02/05/13 19:31 ID:XB3nC2Xn
なち真里小説―Sweet Lover―
「びっくりした?」
泣かないように頑張って笑顔で聞いてみた。裕ちゃんは涙を瞳から溢れさせた
まま頷く。
「これをね、今日作ってて・・・」
泣かないって決めたのに、笑顔でって決めたのに・・・話してたら、裕ちゃんの
顔見てたらいろんな思いが溢れてきて涙が溢れてきた。
「・・・モーニング娘。にとっても、なっちにとっても、裕ちゃんはすごい
大事な人・・・。裕ちゃんとの想い出は、裕ちゃんが卒業しちゃっても、
ずっとずっと…宝物みたいにずっと閉まっておくから・・・
フレーフレー裕ちゃんで、頑張ってね」
最後だけは…って思って、一生懸命笑顔を作った。きっと、裕ちゃんから見たら
泣き笑いですごい顔になってると思うけどさ・・・。
「ありがと」
なっちがそう言うと、裕ちゃんはそっと自分の涙を拭った。
90 :
LOVE:02/05/13 19:32 ID:XB3nC2Xn
なち真里小説―Sweet Lover―
「私も・・・みんなに逢えてよかった。あとのモーニング娘。はよろしくお
願いします。どうもありがと」
裕ちゃんは全員の顔を見てゆっくりと言った。
9人と裕ちゃんが向かい合って、全員が瞳からきれいな涙を流してる。
「はい、OKです。」
スタッフの声で裕ちゃんの卒業式・・・10人最後のロケが終わった。
91 :
LOVE:02/05/13 19:33 ID:XB3nC2Xn
なち真里小説―Sweet Lover―
その声を合図とするように、9人がいっきに裕ちゃんを囲むようにして
裕ちゃんに抱きついた。
「ゆうちゃぁ〜ん」
「なかざわさぁ〜ん」
みんな溢れてくる涙を止められずにいる。
「みんな、ありがとう。ありがとうな。」
裕ちゃんは涙を拭って笑顔で一人づつの頭を撫でてる。
―――――――――
その後ホテルに戻る頃には全員に笑顔が戻っていた。特に裕ちゃんは、なんか
しっかり意志を固めることが出来たのか、すごくきれいな顔をしていた――。