71 :
LOVE:
なち真里小説―Sweet Lover―
「なんやねん、最後のロケやのに、全員一緒ちゃうやんか・・・」
カメラがまわってないとこで裕ちゃんが呟いた。その一言にみんなが裕ちゃんの
方を見た。
「…なっ、なんやねん。みんなでこっち向いてぇ。学校の雪降ろし、ちゃんと
しっかりやるんやで!後、お土産やさんの手伝いも、迷惑かけたあかんで。」
裕ちゃんは笑顔でみんなに言った。でも、その笑顔は何処か寂しそう。
きっと、最後は全員でロケしたかったんだよね。
72 :
LOVE:02/05/12 01:58 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
「そろそろ各場所に移動してもらいます。」
スタッフの声で3つのグループにわかれた。
「石川っ、行くでぇ。」
「はいっ!」
まずは裕ちゃんが車に乗り込んだ。石川もそれに続く。
「じゃあ、圭織達は式場作り頑張ってね。」
「そっちこそ上手くやってね。」
裕ちゃんたちが出発した後、おいら達も目的地へ向かって出発。
73 :
LOVE:02/05/12 01:59 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
おいらは後藤・圭ちゃん・よっすぃ〜と4人で裕ちゃんへのプレゼントのオルゴール
製作へ向かう。お土産やさんの手伝いってのは、もちろん裕ちゃんをだます為の口
実。ちなみになっちたちは小学校で雪降ろしではなく裕ちゃんの卒業式の舞台作り。
「裕ちゃん、喜んでくれるかな?」
「どうだろうね。でもさ、やぐっちゃん。あんなに全員でロケしたがってたから、
きっと大丈夫だよ」
「そうだね。」
おいら達はガラス工房に着いてからすぐに作業に取りかかる。おいらはよっ
すぃーとオルゴールの組み立てを。早く作って早く学校のチームと合流しなきゃ。
とにかく真剣に、裕ちゃんの卒業の晴れ舞台を想像しながら作業を進めていった。
74 :
LOVE:02/05/12 02:00 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
――――――
――――
―――
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―
「オルゴール出来たよぉ〜」
オルゴールを入れる本体を作ってた圭ちゃんと後藤のところへ、2人で組みた
てたオルゴールを持っていく。
「よ〜し、じゃあ組みたてようか。」
4人で協力してオルゴールを本体に取りつける。
「ねぇ、ちゃんと出来てるか試聴しようか。」
「だね。」
♪♪〜♪〜〜♪♪〜〜
「はぁ〜、完璧だね。」
「よしっ!これ持って学校組と合流するぞぉ!」
「「「お〜っっ!!!」」」
75 :
LOVE:02/05/12 02:01 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
おいら達はガラス工房の人にお礼を言うとすぐに移動用の車に乗り込み学校へ――。
「オルゴール組、到着ぅ〜。こっちの手伝いに来たよ〜」
「お疲れ〜。こっちもけっこうイイ感じになってきたよ〜。」
「オルゴール組が来たってことは、そろそろ梨華ちゃんも合流するはずだベ。」
休憩ついでに少し談笑してると、梨華ちゃんが裕ちゃんとのラーメン屋さんの
お手伝いからこっちにやってきた。
「チューリップ農園のお手伝いって言って来ました。」
「裕ちゃんどうだった?」
「なんか気合入ってたみたいで頑張ってましたよ。‘みんな頑張ってるん
やろか〜?’ってちょっと心配そうにしてましたけど。」
「そっか・・・。」
「じゃあ、裕ちゃんに負けないように最後の仕上げといきますかっ!」
「廊下の装飾。裕ちゃんにメッセージと写真ね。」
76 :
LOVE:02/05/12 02:04 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
マネージャーから一人ずつ以前に選んで預けておいた写真を受け取って、それぞれ
に裕ちゃんへの思いをメッセージとして写真を貼った画用紙に書いていく。
・・・おいら、そう言えばいつからこんな写真裕ちゃんと撮るようになったんだろう??なっちと付き合い始めた頃だったかな。
写真を見ながら考え事してると、カメラさんがこっちにやってきた。写真を写して
から矢口にカメラを向けた。
「こんな写真ばっかですよ、裕ちゃんと撮ると。いっつもそう…。
で、いつも矢口が嫌がってるんですよ。」
おいらはカメラに向かって…ううん、OAを見てくれるだろう裕ちゃんに向かっ
て言った。
― 時刻:5時ちょうど
あと1時間で裕ちゃんがここにやってくる。何にも知らない裕ちゃんが…
おいら達は一度収録を止めて衣装がえ。裕ちゃんの卒業式だもん、まさかジャージ
みたいな服じゃダメでしょ。
77 :
LOVE:02/05/12 02:05 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
「や〜ぐたんっ!」
衣装を着替えようと、楽屋がわりに借りた教室へ向かう途中になっちが
後ろから抱きついてきた。
「なっ、なに?!急にビックリしたぁ」
「ねぇ、着替えるまで時間あるっしょ?少しだけ2人でいようよ。」
なっちはおいらの手を引いて校舎の外に出た。
「??どうしたの?なっちぃ・・・」
「KISS・・・キスして。今、ここで…」
なっちがおいらをぎゅって抱きしめてきた。
「KISS?いいよ。誰も見てないみたいだからさ…」
少し背伸びしてなっちの唇にそっと自分の唇を重ねた。
78 :
LOVE:02/05/12 02:06 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
「・・・今日は…嫉妬しないから。やぐたんが裕ちゃんに甘えても、その逆でも・・・。」
「へっ??」
「今日はね、卒業式だし。なっちが嫉妬して裕ちゃんとまた気まずくなるの嫌だからさ。その代わり、ホッペにちゅーまでだからね。」
なっちはおいらのホッペをつんってつついた。
「なっ?!キスなんてするわけないでしょ!」
「やぐたんがしなくても裕ちゃんがするもん。それだけ約束だからね。」
なっちはおいらのおでこに自分のおでこをくっつけた。
「わかりました。約束します。」
おいらがそう言うと、なっちはにっこり微笑んだ。
そして目が合うとそのままどちらからとなく唇を重ねた。
79 :
LOVE:02/05/12 02:07 ID:HFXSLyNv
なち真里小説―Sweet Lover―
「・・・約束だよ。」
「わかってる。」
少し不安そうななっちのホッペにキスをして、なっちをぎゅっと抱きしめた。
「そろそろ着替えに行こう。ねっ。」
抱きしめた身体を離して、なっちの手をそっと握った。
そのあったかくて柔らかい感触においらは「絶対さっきの約束を守る!」
って心で決意した―――