新・一緒に暮らすならどの娘?part5(何でも有り)
>>595からの続き
「あ、そうだ!」
と声をあげたのは矢口さん、ジュースを飲むために話に一段落置いた後に発せられた言葉だ。
「今日ねぇ買い物行ったのね?で―――」
どうやらハワイ旅行のことを後藤さんに自慢したいらしい。
当てるまでの経緯を事細かに話している。
「えぇっ!?嘘ぉ、ハワイー!?」
「これがマジなんだよね〜ね、准くん?」
「俺もまだ信じれないんだけどね〜マジみたいだよ・・・・・」
後藤さんはまだ信じられないような顔をしていたが、矢口さんの次の行動で信じることになった。
「あ〜まだ信じてないっしょごっちん!?これが証拠のチケットとパンフレットだよ!!」
矢口さんが持ってきた―矢口さんよりも格段に小さい―ウエストポーチから紙切れと小冊子を取り出した。
「あ〜ホントだ〜・・・いいなぁ〜ごとうもハワイとか行ってみたいよぉ〜」
と言いながら手をフラダンス風にひらひらさせている(古!
「・・・ごっちんも一緒に行く?ハワイ。」
「え!?」
「部活とかまとまった休み取れないだろうけどさ、どう?
矢口と一番仲良いのごっちんたちだしさ?」
「い・・・行きた〜い!!部活とかどうでもいいよハワイに比べたら!!」
「ホントにぃ!?いやぁ、私も誰と行こうか迷ってたんだよね〜」
「もちろん准くんも来てくれるよね?ハワイ」
ぼんやりと話を聞いていたので一瞬どういうことかわからなかったが、突拍子も無い発言にただ驚いた。
「いいっ!?」
「なんか合コンみたいで楽しいじゃん、男いたほうがさ?」
「あ〜パスパス、第一俺パスポートとか持ってないし」
「んあ?それなら私も持ってないけど・・・」
「ホラ!一緒にとりに行きゃいいじゃん!?准くんと仲良い優治って子も誘ってさ?どう?」
いつの間にか優治の名前まで覚えている矢口さんにも驚いたが、
優治がいるなら行ってもいいかな・・・・・と一瞬でも思った自分にも驚いた。
「行きたくない、ハワイ?」
「そりゃ一回ぐらいは行きたいけど・・・・・」
「じゃあ決まり!優治って子も早いこと誘ってね!!パスポートは各自で取りに行くこと、ね?」
き、決まってしまった・・・・・
「やったぁ、私も一回行ってみたかったんだ〜」
無邪気に喜ぶ後藤さんを見てたら、別にいっか〜って思えてくる・・・不思議だ。
「詳しい日にちとか決まったらまた話すからさ!」
その後はハワイがいかにいい所かを聞かされて帰った。
―――――
「ねぇ准く〜ん。」
「ん〜?何?」
帰りの道で自転車をこぎながら後ろの荷物が話し掛けてきた。
帰りは上り道ばかりなので正直話しながらこぐのは辛いのだが・・・・・
「ほんとにハワイ行きたい?さっきはごっちんの前だったからノリで決めちゃったけど・・・・・
ちょっと悪かったかな〜ってさぁ・・・・・」
普段は大雑把で適当に物事を決め付ける&人に押し付ける矢口さんが他人から嫌われないのは、
たまに見せるこういったしおらしい所があるからなんだ、と俺は勝手解釈している。
根は素直で優しい人間だと、誰もが解かっているからみんな何も言わずに付き合う。
そんな一種のカリスマ性をもっているのだ。
「ハワイ行きたいのはホントだよ、優治誘ってくれたのも嬉しかったしな。」
「ホントに?なら良かったぁ〜冷めてる人連れてっても仕方ないもんねぇ!」
たまに吐く‘毒’も、嫌味に聞こえなくはないが、相手の意思を尊重しての‘毒’だと
知っているので、軽く鼻で笑った。
「そりゃそーだわな。でも楽しみっつったら楽しみだよ?」
「・・・やっぱ部活とか心配だよね?」
「確かにね・・・・・でも何とかなるんじゃない?せっかくだから、な?」
「うん・・・・・・・そだね!!」
矢口宅までの最後の坂を登りきる、ウチはもう見えているがその前を通り越して一軒隣まで自転車をこぐ。
「じゃあ今日はありがとね!またねぇ〜」
手をひらひらさせて自分の部屋に戻る矢口さん、それを見届けてから俺も自宅に帰った。