真剣にごっちんの小説を書こうと思う。

このエントリーをはてなブックマークに追加
12軋む赤絨毯の部屋 ◆Th/KWkdQ
「電車の中で」続き

「後もう少しですねえ」
電光掲示板の表示を見て、梨華ちゃんがつぶやく。
約二時間半かけて、私達は目的地に辿り着こうとしていた。
「ねえ、ちょっとトイレ付き合ってほしいんだけど・・・」
「矢口さん、そのくらい一人で言ってくださいよ〜」
「だあってさ、一人だったらばれた時怖いじゃんかぁ」
「まったく・・・圭ちゃん、付いてってあげよ」
あたしと矢口さんは、嫌がる圭ちゃんを連れて、トイレへ向かった。
まったく、ぞろぞろ多人数で行くより一人の方が怪しまれないのに・・・

これは、矢口さんがトイレに入っている間、近くの食堂車での話。

「京都のほうは晴れてると思ったのに、全然真っ暗だなぁ・・・」
「別にずっといるわけじゃないんだし・・・傘ぐらい向こうで売ってるっしょ」
「そうじゃなくて・・・」
あたしは、暗い空が嫌いだった。子供の頃見た、あの空・・・
それは、あたしが6つのときの話。家族で行った遊園地で起こったことだった。
にごった雲がだんだん黒さを増して、時折火花が飛ぶように稲妻が雲間を走る。
そしてぱらつき出す大粒の雨。あたしは震える唇を噛み締め、
抱えていたぬいぐるみを傘代わりに両親を探して走り回る。どこにいるかなんて知らないのに・・・
暗い遊園地はとても恐ろしくて、いつもは喜んで駆け寄る人形でさえお化けに思えた。
どうして、お父さんやお母さんはあたしを置いてっちゃったの?どうしてあたしがこんな目に・・・
辛くて、立ち止まりそうになりながらも、涙で前が見えなくても、あたしは走った。
走って、走って、走り続けた。その後は・・・よく覚えてない。

「ああ、嫌な事思い出しちゃった」
「何がよ」
「だって、あんなことがあってさあ・・・今でもはっきり覚えてて・・・」
「暗い空が苦手ってワケだ」
「うん・・・」
そのことを話している間、圭ちゃんは真剣に聞いてくれていた。
ちょっと厳しい人だけど、時々お姉ちゃんみたいに優しいんだよね・・・
「あ〜、こんなとこにいたぁ〜!」
聞きなれたハスキーな声。振り向くとそこには、恨めしそうな顔をした矢口さんがいた。
「も〜、あたしのことほっといて二人でこんなとこにぃ〜」
「大声出さないでよっ、ばれちゃうでしょ〜」
あたし達は急いでその場から退散した。まったく、最後まで人騒がせなんだから・・・

To Be Continued...