小説『ヤグデレラと黒雪姫』

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95黒雪姫4
黒雪姫は大木の木下で眠りについていた。
夜迷った挙句の果て、雨に降られ、この大木の下で雨宿りをしたとき
睡魔に負けて眠りについたのだった。
そんな眠りについていた黒雪姫を起こすかのように
夜露で出来上がった葉先の雫が黒雪姫の頬に垂れる。

「ん…。」

目を開くと、小鳥達が黒雪姫の周りを跳ねていた。

「あら…♪小鳥さん。おはようございます♪」

小鳥はぴょんぴょん跳ねると、首を傾げたりして黒雪姫の指に乗った。
それが可愛くて黒雪姫から微笑みが漏れる。
風が吹き込むと鳥達はいっせいに飛び立っていく。
黒雪姫の手に乗っていた小鳥も飛び去った。

「またね♪小鳥さん♪」

黒雪姫は軽くパッパッとスカートを払うと、立ち上がった。
小人の森を一先ず抜けようと黒雪姫は歩いた。
しかし、方向も道もわからずやはり迷ったままになってしまう黒雪姫。
96黒雪姫4 :02/05/07 00:02 ID:KjQAmOhI
「喉乾いたなぁ〜♪あっ♪泉があるわっ♪」

偶然に黒雪姫は泉を見つけた。
泉のほとりに座って、手で水をすくう。
透き通った水が太陽の光でキラキラしている。
軽く飲んでみると、飲める水だとわかった。
何口かすくって飲む…ふと水面に自分の顔が映っているのがわかった…。
何処となく寂しい顔…。
そう自分に見えた顔…。

「私にはいくところがないの…これからどうしたらいいかもわからない…。」

ふと、黒雪姫の脳裏にひとみ王子が浮かんだ。
そして、それと同時に部屋に招待状を置き忘れてきていることがわかった。
しかも泥に汚れた、舞踏会用の衣装ではない普通の服。

「これじゃ…舞踏会いけないわよね…道もわからないものね…。」

黒雪姫は小石をつかんで泉に放った。

チャポン…。

水面が揺れる…すると一人の女性があらわれた…。
思わず黒雪姫は悲鳴を上げていた。

「きゃぁぁぁ!?」
97黒雪姫4 :02/05/07 00:03 ID:KjQAmOhI
なぜなら、頭に斧が3本刺さっている女性が現れたからだった。
そう、小人の森でひとみ王子が出会った泉の精である。
激しく流血をしているが、相変わらずのスマイル。
見た目はお岩さんとお化け屋敷に出てくる化け物を掛け合わせた感じだが…。

「大丈夫ですか…?」

思わずそう問い掛けなくてはいけないほどの状態であるのは一目瞭然である。

「大丈夫でーす、ミカだっぴょーん。貴女が落としたのは金の斧?銀の斧?鉄の斧?」

「あの…小石ですけど…。」

「Yes、super cool!発音バッチシ!じゃあこの三本あげちゃいまーっす!!」

泉の妖精ミカは頭から斧を次々引き抜いていく、鯨の潮吹きのような見事な紅い液体の吹き方。
これでよく生きてられるな…と思ってしまうくらいである。

血塗られた斧を黒雪姫手渡すと、ミカは沈んでいった。
黒雪姫は、要らないといおうとしたが言うにいえなかった。
一先ず、斧と紅く染まった手を泉で洗った。

そして身体に不釣合いな斧を一生懸命抱えて黒雪姫は歩き始めた。
すると、前方に小さな女の子が歩いているではないか。
初めてこの森で出会った人、呼び止めるしかなかった。

「あのっ…すいませんっ♪」