小説『ヤグデレラと黒雪姫』

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81黒雪姫3
コンコンと部屋の戸をノックすると

「だれ?」

と、聞こえる。

「和田でございます。」

「どうそ。」

和田が部屋に入ると、いつものような微笑を浮かべた黒雪姫が居た。

「どうしたの?和田さん♪」

「あ、いや…夜空でも見に行きませんか?今日は月が良く見えます。」

「そうね。それもいいかもしれないわ♪行きましょう♪じゃあ、ちょっと部屋の外で
まっててね、準備するわ♪」

「はい。」

静かに和田は部屋を出ると戸を閉めた。
そして、それを確認すると上着を羽織る。
このとき、黒雪姫は花冠のことを思い出した。
82黒雪姫3 :02/05/02 00:19 ID:+44Fes7+
(そう言えば…作るって約束してたのに…、いいわ、私のあげよう。)
そうおもって、手提げに花冠を入れて部屋を出た。

「いきましょう♪和田さん。」

誰にも見られぬようにそっと、馬舎から馬を一頭引き出し
後ろに黒雪姫を乗せた。
そうして、黒雪姫は和田に誘われ城を出た。

「和田さーん?何処まで行くのー?」

少し馬に乗ったときに黒雪姫は和田の様子が少し変わっていることが
感じた、返事をしない和田に不安を覚えるが
飛び降りる事など、走っている馬の上からではムリである。
そして、ついた先は小人の森入り口だった。
馬が止められると先に和田が降り、黒雪姫に手を差し出す。
その手につかまって降りる。

「森の中で月を見るの?」
83黒雪姫3 :02/05/02 00:20 ID:+44Fes7+
和田は剣に手をかけた。
完全に手が震えている、それは和田だけでなく、黒雪姫にも伝わっていた。

「そう…お母様に頼まれたんですね…和田さん…。」

「!!!!!!!」

黒雪姫は気付いていた。
いきなり月を見に行こうと言い出した和田に
もしかしたら…という考えが頭によぎっていたのだ。

「いいですよ♪ここで私を切るんですね…。」

カタカタ震えでなる剣は震える手に握られ、少しずつ鞘から露出される。

「あ…渡すの忘れてたんですけど…これ…花冠♪」

そう言って黒雪姫は和田の頭に花冠を取り出してかぶせた…。

「やはり…私には出来ません、姫様お逃げなさい!!もう二度とチャーミー王国には
戻ってきてはなりません…後の事はお任せください!!ではっ!!」

心打たれた…。
自分の死を目前にした女の子が殺される相手のために花冠を用意していたのだ。
黒雪姫を国境である小人の森に置き、その場を和田は去った。
そして、和田は早馬で飛ばしていくと肉屋へ向かい、
ブタの心臓を買って城へ持ち帰ったのだった…。