小説『ヤグデレラと黒雪姫』

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71黒雪姫3
招待状を受けとった日の夜。
いつものように自室で食事をしていた黒雪姫。
今日もいっしょのゲンキンねずみラッキー。

「ラッキー♪聞いてっ♪今日ね、お隣りの国のひとみ王子様がいらっしゃったのよ♪」

そんなこと聞いてねぇよ、といわんばかりに黒雪姫の手からちぎられるパンを
一生懸命に齧っているねずみのラッキー。
そして、続けて今日の出来事をねずみ相手に話す黒雪姫。

「それでね。うふっ♪今日招待状頂いたのよっ♪」

それも食ってやろうか。
といわんばかりに、招待状の端をくんくんと匂い嗅ぐラッキー。

「この舞踏会でお嫁さんを選ぶんですって♪もしかしてわざわざ届けてくれたのは
私を選んでくれるってことなのかなぁ〜♪ねぇっ、どう思う?ラッキー。」

そう尋ねるが、ねずみにわかる訳がない。
そんな黒雪姫の話など聞かず、自分の食事が終わったラッキーは
とっとと、自分の帰る場所へと帰っていった。
72黒雪姫3 :02/04/30 00:05 ID:AP1CcmVp
「もうっ♪ひとみ王子様に私をとられちゃうと思って嫉妬してるのね♪可愛いんだから♪」

勘違いも程々にしてもらいたいものだ。
ねずみが嫉妬するわけねぇよ。

「さっ、今日は何の本読もうかしらっ♪ホットドックプレス読もうかしら♪」

ホットドックプレス。
若い男性向けの雑誌である。
この本の回の特集はH告白。
非常にいやーんな内容である。
何度も目を通している黒雪姫だが、顔を真っ赤にして黙って読んでいた。

「殿方は…こんな事が好きなのねっ♪これが萌えであったりとか、ハァハァだったりとかするのねっ♪」

見ちゃいけない、でも見たいというような感情を抱えながら黒雪姫は特集ページをめくっている。

「いまいちわからないんだけど…どういう意味の言葉なのかしらっ…この言葉。」

育ちが良い黒雪姫には低俗な言葉がよくわからない。
だから萌えもハァハァもわからないのは当然の事である。
73黒雪姫3 :02/04/30 00:06 ID:AP1CcmVp
少し気になって、国語辞典でその気になった言葉を捜して…

「キャッ♪恥ずかしい…いやらしいわっ♪殿方って…、ひとみ王子様もこうなのかしら?
ハァハァとか萌え〜とか言うのかしら…。」

次々にホットドックプレスをめくっているが唯一開けないページがあった。
何故か張り付いていて開く事が出来ない。

「どうしてこのページは見られないのかしら…?」

ムリに開こうとすれば、破けてしまう。
仕方ないので目次でそのページが何であるのかを調べてみると

『女体解体全書』

「???医学書かしら…?この本…。」

明らかな勘違いの黒雪姫。
この剥がれないページは捨てた家来が
(不適切な言葉)で(不適切な言葉)をかけてしまい閉じたことによって
出来上がったものだった。
そんなことを知る由もなく、ホットドックプレスを読み続けた。