小説『ヤグデレラと黒雪姫』

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55黒雪姫2
黒雪姫の顔は赤くなっていた、しかし、それに負けず劣らずひとみ王子の顔も赤くなっていた。
お互い幼少の頃までしか顔を会わせた事がなかった。
そして数年、二人とも大人の顔になり、それなりの色香を持ち合わせるようになっていたのだ。
何処となく面影があるからこそ、わかりはするものの、まったくの別人、
まったくの美少年、美少女の出会いのようなものだった。

「すこし、話でもしようか、黒雪姫様。」

「あ、……はい。では城の方に…。」

「いや、ここで良いよ。」

そう言って、ひとみ王子は野原の上に腰をかけた。
そして黒雪姫も続いて座る。

「何年ぶりでしょうか…?」

「もう4年くらいあってないね…。」

「そうですね…。」

「あの、その花は?」

ひとみ王子が聞いたのは、黒雪姫が摘んでいた花。
黒雪姫は恥ずかしそうにその返事をした。
56黒雪姫2 :02/04/27 00:13 ID:EINdYZer

「これで花冠を作るんです…。」

「花冠…良かったら俺にも作ってくださいませんか黒雪姫。」

「はいっ♪よろこんでっ♪…あっ…。」

勢い良く返事をしてしまい、また顔を真っ赤にする黒雪姫。
真っ赤にしながらも上手に花冠を作っていく。
数年やっていない、この花冠作りであるが、もう身体に染み付いているのか
それなりな形で出来上がった。

「あの、出来上がりました…。」

恥ずかしそうに差し出す花冠を、両出で受け取るひとみ王子。
すっと頭にかぶって

「似合います?カッケーっすか?」

と尋ねた。

「はい♪とっても♪」

「じゃあ、お願いなんだけど…もう一個作ってくれないでしょうか?」

「はいっ♪」

また再びひとみ王子は花冠つくりを依頼すると
今度は出来上がった花冠を受け取ると、黒雪姫の頭に乗せた。

「似合ってますよ。」
57黒雪姫2 :02/04/27 00:14 ID:EINdYZer
「あ…どうもありがとうございます…。」

「あ、そうだ…今日参ったのは…。」

いよいよ本題に入るようだ。
ひとみ王子は懐から手紙を取り出して、黒雪姫に渡した。
黒雪姫は手紙を受け取ると表を読み上げる。

「舞踏会への招待状ですか…?」

「はい。私の嫁を選ぶ舞踏会のようです…一般の方も呼ぶようですが…
俺は今日ひさし振りにあって…その…貴女に来てほしいなって思ってます…。」

「…………。」

顔がカンカンに赤くなって、両者お互いを見ることが出来ない。
ただ一言、黒雪姫は「ありがとうございます」と小さな声で答えた。

「じゃあ、俺はここで失礼します。あの、良く招待状を読んで是非きてくださいねっ!」

「はいっ♪」

ひとみ王子は白馬にまたがると、黒雪姫に手を振った後颯爽と去っていった。
いつまでも後姿を見つめていた黒雪姫。
どうやら恋をしちゃいました?
恋する女は美しい。
そう、その言葉の通り黒雪姫はこの世で一番美しい表情をその時していた。

城の中へ戻ると、黒雪姫は和田との約束も忘れて自室へ戻り
封筒を開けて中身を読んでいた。