小説『ヤグデレラと黒雪姫』

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34黒雪姫1
小さな穴に戻っていくラッキーを見届けると、
小さなランプと月明かりの窓の下、愛読書を読みふける黒雪姫。
愛読書はchain!chain!chain!

写真集かよ…。

「ヤグたん萌えぇ〜。ハァハァ。」

などと抜かしている。
本当の意味も知らずに喋るこの娘はある意味純粋すぎて怖い。

「殿方はこういう本が好きよねぇ〜♪なぜかしら…萌えでハァハァってことよねぇ〜?」

「この石川梨華ちゃんって可愛いわねっ♪いかにも『しないよ』ってかんじねっ♪」

いや…するだろ。
35黒雪姫1 :02/04/22 00:05 ID:PpeGWNFP
とにかく、彼女の愛読書と言うのは変わったものが多い。
このchain!chain!chain!のほかに、ホットドックプレス、
FRYDAY、読売新聞(古新聞)、国語辞典などがある。
一貫性も共通性もない。
穴が開くほど読んでいると思ったら、ただ単にラッキーに食われた跡だったという
エピソードもある。

こんな愛読書をどのようにして手に入れているのか。
それは、掃除を言いつけられている黒雪姫の生活スタイルに関係していた。
掃除では清掃をする他にゴミを片付ける作業がある。
このとき、家来の部屋までやらされるのだが、その時にゴミ箱に入っていた
これらの本を人の目を盗んで部屋へ持ち帰ってくるのだ。
よって、少しずつ蔵書数が増えてきているのである。
たくさんの本を読む。
昔は嫌でしょうがなかったが、いざこういう環境になると
楽しみな習慣へと変わっていくものなのだ。

写真集を眺める事1時間…。
そんなに眺める物でもないだろうと思うが…。
36黒雪姫1 :02/04/22 00:06 ID:PpeGWNFP
それでも、眺めていれば目が疲れてくるものである。
次第に目が重くなって、夜が睡魔を誘う。
大きく口を開き欠伸をすると

「もう寝ようかな…。」

と、chain!chain!chain!を閉じて布団に包まった。
冷え冷えとした少しかび臭いベットが寝床。
枕も弾力性がなく湿っている。
それでも黒雪姫の安眠を招いてくれる存在なのだ。

「明日もいい日でありますように…。」

そう呟いて今日の活動を眠りと共に終了させた。
どうやら黒雪姫本人は今の生活を悪いものだと思っていないようだ。
外の世界を知らない、籠の中の鳥。
籠の中の鳥だからこそ、幸、不幸がわからない。
それが彼女にとって幸せであるかどうか…。

そんなある日、運命を変えるような出来事に彼女は遭遇する事となった。