小説『ヤグデレラと黒雪姫』

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123黒雪姫5
やはり、老婆は裕子であった。
近くに馬を止めてきたのであろう、裕子は歩いてやってきたのだから。
裕子は喉のあたりを押さえて発声練習をしてから、黒雪姫に話し掛けた。

「お嬢さん、おいしいド…リンゴはいかがじゃ?一口食べるとどんな願いもなうりんごだよ。」

さすが名演技。
伊達に年をくっていない…。
自分を殺そうとした継母だとわからず、
黒雪姫は丁寧な対応をした。

「まぁ♪なんでも願いがかなうんですかっ?」

「そうじゃよ。なんでも願いがかなうんじゃ。」

「でも…お金持っていません…。」

「気にせんでもええわい。後でお茶でも一杯もらえればの、ヒッヒッヒッ。」

「じゃあ、お言葉に甘えて…いただきまぁす♪」

「そうさ、はやくおあがり。」

老婆に扮した裕子は籠から一つのリンゴを取り出して
それを、黒雪姫の手に手渡した。
その時、危機を察知した小鳥たちが黒雪姫に
危険を知らせるように騒ぎ始めた。
124黒雪姫5 :02/05/13 23:06 ID:ikoi5lyh
「どうしたのかしら…?あの子達騒いでるけど…。」

その小鳥達の止めようとする鳴き声とどかず、
黒雪姫はどうしても、ひとみ王子にあいたい一心で
毒リンゴを1口かじった…。

「どうじゃ…?リンゴのお味は…ひっひっひっひっ…。」

「とってもおいしいけど、何か変な…………。」

リンゴが黒雪姫の手からゆっくりと重力にしたがって落ちる…
突如として、黒雪姫はめまいに襲われ…倒れた
呼吸がだんだんと苦しくなる…

「あ…れ……。」

視界が暗くなり…ぼやけた視界の中で
老婆は不気味な笑みを浮かべていた…
その不気味に笑う老婆は息絶えゆく黒雪姫にこう言った…。

「うらむなら、自分の美貌を恨めや…黒雪姫…。」

どこかで聞いたことのある声…
自分を黒雪姫と知っている…
消え行く意識の中で…その老婆が継母である裕子だと悟った…。

そして、静かに黒雪姫は息絶えた…。
125黒雪姫5 :02/05/13 23:07 ID:ikoi5lyh
その場に立ち尽くす裕子。
達成感と自分が世界一の美貌に戻った事を酔いしれ
黒雪姫をみてほくそえんでいた。

「ほな。念にな念を入れて、心臓でもえぐり取っとこか…。」

懐から裕子は短剣を取り出した。
スッと鞘から引き抜くと、鋭い刃がキラリ光る。
その短剣を上に振り上げたその時!!

「「「「「「なにをやってるんだっ!?」」」」」」

仕事帰りの小人たちが倒れている黒雪姫に向かって
裕子が短剣を振りかざしているところを目撃したのだ。

「チッ…しゃーない、充分やな。ほな退散やっ!!」

見た目をはるかに超える足の速さでその場を去る裕子。
そして、小人たちが駆け寄ると…そこには
黒雪姫が眠るように息絶えていた…。