1 :
レイク:
童話を取り入れた小説です。
2
○ノハ○
( ‘д‘)<ふむふむ。。がんばってちょ。。。
〜oノハヽo〜 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( ^▽^) < 新スレおめでとうございま−す。
= ⊂ ) \_______
= (__/"(__) トテテテ...
5 :
:02/04/18 00:27 ID:uSYUExix
(〜^◇^〜)と(^▽^)ですか?
6 :
5:02/04/18 00:28 ID:uSYUExix
あ…あげちゃった…
7 :
名無し募集中。。。:02/04/18 00:29 ID:hgAwbJNc
(^▽^)<なんで?
8 :
プロローグ:02/04/18 00:59 ID:IN3tJXph
昔々、世界のとある場所にヨッスィー王国と言う国があったそうな、そして
ヨッスィー国と同盟を結んだ隣りのチャーミー王国があったそうな。
2国はそれはそれは平和にくらしておった。
ある年、チャーミー王国にそれはそれは黒い肌をした女の子が誕生し、
名前を黒雪姫と名づけたそうな、そして、遅れること数ヶ月
ヨッスィー王国に目の大きな男の子が誕生しひとみと名づけられたそうな…。
そして数十年後、ヨッスィー王国のある一家では一人の母親が亡くなり、
またチャーミー王国では王妃が亡くなったそうな。
そして、双方は新しい嫁をもらったと言う事じゃった。
9 :
ヤグデレラ1:02/04/18 01:00 ID:IN3tJXph
「ヤグデレラ!!お茶まだかいなっ!!」
「ごめんなさいっ!!あつこお母様。」
「まったくグズやねぇっ!!氏ね、アホっ!!」
そう言うと、台所からその女性は去っていく。
「すいませんっ!!ごめんなさいっ!!」
この叱られている女の子はヤグデレラ。
ヨッスィー王国の上流家庭の娘。
しかしながら、現在は召使のような扱いをされている。
自分のことをヤグチと呼んでいる可愛くちっちゃな女の子。
そして。実母は先ほど叱っていた『あつこ』ではない。
ヤグデレラの実母は数年前に亡くなった。
先ほどのあつこは継母に当たる。
実父つんくは、ヤグデレラが母親がいないことを
かわいそうに思い稲葉家からあつこを嫁にもらった。
しかしながら、このあつこもバツ1で、娘が二人いたのだ。
急に家族が3人増え、にぎやかになるかとおもいきや、
継母と、義理姉である『みちよ』と『圭織』は、この前妻の娘ヤグデレラを
ジャマに感じており、3人はヤグデレラをいじめ貫き、召使のように扱った。
そして、それが数年経っている。
父親に言うのは簡単だが、父親『つんく』を困らせたくなかったヤグデレラは
このイジメを一人で必死に耐えていた。
「ふぅ…。イタッ!!またあかぎれ増えちゃったよ…。」
彼女の手はガサガサ。
掃除、洗濯、料理、すべての家事はヤグデレラに押し付けられている。
お茶をティーカップに注ぐヤグデレラは時々泣きたくなる。
「どうして…どうして私だけこんな…。」
陰で泣く…。
この習慣もいびられて泣いた際にさらに酷くいじめ抜かれたせいで
身に付いた…。
「ひぐっ…ひっく…ヤグチ…こんな事したくないよ…。好きでするんじゃないよッ!!」
本来は明るい女の子なのだが、そんなことも忘れさせられるほどの
酷いいじめ。
彼女の笑顔は太陽のように美しく、誰もが魅了されるのに…。
ティーカップ3つに、お茶を注ぐ。
何故三つか。
父親つんくは、戦で遠征をしている。
稀に帰ってくることがあるが、現在は戦地で戦っているのだ。
そして、ヤグデレラにはお茶を飲む権限も与えられていない。
つまり、あつこ、みちよ、圭織の分だけなのだ。
(こんな生活抜け出したい…、ヤグチもう嫌だ…。)
心身ともに疲れていた。
こんな時の一つの楽しみは、注いだお茶にフケを入れること。
頭を思いっきり掻いて、白いフケをお茶に混入させる。
「へへへへ♪」
これでストレスすっきり。
いい気分にちょっと浸ることができる。
お盆に3つのお茶を置いて、居間に運んでいく。
すると、楽しく談笑をする継母と義理姉達が居た。
「おそいよっ!!ヤグデレラっ!!圭織待ちくたびれたよっ!!」
「すいません。お待たせいたしました…。」
(うそつき…笑って話してたじゃんか…。)
静かにお茶を前においていく。
3人の前にお茶を差し出し終わると、頭を下げて
台所へ戻っていった…。
前髪に隠れて含み笑いをしたいたが…。
台所に帰ると、腹を抱えて笑い出す。
「キャハハハハハハハハハ!!!!」
立ってもいられず、膝をついてお盆でバシバシキッチン台を叩く。
案外腹黒い…。
そんなことしなければやっていけないのかもしれない。
やはり、腹黒い笑いでも彼女の笑顔は天下一品だった。
ふと、目に映る窓から見える外の景色。
どうやら雨が降ってきたようだ。
13 :
読んでる人:02/04/18 10:15 ID:/2PYYuYc
面白い!!
14 :
レク:02/04/18 21:33 ID:BJ2JqIiP
祝復帰。
祀ります。
雨っ!?
「やばいっ!!洗濯物がっ!!」
そう、ヤグデレラは洗濯もやらされている。
乾燥ももちろん仕事の一部だ。
慌てて勝手口から飛び出し、中庭に向かっていった。
予想通り、干していた服は雨にぬらされていた。
「あいたたた…やばいよこれ…。」
ちっちゃな背丈のヤグデレラは精一杯背伸びして
爪先立ちになりながら、服を取り込んでいく。
「あっ!!!!」
やはり爪先立ち、干してあった服をつかんでいたので
服もろとも、ぐちゃぐちゃになった地面へ…。
自分の着ている服どころか、干していた服まで泥汚れ…。
「うわーん、また洗い直しだよぉ〜〜。」
ため息をついて、立ち上がり汚れた衣類を拾い家へと帰った。
むろん、いちにち二度目の洗濯が彼女を待ち受けているのだが…。
びしょびしょになったヤグデレラは、服を着替える。
彼女の部屋は台所の一角。
そこに干してある生乾きのツギハギだらけの服に着替える。
頭を拭くのは雑巾。
まったくをもってつらい仕打ちであると痛感する瞬間だった。
ここで洗い直しをはじめるのと同時に彼女には次の仕事が待っている。
それは継母と義理姉達の夕食の準備。
今日もヤグデレラは、たらいに水を張って、汚れた服を漬けると
夕食の仕度をはじめる。
「今日の夕食は、インスタントラーメン♪」
今日の…ではない。
今日も…だ。
正直、ヤグデレラは料理が出来ない。
それでもインスタントラーメンは自信作だと言う。
いいかげん、3食インスタントラーメンを食事として出す
ヤグデレラより普通の召使に料理を任せたらどうなのかとも思ってしまう。
インスタントラーメンしか作れないが、具材だけは毎食変えているようだ。
すばやく出来上がるから便利。
10分もかからず3人分のラーメンが出来上がる。
そして、ヤグデレラはお盆にラーメンを載せて、居間へ運ぶと…。
「イタタタタ…。」
「お尻がアツイッ!!」
「ヤグデレラっ!!ちょっとお腹の薬もってきてーや!!なんかに当たったらしいわっ!!」
3人が腹痛に見舞われていた。
それはそうだ。
満足に風呂も入らせてもらわない特製のフケを飲んだのだから。
ラーメンをテーブルに置いたヤグデレラは
笑いを必死にこらえて、棚から胃腸薬を取り出し、
コップを台所から持ってくると、水差しで水を注いだ。
こんな出来事は週1くらい有る。
まぁ、感づかれぬように週1程度にしているのだ。
薬を飲むと、あつこは立ち上がる。
「あかん…ウチもうねるわ…。」
と、お腹を抱えて居間を離れていった。
続いて義理姉二人も同様に寝室に帰っていく。
「あのっ!おねぇさまっ!!ラーメンは…。」
「ええわ、それどころじゃない…イテテテテ…。」
「圭織も…要らない…。」
ヤター!!
ラーメン独占っ!!
一人居間に残ったヤグデレラは、席について
さっそくラーメンを食べ始める。
いつもは残り汁しか食事として与えられない。
それが今日はラーメン丸ごと三杯。
嬉しい限り。
ニコニコしながらヤグデレラは夕食をたべた…。
20 :
レイク:02/04/19 00:04 ID:9HKdufof
21 :
黒雪姫1:02/04/20 00:01 ID:Mn17AcDy
ヨッスィー王国の隣り、チャーミー王国の王宮内でもヤグデレラ同様な
境遇に置かれている一人の女の子が居た。
彼女は黒雪姫。
容姿の肌黒さから、誕生時にそう名づけられた。
彼女は王である父に育てられた。
母親である王妃は病に冒され、黒雪姫が12の時になくなった。
数年前に王は新しい王妃を名門中澤家からもらった。
「黒雪っ!!ここ汚れとるでっ!!拭いときっ!!ホンマ使えへん!!」
この王妃、名は「裕子」と言う。
前妻との間の子である黒雪姫を疎ましく思い、
本来、家来の仕事である掃除をこの、黒雪姫に押し付けて
家来には王妃が仕打ちをする事について
王に黙っておく事と、黒雪姫をかばうような事はするなということを言いつけていた。
誰もが王妃が怖くて、黒雪姫を助けられないのが実情である。
黒雪姫は素直だった。
暑い日も寒い日も、裕子のいい付けに従いせっせと働いた。
22 :
黒雪姫1:02/04/20 00:02 ID:Mn17AcDy
「よいしょっ、よいしょっ。」
姫とは思えないほど、扱い。
これには最初は反発もしたが
今では継母である裕子の愛のムチと思い従っている。
王妃:裕子は愛のムチなどとはちっとも思っていないが…。
そんな黒雪姫に床掃除を命令し、裕子は何をしているかと思えば
自室で鏡に向かって語りかけていた。
「おいっ!!鏡っ!!でて来ぃ〜!!鏡の精っ!!」
大きな鏡。
この鏡は魔法の鏡といわれ、チャーミー王国に伝わる家宝である。
この鏡は何故魔法の鏡と言われるか?
魔法の鏡には鏡の精という、自縛霊のような物が取り付いており、
近隣の美女と言う美女を認識し、品定めをしている精なのだ。
23 :
黒雪姫1 :02/04/20 00:03 ID:Mn17AcDy
『お呼びですが?』
「いっちゃん美人誰や?」
『…それはお妃様です。』
「やろ?ゆーちゃんかわいいもんなぁ〜。」
ジガジサーンカコワルイ
そう、裕子は自分の名前を呼ばせることで自分に酔っているのだ。
明らかにナルシストである…。
年を隠すように施す化粧は2時間はゆうにかかると言う。
いつまでも自分の美貌を保っていられないのはわかっているが、
もし自分の美貌を抜くような者がいるなら殺してしまえば良いと考えていた。
24 :
レイン:02/04/20 09:58 ID:EPzLCetD
こんにちは。おもしろいので
これからも読ませていただきます
26 :
5:02/04/20 14:18 ID:FcnRSHvP
ヤパーリやぐいしでしたか。
しかし、ホントに家でやってそうだな、从#~∀~#从<鏡よ鏡〜 って。
あ、敬語使うの忘れてました。
これからも頑張って下さい。
27 :
レイン:02/04/20 18:40 ID:2cjxzQhg
>25さん
すいませんでした。ひさしぶりだったので
わすれてました
サソークハケーンしますた
29 :
黒雪姫1 :02/04/21 00:02 ID:5ZetSOk+
現在王は病に伏せている。
黒雪姫の現在の立場をまったく把握できない事をいいことに
裕子は次々に召使のように黒雪姫を扱っていく。
その姿を見て、哀れだと家来は皆思っていた。
特に幼少時代面倒を見てきた家来、和田は、
今の黒雪姫の現状に居た堪れない気持ちになっていた。
「黒雪姫様…。」
モップがけをしている黒雪姫に和田は声をかけた。
「あら、和田さん♪ちょっとどいてっ♪そこも拭くのっ♪」
改めて黒雪姫の純粋さに心打たれる和田。
「何もそんなにお妃様のいう事を聞かなくてもよいのですよ?」
「そんなことないわっ♪お母様が私に言ってくださるのは愛情の裏返しなのよ♪」
純粋すぎる黒雪姫を助けてあげたいと心から思う和田であるが…。
ふと和田が気付くと、召使二人が、和田と黒雪姫をみて耳打ちし合っている。
やりきれない気持ちを抱え「では…。」とだけ言って、その場を去る和田。
力いっぱいの握りこぶしで壁を殴った。
「俺には何も出来ないのか…。」
ため息混じりにそんな言葉を吐く和田であるが、
痛かったのか、手をさすっていたようだ。
30 :
黒雪姫1 :02/04/21 00:04 ID:5ZetSOk+
夕食の時間。
長いテーブルには一つの席しかない。
王妃、裕子の席である。
ここで裕子は一人で食事をとる。
一人で食事と言うのは味気ないはずであるがちっとも
そんなことを気にしている様子はない。
逆にいえば、一人で食事をしている自分に酔っているほどであるのかも知れない。
その時、黒雪姫は自室で食事をとっている。
出される食事と言うのは、召使や家来と同様の食事。
パンにスープ、目玉焼き程度の軽食感覚である。
ヤグデレラに比べれば黒雪姫は3食取れるしまともな食事をしているようにも見える。
しかしながら、一国の王女である食事にしては貧相だった。
黒雪姫はそんなことを気にすることもなく、よく噛んでおいしそうに食べる。
本当に彼女は純粋だった。
31 :
黒雪姫1 :02/04/21 00:05 ID:5ZetSOk+
黒雪姫の現在の部屋は薄暗く、かび臭い部屋で。
換気も悪い、時々ねずみやゴキブリも出る部屋だった。
前は立派な部屋を自室にしていたが、裕子の命令で
一番下の家来の部屋に移動させられたのである。
部屋はほとんど服が覆い、安いベットと愛読書がやっと置ける狭さだった。
王家の娘である黒雪姫には友達がいない。
裕子が嫁いでくるまで、英才教育でマンツーマンで授業をしていた彼女には
友達が出来ないでいたのだ。
王妃がやってきてから唯一いいことがあった。
それは黒雪姫に友達が出来たのだ。
その友達とは夕食時に現れるただのねずみである。
黒雪姫は動物に愛される女の子だった。
彼女は与えられた少ないパンをちぎってはこのねずみに与えた。
「よく食べるねぇ〜♪ラッキー♪」
この人懐っこいねずみにはラッキーと言う名が付いているようだ。
まぁ、ねずみにそんな名前がつけられていることなどまったくわかっていないだろうが。
夕食が終わるとラッキーはとっとと退散していく。
ゲンキンな友達であるが、黒雪姫の唯一の友達。
「またいらっしゃい♪ラッキー♪」
32 :
レイク:02/04/21 00:07 ID:5ZetSOk+
>24-27
わざわざ発見してくれてありがとうございます。
33 :
ROM@5:02/04/21 00:10 ID:3EOvmlkq
>32
更新お疲れさまです。ROMです。
小説スレ界の「かおりん祭り」を目指しています(嘘)
今までは「5」として書き込んでいましたが、コテハンにしました。
特に意味はありませんが。
これからも頑張って下さい。
34 :
黒雪姫1 :02/04/22 00:05 ID:PpeGWNFP
小さな穴に戻っていくラッキーを見届けると、
小さなランプと月明かりの窓の下、愛読書を読みふける黒雪姫。
愛読書はchain!chain!chain!
写真集かよ…。
「ヤグたん萌えぇ〜。ハァハァ。」
などと抜かしている。
本当の意味も知らずに喋るこの娘はある意味純粋すぎて怖い。
「殿方はこういう本が好きよねぇ〜♪なぜかしら…萌えでハァハァってことよねぇ〜?」
「この石川梨華ちゃんって可愛いわねっ♪いかにも『しないよ』ってかんじねっ♪」
いや…するだろ。
35 :
黒雪姫1 :02/04/22 00:05 ID:PpeGWNFP
とにかく、彼女の愛読書と言うのは変わったものが多い。
このchain!chain!chain!のほかに、ホットドックプレス、
FRYDAY、読売新聞(古新聞)、国語辞典などがある。
一貫性も共通性もない。
穴が開くほど読んでいると思ったら、ただ単にラッキーに食われた跡だったという
エピソードもある。
こんな愛読書をどのようにして手に入れているのか。
それは、掃除を言いつけられている黒雪姫の生活スタイルに関係していた。
掃除では清掃をする他にゴミを片付ける作業がある。
このとき、家来の部屋までやらされるのだが、その時にゴミ箱に入っていた
これらの本を人の目を盗んで部屋へ持ち帰ってくるのだ。
よって、少しずつ蔵書数が増えてきているのである。
たくさんの本を読む。
昔は嫌でしょうがなかったが、いざこういう環境になると
楽しみな習慣へと変わっていくものなのだ。
写真集を眺める事1時間…。
そんなに眺める物でもないだろうと思うが…。
36 :
黒雪姫1 :02/04/22 00:06 ID:PpeGWNFP
それでも、眺めていれば目が疲れてくるものである。
次第に目が重くなって、夜が睡魔を誘う。
大きく口を開き欠伸をすると
「もう寝ようかな…。」
と、chain!chain!chain!を閉じて布団に包まった。
冷え冷えとした少しかび臭いベットが寝床。
枕も弾力性がなく湿っている。
それでも黒雪姫の安眠を招いてくれる存在なのだ。
「明日もいい日でありますように…。」
そう呟いて今日の活動を眠りと共に終了させた。
どうやら黒雪姫本人は今の生活を悪いものだと思っていないようだ。
外の世界を知らない、籠の中の鳥。
籠の中の鳥だからこそ、幸、不幸がわからない。
それが彼女にとって幸せであるかどうか…。
そんなある日、運命を変えるような出来事に彼女は遭遇する事となった。
37 :
レイク:02/04/22 00:08 ID:PpeGWNFP
>>33 ありがとうございます、がんばってください。
>>37 更新お疲れさまです。
イヤこっちの台詞でしょ!
と思わず突っ込んでしまいました。
さりげなく2ちゃんネタが入っている所がイイです。
これからも頑張って下さい(言えた)。
ヨッスィー王国のヨッスィー城では朝から慌てふためく白髪の老いた家来が
王子を探して城内を捜し歩いていた。
「ひとみ王子様!!ひとみ王子様!!何処にいらっしゃるのですかっ!!」
その呼ぶ声はひとみ王子に聞こえていた。
しかしあえて聞かない振りをして、自室の窓をからでた所に有る屋根の上で
白い雲を眺めていた。
一点の汚れもない白い雲は自分の上を通り過ぎてゆく。
それが自分には乙に感じて、空を眺めるのが好きだった。
「王子様っ!!」
窓から外を覗いてやっと王子を探し当てる家来。
「なんだい?じぃ?」
「おやめくださいませっ!!じぃの心臓に悪いですっ!!じぃを殺す気ですかっ!!」
「べつにぃ〜。なんか雲がカッケーから見てた。」
「そんなもの窓からでも見えるでございましょう!!お戻りください!!もし王子様に
もしものことがあったらじいは王様に合わせる顔などございませぬ!!」
「ったくうるさいな。じいは。」
しょうがない…といった表情で、屋根を伝って窓へ入る。
「屋根の上はきもちいぞ、じい。」
この若者は、ヨッスィー王国の跡取、ひとみ王子。
齢17歳、ちょうどこの国では結婚を許される年である。
父親である国王は高齢のため、ひとみ王子に早く嫁を…と考えていた。
「王子様、王様より言伝があります。」
「なんだい?」
ベットに座って、聞く気もないように本棚から本を取り出す始末。
よく言えば自由奔放、悪く言えば適当。
「ひとみ王子様のお嫁をもらう為の舞踏会を開くとのことでございます。
舞踏会を開いて、王子様のお眼鏡のかなう女性を当日来た女性から選ぶようにと…。」
「はぁ?まだ結婚しねーよ。やりてー事いっぱいあるし。」
「ですが、王様はもうお年でございます、一刻も早く王子様にはお嫁をということなのです。」
「べつに今すぐじゃなくても良くないか?」
「王様は、ひとみ王子様のお子を早く見たいのであります、抱きたいのでありますよ。
王様の意思をくんでくださいませ。」
「そっかー…。」
ひとみ王子は本を閉じると遠くを見て顎に本の角をコツコツ当てている。
「それと…王様が最も皇太子妃としてふさわしい、お隣りの国、チャーミー王国
の黒雪姫様のところへじきじきに王子様が招待状を持っていくようにという言伝でございます。」
すると懐から、じいは一つの手紙を取り出し、ひとみ王子に手渡す。
「何これ…。」
裏を返すと
『チャーミー王国 王女黒雪姫様 舞踏会へのお誘い ヨッスィー王国 ひとみ皇太子』
と書いてあった。
「それを王子様じきじきに手渡してくだされ。」
「めんどくさいよ。」
そう言って、団扇代わりにするようにパタパタ自分の顔を仰ぐ。
まだまだ女性に興味を抱く年でないのか…
「でも…数年会ってないな、あそこ王妃迎えてから会ってないんだよな。
どんな美人になっているかな。わかった、行ってみるよ。」
そうでもなくないようだ。
ひとみ王子はさっそく、馬舎に向かい、
自分の白い馬にまたがると招待状をもって城を出たのだった。
42 :
レイク:02/04/23 00:08 ID:QoXwT2mB
>>38 ありがとうございます。2chネタは所々取り入れていくつもりです。
43 :
読んでる人:02/04/23 12:57 ID:9PNwSARe
いしよしになるのかな?
それともやぐよし?
レイクさんだ〜!
これからも頑張って下さい。
城下を颯爽と馬で滑走していく姿には城下の若い女性は目を奪われる。
整った顔、白い肌、そして大きな瞳。
もちろん、城下の民の一人であるヤグデレラもそんな一人だった。
ヤグデレラはこの日、買出しに出ていた。
汚れたみすぼらしい格好をしている。
ヤグデレラが、出店の青果を手にとっていると
町中がざわついたような騒ぎが聞こえる。
翌々聞いてみれば、ひとみ王子が馬でこちらに向かってくるというではないか。
世の女性の心をつかんで話さない彼の話をヤグデレラも聞いていた。
ただ一度も会っていなかったが、どのような男性なのかと心ときめかせていたものだ。
「どうしよ…。」
みすぼらしい格好をしているのに、必死で髪を整えるヤグデレラ。
すると、馬の蹄の音がヤグデレラの耳に届く。
その方向をみると白い馬に乗った若い男の人がこちらへと向かってくるではないか。
手を組んで胸のあたりに持ってくるヤグデレラは夢見る少女。
少し妄想が入る…。
(止まって「おや、なんと美しい、どうかお嫁になってください…。」とかいわないかなぁ…。)
そんな願いは所詮届かないものだ。
颯爽と駆け抜ける横顔を見るだけに終わった。
でも…。
「かっこいい〜♪」
ポッとピンク色になるヤグデレラの頬。
一瞬でしかなかったが、あまりの美しさに一瞬で惹かれた。
白肌で、目が大きく、スタイルがいい…。
そんなピーマン1個握って陶酔している乙女の心を打ち砕くかのように
「あんた、それ買うの!?買わないの!?」
という濁声の青果店店主の声が耳の傍で聞こえた。
「あ、はい…3個ください…。」
そのころ、城下を駆け抜けたひとみ王子は国境である通称『小人の森』に来ていた。
この森には小人が住んでいる事が知られており、そこから小人の森と名づけられていたのだ。
すこし、馬に長く乗っていたため、疲れたのかひとみは馬を止め小さな泉で休みを取ることにした。
「空気がうまいな…。」
小鳥のさえずり、流れる雲、心地良い風、揺れる水面。
泉の周りでごろんと寝転がるひとみ王子。
「嫁か…。綺麗で萌えぇ〜な女の子が良いな。」
むくっと起き上がると、小石を泉に投げた。
チャポン。
「!!!!!」
48 :
レイク:02/04/24 00:09 ID:Vw2Fxz4q
>>43-44 ありがとうございます。
いしよしになるかやぐよしになるか。どうなりますかね。(w
ひとみは目の前で起きている出来事に驚いた。
石を投げた途端、水面が揺れ、泉の中央から女性が現れたのだ。
なぜか、その女性は頭から血を流していた。
その女性はひとみに話し掛けてきた。
「泉の妖精、ミカだぴょーん。貴方の落とした斧は金の斧?銀の斧?普通の斧?」
「え…。いや、ただの石だけど…。」
「Yes!Super cool!発音バッチシ!正直者にはこの三つの斧をあげちゃいま〜す。」
「いや、いらない…。」
「もらってくださーい。」
泉の妖精ミカは水面を移動してくるとひとみ王子に斧を三本手渡した。
「See you。」
そう言って泉に消えていった。
「???」
よくわからない。石を投げたのに何故斧をもらうんだろう。
別に金に困っているわけではないので、金の斧も銀の斧も自分には不要なのだ。
それだけでなく余計な荷になってしまう。
しょうがないので、斧を一本ずつ泉の中央に投げた。
「!!!!!ヤッベっ!!」
すると、泉が真っ赤に染まっていく。
慌ててひとみ王子は馬に乗りその場を逃げるかのように去っていった。
50 :
読んでる人:02/04/25 08:47 ID:REpD/ato
51 :
黒雪姫2:02/04/26 00:03 ID:lqXKgrQA
その日、幸いな事に裕子が外出していた。
久しぶりのオフといった感じで黒雪姫は心ウキウキだった。
自然とスキップがでるくらいに。
そんな姿を陰で見守る和田はあれが本来の17歳の女の子の姿なのだと確信していた。
「あらっ?和田さん♪柱の陰で何をしているの?」
物思いにふける和田は、見事に黒雪姫に発見された。
ワダサンハッケソ!!
ニコニコしている黒雪姫の笑顔が自分にも移って来る様な感じがした。
「いえ、ちょっと柱の陰が恋しくてですね…。」
「変な和田さん♪ふふふふっ♪」
「あ、姫様。今日は晴天に恵まれております。お花摘みでもやって
私に昔のように花冠を作ってくださりませんかな?」
「ええ♪喜んで♪でもつくれるかしら?しばらく振りだもの…。じゃあ、外へ出てくるわねっ♪」
「はいっ。楽しみに待っております。」
嬉しそうに階段を下りていく黒雪姫を見届けて和田は思った。
(王妃がいない時くらい…いいではないか…。)
和田の視線の先では常に王妃側の召使の目が光っていた…。
52 :
黒雪姫2:02/04/26 00:04 ID:lqXKgrQA
城内の門近くに野原は広がり、種種多様な花が咲いている。
黒雪姫はその花畑のような野原に座り込んで彩りを考えて草花を選んでいく。
蝶達が蜜蜂たちが彼女に戯れる。
それを喜ぶかのように黒雪姫は手に停まらせてみたりしていた。
肌が黒いので蜜蜂の格好の餌食になる…ンナコタアナイ。
風も心地よく、時折太陽が雲に見え隠れ。
そんな時、彼は黒雪姫の前に現れた。
城門を開いてもらい、馬に乗って中へ入ってくる人物がいるのは黒雪姫もわかった。
「だれだろう?白い馬なんて珍しいわねっ…。」
花束を抱えながら立ち上がる。
その馬に乗った人物は徐々に自分のほうへ向かってくるではないか。
よくよく見れば、整った顔、色白、大きなひとみ…。
(素敵な殿方…。)
黒雪姫の頬が真っ赤に染まる。
まともに直視できないほどの距離にまで近づいてきた。
馬が止められる。
すると、降り立つ足音が聞こえた。
正直下を向いてしまっているので、足元しか見えない…。
53 :
黒雪姫2 :02/04/26 00:05 ID:lqXKgrQA
「あのっ…黒雪姫様だよね。」
「あ…はい…。」
「俺だよ、覚えてるかな…。」
「わかりません。」
「顔見ないでわかりませんはないだろ。」
「あっ、ごめんなさいっ!!」
黒雪姫が顔をあげる。
すぐそばに彼の顔があった…。
一瞬だれだかわからなかった…けれど…。
「ひとみ王子様…?」
「そうだよ、久しぶりだね黒雪姫様。」
54 :
レイク:02/04/26 00:06 ID:lqXKgrQA
55 :
黒雪姫2 :02/04/27 00:11 ID:EINdYZer
黒雪姫の顔は赤くなっていた、しかし、それに負けず劣らずひとみ王子の顔も赤くなっていた。
お互い幼少の頃までしか顔を会わせた事がなかった。
そして数年、二人とも大人の顔になり、それなりの色香を持ち合わせるようになっていたのだ。
何処となく面影があるからこそ、わかりはするものの、まったくの別人、
まったくの美少年、美少女の出会いのようなものだった。
「すこし、話でもしようか、黒雪姫様。」
「あ、……はい。では城の方に…。」
「いや、ここで良いよ。」
そう言って、ひとみ王子は野原の上に腰をかけた。
そして黒雪姫も続いて座る。
「何年ぶりでしょうか…?」
「もう4年くらいあってないね…。」
「そうですね…。」
「あの、その花は?」
ひとみ王子が聞いたのは、黒雪姫が摘んでいた花。
黒雪姫は恥ずかしそうにその返事をした。
56 :
黒雪姫2 :02/04/27 00:13 ID:EINdYZer
「これで花冠を作るんです…。」
「花冠…良かったら俺にも作ってくださいませんか黒雪姫。」
「はいっ♪よろこんでっ♪…あっ…。」
勢い良く返事をしてしまい、また顔を真っ赤にする黒雪姫。
真っ赤にしながらも上手に花冠を作っていく。
数年やっていない、この花冠作りであるが、もう身体に染み付いているのか
それなりな形で出来上がった。
「あの、出来上がりました…。」
恥ずかしそうに差し出す花冠を、両出で受け取るひとみ王子。
すっと頭にかぶって
「似合います?カッケーっすか?」
と尋ねた。
「はい♪とっても♪」
「じゃあ、お願いなんだけど…もう一個作ってくれないでしょうか?」
「はいっ♪」
また再びひとみ王子は花冠つくりを依頼すると
今度は出来上がった花冠を受け取ると、黒雪姫の頭に乗せた。
「似合ってますよ。」
57 :
黒雪姫2 :02/04/27 00:14 ID:EINdYZer
「あ…どうもありがとうございます…。」
「あ、そうだ…今日参ったのは…。」
いよいよ本題に入るようだ。
ひとみ王子は懐から手紙を取り出して、黒雪姫に渡した。
黒雪姫は手紙を受け取ると表を読み上げる。
「舞踏会への招待状ですか…?」
「はい。私の嫁を選ぶ舞踏会のようです…一般の方も呼ぶようですが…
俺は今日ひさし振りにあって…その…貴女に来てほしいなって思ってます…。」
「…………。」
顔がカンカンに赤くなって、両者お互いを見ることが出来ない。
ただ一言、黒雪姫は「ありがとうございます」と小さな声で答えた。
「じゃあ、俺はここで失礼します。あの、良く招待状を読んで是非きてくださいねっ!」
「はいっ♪」
ひとみ王子は白馬にまたがると、黒雪姫に手を振った後颯爽と去っていった。
いつまでも後姿を見つめていた黒雪姫。
どうやら恋をしちゃいました?
恋する女は美しい。
そう、その言葉の通り黒雪姫はこの世で一番美しい表情をその時していた。
城の中へ戻ると、黒雪姫は和田との約束も忘れて自室へ戻り
封筒を開けて中身を読んでいた。
例外なく、上流家庭であるヤグデレラの家にも、
その日…舞踏会への招待状がやってきた。
家来が家にやってきて、あつこに招待状を手渡したのだ。
やんややんやと盛り上がる継母と義理姉二人。
「お母様っ、もしかしてこの舞踏会でひとみ王子様にみそめられたら…
圭織行く末は王様の奥さんっ?」
「そうやで、二人のどちらか、みちよと圭織のどっちから皇太子妃になったら
ウチは皇太子妃の母親っ。大金持ちやっ!!」
「負けへんでぇ〜圭織には。ウチいっぱいおめかししていくさかいな。」
「圭織も負けないもんっ、みちよおねぇ様はひとみ王子様と少し年が離れすぎよっ!!」
「なんやてぇ〜!?年の差なんて関係アラへんわっ!それより王子様より背丈が高いほうが問題
ちゃうんかいなっ!?」
「まぁまぁ、二人とも。舞踏会は明後日の夜。それまでどんなおめかしするか考えときぃ〜。」
「「はーいっ!」」
そんな時に買い物を終えて帰ってくるヤグデレラの姿があった。
きゃぁきゃぁ喜んでいる3人の姿は見慣れたものであるが
今日だけは少し気になった。
「あつこお母様?何をお話していらっしゃるんですか?」
「ああ、おかえり。あんたには関係ないわ。」
「…そうですか…。」
「そうそう、関係ないのっ!圭織とみちよおねぇ様だけ関係あるんだもんっ。」
「そうやでぇ、ウチらなぁ、明後日の夜、お城の舞踏会に招待されたんやでー。
ここでひとみ王子様が自分のお嫁さんを見つけるらしいわー。あんたには関係ない話やけどなー。」
「私もいきたいですっ!!」
「はぁ〜、何言ってんの、この子。あんたみたいなみすぼらしい格好した
娘なんか門前払いに決まってるでしょっ!!」
「でも…私もこのうちの娘なんですよ…。」
「あほっ!!ウチはあんたを娘に持った覚えないわっ!!はよ夕飯の用意せーよ!
ラーメンしか作れへんくせにっ!!!」
正直ショックだった。
舞踏会に出られない…それに加え、確かにあつことは実母実子の関係ではないが
それにしても「娘に持った覚えがない…」とは…。
娘がいることをわかっていてこの家に嫁いできたのに…あまりにも酷い彼女への
言葉だった。
今にも泣いてしまいそうなヤグデレラはその場を急ぎ足で去っていった。
その後方で高らかに笑っている3人の声が聞こえた…。
台所で泣いた…。
どうしていつも自分はこうなのかと…。
自分は幸せになれないのかと…。
静かな台所に、ヤグデレラの泣き咽ぶ声が響く。
幾筋の雫が頬を伝っていったかわからない。
ただ、泣きながらも彼女は今日もラーメンを作っていた。
「んぐっ…辛い…辛いよぉ…お母さん…ヤグチもう耐えられないよぉ〜…。」
61 :
61:02/04/28 05:21 ID:jjutW69P
ならこの母親に正義の鉄槌を(殺せ、今すぐ)
62 :
読んでる人:02/04/28 09:13 ID:2Zl323zI
黒雪姫とヤグデレラは同じような境遇なのに・・・
圧倒的にヤグデレラの方が可哀相だな。
63 :
:02/04/28 16:46 ID:e6dPL5zh
家族に恵まれない時にはスタッフサービスにお電話を
このときヤグデレラは死んだ母親の事を思い出した。
優しく暖かいぬくもりで自分を包んで育ててくれた母親…。
そして、すべての運命が変わる、母との死別…。
「あの時から…ひっぐ…ヤグチの運命変わっちゃったんだ…、どうして…?どうして
お母さん死んじゃったの…?」
どうしようもない心の叫び。
どうにもならない今の現実。
逃げる宛もない…飼い殺しの人生…。
「神様…見ているなら…ヤグチを助けて…こんなヤグチだけど…お願い助けて…。」
確かに見守っている人はいた…。
その人が現れたのは舞踏会の夜のことであったが…。
ラーメンが出来上がると、ヤグチはいまだにやんややんやと騒いでいる3人の元へ
ラーメンを運んだ。
先ほどヤグデレラの心を傷つけた事など気にする事もなく、
いや、まったくわかっておらず、のんきに騒いでいた。
今日はフケを混ぜる事も考えられないほどヤグデレラは深く傷ついた…。
台所へ戻ると、ヤグチはくずれるように台所の一角に倒れる。
台所の一角に一畳ほど敷かれた藁。
そこはヤグデレラに与えられた寝床だった。
この日、ラーメンの椀も下げる気にはなれず、
残り汁で食事をとることもしたくなかった。
藁の寝床でひたすら泣き、泣きつかれたまま、眠りについた。
その眠りの中でヤグデレラは夢を見ていた。
一段と煌びやかなドレスに宝飾を身に纏ったヤグデレラが
城の舞踏会場でひとみ王子とワルツを踊っていた。
「綺麗です…ヤグデレラ様。」
「そんな…うれしゅうございます。」
息を合わせて踊る二人の姿に周りの観衆は釘付け。
視線が刺さる中で彼の瞳をじっと見つめて踊る。
そして、オーケストラの音楽は次第に大きくなっていく。
「ヤグデレラ様…よろしかったら私の妻になっていただけませんか…。」
「はい…。」
(幸せ…。これがヤグチの幸せ…?)
その時ヤグデレラに声が聞こえてくる。
『もう少しの辛抱ですよ…がんばって…ヤグデレラ…。』
そして視界が暗くなった。
バッと起き上がる。
急に目覚めてしまったヤグデレラ。
あたりを見渡すが、まだ夜中…。
ここは台所の一角…。
「何だ…夢か…。」
少し残念そうな顔をするが、いい夢だったなぁと思った。
そして、自分がお腹すいていることに気付き、居間へ向かって
ラーメンの残り汁の入った椀を下げてくると温めなおして食事をとった。
「夢…か。でも夢じゃない気がするなぁ…素敵な夢…かなうと良いな…。」
自分が作ったラーメンの残りはあまりおいしくはない。
けれどあの夢のあとは、何故かおいしく感じた。
「かっこよかったなぁ…ひとみ王子様…。」
68 :
レイク:02/04/29 00:12 ID:2z/KckfL
>>61-63 レスありがとうございます。
ヤグデレラのほうが一般家庭とあって不幸感が増しています。
泣けますた
ヤグデレラ頑張れ!
71 :
黒雪姫3:02/04/30 00:03 ID:AP1CcmVp
招待状を受けとった日の夜。
いつものように自室で食事をしていた黒雪姫。
今日もいっしょのゲンキンねずみラッキー。
「ラッキー♪聞いてっ♪今日ね、お隣りの国のひとみ王子様がいらっしゃったのよ♪」
そんなこと聞いてねぇよ、といわんばかりに黒雪姫の手からちぎられるパンを
一生懸命に齧っているねずみのラッキー。
そして、続けて今日の出来事をねずみ相手に話す黒雪姫。
「それでね。うふっ♪今日招待状頂いたのよっ♪」
それも食ってやろうか。
といわんばかりに、招待状の端をくんくんと匂い嗅ぐラッキー。
「この舞踏会でお嫁さんを選ぶんですって♪もしかしてわざわざ届けてくれたのは
私を選んでくれるってことなのかなぁ〜♪ねぇっ、どう思う?ラッキー。」
そう尋ねるが、ねずみにわかる訳がない。
そんな黒雪姫の話など聞かず、自分の食事が終わったラッキーは
とっとと、自分の帰る場所へと帰っていった。
72 :
黒雪姫3 :02/04/30 00:05 ID:AP1CcmVp
「もうっ♪ひとみ王子様に私をとられちゃうと思って嫉妬してるのね♪可愛いんだから♪」
勘違いも程々にしてもらいたいものだ。
ねずみが嫉妬するわけねぇよ。
「さっ、今日は何の本読もうかしらっ♪ホットドックプレス読もうかしら♪」
ホットドックプレス。
若い男性向けの雑誌である。
この本の回の特集はH告白。
非常にいやーんな内容である。
何度も目を通している黒雪姫だが、顔を真っ赤にして黙って読んでいた。
「殿方は…こんな事が好きなのねっ♪これが萌えであったりとか、ハァハァだったりとかするのねっ♪」
見ちゃいけない、でも見たいというような感情を抱えながら黒雪姫は特集ページをめくっている。
「いまいちわからないんだけど…どういう意味の言葉なのかしらっ…この言葉。」
育ちが良い黒雪姫には低俗な言葉がよくわからない。
だから萌えもハァハァもわからないのは当然の事である。
73 :
黒雪姫3 :02/04/30 00:06 ID:AP1CcmVp
少し気になって、国語辞典でその気になった言葉を捜して…
「キャッ♪恥ずかしい…いやらしいわっ♪殿方って…、ひとみ王子様もこうなのかしら?
ハァハァとか萌え〜とか言うのかしら…。」
次々にホットドックプレスをめくっているが唯一開けないページがあった。
何故か張り付いていて開く事が出来ない。
「どうしてこのページは見られないのかしら…?」
ムリに開こうとすれば、破けてしまう。
仕方ないので目次でそのページが何であるのかを調べてみると
『女体解体全書』
「???医学書かしら…?この本…。」
明らかな勘違いの黒雪姫。
この剥がれないページは捨てた家来が
(不適切な言葉)で(不適切な言葉)をかけてしまい閉じたことによって
出来上がったものだった。
そんなことを知る由もなく、ホットドックプレスを読み続けた。
74 :
レイク:02/04/30 00:07 ID:AP1CcmVp
>>69-70 レスありがとうございます。
彼女達の今後の活躍、長い目で見守ってください。
>73
要は白い液体が(以下略
レイクタン、ガンガレ!!
77 :
黒雪姫3 :02/05/01 00:01 ID:2sQaITDb
そんな時、継母に当たる王妃は帰宅をしていつものように自室の鏡の前に立った。
「おいっ!鏡っ!?鏡の精出て来ぃ〜やっ!!」
『お呼びですか?』
「この世でいっちゃん美人だれやねん。」
今日ももちろんの事、自分の名前を呼び上げるものだとばかり
思っていた。
しかし、今日の鏡の精は別人の名前を挙げたのだ。
『それは黒雪姫様でございます。』
「はぁ?なんてゆーた?今。よぉ聞こえんかった。」
無論自分の耳を疑い、裕子はもう一度言うように
鏡に言った。
『黒雪姫さまでございます。』
「あぁ!?ぶち壊すで!?自分っ!!」
椅子を持ち上げで、鏡を脅してみるものの
それでもやはり『黒雪姫』と答えるばかりだった。
一番聞きたくない名前が告げられる。
裕子はギリッと歯をかみ締めて、召使を呼んだ。
78 :
黒雪姫3 :02/05/01 00:02 ID:2sQaITDb
「およびですか?お妃様。」
「ちょお和田呼べっ!!」
「はっ、かしこまりました直ちに。」
何事かと、呼び出された和田は思っていた。
お妃の呼ばれることなど、ないといっていいほど少なかったのだ。
つまり、相当な理由でない限り呼ばれないということであろう。
一抹の不安を抱え、おきさきの部屋の前に立つと
和田は静かにノックして部屋に入った。
「およびですか?お妃様。」
「あんた、黒雪姫の世話係昔やっとったそうやな?」
「はい…。」
「世話係最後の仕事や、黒雪姫を殺して来ぃ。」
「はっ!?」
「せやから!!殺してまえというとるんじゃヴォケ!!」
79 :
黒雪姫3 :02/05/01 00:03 ID:2sQaITDb
訳がわからない。
何故、黒雪姫を殺さなければならないのか。
今日はお妃と黒雪姫は顔もあわせてないはず。
なのに、何故いきなり殺せといってくるのかがわからなかった。
「ですが…な…」
「ですがやない!!殺せ!!殺さへんとお前も、お前の家族も処刑や!!」
「もうなんもいわさへん。殺せ!!殺せ!!殺せ殺せ殺せ殺せ!!!
殺してその証拠にあいつの心臓を持ってかえって来ぃ!!!」
「わかりました…。」
そう言うと、和田は一礼して裕子の下を去っていった。
「気がお触れになったのか…王妃様は…。」
腰に当てている剣に手が伸びる。
殺せるのか…?今まで面倒を見てきた黒雪姫を…。
しかし殺さなければ自分は殺され…家族も殺されてしまう…。
そうして、一路和田は、黒雪姫の部屋へと向かった。
80 :
レイク:02/05/01 00:04 ID:2sQaITDb
81 :
黒雪姫3 :02/05/02 00:18 ID:+44Fes7+
コンコンと部屋の戸をノックすると
「だれ?」
と、聞こえる。
「和田でございます。」
「どうそ。」
和田が部屋に入ると、いつものような微笑を浮かべた黒雪姫が居た。
「どうしたの?和田さん♪」
「あ、いや…夜空でも見に行きませんか?今日は月が良く見えます。」
「そうね。それもいいかもしれないわ♪行きましょう♪じゃあ、ちょっと部屋の外で
まっててね、準備するわ♪」
「はい。」
静かに和田は部屋を出ると戸を閉めた。
そして、それを確認すると上着を羽織る。
このとき、黒雪姫は花冠のことを思い出した。
82 :
黒雪姫3 :02/05/02 00:19 ID:+44Fes7+
(そう言えば…作るって約束してたのに…、いいわ、私のあげよう。)
そうおもって、手提げに花冠を入れて部屋を出た。
「いきましょう♪和田さん。」
誰にも見られぬようにそっと、馬舎から馬を一頭引き出し
後ろに黒雪姫を乗せた。
そうして、黒雪姫は和田に誘われ城を出た。
「和田さーん?何処まで行くのー?」
少し馬に乗ったときに黒雪姫は和田の様子が少し変わっていることが
感じた、返事をしない和田に不安を覚えるが
飛び降りる事など、走っている馬の上からではムリである。
そして、ついた先は小人の森入り口だった。
馬が止められると先に和田が降り、黒雪姫に手を差し出す。
その手につかまって降りる。
「森の中で月を見るの?」
83 :
黒雪姫3 :02/05/02 00:20 ID:+44Fes7+
和田は剣に手をかけた。
完全に手が震えている、それは和田だけでなく、黒雪姫にも伝わっていた。
「そう…お母様に頼まれたんですね…和田さん…。」
「!!!!!!!」
黒雪姫は気付いていた。
いきなり月を見に行こうと言い出した和田に
もしかしたら…という考えが頭によぎっていたのだ。
「いいですよ♪ここで私を切るんですね…。」
カタカタ震えでなる剣は震える手に握られ、少しずつ鞘から露出される。
「あ…渡すの忘れてたんですけど…これ…花冠♪」
そう言って黒雪姫は和田の頭に花冠を取り出してかぶせた…。
「やはり…私には出来ません、姫様お逃げなさい!!もう二度とチャーミー王国には
戻ってきてはなりません…後の事はお任せください!!ではっ!!」
心打たれた…。
自分の死を目前にした女の子が殺される相手のために花冠を用意していたのだ。
黒雪姫を国境である小人の森に置き、その場を和田は去った。
そして、和田は早馬で飛ばしていくと肉屋へ向かい、
ブタの心臓を買って城へ持ち帰ったのだった…。
その頃、ひとみ王子はベッドの上で今日の出来事を思い出していた。
美しく育った黒雪姫。
その美しさに魅了された自分。
もし、黒雪姫が舞踏会へきてくれたなら間違いなくすぐにひとみ王子は
エスコートをして告白をしようと考えていた。
「来てくれるかな…黒雪姫…。」
寝返りを打ち眠れないひとみ王子は、むくっと起き上がり
窓を開いて、屋根伝いに月が良く見える屋根へと向かった。
裸足で心地よく冷たい城の屋根。
ごろんと寝転ぶと正面に月が見える。
夜の月もなんとも乙なものだ。
静かな夜に響き渡る風の音、虫の音。
目を閉じるとそれが強く感じられた。
「俺…好きなんだよな…ってか好きになっちゃったのかな…?」
正直今のところ、自分の心の真意がよくわからなかった。
自分は黒雪姫が好きなのか…。
しかし、彼女の前では素直な自分になれる。
そう言う魅力が彼女そのものなんだろうと思った。
黒雪姫は美しい、それだけでなく容姿端麗、
そして雰囲気がかぼし出す女の子らしさ…。
すべてが満点をつけるに相応しい存在なのは間違いなかった…。
「黒雪姫以上の人なんているわけないよな…。舞踏会をやるまでもないじゃないか…。」
そんな時、雲がだんだん陰って来た。
その雲は月を覆うと、しとしとと雨を降らしてくるではないか。
「あれっ…雨か…。」
しょうがないといった感じで、滑らないように気をつけて自室へ戻る。
軽くタオルで頭を拭い、身体を拭いた。
「あさってか…。」
そう呟いて寝床へ。
大きなベットの中央に横たわると、布団をかけて目を閉ざし、
一日を終えるように眠りについた。
こうして、それぞれ3人の一日が終わっていった…。
86 :
:02/05/04 08:52 ID:oEPuJZXo
朝。
ヤグデレラにも朝はやってくる。
藁の敷かれただけど寝床はとても冷え、寒さで目を覚ますのだった。
「うぅ…さぶっ…。」
腕をさすりながら起き上がり、まずは勝手口から出て
井戸の水で顔を洗う。
紐のついた桶を井戸に放って、引き上げる。
なんてことのない作業であるが、ちっちゃいヤグデレラには一苦労なのだ。
水をくみ上げると、さっそく手で水をすくって顔に当てる。
ひんやりと気持ちが良くてさっぱりとする。
「ふぅ…気持ちい。」
ヤグデレラは近くにある雑巾を手にとって顔を拭く。
ヤグデレラも女の子恥じらいもある。
一応、雑巾は顔、身体拭き用の雑巾、床拭き用の雑巾と分けてある。
したがって比較的顔、体用は綺麗なのである。
顔を拭き終わり、次はいよいよ朝食の準備に取り掛かる。
まぁ、朝食といってもやはり
インスタントラーメン。
継母や義理姉達はこれで文句を言わないのかと改めて考えてしまう。
実は稲葉家は名門であったはずだがここ最近は名ばかりの
貧乏な名家だったのだ、したがって三色インスタントラーメンでも
案外いけてしまうタチのようだ。
それでも成人病にかかりやすくなってしまうのは避けられない事実。
そんなことわからないヤグデレラは今日も沸騰した湯に乾麺を放っている。
朝は比較的アッサリ目の塩ラーメンを作っていた。
3人分作り上げると、居間へ持っていく。
すると、眠気眼を擦っている継母達が居た。
今日も明日に開催される舞踏会について話をしている継母達。
「みちよ、圭織、あんたら今日美容院いってきぃ〜、綺麗にしてもらうんやで。
清楚で美しい女性にしてってゆうたらええ。」
「圭織長い髪切りたくなーい、髪とはずっと友達だもん。」
「まだそないなことゆうとるんか自分、もう20やろ、ガキくさいっ!!」
「おねぇ様っ!?馬鹿にして髪いじめてると酷い目に遭うよっ!」
「ほな何?圭織が言う酷い目って何やねん。」
「たとえば、気持ちい朝にカーテン開きました…するとフクロウが…」
また始まった、とヤグデレラは3人の会話を聞いていた。
得たいの知れない、終わりそうもないこの説教に似た小言のような
義理姉圭織の話は、理解に苦しむ。
ヤグデレラはラーメンを配り終われば、とっとと退室できて
そんな話は聞かなくても済むが、椀を下げに来る時もまだ延々と
同じ話をしていて椀を下げるに下げられない事態になるのが迷惑だった。
自分は残り汁で食事なのに、なかなか食事をさせてもらえないのだ
いい迷惑である。
数十分後、やはり話は続いていた。
継母や義理姉みちよは、「はいはい」と軽く流しながら食事が終わっている。
しかし、1口もつけてない充分伸びきって、スープが見えないラーメンがしき麺類が…。
いつももったいねぇ〜…とおもうヤグデレラだった。
大体この話は1時間もすれば終わる。
1時間経つとようやく伸びきったラーメンを食べ始める圭織。
「ヤグデレラッ!!ぬるいわよ!!何でこんなに伸びてるのっ!!」
おいおい…そりゃねぇだろ。
理不尽に文句をいわれるヤグデレラにはたまったものではない。
90 :
レイク:02/05/05 00:08 ID:K+oHB5eA
91 :
おさるさん:02/05/05 00:57 ID:XWQ21GWp
レイクさん
いつも楽しく読ませて頂いております
「のの太郎とかごや姫」からのファンです
これもすっごいすっごい面白いです。月並みの言葉で恐縮ですが。
これからも頑張って下さい。
あ、健康には気をつけて下さいね。
あまり口をつけず、食事を終わらす圭織は
「ヤグデレラ!昼は伸びてないラーメン出してっ!!」
と文句をいってみちよと共に美容室へ向かった。
(一時間も置いといて伸びないラーメンなんかあるかよっ…)
最もな意見であるが…そんなこともいえないほどこの家では
ヤグデレラの肩身は狭かった。
台所で伸びきったラーメンの残りやらを温めなおして
食事をしているヤグデレラは考え事をしていた。
(ヤグチもいきたいよ…舞踏会…綺麗な格好したいよ…美容室にだって行きたいよ…。)
ツギハギだらけの召使の服。
枝毛だらけ、フケだらけの髪。
荒れた肌、あかぎれだらけの手。
唯一美しいと言うものがあるなら、透き通った瞳と心、そして稀に見られる笑顔だった。
今日も忙しい一日がはじまっている。
舞踏会へ行くのは夢のまた夢…無理な話しだと諦めていた…。
「次は掃除か…。その後は洗濯…。ふぅっ…。」
少しため息をついて自分の気合を入れるため
「がんばっていきまっしょい!」
といって、自分に激励をかけた。その時
『ヤグデレラ…ヤグデレラ…もう少しの辛抱ですよ…。』
ヤグデレラは振り返った、しかし誰もいない、いるわけがない。
でも「もう少しの辛抱ですよ…」と聞こえたのだ…。
疲れてるのかなとヤグデレラは頭に手を当てた。
「熱ないな…。」
台所の片隅にあるホウキをもって、各部屋の掃除を開始した。
93 :
レイク:02/05/06 00:06 ID:VYtE+6Lq
>>91 レスありがとうございます。がんばります。
これからもよろしくお願いします。
94 :
読んでる人:02/05/06 11:00 ID:aIMBAj/Y
ヤグデレラの章は、読んでて涙が込み上げてくる・・・
95 :
黒雪姫4:02/05/07 00:02 ID:KjQAmOhI
黒雪姫は大木の木下で眠りについていた。
夜迷った挙句の果て、雨に降られ、この大木の下で雨宿りをしたとき
睡魔に負けて眠りについたのだった。
そんな眠りについていた黒雪姫を起こすかのように
夜露で出来上がった葉先の雫が黒雪姫の頬に垂れる。
「ん…。」
目を開くと、小鳥達が黒雪姫の周りを跳ねていた。
「あら…♪小鳥さん。おはようございます♪」
小鳥はぴょんぴょん跳ねると、首を傾げたりして黒雪姫の指に乗った。
それが可愛くて黒雪姫から微笑みが漏れる。
風が吹き込むと鳥達はいっせいに飛び立っていく。
黒雪姫の手に乗っていた小鳥も飛び去った。
「またね♪小鳥さん♪」
黒雪姫は軽くパッパッとスカートを払うと、立ち上がった。
小人の森を一先ず抜けようと黒雪姫は歩いた。
しかし、方向も道もわからずやはり迷ったままになってしまう黒雪姫。
96 :
黒雪姫4 :02/05/07 00:02 ID:KjQAmOhI
「喉乾いたなぁ〜♪あっ♪泉があるわっ♪」
偶然に黒雪姫は泉を見つけた。
泉のほとりに座って、手で水をすくう。
透き通った水が太陽の光でキラキラしている。
軽く飲んでみると、飲める水だとわかった。
何口かすくって飲む…ふと水面に自分の顔が映っているのがわかった…。
何処となく寂しい顔…。
そう自分に見えた顔…。
「私にはいくところがないの…これからどうしたらいいかもわからない…。」
ふと、黒雪姫の脳裏にひとみ王子が浮かんだ。
そして、それと同時に部屋に招待状を置き忘れてきていることがわかった。
しかも泥に汚れた、舞踏会用の衣装ではない普通の服。
「これじゃ…舞踏会いけないわよね…道もわからないものね…。」
黒雪姫は小石をつかんで泉に放った。
チャポン…。
水面が揺れる…すると一人の女性があらわれた…。
思わず黒雪姫は悲鳴を上げていた。
「きゃぁぁぁ!?」
97 :
黒雪姫4 :02/05/07 00:03 ID:KjQAmOhI
なぜなら、頭に斧が3本刺さっている女性が現れたからだった。
そう、小人の森でひとみ王子が出会った泉の精である。
激しく流血をしているが、相変わらずのスマイル。
見た目はお岩さんとお化け屋敷に出てくる化け物を掛け合わせた感じだが…。
「大丈夫ですか…?」
思わずそう問い掛けなくてはいけないほどの状態であるのは一目瞭然である。
「大丈夫でーす、ミカだっぴょーん。貴女が落としたのは金の斧?銀の斧?鉄の斧?」
「あの…小石ですけど…。」
「Yes、super cool!発音バッチシ!じゃあこの三本あげちゃいまーっす!!」
泉の妖精ミカは頭から斧を次々引き抜いていく、鯨の潮吹きのような見事な紅い液体の吹き方。
これでよく生きてられるな…と思ってしまうくらいである。
血塗られた斧を黒雪姫手渡すと、ミカは沈んでいった。
黒雪姫は、要らないといおうとしたが言うにいえなかった。
一先ず、斧と紅く染まった手を泉で洗った。
そして身体に不釣合いな斧を一生懸命抱えて黒雪姫は歩き始めた。
すると、前方に小さな女の子が歩いているではないか。
初めてこの森で出会った人、呼び止めるしかなかった。
「あのっ…すいませんっ♪」
98 :
レイク:02/05/07 00:05 ID:KjQAmOhI
>>94 そうですね、これからどうなるか、ご期待ください。
個人的にミカにワラタ。かなりツボ
100 :
(〜^◇^):02/05/07 12:22 ID:LQkGJsBP
100
101 :
黒雪姫4 :02/05/08 00:06 ID:tzzwnCh2
呼び止めると、その女の子は止まってくれた。
紺色の頭巾を被った女の子。
「…はい…?なんでしょうか?」
「この森どうやったら出られるか、わかる?」
可愛い顔をしたちょっとふぐっぽい女の子は
可愛い笑顔をうかべて指を差して教えてくれた。
「あっちの…方へ行くと…ヨッスィー王国ですよ。」
なに気なく挙動不審な感じがしたが、一先ず例を言う黒雪姫。
「お使いかなんかなの?」
「あ、…はい…おばあさんのところへ行くんです。」
「おりこうね♪お名前は?」
「あのっ…そのっ…紺ずきんちゃんです。」
自分の事「ちゃん」付けしてるよ…。
「そう♪私、黒雪姫♪またどこか出会えたらいいわね♪じゃあね♪」
102 :
黒雪姫4 :02/05/08 00:06 ID:tzzwnCh2
そう言って、黒雪姫は紺ずきんちゃんと別れを告げて、教えてくれた方向へ向かっていった。
「私…出番…これだけですか…?」
ええ…まぁ…。
しかし、方向音痴だったことを黒雪姫は知らなかった。
紺ずきんちゃんに教えてもらった方角から明らかに外れていた。
当人は知り由もなく、鼻歌交じりに斧を担いで歩いていたが。
そして、やっと自分が迷っている事の気付いたのは夕方頃になってからのことだった。
改めて思う森の深さ。
そして世の中を知らないことも痛感した。
ヘトヘトになり、もう歩き疲れてしまう。
何も食べていない彼女にこれ以上の歩行は無理かと思われたとき
目の前に一件の家を発見した。
家というには小さすぎる家。
でも、誰かがいるに違いないと思い、その家を訪れた。
ノックをするが誰もいる気配がない。
そっと、ドアノブに手を伸ばしてまわしてみると
ドアは鍵がかかっておらず、開いた…。
もうすぐ夜が来る…黒雪姫は人が帰ってきたら事情を話せばいい
と思い、狭いドアの入り口を頭を下げて入った。
103 :
黒雪姫4 :02/05/08 00:07 ID:tzzwnCh2
部屋を見渡すとすべてが一回り小さいものばかり。
ふと、暖炉の上を見ると写真立てが立てかけてある。
手にとって、写真を見てみると7人の小人達が映っていた。
「そう♪この家は小人さん達の家なのね♪」
あたりを見渡すと、七人分の服が架けてあったり、七人分のコップが置いてあったりする。
しかし、すこし部屋の仲が汚い気がしたので、掃除が得意な…というより
やらされていた黒雪姫は小人の家の掃除をはじめた。
掃除がやはり好きなのか、音痴な鼻歌を歌って掃除をする黒雪姫。
「青春の1ページって、地球の歴史からすると、どれくらいなんだろう?あ〜、いとしいあの人
お昼ごはん なにたべたんだろう?」
「…ご飯か…。おなか減ったなぁ〜…。なんかつくろうかな♪」
掃除が一段落終わった黒雪姫は、小人の家にある具材を確かめてみる。
やってることは犯罪なんだろうが、籠の中の鳥だった黒雪姫にはよくわかっていなかった。
「あっ♪私の好きな食べ物だぁ〜♪これつくろ♪」
そして出来たのは…
やっぱり『焼きぞば』…
トイレくさい…。気のせいか…?
「気のせい気のせい♪」
8人分つくり、先に一つ食べる黒雪姫。
104 :
レイク:02/05/08 00:08 ID:tzzwnCh2
ありがとうございます。俺もこのシーン好きです。(w
105 :
レイク:02/05/08 00:10 ID:tzzwnCh2
川o・-・)放置(・∀・)イイ!!
107 :
黒雪姫4 :02/05/09 00:03 ID:Oyq9eTuQ
「う〜ん♪おいしい♪さすが私っ♪最高っ!!文句の言いようがないわっ♪
小人さんたちも喜んでくれるはずよ♪」
ジカジサンカコワルイ
一先ず腹が一杯になった黒雪姫は、
急な睡魔に襲われた。
考えてみれば、今日散々に歩き、
あまり睡眠時間もなかったのだから眠くなるのは当然の事だった…。
(申し訳ないけど…眠い…。)
小人の家にある、小さなベットの一つで
倒れこむように彼女は眠りについた。
そして、仕事を終えた6人の小人たちが帰宅してきた。
小人たちは陽気に歌を歌っている。
「「「「「「努力 未来 A BEAUTIFUL STAR 努力 Ah Ha A BEAUTIFUL STAR
努力 前進 A BEAUTIFUL STAR 努力 平和 A BEAUTIFUL STAR 」」」」」」
小人は全員女の子だった。
それぞれ背丈は一緒であるが、性格や顔が個性を現している。
108 :
黒雪姫4 :02/05/09 00:04 ID:Oyq9eTuQ
コネ好きな小人、福井ナマリな小人、隙っ歯で関西弁の小人、八重歯で舌ったらずな小人、
おばちゃんっぽい短気そうな小人、イノキの様に顎の出た小人。
こんな特徴をもった小人たち。
非常ににぎやかである。
「あれれ?誰か寝てるれすよあいしゃん。」
「ホンマや、人やな。どないする?おばちゃん。」
「おばちゃんって呼ぶんじゃないわよっ!!これでも21よっ!!」
八重歯の小人と隙っ歯の小人、そしておばちゃんの小人は黒雪姫の周りにいて
そんなことを話している。
また、他の小人は、というと…
「何だコノヤロ!焼きソバあるぞこのヤロ!」
「ほんとだ、7人分だ。去年一人死んだのに。」
「うん、コネの匂いがしないよ、トイレの匂いがするよ。」
イノキの小人と福井ナマリの標準語を話す小人とコネが好きそうな小人は
作られていたヤキソバについてあーたーこーだー言っている。
そんな声に、黒雪姫は目覚めてしまった…。
「ん〜…。」
「あ、起きたでっ!!ののっ!!」
「みんな集まるれすよっ!!」
バタバタ小さな家に足音が響く…。
109 :
黒雪姫4 :02/05/09 00:05 ID:Oyq9eTuQ
黒雪姫が目を開くとそこには6人の小人が集まっていた。
「キャッ…あ…おはようございます♪」
「「「「「「おはようございます」」」」」」
「あの…勝手に使わせていただきました。」
「「「「「「どうぞどうぞ。」」」」」」
「あの…焼きそば作ってみたんで良かったら食べてください♪」
「「「「「「はい。」」」」」」
「一人いらっしゃらないようですけど…。」
「「「「「「死にました。」」」」」」
「あ、ごめんなさい…知らなかったもので…。」
「「「「「「いえいえ。」」」」」」
何故か声が揃っている6人。
まったく顔が違うのだから他人だとは思うが…。
「あの…よろしかったら、なんでもしますから…私をここにおいてくれませんか?」
110 :
黒雪姫4 :02/05/09 00:05 ID:Oyq9eTuQ
黒雪姫は思い切って頼んでみた。
行く場所がない黒雪姫の藁をもつかむようなその表情。
そんな表情をする黒雪姫の前に一人の小人が歩み出た。
「私、新垣理沙。コネだいすっき。お金かなんかちょうだい。」
コネ好きの小人の名前は新垣理沙。
置いてもらうんだから金よこせと言う事だろう。
「「「「「そんな酷い事いうなよー!!コネ餓鬼ぃ〜。」」」」」
ほか小人5人のブーイング。
金に意地汚いのは彼女だけのようだ。
「確かに…その通りですよね…置いてもらうんですもん…謝礼ぐらい当然ですよね…
でも私…お金なんて持って…あ…。」
その時、黒雪姫は3本の斧のことを思い出した。
ベット脇から3本の斧を取り出し、6人の前に見せる。
金色に輝く斧、銀色に輝く斧、普通の斧。
「これじゃダメですか…?」
「「「「「「(・∀・)イイ!!ヨロコンデ!!」」」」」」
こうして、6人の小人と黒雪姫の生活は始まった。
111 :
レイク:02/05/09 00:07 ID:Oyq9eTuQ
ダーヤスは小人役だったのか・・・
ヤグデレに聴こえる声の主がダーヤスかと思ってた・・・。
いよいよ明日となった、舞踏会。
城の大広間は一変、舞踏会場と化していた。
大きな広間に多くの召使達が会場準備にせわしなく働いている。
そこに、ひとみ王子の姿が有った。
ぐるりと360度見渡してみる。
舞踏会というイメージにこだわった、大広間の装飾。
カーテンもサテンのような輝きを持った紅いカーテンに変えられている。
(明日…ここで…。)
そう物思いにふけり、舞踏会場正面の
王座と王妃座の中間あたりに設置された皇太子席に腰をかける。
足を組んで、顎に手を当てながら働いている召使達を眺めていた。
すると、ひとみ王子の右側から見慣れた人物が話し掛けてきた。
「王子様、いかがですかな?舞踏会場は。」
じいだった。
今回の舞踏会の会場総責任者である。
じいは明日の日を楽しみに、ニコニコしていた。
「なんだ、じいか。別に…まぁ忙しく働いているね。」
「そうでございましょう。皆、明日の舞踏会を楽しみにして居るのでございます。」
「そうかな…。仕事だからやってるんじゃないの?」
「そんなことはございません。少なくとも、じいは明日の良き日が楽しみでございます。」
「良き日になるかな…?」
「なりますとも、必ずや王子様に相応しい女性が現れますとも。」
思い切って、人生経験豊富なじいに今まで気になっていたことを
ひとみ王子は少し恥ずかしそうに尋ねた。
「じぃ…、しょ…処女の見分け方ってわかるか?」
「ハァ?」
顔を真っ赤にしながら、再びもう一度言う。
「だから、処女の見分け方だよ…。」
「ハァ?な、なんとおっしゃいました?」
ビックリしているじい、まさかそんなことを言い出すとは思っていなかったのだろう
しかしながら、ひとみ王子、17歳……………童貞。
初めての相手が処女でなければ格好がつかないと思ったのだろう。
なんとも情けない話しだが、若い男にはよくある考え。
赤面をさらに紅くしながら大きな声でもう一度言った。
「俺ドーテーだから、処女の見分け方教えてくれって言ってんだろおおおおお!!!ゴルァ!!!!」
「ヒッ!!」
その時、会場の召使達の動きが止まり、
全員の視線がひとみ王子に集中した。
そして召使全員が見事に一斉に声をそろえて、こんな表情をした。
( ̄ー ̄)ニヤリッ
「「「「「「「「「「「「「「( ´_ゝ`)フーン…。」」」」」」」」」」」」」」」
(は、恥ッ!!)
「全部じいのせいだ!じいのせいだー!!( ⊃ Д `)」
顔を真っ赤にして、ひとみ王子は舞踏会会場を走り去っていった。
部屋に戻って、思いっきりドアを閉めて鍵をかける。
ベッドへボディプレス並に飛び込んだ。
頭の中で先ほどの光景が巡っている。
「じいになんか聞かなきゃよかったよ…。」
聞かれる可能性のある場所で、そんなことを聞いているひとみ王子にも
問題があると思うが…。
一先ず、赤面が治まるのを待ってから本棚からホットドックプレス
を取り出す。
どうやら、黒雪姫の部屋にもあった、女体解体ページがガビガビになっていた
物と同じ号数の物のようだ。
例外なく、ひとみ王子の女体解体ページも開かなくなっているが…。
『特集処女の見分け方』
こんな内容の記事があるのもこの雑誌ならではでもある。
ひとみ王子はそのページを開いて再度読んでみた。
(いまいち、この雑誌の言ってる事、胡散くせーからじいに聞いたのになぁ…。)
「やっぱ…このページ開けないの痛いな…。可愛い子だったのにな…。」
116 :
レイク:02/05/10 00:18 ID:QdrHPWQg
117 :
黒雪姫5:02/05/11 23:10 ID:9e6mO94S
その頃、裕子は非常に気分をよくしていた。
先ほど、和田が部屋を訪れ、心臓を置いていったのだ。
「これで、ウチが世界でいっちゃん美人やな。クククククッ。」
晴れて、裕子は誇らしげに魔法の鏡の前に立つ。
すこし、深呼吸をして、鏡に語りかけた。
「おいっ!!鏡っ!!」
『およびですか?』
「世界でいっちゃん美人、ウチやろ?」
『お答えいたします、世界で一番美しいのは黒雪姫様でございます。』
「ハァ?んなわけないやろっ!!!黒雪姫は死んだんやでっ!!ここに心臓だってあるっ!!」
『残念ですが、お妃様のお持ちの心臓はブタの心臓でございます。』
「ああっ!?どーゆーことやねんっ!!!!」
『黒雪姫様は小人の森の小人の家で今もご健在でございます。』
「くそっ!!謀られたっ!!あのクソボウズっ!!」
118 :
黒雪姫5 :02/05/11 23:11 ID:9e6mO94S
世にもおぞましい顔をして、ブタの心臓を握りつぶす。
一層黒雪姫への恨みが募る裕子。
そして、裕子は召使を呼びつけた。
「お呼びでしょうか?お妃様。」
「和田を殺せっ!!ヤツは反逆者やっ!!」
「はっ…かしこまりました…。」
そう言って、召使は裕子の下を去っていった。
(コロヌコロヌコロヌコロヌ…黒雪姫めぇっ!!!!)
「こうなったら…ウチが殺しにいったるわ。」
不気味な笑みを浮かべて、裕子は化粧道具を用意した。
魔法の鏡の前に座り、自らの顔を化粧してゆく。
そして、あっという間に老人メイクを完成させ、白髪のカツラを被り、
黒い大きな布を被り、魔法使いに扮した。
メイクにいたっては…ノーメイクにすればよかっただけなのに…。
そして、裕子は次に毒リンゴを作り始める。
怪しげな本を開き、鍋に火をかけて怪しい物体やら
普通の人ならそんなもの食べないだろうというようなものを
沸騰した鍋に放り込んでいく。
その時、召使が戻り、ノックをする。
「なんやねん、こっちは忙しいっちゅーねんっ!!用なら戸越しに言いっ!」
「申し上げます!!和田を探しましたところ、見つからず、
事情を知るものをから聞いたところによると、先ほどヨッスィー王国に亡命していったそうです。」
119 :
黒雪姫5 :02/05/11 23:12 ID:9e6mO94S
そう、和田はいずれかバレるだろうと踏んでいた。
よって、心臓献上前に荷の整理をして、献上後に荷馬車を使って
逃亡を図ったのだった…。
「チッ…まぁええわ。下がれっ!!」
「はっ…。」
(まぁ、あんなもんはどうでもええ…黒雪姫を殺すのが先や…。
これ…入れたかな…入れた気もするな…。まぁ入れたやろ…。)
「ヒッヒッヒッヒッ…。」
不気味な裕子の笑い声が部屋に響き渡る。
そして、毒の入ったリンゴを作り上げたのは翌日の朝だった。
裕子はひっそりと、城を抜け出し、馬に乗って一路小人の森へ向かっていく。
「あひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ…。」
(今度こそ!この手で殺してたる!!にっくき黒雪姫めっ!!)
120 :
黒雪姫5 :02/05/12 23:12 ID:wwUUf8AO
そのころ小人の家では小人たちと黒雪姫が仲良く暮らしていた。
限りなく純粋な黒雪姫の人柄に小人も心惹かれていったのだ。
「じゃぁ、今日は舞踏会の日なんれすか…?」
「そうよ♪ののちゃん♪でも…もう無理な話なの…いけなくなっちゃったの…。」
モップで床を拭いながら、今日の本当は舞踏会に行く日であったことを
黒雪姫は小人たちに話していた。
とても辛そうな顔が、小人たちの心を痛める。
「ほな、ウチらで今晩連れてったろ。なぁ、みんな。」
「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」
「え…でもいいわよ…お洋服舞踏会向きじゃないもの…。」
続けてイノキ顔の小人:小川真琴がそんなネガティブな黒雪姫を諭した。
「気持ちだコノヤロ!服なんて関係ないぞコノヤロ!」
「「「「「そうだ!そうだ!」」」」」
「そうよね…気持ちよね♪わかった、黒雪姫カンバル♪」
121 :
黒雪姫5 :02/05/12 23:13 ID:wwUUf8AO
その微笑に小人全員が微笑みで返す。
ちょうど9時になり、時計の鐘が鳴り響く。
小人たちのリーダー、通称おばちゃんの保田圭は小人全員に呼びかける。
「ちょっとっ!!はしゃいでないで話を聞きなさいよっ!!もう9時よっ!!仕事いくわよっ!!
点呼っ!!」
「1」
「2れす」
「3やで」
「4だコノヤロ」
「コネッ」
「よし、全員居るわねっ!仕事いってくるわっ!!黒雪姫、家事頼んだわよっ!!
お昼前には帰ってくるわっ!!」
「はい♪いってらっしゃい♪」
見送りに入り口まで出て、黒雪姫は手を振っていた。
小人たちも何度も振り返りながら、
いつものように小人たちは仕事に出かけていった。
見送りを終え、家の中に入ろうとすると小鳥達が
黒雪姫の周りに集まってきた。
この森のあらゆる動物達が彼女を好いている証拠だったのだ。
「あら♪小鳥さんたち、おはよう♪」
小鳥達のさえずりは朝そのものであると彼女に教えてくれる。
122 :
黒雪姫5 :02/05/12 23:14 ID:wwUUf8AO
「そういえば、パンの残りがあったわ♪小鳥さん達に上げるわね♪」
そう言って、家の中へ一旦入ると、黒雪姫は
食べ残ったパンを持ってきて、小鳥達の真ん中に座り
分け隔てなく、小さくちぎって与えていく。
小鳥達はその黒雪姫の行為が嬉しかった。
そうして、餌を与えたあと家事をして約2時間の
時間が過ぎていった頃。
ふと、時計を見る黒雪姫。
「もうすぐ小人さん達が帰ってくるわね♪お料理の仕度も終わったし、
洗濯した服を干しましょうか♪」
洗い終わった衣類を持って黒雪姫は外へと出る。
そして、服を干し終わったとき一人の怪しい老婆が
黒雪姫を尋ねて来た。
123 :
黒雪姫5 :02/05/13 23:05 ID:ikoi5lyh
やはり、老婆は裕子であった。
近くに馬を止めてきたのであろう、裕子は歩いてやってきたのだから。
裕子は喉のあたりを押さえて発声練習をしてから、黒雪姫に話し掛けた。
「お嬢さん、おいしいド…リンゴはいかがじゃ?一口食べるとどんな願いもなうりんごだよ。」
さすが名演技。
伊達に年をくっていない…。
自分を殺そうとした継母だとわからず、
黒雪姫は丁寧な対応をした。
「まぁ♪なんでも願いがかなうんですかっ?」
「そうじゃよ。なんでも願いがかなうんじゃ。」
「でも…お金持っていません…。」
「気にせんでもええわい。後でお茶でも一杯もらえればの、ヒッヒッヒッ。」
「じゃあ、お言葉に甘えて…いただきまぁす♪」
「そうさ、はやくおあがり。」
老婆に扮した裕子は籠から一つのリンゴを取り出して
それを、黒雪姫の手に手渡した。
その時、危機を察知した小鳥たちが黒雪姫に
危険を知らせるように騒ぎ始めた。
124 :
黒雪姫5 :02/05/13 23:06 ID:ikoi5lyh
「どうしたのかしら…?あの子達騒いでるけど…。」
その小鳥達の止めようとする鳴き声とどかず、
黒雪姫はどうしても、ひとみ王子にあいたい一心で
毒リンゴを1口かじった…。
「どうじゃ…?リンゴのお味は…ひっひっひっひっ…。」
「とってもおいしいけど、何か変な…………。」
リンゴが黒雪姫の手からゆっくりと重力にしたがって落ちる…
突如として、黒雪姫はめまいに襲われ…倒れた
呼吸がだんだんと苦しくなる…
「あ…れ……。」
視界が暗くなり…ぼやけた視界の中で
老婆は不気味な笑みを浮かべていた…
その不気味に笑う老婆は息絶えゆく黒雪姫にこう言った…。
「うらむなら、自分の美貌を恨めや…黒雪姫…。」
どこかで聞いたことのある声…
自分を黒雪姫と知っている…
消え行く意識の中で…その老婆が継母である裕子だと悟った…。
そして、静かに黒雪姫は息絶えた…。
125 :
黒雪姫5 :02/05/13 23:07 ID:ikoi5lyh
その場に立ち尽くす裕子。
達成感と自分が世界一の美貌に戻った事を酔いしれ
黒雪姫をみてほくそえんでいた。
「ほな。念にな念を入れて、心臓でもえぐり取っとこか…。」
懐から裕子は短剣を取り出した。
スッと鞘から引き抜くと、鋭い刃がキラリ光る。
その短剣を上に振り上げたその時!!
「「「「「「なにをやってるんだっ!?」」」」」」
仕事帰りの小人たちが倒れている黒雪姫に向かって
裕子が短剣を振りかざしているところを目撃したのだ。
「チッ…しゃーない、充分やな。ほな退散やっ!!」
見た目をはるかに超える足の速さでその場を去る裕子。
そして、小人たちが駆け寄ると…そこには
黒雪姫が眠るように息絶えていた…。
保全
127 :
黒雪姫5 :02/05/15 23:07 ID:tnMfjl9c
「うわ〜〜〜ん!!!黒雪姫しゃんが死んじゃったれすよぉぉぉぉ!!!」
「なんでやねんっ!!ゆるさへんぞっ!!あのばばぁっ!!」
怒り心頭な6人に小鳥達が見ていた一部始終を話してくれた。
「あんたたちっ!!ここに居てもしょうがないわよっ!!あのババアをやっつけるのよっ!!」
「「「「「うん!おばちゃんっ!!!」」」」」
「何度言えばわかるのッ!!!おばちゃんっていうんじゃないわよっ!!」
そして、6人は逃げた老婆の裕子の後を追った。
「くそっ!!チビの分際で足速すぎやでっ!!なんなんな、あのキッショイ生き物6人はっ!!」
「「「「「「ゴルァァァァァ!!!!!まてー!!ゆるさないぞーーー!!!」」」」」」
次第に、その距離が短くなってくる。
裕子は馬を置いてきてしまった事を後悔した。
息も絶え絶えになったとき、やっと森を抜け出せることが出来たが
そこは断崖絶壁の谷であった。
「うわっ!!あぶなっ!!」
後ろを振り返ると、殺気に満ちた6人が追いつき
裕子をただ睨んで立っていた。
裕子は引き攣った笑顔を浮かべ
「命だけは勘弁してーな。ホンマゆーちゃんが悪かったさかいな…。このとーりや。」
128 :
黒雪姫5 :02/05/15 23:08 ID:tnMfjl9c
手を合わせて命乞いをする裕子。
無論、逃げ出せる為の演技である。
そんな命乞いなど聞かず、どんどん詰め寄る小人6人。
「わ、わかった。いくらほしいねん。ホンマ金、ウチぎょうさん持ってんねん。
ホンマやで、ホラッホラッ。」
懐から、金貨の沢山入った袋を取り出し、小人6人に見せ付ける。
「「「「「金で済む事かっ!!」」」」」
ごもっとも…。
しかし、一番金で済んでしまう小人が歩んでくる。
「私!新垣理沙っ!!コネだいすっき、お金だいすっき!!お金ちょーだい!」
コネくさい笑みを浮かべる新垣に
裕子は、ほっとした表情で、金貨が入った袋を手渡した。
「なんや、話のわかるお嬢ちゃ…ちょっ!!何するん自分っ!!」
ドンっ!!
新垣は裕子を谷底へ突き飛ばした。
まっ逆さまに落ちていく、裕子は叫び声を上げながら、落ちていった。
「お金だいすっきだけど、一番大切なのは友達だよっ!!」
なら金もらうな…。
一先ず、谷底を覗いて、裕子が息絶えている事を確認した6人は
小人の家に帰った。
129 :
黒雪姫5 :02/05/15 23:09 ID:tnMfjl9c
夜に既にあたりはなっていた…。
小人の家では悲しみに包まれていた…。
小人のみならず、彼女に接した小鳥達や動物達が
集まり、黒雪姫を偲んで泣いた…。
「起きろよ、コノヤロっ!なんだ!コノヤロっ!」
死んでいるはずなのに…頬は色艶を失わず、まるで寝ているかのような
表情をしていた…毒に苦しめられ死んで逝った顔には到底見えなかった…。
「斧の代金分の生活してないよー!!黒雪姫さーん!!!」
コネだいすっき、お金だいすっきである新垣は金貨を数えながら泣いた…。
「訛りがあるって、標準語の正しい発音教えてくれるって言ったじゃないですかー!!」
訛り標準語の高橋は『正しい日本語の発音法』なる本を抱えて泣いた。
「クソッ…なんでこうなるのよ…せっかく人間の友達が出来たのに…。」
おばちゃん顔の保田の顔がくしゃくしゃにゆがんでいる。
「生き返るれすよー!ののにトイレの匂いのするヤキソバ作ってくらさいよーう゛わ゛〜ん!!」
お菓子を口に掻き込みながら、大声で泣く八重歯ののの。
「黒雪姫ぇ…あかんやん…今夜舞踏会逝くんやろ…大好きなひとみ王子に会うんやろ…。」
すきっぱの小人、あいぼんは黒雪姫の手をもって胸の上に組ませようとした…。
「!!!!!!」
トクン…トクン…トクン…トクン…。
「みんなっ!!い、いきとるよっ!!!」
「「「「「えぇっ!!!!」」」」」
5人が黒雪姫の周りに集まる。
みんなが黒雪姫の肌に触れた…。
暖かい…しかも…息をしていた…。
「いきてるれすっ!!生きてるれすよおお!!!」
大きな喜びが小さな家を包んだ。
しかし…
「でもコノヤロ!どうやってコノヤロッ!!起こせるんだコノヤロッ!!」
そう、いくら揺さぶってみても彼女は起きなかったのだった…。
夜…。
ついにこの夜がやってきた…。
おめかしをして、義理姉達は意気揚揚と舞踏会へ出かけていった…。
無論、親であるあつこも舞踏会のドレスを着て出て行った。
一人取り残されたヤグデレラは、家の外で照明に照らされていた
ヨッスィー城を複雑な気持ちで眺めていた。
「いいなぁ…ヤグチも行きたかったな…。」
大きくため息をついて、井戸の水をくみ上げる。
くみ上げた桶に映る自分の顔。
とても疲れて悲しい顔をしていた…。
大きなバケツに水を汲み終えると、ちっちゃい身体は
一生懸命に家の中へ運んでいく。
バケツを台所に置いて、一息ため息をついた。
時刻は午後8時。
ちょうど舞踏会が始まる頃だった。
(あれ…?何かおかしいな…この台所…。)
ヤグデレラはいつも居る台所に違和感を覚えた。
何かが違う…というより何かが居るっ!!
しかも、買い置きの食材が荒らされていた。
黒い影…人!?強盗!?
ヤグデレラは自分に背を向けて食べ物を食べている人物に
気付かれぬように、すり足で近づく。
近づく際にフライパンを掴んで…。
上へ振り上げた
ゴィ〜〜〜〜〜〜ン。
「グェッ!!いった〜い!!何するっしょやぁ〜!!目から火花でたっしょー!?」
振り返ると、その正体は自分と大して差のない
変な衣装をした女の子だった。
まるで魔法使いのような…。
「あ、アンタこそっ!!なんで人の家はいって食べ物食べてんのよっ!!犯罪だよっ!?」
「あはは〜、気にしない気にしない。」
叩かれた頭をスリスリ擦りながら、もう一方の手で
ポンポンと笑顔で人の肩を叩いてくる。
非常になれなれしい…。
「とにかく!警察いこうっ!!これ悪い事なんだよっ!!」
腕をつかんで、外へと引っ張っていこうとする。
「ちょ、ちょっとまって。あんたヤグデレラっしょ?助けに来たっしょや〜。」
「ハァ!?窃盗しに来たんじゃないの!?」
「んな事ないっしょや〜、なっちは魔法使い………の見習。」
「見習かよっ!!半端じゃねぇかよっ!!」
「そんなん知らないっしょ。ヤグデレラが中途半端にいい子だから、なっちが
よこされたってわけっしょや〜。」
「なんだよっ!!中途半端って!!!」
しかし、なっちという魔法使いが行っている事は
正しかった、たしかにヤグデレラは中途半端にいい子なのだ。
本来、まったくをもって非の付け所のないようないい子であったなら
普通の魔法のおばあさんが現れただろう。
「とにかく、舞踏会いきたいんっしょ?」
「ま、まぁ…そうだけど…。何でわかるのっ!!」
「しばらく様子を見ててねぇ〜、夢とかで呼び掛けられたっしょ…あれ、なっち。」
ニコニコ、自分に指差すなっち。
「なんだよっ!!あれお前かよっ!!ふざけんなっ!!せっかくのいい夢だったのにっ!!」
「なんだべか〜?これから恩人になる人に向かってそう言う言葉はないっしょー?」
相手がいびられている継母達でないだけに
態度がでかくなるヤグデレラ。
まぁ、ストレスがたまっているのだろう…。
「で、あんた魔法できんのホントに!?」
「あー、出来ますともー。見てればいいっしょや〜。」
なにやら、なっちと言う魔法使い見習はステッキを瞬間的に取り出した。
「どうだべ?すごいっしょ?」
「手品でしょ、それ。」
「………まぁ、そうともぃぅ…。」
「インチキじゃん。」
「あー!!もうわかった、わかった。本題入れば良いんっしょ!?」
133 :
レイク:02/05/15 23:13 ID:tnMfjl9c
>>126 保全ありがとうございます。
18日深夜を最終更新予定としています。
18日で終わりなんて寂しいよ〜
ふぅ…とため息をついて、なっちはやっと魔法をかけることにした。
ヤグデレラに向かって、ステッキをまわすように振っている。
「なーっち!ハイ!なーっち!ハイ!なーっち!ハイ!なーっち!ハイ!…」
何故かなっちはジャンプしている。
いつの間にかステッキがサイリウムに変わり黄緑色の光を放っていた。
しかもどこか別の方向を見ている。
どうやらアリーナ席から声援の送っているシチュエーションのようだ。
するとヤグチのつぎはぎだらけの服が光り始めた。
そのまばゆさに目を閉じるヤグデレラ。
そして再びヤグデレラは目を開いて見てみると
「何でバニーガールなんだよっ!!コンパニオンなんかやりたくねーよっ!!」
ヤグデレラはなっちの頭を思いっきり叩いた。
「ゲハッ!!し、舌噛んだっしょー!?冗談が通じないなー。わかったよ、わかった
やり直します、やり直します。」
再びなっちの得体の知れない応援が行われ、再びヤグデレラの服は光に包まれた。
再度ヤグデレラは服を確認してみると、
「さむっ!!ってなんでハダカやねん、ヴォケっ!!つかまるわっ!!」
再び乾いた音が台所内を響き渡る。
「顔が熱いっ!!顔が熱いっ!!」
相当身悶えする、魔法使い見習なっち。
かなりの効き目がある攻撃をもらったようだ…。
紅葉が頬っぺたにくっきり浮かびだし、
なっちは歯の隙間からスースー言わせている。
「しょうがないっしょやー!!こっちだって見習いっしょーーーー!!!」
「逆ギレかよっ!!」
ぶつぶつ言うので、ヤグデレラは台所だけに刃物を取り出してみる。
「アハハハ…次こそ見ててくださいよー、ヤグデレラさまー。」
態度一変。
命は惜しいらしい、一生懸命にサイリウムに願いをかけて
ライブ会場さながらに汗を滲ませてジャンプする。
再び、ヤグデレラの身体は光に包まれた。
「おおっ、やれば出来るじゃ〜ん。えらいえらい。」
すると、今度は見事なドレス姿に変身したではないか。
やれば人間できるもんなんだなぁ…
いや、命が惜しいばかりに火事場の馬鹿力的な奇跡なのかもしれない。
「そうっしょー?だからその刃物しまいましょうよ、ヤグデレラ様。」
「うんうん。わかったわかった。」
気分良くヤグデレラは包丁を元の場所に戻した。
煌びやかなドレスがとっても気に入ったようだ。
まるで、子供がクリスマスプレゼントをサンタさんからもらったかのような
嬉しい顔をしている。
「じゃあ、次はかぼちゃとねずみを用意して欲しいんだけど…」
「かぼちゃぁ?そこに…ってアンタ食べちゃったじゃん…。」
ふと見ると、床にはかぼちゃの種だけが散らばっていた。
生で食うのか…なっち…。
「あははー。てっきり仕事忘れて食っちゃったっしょー。しょうがないっしょー。
ほかになんかあるー?」
「ほかにぃ〜?」
しょうがなくヤグデレラは台所をあさり始める。
大概の食べ物がなっちに食べられた今、食材が残っていない。
「リンゴの皮くらいしかないよ…アンタのせいで。」
「アハハハ…何とかするべさ…。で、ねずみは居る?」
「そんなんすぐに捕まえられるわけないでしょー?」
「何か動物が必要だから、何か用意して欲しいっしょー。」
「動物ねぇ…。あ、飼ってるインコなら居る。」
「インコかー。なんとかなるっしょ。なっち外に居るから持ってきて。」
「あーわかった。逃げないでよ?」
眼光鋭いヤグデレラの視線に怯えるなっち。
先ほどのことを考えれば逃げ出したくもなるが…。
勝手口から鳥篭をもって外に出ると、なっちが一生懸命に
呪文の練習らしき先ほどの声援の練習をしていた。
「もってきたよー。で、どうすんの?これ。」
「なっちに任せるべさ………あのー、ヤグデレラさーん…そのヤグデレラさんが
後ろ手に隠しているフライパンはなんでしょう?」
「ああ、気にしない気にしない…井戸水で洗おうとして持ってきただけ。」
絶対嘘だ…。
完全になっちでもてあそぶのに喜びを感じ、
不気味に微笑んでいるヤグデレラの姿がそこにあった。
そんな威圧感に怯えながら、脂汗を滴らせながら呪文を唱え始めた。
「なーっち!ハイ!なーっち!ハイ!なーっち!ハイ!なーっち!ハイ!…」
すると、鳥篭が開き中のインコが出た瞬間、インコが光り始めた。
その眩しさに、やはり目を塞いでしまうヤグデレラ。
光るのが治まると、なぜかヤグデレラのみみには無数のカラスの鳴き声が…。
目を開くとそこには一体何羽居るのかわからないほどのカラスの群れがそこには現れていた。
「な、なんだよっ!!これっ!!また失敗!?」
ヤグデレラはフライパンを装備すると
攻撃力が13ほど上がった。
「いや、ちょっと待つべさっ!!これで良いっしょや〜!!」
「ハァッ!?」
「ちょ、ちょっと、リンゴの皮を貸して。」
無数のカラス達を避けながら、ヤグデレラはリンゴの皮を渡した。
リンゴをむいたときに、出来たこの長い皮が一体何になるというのか。
裏技…?
伊東家の食卓…ンナコタァナイ。
再びリンゴの皮を持って呪文を唱え出すなっち。
ヤグデレラは気合充分、なっち相手に改心の一撃を繰り出す自信があった。
やはりこれも、なっちは声援のような呪文を一生懸命に唱えた。
例の如く光を放ち、ヤグデレラが見てみるとブランコのような物が…
無数のピアノ線に座る部分の板がついている、ブランコならば肝心の鉄骨がないようだが…。
「珍しく2回連続でうまくいったべ…。」
安堵の表情で、なっちはカラスの足にそのピアノ線を巻きつけていく。
「な、なにやってんの?なっち…。」
わけがわからない表情をするヤグデレラ。
そりゃあ、何をやってるかさっぱりわからない。
しかし、なっちは自慢げに答えた。
「ゲゲゲの鬼太郎って知ってるっしょ?」
「まさか…それに乗れってこと…?」
「そう言うことだべ、しっかりつかまってれば送り迎えしてくれるべさ。」
ふーん。といった表情でカラスの何とも表現のしようのない
乗り物を見るヤグデレラ。
たしかにこれだけ数が多いカラスが同じ位置で羽ばたきながら浮いている。
送り迎えをしてくれるといったなっちの言葉も嘘ではないような気がしてきた。
「あ…ヤグチ招待状持ってないよ。おねぇ様にもっていかれちゃった。」
「大丈夫だべさ。」
そう言って、なっちは懐から招待状を取り出した。
宛名はヤグデレラ様となっている。
「す、すごい!!どうしたの?」
「偽物っしょや〜。なっちは偽札製造の魔法だけは得意だったし。」
ぉぃぉぃ…。
「大丈夫かなぁ。これ偽物でしょ?」
不安を感じながらもヤグデレラは招待状を受け取った。
しかし、見れば見るほど、あの姉達が持っていた招待状そっくりなのである。
「簡単だべさー。こんなのサンクスのコピ…っとなんでもないべ、
とにかくたのしんできたらいいべさ。」
「うん…ありがとう、なっち。」
「その笑顔だべ。あ、これ、さっき隣の国の靴屋で万引きしてきた靴だべ。履いてったらいいべさ。」
何故だかなっちは、手品にこだわる。
スカーフを瞬間的に出すと、それで片手を隠すように覆い
スカーフを退かすと、ガラスの靴が姿をあらわした。
「ガラスの靴…?ヤグチにくれるの…これ…。」
「そうだべさ。いっぱい輝いて欲しいっしょ。」
盗品とはおもいつつ、なっちの言葉が嬉しかった。
どうして彼女は私のもとにやってきたのか…
「なっち…あんたなんでヤグチのところに来たの?不幸な子なら他にもいくらでもいるのに。」
「なっちはヤグチの幼馴染だべ?」
「幼馴染?・・・????ああああああ!!!!いじめられっ子なち坊!!!」
深い底にある記憶が呼び覚まされた。
確か、近所に住んでいた女の子でよく、いじめられていた子…。
親戚に引き取られて…押入れ部屋に住まされてて…ある日居なくなった…。
で、今、魔法使い見習…。
ってハリー(略
「なち坊、魔法使い……の見習になったの!?」
「そうだべさー、やっと思い出してくれたー。なつかしいっしょー。」
「うん、まぁ…。」
(あの時、たしか女の子ヤグチとなち坊しか学校に居なくて…
しょうがないから付き合ってやってた気がするけど…まぁいっか。)
「魔法使いの先生に任されたのもあるけど、なっちはヤグチに久しぶりに会いたかったべさ。」
「そっか、ありがとう。」
「………ヤグチ香水つけていった方がいいべさ。くさいよ。」
そう、ヤグチの体臭がキツかった。
ろくに風呂も入らせてもらえないのだから、わからなくもない。
「でも、ヤグチ香水なんて持ってないよ…。」
なっちはクスッと笑い、また手品。
果して、魔法を習いに行ったのか、手品を習いに行ったのか…。
「夢10だ〜い。」
取り出したのはいかにも胡散臭い小さなビン。
雑誌などの裏表紙などに出ている香水…というより媚薬。
らしい…。
「何…?それ…?」
「これを嗅いだ十代男性はヤグチにメロメロ、ハァハァ、萌え〜になっちゃうべさ。」
「ふーん…。じゃあ、ひとみ王子様も…?」
「そうっしょー。10代の男どもはみんなハァハァだべー、これで処女捨てれるべさ、ヤグチ。」
「………そうだね、処女ってことにしておこう。」
じゃないんですか…?ヤグデレラさん。
「あとは、飾り物っしょ。宝石宝石。」
そう、ドレスを彩る、彼女を彩る大事なアイテム。
それがまだヤグデレラの身についていない。
「あ、ちょっと取ってくるよ、待ってて。お母様の残した遺品があるから。」
「ヤグチ、とりに行かなくっていいっしょや〜。」
取りに家に戻ろうとした時、ヤグデレラをなっちが呼び止めた。
なにやら、懐から取り出している。
「ホラ、ヤグチのお母さんの遺品の宝石なっち持ってるっしょ。」
バキッ!!!
「なんでお前が持ってんだよゴルァ!!!!」
「目が重いっ!!目が重いっ!!片目が重いっ!!」
片目を押さえてなっちは悶え転がっている。
イイモノを片目にもらったようだ…グーで。
それでも、ニタニタしながら起き上がるなっち。
「冗談効かないっしょー。ヤグチは〜、アハハハ〜〜。」
とにかく、準備は出来た。
ヤグデレラは、カラスから垂れ下がっている腰掛部分に腰をかける。
「いってらっしゃい。幸せつかめ!!なっちはヤグチの幸せを祈ってるっしょ。」
「うん…ありがとう。なっち…」
「なに?ヤグチ。」
「また会えるかな…?」
「もちろんっしょ。ヤグチが幸せつかむその日まで、なっちはヤグチを応援するっしょ。」
「そっか、ありがとう。じゃあ、行ってきます。」
そう言って、ヤグデレラはゲゲゲの鬼太郎並の乗り物で
一路、ヨッスィー城へ向かっていった…かに見えたが、
上空でなっちがホウキに乗って追いかけてきた。
「ヤグチーー!待つべさ〜。言い忘れた事があるっしょー!!」
息絶え絶えになって、追いついてヤグデレラに並走する。
「なーにー?」
「なっちのー魔法は0時過ぎたらー解けるべさぁー!!ついでに正体を言ったときも解けるべさー!!」
「早く言えーーー!!やーぐぱーーーーんちっ!!」
ドコーン。
「バイバイキ〜〜ン…べさぁ〜〜〜〜!!」
ヤグデレラ必殺技により、くるくる飛ばされ星になった。
「元気百倍!!やぐたんまん!!」
ワケワカラン…。
144 :
レイク:02/05/16 23:14 ID:g7YVqBXp
>>134 レスありがとうございます。
開始当初から1ヶ月で終わらそうと考えていました。
会場は多くの人でにぎわっていた。
舞踏会場に見られる、ワルツを踊る人々、演奏者達…。
そして皇太子、王、王妃に多くの人間が挨拶をしてきた。
まぁ、面倒な時間であるが…。
これだけ多くの人が集まっている。
その中で一人の人をひとみ王子は目で探していた。
(黒雪姫…来てないな…来てくれないのかな…。)
開始してから3時間が経過していた。
3時間…。
今夜は朝方近くまで舞踏会は開かれている、
だからまだ諦めるのは早いかもしれないが、
一国の皇太子が嫁選びに舞踏会を開くのだから
隣国で、さらには同盟国であるチャーミー王国の
黒雪姫が会場に現れるのは必然的なはずである…。
(振られたのかな…。俺…。)
何か誘い方が不味かったか、などと頭をめぐらしている
ひとみ王子の姿がそこにはあった。
どこか遠くを見ていて、やってくる人々の挨拶など
上の空だった。
そんなとき、会場内にどよめきが走った。
(もしかして!?)
そんな想いがひとみ王子を皇太子席から立ち上がらせる。
大衆が道を作るようにある女性の前を退いた。
ひとみ王子とその女性はちょうど直線的になり目と目が合う。
一段と煌びやかなドレス、彩る宝飾はさることながら
小さい身体に美貌を兼ね備えた女性が現れたのだ。
そう、彼女はヤグデレラだった。
午後11時。
ヤグデレラに与えられた時間は僅か1時間。
ひとみ王子は自然とヤグデレラの前に歩み寄った。
(ヤベェ…かわいい…。)
すっかり黒雪姫のことなど忘れさせられる。
それだけ、ヤグデレラは輝きとオーラを持ち合わせていたのだ。
ヤグデレラは丁寧な挨拶をひとみ王子にして
「本日はお招きありがとうございます。」
と言った。
「あ、いえ…よろしかったらワルツを踊ってくれませんか…?」
はじめてひとみ王子が今日ワルツを誘った。
ヤグデレラは少し顔を赤らめてコクッと頷く。
ひとみ王子が手を取り、音楽にあわせて踊り始めた。
「本日はどちらから…?」
リズムにあわせながら見つめあい、ひとみ王子はそう問い掛ける。
「はい、城下から参りました。」
「どちらの貴族のお嬢さんですか…?」
「…………。」
「どうしたのですか?いえないのですか…?」
「すいません…。」
「では、今宵私に幸せな時を与えてください。」
「はい…。」
ぎこちないヤグデレラのダンスをひとみ王子がカバーしていく。
時折ガラスの靴で足を踏まれるなどのもあった。
それでも、見つめあい、その目を離さぬように曲が終わるまで踊り続けた。
ワルツが終わると、ひとみ王子はワインとグラス二つを持ってヤグデレラを誘って舞踏会場を出た。
月が良く見える中庭に誘ったのだ。
「せめてお名前を聞かせてもらえませんか?」
「すいません、それも………。」
「そうですか。それは残念ですね…。あ、ワインいかがですか…?」
「はい…いただきます。」
中庭の噴水の周りにベンチがある。
それに座って、ポンッとワインの栓を抜きグラスに注いでゆく。
なみなみともられた赤い液体に、映し出される月がなんとも
二人の雰囲気作りに花を添えてくれる。
心地よい、グラスの響き。
頬を赤らめ、見つめあいながらグラスを口につける。
「おいしい…。」
「ですね。」
「どうして、何も教えてくれないんですか?」
「ごめんなさい…本当に言えないんです、約束なんですよ。」
「誰と…?」
「…………。」
「野暮な事を聞くのはもうやめます。こうして貴女に出会えた事を幸せと思わなくては…。」
その言葉にヤグデレラもすぐにコクッと頷いた。
しかし、時というのは残酷なもの、城にある大きな時計台は
まもなく、0時を迎えようとしていた。
ふとヤグデレラの視界にその時計台の時計が目に映る。
後5分もない…。
ヤグデレラは表情を曇らせた。
ひとみ王子がそれに気付き、どうしたのかと思い尋ねた。
「どうしたんですか…?具合でも…。」
「いえ…私、もう時間がないんです。今日は楽しかったです、さようなら!!」
すっと立ち上がると、逃げるかのようにひとみ王子の下を走り去る。
「ちょっと待って!!」
ひとみ王子も立ち上がり、ヤグデレラの後を追いかける。
すると、カラス達がひとみ王子とヤグデレラの間をさえぎった。
「カ、カラスッ!?」
ひとみ王子はジャマをするカラスを振り払おうとした。
そして、振り払う事が出来た時、ヤグデレラは空を飛んでいた。
「!?…か、カッケェ〜〜〜!!」
ただ、空をカラスに運ばれて飛んでゆくヤグデレラを
カッケーと思い見つめ続けることしかできなかった。
ふと、下を見ればヤグデレラが履いていたガラスの靴が落ちているではないか。
ひとみ王子はガラスの靴を拾い上げると呟いた。
「きっと見つけますよ、この城下から貴女を…。」
そのとき、0時の鐘が城内に響き渡った。
0時の鐘が鳴り響いた時、ヤグデレラは上空にいた。
ヤグデレラは泣いていた。
「ふぐっ…んぐっ…ごめんね、王子様…、ひぐっ…。」
しかし、そんな悠長な事を考えている事態でないのを
すっかり忘れていたのだ。
時計の鐘が鳴り止むと、ヤグデレラは急激な落下感に襲われた。
「!!!!!!!!」
そう、魔法が解けたのだ。
一目散に落下していくヤグデレラの身体。
「し、しまったぁぁぁぁぁ〜〜〜〜!!わすれてたぁぁぁぁ〜〜〜!!!」
ドボ〜〜ン。
運がいい。
彼女は非常に運がいい。
ヤグデレラの落ちた場所とは、大きな池だったのだ。
必死にもがいてなんとか水面に顔を出すと口から魚を吐き出した。
「おえっ。踊り食いしちゃうところだった…。」
池から抜け出すと、びしょびしょの身体を引きずりながら家へと向かうヤグデレラ。
泥にまみれた片方のガラスの靴を脱いで抱えて歩く。
みすぼらしい姿にさらに輪をかけたような姿だった。
裸足で歩く帰り道。
石畳が足にひんやりとマイナス熱を伝える。
(嬉しかったな…たった1時間しかなかったけれど、ひとみ王子はヤグチの相手をしてくれた…。)
嬉し涙…?
悲し涙…?
なんとも言えない涙が流れそうになるのを
夜空の星を見上げてぐっとこらえた。
「今日は、良かったってことにしよう…ヤグチの幸せ、少しだったけれど楽しかった。」
人間とはよく張りである。
不幸続きの彼女が得た、ほんの僅かな幸せ。
ただ、もう少しだけ…という気持ちが彼女の心にあった。
その形が、残されたガラスの靴に有る事を彼女は知らなかった。
ほんの僅かな幸せが、この先再び起こるとは…。
家に戻ると、継母達はまだ帰宅していなかった。
丁度良かった。
ヤグデレラは久しぶりに入浴をする事にした。
風呂に入らなければ、なかなか泥臭い匂いは取れないからだった。
風呂が沸くと、身体を洗う。
そして、浴槽に身体を沈め、凍えた身体を温めた。
「温かい…温かいなぁ…。」
ふと水面から自分の指を出してみる。
アカギレた手…でもがんばっている自分の手…。
その手を見つめ、自分の手であるが精一杯に褒めた。
(もうそろそろ、この子達を休ませてあげなくちゃ…。)
入浴を済ませると、彼女はいつもと同じように台所の一角で眠りに就いた。
ヤグデレラが眠りに就いたのを確認する人物が居た。
「あんまりチャンスつかむ事出来なかったんだべな〜。この様子見ると」
魔法使い………の見習いなっちだった。
「ごめん、なっちが未熟だからうまくいかないんだよねぇ。」
ヤグデレラの寝顔を見て、すっと立ち上がる。
「一念発起だべっ!?」
魔法使い見習のなっちは一路ヨッスィー城へ向かった。
なっちが魔法のホウキでヨッスィー城に辿り着いたのは日が上がる少し前だった。
既に舞踏会は終了し、ほとんどの人間が眠りについている頃だった。
屋根に降り立つとなっちはひとみ王子の部屋を探す。
「あっはっは〜〜。部屋わかんないべさ。」
つかえねぇ〜…。
一先ず、屋根を伝って入れる部屋を探した。
いくつかあるが手前の部屋の窓を覗いてみる。
どうやらその部屋の持ち主は眠りについているようだ。
「あれっ、用心してるベー、鍵しまってる。」
なっちはサイリウムを取り出し、例の如く声援呪文。
深夜と有ってか、少し静か目ヴァージョン。
カチャッと鳴り響くと窓が開いた。
「なっちはこういうの得意だべさ〜。窃盗団向きだべぇ〜。」
まぁ寝顔を拝見。
「チッ、ひとみ王子じゃないべさ。」
「!!!…誰だ貴様!?」
「やばっ!!起きちゃったべさっ!!出でよ眠りハンマー!!」
眠りハンマーとは叩くと眠ってしまうハンマーの事である。
なっちはハンマーを振り上げ、頭に振り落とす。
ドカッ!!
「ぐはぁっ!!」
凄みをいれて、襟をつかんで脅す。
「ひとみ王子の部屋は何処だべさ!?」
「き、貴様く、くせものかっ!?」
ドカッ!!
「早く言うべさ!!」
「出て左…突き当たった部屋…。」
「ありがとうべさ。」
ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!ドカッ!!
「はぁっ、はぁっ、はぁっ。これで眠ったっしょ。」
紅く染まったハンマーを懐に入れて部屋をそおっと出るなっち…。
それって…ころし…
「眠らせただけっしょ。ただ永久的かもしれないべさ。」
やはり突き当たりの部屋というのはあながち嘘ではなかったようだ。
突き当たった部屋の扉というのはこの城に来て一番立派なものだった。
ドアノブに手を伸ばし、まわしてみるが…閉まっていた。
再びここでサイリウムの出番である。
静かに声援をする…まったくミュージカル時のようである。
すると、鍵が開いた。
もう窃盗でご飯食べたらいかがっすか?
やはりそこに眠っていたのはひとみ王子。
顔に似合わないイビキをかくこと…。
なっちは、一先ずひとみ王子がどんな人物か確かめた。
「はぁ〜〜〜…かっこいいべ。」
ちょっと頬を赤らめてしまう…世の女性を虜にする理由がわからなくもなかった。
ふと見回すと、なっちはある物を手に取った。
「………。なるほどべさ〜。」
なっちは何もせずに、ヨッスィー城を去っていった。
154 :
レイク:02/05/17 23:11 ID:tfkR8hPW
明日の深夜最終更新予定です。
155 :
:02/05/18 01:44 ID:x9pJpQGO
いよいよ最後ですか…
正直、名残惜しいです。
黒雪姫がどうからんでくるか非常に楽しみ!
「ありがとうべさ」
言わねえなあ…
>>156 「ありがたいべ」「ありがとだべさ」なら言うと思う。
まだ名前が出て来ないコがいるんだけど、
何か重要な役かな?
それとも放置?
159 :
hyunkell:02/05/18 17:01 ID:K7D+OJeX
ぷ
160 :
レイク:02/05/18 23:04 ID:WvDTn3pw
「城下でこの靴を履ける女性を探せ!!」
朝から、ひとみ王子は昨日の女性を探すことをはじめた。
城下をひとみ王子が各々見回ると有って、城下は大賑わいである。
ここでもし、ガラス靴が履けたなら見初められると胸に抱く女性は多々いたが、
なかなかガラスの靴を履ける人物があらわれなかった。
子供サイズであるこのガラスの靴。
そうそういい大人の女性が履けるサイズではないのだ。
また一軒、また一軒としらみつぶしのように、家を回るひとみ王子。
(確かに…城下に住んでるって言ってたんだよな…。)
手がかりになるものは、城下在住とガラスの靴、
そして子供でもないのに小さい背丈の3つだけだった。
それだけをヒントに、昨日の女性を見つけ出すのは困難を極める。
少し諦めムードが漂う中、それでもひとみ王子は諦めずに
昨日の女性を探すべく、白馬の蹄を鳴らせて歩いた。
「じい、次は何処の家だ?」
「はい、次はつんく家でございます。」
じいの言葉通り、ひとみ王子はじいと家来数人でつんく邸を訪れた。
ドアの前に立つと、ノックをしようと軽い握りこぶしを作り…
ガチャッ!!
「「「いらっしゃいませぇ〜、お待ちしておりましたぁ〜。」」」
ドアの前に待ち伏せをして覗き穴で覗いていたのか、
あつこ、みちよ、圭織が舞踏会さながらの派手な格好で
出迎えたのだ。
少し面を食らった表情をするひとみ王子。
ケバイ化粧に、プンプンの香水。
「ハハハ…どうやら間違えたようだ…。」
引いた…。
ひとみ王子が戸を閉めようとするが、押さえるあつこ。
「まぁまぁ、上がってくださいませ。どうぞどうぞ。」
必死な作り笑顔が不気味に怖い。
なにか魔物に食われるような恐怖を感じた。
ひとみ王子は引き攣った笑顔をして
「じゃあ、少しだけ…用が済み次第帰るので…。」
といって、家来共々つんく邸に飲み込まれる形で入っていった。
相当屋敷を綺麗に掃除したのか、
普段以上に屋敷内が綺麗になっている。
おそらくはヤグデレラを酷使して掃除をさせたと思うのだが…。
そんな屋敷内を見たひとみ王子は
「いい召使を雇っているようですね。とっても掃除が行き届いています。」
と、屋敷の感想を言う。
「で、ございましょう。おほほほ。でもこれは娘が掃除しております、召使は雇っていませんの。」
明らかにインスタントな上流階級言葉である。
「娘さんが…なかなかの才色兼備ですね。」
「「そうでもございませんわ…常日頃掃除はやっておりますの…オホホホホ。」」
圭織とみちよも高らかに笑う。
本当はヤグデレラが掃除をしたのに…。
応接間に通されるひとみ王子達。
ソファーに腰掛けるように言われ、言われるがまま座る。
「では、本題に入ります。この靴を娘さんに履いてみてもらいたいと…。」
ひとみ王子がそう切り出すと、家来が丁寧に包んであるガラスの靴を取り出した。
「これを履いていた女性にもう一度会いたいんです。」
「ほな、ちょぉ圭織、みちよ履いてみぃ。」
「「はい、お母様。」」
圭織がまず、ガラスの靴に足を入れた…。
「チィッ!!」
「!?」
「ああ、いえ、なんでもありませんわ、圭織には合わないみたい。」
非常に残念そうに、みちよにバトンタッチ。
そんな圭織をほくそえみ、みちよが足をいれて見る。
「チッ!!!」
「!?」
「いえ、私でもございませんわ。」
「ふぅ…どうやら娘さんではないようですね。では、次の家がありますので…。」
ひとみ王子は立ち上がり、家来達に合図する。
すると、一人の家来が窓を見ていて、ひとみ王子を呼び止める。
「王子、あそこに洗濯をしている娘がいますが?」
ひとみ王子はその言葉に窓を覗いてみると
ひときわ小さい背丈の女性が井戸の近くで洗濯をしていた。
うしろ姿…何気ないインスピレーションがあった。
「あの子は…?」
「ああ、あの娘は召使でございますわ。」
「…先ほど召使は雇っていないとおっしゃられていたようですが…?」
ボロが出た。
「チッ!!」
「!?」
「いえ、なんでもございませんわ。おほほほほ。」
「では、あの女性を連れて来てください。」
「かしこまりましたわ、圭織、ヤグデレラを連れてきなさい。」
「はい、お母様。」
「ふぅ…。」
汗を拭い、一休みするヤグデレラ。
しゃがんでの洗濯は非常に腰に負担をかける。
立ち上がり、首を曲げてはゴキゴキ、
腰をひねってはゴキゴキ鳴る、非常にお疲れの身体だ。
「今日は大変だなぁ、朝から掃除させられて…。誰かお客様来てるみたいだし…。」
すこし、井戸に腰をかける。
いい天気の日差しが心地よかった。
そんなとき、勝手口から圭織が顔を出して、自分を呼んでいるではないか。
「ちょっと!ヤグデレラ!!いらっしゃいっ!!」
「あ、はい。おねぇさま。」
(なんか、やったかなヤグチ…。)
何故か怒っている様な表情をしている圭織に
ヤグデレラはまた失敗をしてしまったかなどと
頭の中をめぐらせていた。
「応接間いきなさいっ!!」
「はぁ…。」
裾で手を拭って、ヤグデレラは応接間に向かった。
コンコンとノックして、応接間に入ると
そこにはひとみ王子と数人の家来が居た。
「お呼びですか…?」
「ヤグデレラ、この靴をはいてみなさい。どうせ無駄だろうけどね。」
「はい…。」
あつこに言われるままに靴を見ると
「!!!!!」
(ヤグチの靴だ…。)
ふとひとみ王子を見上げる。
「あの、この靴は…?」
ひとみ王子が優しい微笑を浮かべて丁寧に答える。
「昨日、舞踏会で出会った女性が城に置いていったものなんですよ…
もう一度あの女性に会いたくて…。背格好、顔立ちがあなたによく似てる…。
これを履いてみてください。」
(うそ…。)
「はい…。」
そっと、ガラスの靴を履いてみる。
サイズにぴったり合った。
無論自分の靴なのだから合うのは当然であるが…。
すると、家来から歓声が上がる。
「貴女が…あの時の…?」
ヤグデレラはひとみ王子と見つめあったままポケットから
布に包まれた物を取り出した。
広げてみると、そこにはもう一つのガラスの靴が姿をあらわしたのだ…。
「はい…私です…。」
「やはり…貴女でしたか…、この部屋にあなたが入ってきたときもしやと思っていました…。」
ひとみ王子は一歩ヤグデレラの前に歩み寄ると
ヤグデレラの手をもった…
「よろしければ…私の…」
そう言いかけた時、つんく邸に一人の訪問者がやってきた。
168 :
黒雪姫6:02/05/18 23:11 ID:WvDTn3pw
舞踏会明けの朝方のことだった。
小人の家では、小人、辻希美が朝から忙しく動き回っていた。
白衣を着た辻希美はなにやら試験管やらアルコールランプやらを
弄っていた。
「ふぅ…。なるほどれすね。」
「なにかわかったん?のの。」
小人、加護亜依は白衣を着た辻希美に尋ねた。
「いやあ、このリンゴの成分結果が出たれすよ。」
ふちの太い眼鏡をくいっとあげと、
自信あり気に、足を大また開きで腰に手を当ててそう言い放つ。
「どんな結果だコノヤロっ!言えコノヤロッ!!」
「これは毒りんごの失敗作れすね。作っている過程で材料一つ入れ忘れているれすよ。」
「どういうことよっ!!結論いいなさいよっ!!」
「このリンゴは多量の睡眠薬入りのリンゴ状態になっているれす。不眠症のおねぇちゃんも
夜型のお兄ちゃんも一発で生活バランスを取り戻せる品物れすね。黒雪姫しゃんはこれを
一口食べて一時的に仮死状態になったれすが、今は睡眠状態に有るれすよ。」
「どうやったら起きんねん?」
「わかんないれす。てへへへ。とにかくお医者さんを呼んだほうがいいれすよ。」
誰でもわかるよ、そんなこと。
しかし、小人相手に話を聞いてくれる人間がいるかどうか…。
169 :
黒雪姫6 :02/05/18 23:12 ID:WvDTn3pw
「あ…」
「どうしたんれすか…?亜依しゃん。」
「ひとみ王子や、ひとみ王子やったら話し聞いてくれるかもしれへんよ?」
「そうよっ!!それっきゃないわよっ!!誰か伝えにいきなさいよっ!!」
「そうだコノヤロッ!!誰か伝えにいけコノヤロッ!!」
「金勘定が終わってませーん。」
「発音の勉強が…。」
「ののはダメれす。研究疲れれす。」
「ああ、ウチ…今日生理や…。」
視線が小人のリーダ保田圭に集中する。
「あ、あたしぃ!?」
「がんばるれすよ、リーダー。」
「あんたしかおらへんよ、リーダー。」
「さすがリーダー。」
「コネナシリーダー。」
「リーダーしかいないぞコノヤロ。」
「しょうがないわねぇ。わかったわよっ!!ヨッスィー王国行ってくるわよっ!!」
170 :
黒雪姫6 :02/05/18 23:12 ID:WvDTn3pw
「「「「「リーダーがんばって〜♪」」」」」
「何かしゃくに触るわねぇ、めんどくさいときはいつもリーダーリーダーって!!」
そして、保田圭は小人の家の隣りにある馬小屋から
ロバを引き出した。
小人に馬は乗れない、せいぜいロバ程度なのだ。
「じゃあいってくるわよっ!!」
「「「「「いってらっしゃ〜い。」」」」」
「クソッ!!ペッ、ペッ、ペッペッ。」
のんきに手を振る小人たちに唾を引っ掛けた。
そしてパッカパッカ数時間。
飛ばしているようにも見えるが、どう見ても鈍足。
ロバはバテバテ。
「ちょっとっ!!しっかりしなさいよっ!!しょうがないわねっ!!」
保田はベタベタなネタだとおもいつつ。
棒にヒモを付け、その先に人参を取り付けロバの前にぶら下げた。
「こんなんで…飛ばすわけが…。おおおおおおっ!!!!」
予想外の展開?
予想通りの展開?
「はやいわよっ!!ちょっとっ!!!うわぁっ!!」
落馬。
そして、一目散にロバは遥か彼方に走っていった。
171 :
黒雪姫6 :02/05/18 23:13 ID:WvDTn3pw
「ちょっとっ!!あんたっ!!戻ってきなさいよっ!!ここに人参あるのに何で
走ってるのよっ!!」
つまり、人参云々は関係がなかったようだ。
しかし運がいいことに、目前にはヨッスィー城、城下町が広がっていた。
「帰りどうしようかしら…。まぁいいわ。」
そして、保田は城下町へ入る。
人が激しく横行する。
ひときわ小さい彼女はそれを避けるのが必死。
やっとの思いで青果店の前へと辿り着いた。
ヨッスィー城へ向かう道を教えてもらう為だ。
しかし、人間が小人相手にまともに話を聞いてくれるかどうかという
一抹の不安があった。
「すいませ〜ん。ちょっと伺いたいのですが。」
「なんだいっ、小人じゃないか。」
人の悪そうなおばさんである。
完全に見下しているように見えた。
いや、背丈から考えれば見下しているのは当たり前なのだが。
「あの、ヨッスィー城へ行きたいんですけど、道を…」
「教えないよ。」
172 :
黒雪姫6 :02/05/18 23:14 ID:WvDTn3pw
(くっ……。)
教えないよと言いつつ、手のひらを保田の前に差し出す。
(そう言うことか…。)
保田はしぶしぶ、新垣のコネ袋から取ってきた銀貨を一枚渡す。
コネ袋とは新垣がいつか使うだろうと溜めておいたへそくりの事である。
パシッと勢い良く奪うと、手のひらの中身を確かめる青果店のおばさん。
「ここの道行ってってまっすぐよ。あんた城になんか用なの?」
「はい、ひとみ王子に会いに行くんです。」
「あらそう、ひとみ王子だったら今城下にいるわよ。」
「ど、どこに!?」
再び差し出される手。
(チィ…ケチね…マッタクッ!)
再び、保田は銀貨を一枚渡した。
「今頃はつんく邸に行ってるわよ。」
「それは何処に?」
再び手が…保田は舐められているとおもいつつ銀貨を払う。
「そこの角曲がって奥の家よ、さっき家来連れて向かってったわ。」
「ありがとう!!ケチババァ!!」
捨てセリフを吐き捨てて保田はつんく邸へ向かった。
そして、今つんく邸玄関に立っている。
つんく邸応接間では、ひとみ王子とヤグデレラが見つめ合っていた。
そんな空気に、嫉妬を覚えた継母達が
「「「失礼しますわ♪」」」
と、明らかな作り笑顔を浮かべて応接間を去っていった。
「おかあさまっ!?どういうこと!?」
「しらへんよそんなん!!こちがききたいわっ!!」
「あ…あれやな、ヤグデレラもウチの家の人間やし、一気に王族の仲間入りちゃうん?」
「お、いいとこに目をつけたなぁ、みちよぉ〜、せやな、これを機に便乗してまおっ。」
廊下でこそこそと団結しあう3人。
そんな時に、戸がドンドンを激しく叩かれているのに気がつく。
「なんやぁ〜?ちょお圭織でてきぃ〜。」
「え〜なんで圭織なのぉ〜ヤグデレラに行かせればいいでしょぉ〜。」
「アホッ、便乗したくないんか自分。」
「そりゃあ、したいけど。…わかったわよ、いけばいいんでしょ、いけば。」
ブツブツ文句をいいながら玄関のドアをあける。
「どなたー?」
いない…。
開けてみて、左右を見渡すが誰もいないのだ。
「どこみてんのよっ!!下よ!!下っ」
「ん?…キャアアアッ!!!お化けっ!!」
驚いた、1mも満たない生き物が話し掛けてくるのだ。
しかし、お化けといわれ不機嫌そうなこの生き物。
「お化けじゃないわよっ!!これでも小人よっ!!」
「な…なんなのよっ!!圭織がかわいいからってとって食おうってきなのっ!?」
「何で、あんたみたいなのを食べなきゃいけないのよっ!!ひとみ王子出しなさいっ!!
ここにいるんでしょっ!!さっき聞いたわよっ!!」
「な、なによっ!!ひとみ王子に何の用よっ!!」
「黒雪姫のことでって言えばわかるわよっ!!行かないと食うわよっ!!」
「ひぃぃぃぃ。」
大きく口開いた保田はおぞましく、本当に人を食うくらいの
勢いがあり、慌てた圭織は階段を急いで駆け上がって
何事かと呼び止めようとした母と姉を振り切って応接間へ飛び込んだ。
何事かと言う顔で全員が圭織を凝視する。
圭織は唾を飲み込んで言葉にならない言葉で必死に使えようとした。
「げ、玄関、こ、こ、こびとと、お、おば、おば、おばけ、く、黒、黒黒雪姫。」
そのわけのわからない言葉の中に
ひとみ王子は引っかかるキーワードを聞き取った。
ひとみ王子は少し神妙な面持ちをして跪いて興奮状態にある
圭織に尋ねる。
「玄関に誰かいるのかい?」
そう尋ねるとびくびく震えながらコクコクと何度も首を縦に振って答える。
「わかった。」
ひとみ王子が応接間を出て、玄関に向かうとそこには小人が
イライラした感じで立っていた。
「小人か…、珍しいな。」
そして、保田もひとみ王子に気がついた。
「ねぇ、あんたがひとみ王子?」
「そうだけど?」
「黒雪姫が大変なのよっ!!」
「黒雪姫が!?どういうことだ!?」
「実はね…」
保田は自分が知っている限りの出来事を話した。
城を追い出されて舞踏会へいけなかったこと。
小人の家に住んでいる事。
睡眠薬が多量に入ったリンゴを食べて起きない事。
そのすべてを簡潔に話した。
「そうだったのか…で、今何処に!?」
「小人の家にいるわよっ。」
「ありがとう、小人の家だね!!」
ひとみ王子は血相を変えてつんく邸玄関を飛び出すと馬にまたがった。
そこに駆け下りて息を切らしたヤグデレラの姿が。
「ひとみ王子様っ!!」
「ごめんヤグデレラ、また会いにくるよっ!!」
そういって、早馬で去っていった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
そして…数時間が経過した。
保田は、荷馬車に乗せてもらい何とか小人の家に帰ってきたのだ。
「ただいまぁ〜。」
晴れやかな笑顔で戸を開く。
しかし、部屋の中にはどんよりした空気が漂っていた。
「あれ…?ひとみ王子は?」
新垣が立ち上がると、そんな疑問符を浮かべる保田に突っかかる。
「おばちゃんっ!!銀貨5枚取ったでしょう!!私の銀貨!!返してよっ!!!」
「ちょっと苦しいよ、新垣。あんたのコネ袋の中の銀貨はもうない、使っちゃった。」
「ひどいー!!!せっかくコネを作るために溜めてたのにい!!!」
新垣は泣きだすが、そんな新垣を尻目に加護が保田に話し掛ける。
「来てへんよ。」
「はぁっ!?あたし伝えたよっ!!血相を変えてここに向かったはずだよっ!?」
「来てへんよ。あの通り、黒雪姫も寝たままや…。」
「ハァ〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
そう、ひとみ王子は小人の家に現れなかった。
そして、これ以降もひとみ王子が小人の家に現れる事もなかったのだった。
その真相は、保田帰宅の3時間前にさかのぼった…。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ひとみ王子は小人の森で思いっきり叫ぶ。
「小人の家わっかんねぇ〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」
相当のアホウである。
小人の森は知っているが、小人の家はわからなかったのだ。
しかも、保田を置いてきてしまった事でわかる術がなかった。
そんな時、目の前に二人の人影が見えた。
どうやら男女のようだ。
ひとみ王子は馬を走らせ、その二人の前まで行くと、馬を下りて声を掛けた。
「とまってくれっ。」
顔が似ている、目は離れていて若干肴顔。
姉妹のようだ。
「んぁ〜僕、ユウキデル。」
「んぁ〜私、マキーテル。」
自己紹介をしろと言うのでもないのに勝手に名を名乗る二人。
「「いえ追い出されて、魔女の住むお菓子の家さがしてんの。」」
「そんな事より…ちょっと…道を尋ねた…………う、美しい。」
「ほぇ・・・?」
赤い実はじけた。
ひとみ王子は、マキーテルという同い年くらいの女の子に
心を瞬間的に奪われた。
それと同様に、マキーテルもひとみ王子に一目惚れをしたのだ。
そして、ひとみ王子からマキーテルに自然とくさい言葉が吐き出されるのと
同時に、ひとみ王子はマキーテルの肩を抱いた。
ポッと頬を赤らませるマキーテル。
「OH!心が痛むというのかい?
う〜ん、BABYそれは恋...恋煩いさ。
きっと、僕とであったから…君は恋をしたんだね。
さぁ、もう大丈夫、僕はここにいるよ、
おいで、踊ろう!」
だから あわてず行こう 青年〜♪
そして、ユウキデルを置いたまま、ひとみ王子はマキーテルを馬に乗せて
城へ連れ帰り、その日に結婚式を挙げたとさ。
めでたしめでたし……………か?
翌日、朝
ヤグデレラは寝ずの夜をすごした。
当人はひとみ王子が迎えに来るとばっかりに、夜が眠れなかったのだ。
継母達はヤグデレラに対する態度を急変させ、
ヤグデレラに部屋と普通の服を与えてくれたのだった。
何もしなくていい生活に酔いしれた夜だった。
「う〜ん、眠い。ふぁあ〜。」
大きな欠伸をかくと、ついいつもの習慣で新聞を取りに行ってしまう。
そして、ポストを開けて新聞を朝一番に広げた。
「ハァッ!?」
目を大きく見開いた。
信じられない記事が一面に躍っていた。
『ひとみ王子・マキーテル電撃入籍。』
「うそ…。」
「うそじゃないべさー。」
ヤグデレラが後ろを振り返るとそこには魔法使い見習のなっちが立っていた。
「なっち!?なっち、どうゆうことよこれっ!?」
「簡単な話、ひとみ王子は惚れ癖があるべさ。すぐ人に惚れちゃう。」
「知ってたのっ!?」
「まぁ、舞踏会の日の深夜にひとみ王子の寝室に入り込んだときに日記見たべさ。
見てみたら今月だけで5人に惚れてるべさ。軽い男だべー。」
「そうなんだ…。」
落胆の表情を見せるヤグデレラにニタニタしながらなっちが
肩をポンポンと叩く。
「そんなヤグチに見合い相手を用意したべさ。」
そういうと、手からは瞬間的にぶ厚い見合い写真の束が。
「好きなの選べばいいっしょ。本当はそれぞれ見合い相手の女性が決まってたんだけど、
寝てもらって諦めてもらったべさ。どれも、上流貴族やら王族ばかりだべ。」
その証拠に、見合い写真を持つなっちの手が血塗られていた。
ヤグデレラは、見合い写真を広げた。
「うぉぉっ!!カッケーーーー!!」
「だべっ!?」
こうして、ヤグデレラは幸せになったそうな…。
暗い雰囲気が、翌日の朝になっても未だに小人の部屋を包んでいた。
そして、ひとみ王子が別の女性と結婚したことも、小鳥達から
小人たちに伝えられ、より一層暗い雰囲気に包まれていたのだった…。
「黒雪姫…かわいそうやで…ひとみ王子も失って…このまま眠ったままやなんてっ!!」
「そうれすよっ…かわいそうれすよー!!うわ〜〜〜ん!!!!」
「そうよね…まったく許せないわ、あの男!!」
「かわいそうだコノヤロッ!!」
「訛りが直らない…。」
「銀貨5枚ぃ〜〜うわ〜〜ん!!!」
それぞれが黒雪姫の周りで悲しみに暮れていた…。
その時、この部屋に芳しい香りが広がった…てか
「「「「「「ク、クサッ!!!!」」」」」」
「だれれすかっ!!!!こんな時にオナラしたのはっ!!」
「目、目が痛いっ!!ウ…ウチちゃうでっ!!」
「あたしでもないわよっ!!第一こんな臭いのしないわよっ!!!」
「は、鼻がい、逝くっ…わ、私でもありませんよぉ〜。」
「い、息が出来ないぞ!!コノヤロッ!!!コノヤロッ!!」
「私はオナラはしない!!コネはするっ!!」
「「「「「「ま、まさか…。」」」」」」
6人の小人の視線が寝ている黒雪姫に集中する。
「………ぃょ。」
「「「「「「ハァ?」」」」」」
幻聴かと思った…しかし、次の瞬間。
「しねーって言ってんだろおおおお〜〜〜♪」
黒雪姫が起き上がった。
「「「「「「お、おきたぁぁぁぁぁ!!!!」」」」」」
「し、しないよ♪」
〜完〜
184 :
レイク:02/05/18 23:26 ID:WvDTn3pw
以上で『ヤグデレラと黒雪姫』完結です。
しばらく休養をとった後、新作については考えたいと思います。
一ヶ月間駄文を読んでくださり、ありがとうございました。
>>184 お疲れさまでした。
童謡と2ちゃんネタのコラボレート(意味わからないけど)
が絶妙でした。
次回作、期待しています。
面白かったです。
187 :
:02/05/19 02:19 ID:4av6RzVu
お疲れさまでした。おもしろかったです。
たっぷり休養してください。
そしてやぐたんシチュエーションシリーズを是非また書いて下さい。
レイクたん、お疲れ様でした。
次回作も期待してるからね〜♪
毎回、笑かしてもろうてます。
お疲れ様でした。
190 :
名無しむ:02/05/20 00:15 ID:0S7GTCs1
最後はこのオチでしたか・・・・笑わされたなぁ、今回も
レイクさんお疲れ様でした。
すごく面白かったです!
今回もとても面白かったです!!
レイクさんお疲れさまでした。
紺野ちゃんとごっちんの使い方が絶妙ですね!
ゆっくり休養してください。
新作期待してますです。
193 :
レイク:
>>185 今回の趣向が2ch+童話でした。
それが伝わっていたなら嬉しく思います。
>>186 ありがとうございます。
>>187 今日うpしました。
ありがとうございます。
>>188 次回作は一転変わってシリアス物でもやってみようかなと
考えています。
>>189 ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
>>190 はい、少々強引だったかと思います。
>>191 ありがとうございます。
>>192 じっくり次回作について考えていきたいと思っています。