くノ一娘。物語

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939たぢから
翌日、ひとみ達三人は退院した。
尤も、完治には程遠く、未だに湿布や包帯が目立つのだが、
日々ゼティマシティで起こる事件は彼女達を待ってはくれない。
それに、彼女達は月光紳士以前にモーニングタイムズの記者である。
ここしばらく梨華達に負担させていた分をカバーしなければならなかった。

「どうも! 安倍なつみ、復帰させられました!」
「後藤真希、まだ寝足りないです!」
「吉澤ひとみ、これからも精進し続けます!」
940たぢから:02/09/11 23:11 ID:dZLRtuFy
「三人とも、改めてよろしくな!」
新たに仲間に加わった平家みちよ。
今回彼女には月光紳士としても、モーニングタイムズ社としても大いに助かった。

「さぁて仕事や仕事! 後藤となっちは圭坊と取材! よっさんは石川達と資料の整理!」
素早く指示を出す編集長・中澤裕子。

「よっすぃー、早く来て! 資料の山が崩れそうなの!」
いつも通り大変な作業をやらされている石川梨華。

「かっごちゃんです!」
「つっじちゃんです!」
仕事そっちのけで遊んでいるバイトの加護亜衣&辻希美。

「なっち! 後藤! 行くよっ!!」
行動力ナンバー1のカメラマン・保田圭。

今日もモーニングタイムズ社は活気に満ち溢れている。
941たぢから:02/09/11 23:13 ID:dZLRtuFy
その頃、ゼティマ市警地下では…

「市井紗耶香、貴方を秘密捜査官として任命する。」
署長の彩より警察手帳を手渡される紗耶香。複雑な気分だ。
これから彼女は表に出ることは一切無く、再び“影”として動くことになる。
この“秘密捜査官”はその名のごとく、ゼティマ市警内でも存在が秘密にされていることなのだ。

そして…
「紗耶香、再就職祝いよ。」
と、明日香が紗耶香に見せたのは…

「これは… シャドウコンパクト!?」
942たぢから:02/09/11 23:15 ID:dZLRtuFy
「そ。“月影”を改良して、隠密行動に適したスーツにしたわ。ま、変身してみな。」

明日香からコンパクトを受け取ると、紗耶香はそれを前に突き出す。
「変身っ!」
すると、紗耶香の全身が黒いスーツに覆われる。

「そうそう、もうアンタは終末の闇・Mr.ムーンシャドウじゃないよ。」
「え?」
「新しい肩書きはね、再生の闇・Mr.ムーンシャドウさ。」
「再生…?」
「そう。地球からは見えることの無い月の影じゃなくて、やがて光を放つ新月を意味する紳士さ。
まあ、新月は英語で“ニュームーン”なんだけど、言いにくいからシャドウのままにしたわ。」

再生の闇…
一度は道を踏み外したものの、心を入れ替え正義の為に戦う彼女に相応しい二つ名ではないだろうか。
943たぢから:02/09/11 23:16 ID:dZLRtuFy
「アンタの任務は2つ。秘密捜査官として人目につかないよう行動すること。
そして、Mr.ムーンシャドウとして月光三紳士を、文字通り“影”からサポートすることよ。」
「真希たちの… サポート…!」
願ってもない任務内容に、紗耶香は驚き、素直に喜んだ。

「あいつらと… 一緒に戦えるのか…」
「まあ、終末の闇・Mr.ムーンシャドウって前科があるから、表立って一緒に行動は出来ないけどね。」
それでも良かった。
なつみと真希と… そしてひとみと共に戦えるのだから。
こうして市井紗耶香は、空白の2年にようやく終止符を打てるようになる。

そして、一生かけて正義に尽くすことを肝に銘じたのであった。
944たぢから:02/09/11 23:18 ID:dZLRtuFy
犯罪都市ゼティマシティ。

今日もどこかで事件がおきている。

そんな闇の街を照らす三つの光…
Mr.ムーンライト、Mr.ハーフムーン、Mr.クレセント…

そして闇に生き、影から光を支える存在…
Mr.ムーンシャドウ…

彼女達の物語は、ようやく始まろうとしていた。

『こちら矢口。海岸通りで暴走族大量発生! 応援頼む!!』
「よぉし… ごっちん! 安倍さん! 行くよっ!!」
「「「変身っ!!」」」
945たぢから:02/09/11 23:21 ID:dZLRtuFy
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「…と、月光三紳士プラス1が出揃ったらしいわ。」

「潰し合いにはならなかったのね。残念だわ。」

「望みどおり、私たちが相手をしてやるネ。」

「まあ待て。時はいずれ来る。その時こそ、ゼティマシティは地獄と化す…」

…何かが動き出そうとしていた。

To Be Continued――


【怪傑! Mr.Moonlight】第一部 完