902 :
たぢから:
この期に及んでもまだ戦おうとする紗耶香。
だが…
「いい加減にやめるんや、紗耶香っ!!」
その良く通る懐かしい声に、紗耶香の動きが止まる。
「…裕ちゃん!?」
編集長の裕子だけではない。カメラマンの圭、市警の彩、圭織、真里も駆けつけている。
そう、月光紳士計画のメンバーが全員集結したのである。
「よっさん、剣を収めてや。」
「は、はい…」
裕子に言われ、サーベルモードを解除するひとみ。
視線で紗耶香を威嚇しつつ、一歩下がる。
「紗耶香…」
裕子はゆっくり近づくと、紗耶香の傍でしゃがみ込んだ。
喜怒哀楽… どの感情にも当てはまらないような、表現のしようがない表情だ。
その表情から紗耶香は目を逸らすことが出来ない。
904 :
たぢから:02/09/07 23:09 ID:iz4YyKTh
「ごめんな、紗耶香。」
「…!?」
突如詫びの言葉を発する裕子。
これには紗耶香ならず、その場に居合わせた全ての者が驚いた。
「な… 何言ってんだよ、裕ちゃん…」
「紗耶香がこうなったのも、元を辿ればウチの責任なんや…
丁度メンバーも揃ってることやし、2年前の過ちを懺悔するわ。」
「懺悔…?」
905 :
たぢから:02/09/07 23:11 ID:iz4YyKTh
「みんな知っての通り、2年前に“月光紳士計画”を立ち上げた3人の人が何者かに殺された。
せやけど、被害者は寺田、和田、山崎だけや無かったんや。」
「裕ちゃん…!」
裕子の話に、真希が反応する。
「事件現場の料亭には、一人の見習い板前がアルバイトをしとった。名は後藤ユウキ。
彼はソニンの相棒であり、後藤の… 弟やった。」
「…」
その続きを話す前に、紗耶香の表情が凍った。
「そしてもう一人。料亭“さやか”の女将… 紗耶香の母親や。」
906 :
たぢから:02/09/07 23:12 ID:iz4YyKTh
2年前、紗耶香の母親は殺人現場に遭遇してしまった。
丁度料理を運び入れ、女将として寺田達に挨拶していたところを、何者かに襲われたのだ。
一方、真希の弟ユウキもその部屋の傍を通りかかり、殺人現場を目撃してしまった為に、
犯人によって口封じに殺されてしまったのだ。
「肉親を失った紗耶香と後藤は、互いに慰めあってた。ウチはそれで何とかなると思うてた。
というより、姉妹のような二人の間には、何か神聖なものがあって、立ち入れない気がしてた。
でも、それは間違いやった。」
その後、紗耶香は悪を完全否定するような原稿を書くようになり、そしてモーニングタイムズを去る。
「後藤の方は紗耶香によって慰められていたかも知れへん。…けど、紗耶香はそうやなかった。
悪に対する憎しみをどんどん募らせておったんや。ウチが近づけなかったのも、その殺気のせいやったんや。」