くノ一娘。物語

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871たぢから
ゼティマシティの隣町、ピッコロタウン。
この町のとある廃工場が、市井紗耶香のアジトであった。
中はハイテク機器で埋め尽くされており、外からは想像も付かない別世界となっている。
これらの機器は衛星やネット回線に繋がっており、常にあらゆる情報を得ることが出来る。
彼女はこれらの機器から得た情報を基にすることで、月光三紳士とほぼ同時に行動できたのだ。

そして今、彼女はモーニンングタイムズが配信しているネットニュースを読んでいた。
勿論トップニュースは昨日のMr.ハーフムーンの活躍についてである。
872たぢから:02/09/02 23:04 ID:X5Q4U3eZ
――黒紳士に挑戦状か? Mr.ハーフムーン・たった一人で活躍!!――

『先日の暴走族の集会と同規模の暴動でありながら、Mr.ハーフムーンはたった一人で沈黙させた。
あまりの手際のよさに、先日月光三紳士の登場を阻止した黒紳士も出番がなかったようだ。』

この記事を書いたのは、他でもない真希自身であり、終わりに名前が記してある。
見出しといい、内容といい、明らかにMr.ムーンシャドウに対するあてつけである。

「おのれ… 真希…!」
マウスを強く握り締め、歯軋りする紗耶香。

「やはり、邪魔者は排除しなければならないようね…!」
873たぢから:02/09/02 23:06 ID:X5Q4U3eZ
「ごっちん、おかわり!」
「あ、私も!」
「はいはい…」
半分呆れ顔で飯を盛る真希。
なつみもひとみも、既に意識を回復。表面上は元気になっていた。
まだ安静にしていなければならないが、この二人なら今にでもベッドから飛び出しそうだ。

「…ったく、二人とも目覚めたと思ったら御飯よこせって言うんだから」
この二人、既におかわりを四回している。

「仕方ないさ。何食も口にしていないんだから。」
「そうそう。寝てたってお腹はすくんだよ。」
874たぢから:02/09/02 23:08 ID:X5Q4U3eZ
「…で、紗耶香の動きは?」
「昨日の夜に牽制しておいたから、あとは市井ちゃんの出方次第ってところ。
ま、私はどこかの誰かさん達みたいに無闇に戦いを挑んだりはしないよ。」
「すっごい皮肉だね。」
苦笑するなつみ。

「でも、私の時みたいに向こうから勝負をしかけてきたら?」
ひとみの疑問は当然のことだ。出方次第というからには、真希に何らかの考えがあるはずだ。

「その時は、勿論受けるさ。でも、無益な戦いにはさせない。」
875たぢから:02/09/02 23:13 ID:X5Q4U3eZ
「そこで、この私の腕が必要な訳さ。」
病室に入ってきたのは、ゼティマ市警科学研究班長・福田明日香だ。

「ごっちん、明日香に何頼んだの?」
なつみが訊ねると、真希は少しニヤリとして、
「市井ちゃんを倒す為の準備だよ。」
「紗耶香を倒す準備…?」
「作戦は深く静かに進行中です。ね、福田さん?」

「ああ。この福田明日香様に任せなさい。」
876たぢから:02/09/02 23:14 ID:X5Q4U3eZ
ゼティマ市警庁舎の地下には、一般警官が知らない施設がある。
なつみとひとみが療養している地下病院。
月光三紳士用のトレーニングルーム。
そして、紳士スーツ開発者・福田明日香のラボラトリーである。

明日香は病室から戻ると、自分のパソコンを立ち上げる。
「さて… 続きをやりますか。」

カタカタカタカタカタ…

エディタを起動させ、何かのプログラムを打ち込んでゆく。
「紗耶香… 覚悟しなよ。」