くノ一娘。物語

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753たぢから
一方その頃、例のモーニングタイムズ社では…

「よっすぃー、今回も大活躍やったな!」
「カッコよかったですよ!」
一人の記者に駆け寄るのは、アルバイト記者の高校生・加護亜依と辻希美だ。
で、その記者はデスクに頭を埋めている。

「あのさ… 何でいつもいつもアンタ達は事件現場にいるのかなぁ…」
頭を掻きながら起き上がるこの女記者こそ、Mr.ムーンライトこと、吉澤ひとみだ。
入社してニ年。正社員の後輩がいないので、未だ新人扱いである。

「仕方ないやん。ウチらかて、好きで事件に巻き込まれとるわけやないんや。」
「そうですよ。のの達のせいじゃないです。」
ちなみに亜依と希美は例の六人組のうちの二人である。
モーニングタイムズ社で中高生向け冊子を担当しているのだが、
やたらと事件に巻き込まれるので、本職がどれだか分からない。
754たぢから:02/08/13 23:30 ID:DfpLGAFG
「まあ、いいじゃない。この二人をマークしてれば、現場に到着するのが早くなるし。」
と、ひとみをなだめるのは同僚の後藤真希だ。
彼女はひとみと同い年ながら一年早く入社しており、Mr.ハーフムーンでもある。
モーニングタイムズの中心記者の一人だ。

「でもさ、あの小川麻琴ちゃんだっけ? いっつもムーンライトにメロメロだね〜。」
と言いながら資料を運んできたのは安倍なつみだ。
モーニングタイムズの中では中堅的存在であり、Mr.クレセントの正体は彼女だ。

「どうやらあの子も、他の子も、辻加護と一緒なら月光三紳士に遭遇できる確率が高いことを知ってるみたいね。
アンタ達、最近ず〜っと一緒でしょ?」
といいながら、専属カメラマンの圭はネガ整理をしている。

「そうみたいですね。でもよっすぃーは男前だから紹介しようかな?」
「辻ぃ… いい加減にしないと怒るよ。」
755たぢから:02/08/13 23:31 ID:DfpLGAFG
「よっすぃ〜… ちょっとは手伝ってよぉ。」
と半泣きで資料の山を押さえてるのは、ひとみと同期の石川梨華だ。
なつみと二人で資料整理をやっていたのだが、人手が足りないらしい。

「梨華ちゃんごめん。今行くよ。」
ひとみは駆け寄ると、資料の山を片手でひょいと持ち上げる。
男にも負けない力が彼女の自慢である。

「辻・加護! 早よ原稿出さんかい!! よっさん! 漢字間違い多すぎるで!!
それから圭坊! こないだの流星群の写真ある?」
まとめて指示を出すのは編集長の中澤裕子、モーニングタイムズの姉御的存在だ。
756たぢから:02/08/13 23:32 ID:DfpLGAFG
「あ、ちょっと待って。確かこの辺りにネガが…」
と圭がネガの山に頭を突っ込もうとしたその時…

プルルルルルル!!

「もしもし! こちらモーニングタイムズ編集局です。…え? 平家さん!? 来るの!? ちょ、ちょっと!!」
一方的に電話は切れた。

「圭ちゃん、どしたの? 平家って誰?」
妙な会話(にすらなっていなかったが)に不信感を抱いたなつみが寄ってきた。
「ああ、そういやなっち達にはまだ話して無かったっけ。
実はハローテレビの平家みちよが、月光三紳士のことを嗅ぎまわってるのよ。
どうやらウチが怪しいと睨んだらしくてさ、今から来るらしいのよ。」
「平家みちよと言えば、有名なリポーターさんだね。どうする裕ちゃん?」
757たぢから:02/08/13 23:34 ID:DfpLGAFG
「なっち、いい加減“中澤編集長”って呼んでくれへんかなぁ…」
なつみと裕子は、歳は離れているが、付き合いは長い。

「ま、それはともかく、何とか撒くしかないやろ。」
「じゃあ、矢口とカオリにも協力してもらう?」
「せやな。すぐに呼んでや。」

厄介な来客を丁重に迎える為、モーニングタイムズ編集部は慌しく動く。

「ここか…」
その頃、これから先自分の身に降りかかる災難など露知らず、
みちよはモーニングタイムズ社に足を踏み入れた。