くノ一娘。物語

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748たぢから
「はぁ〜…」
「ほぉ〜…」

みちよと亜弥は、完全に目を奪われていた。
Mr.ムーンライト達の戦いぶりが、まるでミュージカルのショーの様に華麗なものだったからだ。
気がついたら、事件は解決してしまっていた。

「なあ、松浦… 撮れた?」
「わ… 分かりません…」

二人はとりあえずテレビ局に戻り、確認することにした。

「…そう簡単には撮れてないさ。“素人”にはね。」
去り行く二人を眺めながら、圭はそう呟いていた。
749たぢから:02/08/12 23:04 ID:bpq+nmr2
株式会社ハローテレビジョン・ゼティマシティ支局。
ここがみちよと亜弥の職場である。

会社に戻ってくるなり、二人は編集室に飛び込み、テープをセットした。
生では見逃した月光三紳士の活躍を、じっくり鑑賞する。

「やっぱうまく撮れてないね。」
「すいません…」
「仕方ないよ。彼らの動きが速すぎるし、見惚れるほど優雅だったんだ。
ウチら以前にいろんなテレビ局が手を引いたわけだよ。」

みちよの言うとおり、この数ヶ月の間に数々のテレビ局が月光三紳士の活躍を収めようとしたが、
どうもうまくいかなかったのだ。
750たぢから:02/08/12 23:05 ID:bpq+nmr2
「やっぱおかしいで…」
翌日、みちよはモーニングタイムズの朝刊を見ながら呻いた。

一面は勿論月光三紳士の活躍について多くの紙面が割かれており、圭の写真が多く飾られている。
多くのマスコミがあれど、彼らの事をスクープ出来ているのは、このモーニングタイムズだけだ。
だが、みちよはある不審な点に気付いた。

あれだけ的確に月光三紳士の姿を捉えながらも、顔の辺りに微妙に影がかかっている気がするのだ。
何らかの画像処理が施されているのだろうか?
月光三紳士の顔を覆う物はアイマスクだけなので、正体を探るのも不可能ではないはずなのに、
モーニングタイムズは敢えて、それを避けているような気さえする。
751たぢから:02/08/12 23:06 ID:bpq+nmr2
「保田圭だけやない。あの会社に何かあるで…」
“思い立ったらすぐ行動”… これがリポーター平家みちよの座右の銘である。
彼女はバッグに必要な荷物をまとめると、席を立った。

「あ、平家さん! どこへ行くんですか?」
声を掛けるのはパートナーの亜弥だ。

「モーニングタイムズ社や。」
それだけを声に出すと、みちよは足早に会社を出て行く。

「まぁた一人で動くんだから… 部長に叱られても知りませんよ。」
小さくなるみちよの背中に向かって、亜弥はそう呟いた。
忠告するだけ無駄だといういことは、とっくに分かっていた。