623 :
たぢから:
(…さて、お約束…)
ナツミは再生工場の奥に辿り着いていた。
もう何度も見た重厚な扉…
躊躇することなくナツミは開けた。
扉の向こうには、床がベルトコンベアになっている奥行きのある部屋があった。
そしてその奥には、巨体のレプリロドが待ち構えていた。
「よくもオレの縄張りを荒らしてくれたな、小娘。」
「小娘ではなく、イレギュラーハンターとしての務めよ。」
「フン、偉そうに。 “灼熱のオイルタンク”バーニン・カバマンダー様がぶっ潰してやるぜ!」
624 :
たぢから:02/07/17 23:21 ID:F06nqrDu
「オラァ!!」
カバマンダーは、派手なジャンピング・プレスを仕掛けてきた。
ナツミはダッシュでその下をくぐった。だが…
ドッスゥゥゥゥゥゥゥゥン!!!
「うわっ!!」
カバマンダーの着地によって発生した揺れで、ナツミはバランスを崩してしまった。
勿論その隙をカバマンダーが逃すはずはない。
「くらえ!フンッ!」
「なっ…何!?」
カバマンダーの長い鼻から、黒い液体が放たれ、ナツミを覆った。
やけに粘性があり、いくらもがいても彼女の体に絡みついたままだ。
すると、カバマンダーのバスターから炎の塊が発射された。
「死ね!ファイヤーウェーブ!!」
「うああああああああああっ!!」
炎の塊が黒い液体に触れると、すぐさま着火、ナツミは炎に包まれた。
その黒い粘液はオイルだったのだ。
625 :
たぢから:02/07/17 23:22 ID:F06nqrDu
「…うぅ…」
数分のた打ち回った後、オイルはなくなり火も消えた。
だが、相当の火傷をおったナツミ焼死体のように動かなくなった。
ベルトコンベアの上に倒れたまま、部屋の隅まで運ばれる。
「ケッ!オレはチビで弱いヤツが嫌いでな。特にお前のような生意気な小娘には容赦しないぜ!!」
そう叫ぶと、カバマンダーはナツミ目掛けて大ジャンプ、プレスを仕掛けた。
「ぐあああっ!!」
ナツミは避けることが出来ず、カバマンダーの巨体に潰されてしまった。
鎧には多くのひびが入り、内部機構もかなりのダメージを負ったようだ。
626 :
たぢから:02/07/17 23:24 ID:F06nqrDu
ナツミ一歩も動けなかった。スクラップ同然の体は只の重石にしか感じられない。
(…動けない…どうしても…)
激しい虚脱感がナツミの全身を覆い尽くす。
「手加減はしない…殺すぜ!!」
身動きが取れなくなったナツミに対して、巨漢のレプリロイドは容赦の無い攻撃を浴びせかける。
(でも…私は死ねない…こんなところで…!)
体は動かないが、最後の力を振り絞って拳に力をこめる。
「オレ様との実力差は歴然だな。もう動けない身体なのだ…諦めて安らかに眠りな!」
カバマンダーはナツミにとどめを刺す為、また跳び上がった。
「死ね小娘! ジャンピングプレス!!」
627 :
たぢから:02/07/17 23:25 ID:F06nqrDu
その時…反射的に体が動いた。この体では奇跡に近い。
しかしそんなことに構っている暇はない。敵は既に眼前に迫っているのだ。
同時にカバマンダーもナツミの異変に気付いた。
ゆっくりとゾンビのように立ち上がるナツミ、そして鎧の色は蒼から…紫へ!
刹那ナツミは床に拳を突き立てた。
「ストームトルネード!!」
「ぐおおおおおおおおっ!!」
ナツミを中心に強力な竜巻が発生、落下の体勢にいたカバマンダーを、天井まで弾き飛ばした。
628 :
たぢから:02/07/17 23:27 ID:F06nqrDu
そのまま床に落下したカバマンダーは、何が起きたのか分からなかった。
が、やがて攻撃を受けたことを思い出すと起き上がり、ナツミを睨みつけた。
「小娘…まだ動けたのか!?」
だが、当のナツミは下を向いたままで、息もあがっている。
鎧は殆ど崩壊し、血(オイル)が足元を赤黒く染めている。
「…さっきの一撃が精一杯か。なら遠慮はしねぇ!!」
確実な死を与えるために、カバマンダーは鼻を思い切り振り上げた。
先程のオイルをナツミに浴びせ、火達磨にする気なのだ。
だが次の瞬間、オイルは放たれなかった。
「…なっ…どうした…!?」
ドサッ…
そして何かが落ちた。
カバマンダー自慢の長い鼻だった。
見ると、ナツミの体は灰色で、右手にはブーメランカッターが握られている。
カバマンダーの鼻を根こそぎ断ったのは、これだったのだ。
629 :
たぢから:02/07/17 23:29 ID:F06nqrDu
鼻を切り落とされたカバマンダーは不細工であった。
鼻の根元、切り口には二つの穴があり、象というより豚だ。
しかも、そのブタ鼻からは鼻血のごとくオイルが流れ出している。
(そんなバカな…あんな…あんな小娘ごときに…)
カバマンダーはその時恐怖した。それは彼が初めて感じる感情だった。
そしてその恐怖の対象であるナツミははゆっくりと両手を前にかざした。
「…ストームトルネード…」
「ぬああああああああ!!!」
カバマンダーの体は竜巻によって引き裂かれてゆく。
「敵を見かけで判断すると…痛い目にあうよ…」
その言葉は、カバマンダーの耳に届くことはかなった。
630 :
たぢから:02/07/17 23:29 ID:F06nqrDu
-CHARACTER FILE-
18.“灼熱のオイルタンク”バーニン・カバマンダー
ナウマンゾウ型のレプリロイド。
モチーフとなったゾウの巨体を生かした格闘戦は勿論のこと、
体内のオイルを併用した火炎攻撃を得意とする。
自分より弱く小柄な者を見下す性格で、最初からナツミなど相手にしてはいなかった。
が、数々の闘いを経て成長したナツミの逆転劇で、呆気なく人生に幕を閉じた。
(キャラ元)d○sのka○a