597 :
たぢから:
ACT8.THE MYSTERIOUS JUNGLE
マウント・フジ。世界有数の火山の一つである。
長らく休火山であったが、ここ数年間は、活発な活動を繰り返していた。
度々小規模な噴火を起こす為、周辺は立入禁止となっていた。
その麓にある謎多き密林がフジジャングルである。
だが、このジャングルには生きた“樹”などというもの存在しない。
全て紛い物で、ただの代用品…
大昔の人間達の自然破壊の産物…
ただ酸素を精製するだけの機械に過ぎないのである。
598 :
たぢから:02/07/13 01:57 ID:Dkyh1Vdx
そんな人工の森の中を、一台のエアバイクが疾走していた。ナツミのディオである。
数世紀前には、方位磁石が通用しない“死の樹海”と恐れられたこの森も、
ディオ搭載の最新型GPS機能を使えば、ごく普通の森だ。
そんなディオのモニターには、ナツミにぴったり併走する何かがいくつか表示されている。
(少なくとも10…ほんの僅かな気配すら感じさせないとは、ただの兵士ではないね。)
敵の正体がTK軍団のレプリロイドである事など問われるまでも無かったが、
身のこなしといい完璧な気配立ちといい、相手は尋常の訓練を積んだ者達ではなかった。
忍者のごとく、ゲリラ戦に長けた者達…
599 :
たぢから:02/07/13 01:58 ID:Dkyh1Vdx
「…!!」
咄嗟にナツミはは身をかわす。
林の奥から一筋の光線がナツミに向けて放たれた。
(焦ってはいけない…既に囲まれているから、下手に動けば狙い撃ちにされる…)
高速で移動しながらも、必死に神経を尖らせ周囲を窺うナツミ。
やがて併走する影達の姿が明らかになってきた。
ゲリラ用のライドアーマー、“ラビット”である。
足場の悪い所でもディオ同様のスピードが出せるマシンだ。
ビーム砲は操縦している兵士のものだろう。
だが姿が見えたことで、ナツミは動いた。
エネルギーを集中させていた右手を、上空に翳す。
「ホーミング・トーピード!!」
600 :
たぢから:02/07/13 02:00 ID:Dkyh1Vdx
ライドアーマー軍団は、魚型ミサイルの雨によって、塵と化した。
ナツミはそのまま、森の奥へと向かう。
このジャングルに関する情報は乏しい。
守護者が何処で何をしているかがはっきり分かっていないので、
手当たり次第にイレギュラーを破壊するしかないのだ。
こちらが目立った動きを見せれば、必ず相手も応じてくるはずだ。
(何処…何処にいるの?)
次の瞬間、あたりに轟音が響いた。
601 :
名無し:02/07/13 03:17 ID:ofb170Pg
おおっ、600までいきましたね♪
毎日の更新、どうもご苦労様です。これからも気張って下さい
602 :
たぢから:02/07/13 23:01 ID:WCK6GlV9
>601さん
ありがとうございます。
今月末まで【IRREGULAR HUNTER NATSUMI】を掲載した後、
「くノ一娘。物語」第二部を始めます。
そして今、それの製作に追われています…
603 :
たぢから:02/07/13 23:02 ID:WCK6GlV9
「くっ…今のは!?」
ナツミの目の前に何かが落下したのだ。
寸前に避けたナツミは近くの茂みにディオを置くと、その地点に向かった。
そこには、緑色で全体的に丸みを帯びた巨体のメカニロイドがいた。
RT−55J…かつてロボット大相撲で横綱として人気があったメカニロイドだ。
(何故ここにこんなものが…?)
だが、そんなことを考えている暇はなかった。
RT−55Jは見た目より身のこなしが軽く、飛び上がったと思ったら、
次の瞬間にはナツミの目の前に着地していた。
604 :
たぢから:02/07/13 23:04 ID:WCK6GlV9
「あっ!しまった!!」
ナツミはRT−55Jの腕の先にある鉤爪に捕まってしまった。
RT−55Jはナツミ軽々と持ち上げると、近くの木に叩きつけた。
さらに、鉤爪は腕に内蔵された鎖とつながっており、それが伸びることで、
ナツミは何本もの木に叩きつけられた。
「うぅ…油断してしまった。見た目で判断しちゃいけないって、サムワンガーに言われたのに。」
ナツミは気持ちを切り替え、攻撃に回った。
相撲ロボだけに胴体は頑丈だが、目玉に関してはガードが薄いはずだ。
ナツミは持ち前の敏捷性を活かし、目玉を集中的に攻撃した。
605 :
たぢから:02/07/13 23:05 ID:WCK6GlV9
(おかしい…全然効いてないみたい…)
RT−55Jは相撲ロボだけにスタミナもあったのだ。
相当な数のバスターを放ち、100%命中させたのだが、全然倒れない。
このままではナツミの方が自滅するかもしれない。
(もっとうまくダメージを与える方法があれば………あ!!)
ナツミは一つの案を思いついた。
RT−55Jの前に回りこむと、その場で静止した。
606 :
たぢから:02/07/13 23:07 ID:WCK6GlV9
RT−55Jのアイカメラはこれを察知、頭脳チップにデータを送った。
そして頭脳チップは、腕に次の命令を発した。
攻撃の意志が感じられないナツミに向かって、鉤爪鎖が伸びたのだ。
「今だ!!」
飛び道具同然の鉤爪を紙一重でかわすと、ナツミは一気に間合いを詰めた。
そして、銃口を鎖が伸びているRT−55Jの腕にセットした。
「これなら内部から崩壊するはずよ!くらえっ!!」
ナツミは右腕に溜めていたエネルギーを一気に解放した
果たして、Nチャージブラスターのエネルギーは、RT−55Jの体内を駆け巡り、
胴体に罅割れを生じさせた。
そして次の瞬間、呆気なく爆発してしまったのだった。
607 :
たぢから:02/07/13 23:08 ID:WCK6GlV9
『なかなかの腕前だな。』
「誰っ!?」
その声の主は、今破壊したRT−55Jの上にホログラフとして現れた。
全身緑で、カメレオンを模したレプリロイド…
『オレの名は“幽林の妖撃手”スティング・カイリーオだ。』
「何処にいるの?出てきなさい!」
『ケケケ…そう焦んなよ。目の前の前線基地にオレはいる。いつでも来な、小娘ちゃん。』
そう言うと、そのホログラフは消えた。
よく見ると、カイリーオの言うとおり、ナツミの前方数百m先に、建物が見える。
先程はRT−55Jに気を取られて気づかなかったが。
ナツミは言われるがまま、その建物に潜入した。
保全
609 :
たぢから:02/07/14 23:04 ID:TSpw93eM
>608さん
保全サンクスです。
610 :
たぢから:02/07/14 23:05 ID:TSpw93eM
その前線基地はまだ建設中らしく、何のセキュリティも存在していなかった。
道なりに進み、一番奥の部屋に辿り着いた。
もうパターン化されているが、扉が閉まり、ナツミは部屋に閉じ込められた。
その部屋は壁という壁に草木が繁茂し、天井には棘がびっしりと埋まっている。
室内でありながら、さながらゲリラ戦場のようである。
「カイリーオ!出てきなさい!」
「ケケケ…さっきからお前の目の前にいるよ!」
「えっ!?」
すると、ナツミのそばの木が陽炎のように揺らぎ、そこに張り付いたカイリーオの姿が明らかになった。
611 :
たぢから:02/07/14 23:06 ID:TSpw93eM
「アイアンタングを喰らえ!!」
「うあっ!!」
次の瞬間、カイリーオの細長い舌が伸び、ナツミの鎧を貫いた。
スキンも突き抜け、内部機構にも若干のダメージを喰らった。
ナツミはその一撃だけで、その場に膝を着いてしまった。
「くっ!」
それでもバスターを放つナツミだったが、カイリーオは既に姿を隠していた。
「ケケケ!どこ撃ってんだよ!!」
カイリーオは天井に張り付いていた。
612 :
たぢから:02/07/14 23:07 ID:TSpw93eM
「ホーミング・トーピード!!」
追尾ミサイルなら、いくら姿を隠しても当たるはずだ。
だが、カイリーオは余裕の笑みを浮かべた。
「そんなチャチなミサイルじゃ、オレ様を倒せやしねぇよ!!」
するとカイリーオは天井にぶら下がり、天井を揺さぶり始めた。
その振動で、天井の棘が雨のように降りかかってきた。
その棘はホーミング・トーピードを相殺し、さらに無防備なナツミに襲い掛かる。
「くっ!ローリングシールド!!」
バリアを展開し、なんとか直撃は免れた。だが、これでは攻撃に転ずることが出来ない。
613 :
たぢから:02/07/14 23:08 ID:TSpw93eM
「どうした?かかって来ないのか?」
ナツミが防御で手一杯であることに気づいたカイリーオは、また姿を消して間合いを詰めた。
そしてナツミの目の前に姿を現すと同時に、舌を伸ばした。
「アイアンタングにそんなバリアは効かねぇ!」
「あうっ!!」
カイリーオの言うとおり、アイアンタングは紙でも貫くがごとく、
あっさりとナツミまで貫通し、鎧に二つ目の穴を開けた。
二箇所の穴からは、血(オイル)が流れ出している。
614 :
たぢから:02/07/14 23:10 ID:TSpw93eM
棘の雨に対してはバリアを展開し、その隙を攻撃される…の繰り返し。
ナツミにとっては悪循環であった。
百発百中のはずのホーミング・トーピードすら通用しないのである。
(どうしよう…アイツには私の持つ攻撃が通用しない…どうすれば…)
そう思いながらも、事態を好転させる為、我武者羅にバスターを放つ。
だが、そんな直線的な攻撃は、カイリーオに完全に見切られていた。
直線的な攻撃は…