くノ一娘。物語

このエントリーをはてなブックマークに追加
492たぢから
意識が消え行く中、ナツミは自問自答していた。
(やはり私一人の力じゃ駄目なのか…もう死ぬの?)
(いや、まだ死ねない。私が死んだらあの町の人が…)
(でも、ペンギーゴには敵わない。)
(まだ勝つ見込みはあるよ。“無限の可能性”を信じるんだよ。)
(信じる…?)
(そう。あの町の人々だって私を信じてくれているのだから…それに報いないと。)
(信じれば、隠された力が目覚めるの?)
(そうさ。最初から諦めていたら、何も始まらないよ。)
(そうね…)
(さ、早くこの氷から脱出しようよ!)
493たぢから:02/06/18 23:03 ID:wlfvaxrC
「チッ!何やねんな…弱いヤツらが群れやがって…」
ホロノベの町に侵攻したペンギーゴは、即席の自衛団によって行く手を阻まれていた。
ペンギーゴが熱に弱いことくらい、町の人々は承知の上だったので、
町中にある火器を集め、戻ってきた若者達がバリケードを築いたのだ。
しかし、燃料が限られており、ペンギーゴに反撃されるのも時間の問題であった。
「無駄な抵抗は止めんかい!もうあのハンターはおらんねんで!」
高らかに降伏勧告をするペンギーゴ。だが…
「無駄でもやるさ!あのハンターが助けてくれた以上、それに少しでも報いたい!」
「そうだ!オレ達は負けない!!」
町の人々の意見は一緒だった。
494たぢから:02/06/18 23:04 ID:wlfvaxrC
「ケッ!熱い情なんてのは鬱陶しいわ。なら、オレも容赦せえへん。全員氷漬けにしてやる!」
そういうと、ペンギーゴは口を大きく開き、冷気を放とうとした。
が、その時…

ガカアッ!

ペンギーゴの視界は一瞬真白になった。
何が起きたのか判らぬまま彼は横に吹き飛ばされた。
「く…! 何や!? 一体何が…?」
そう言って額を抑えながらペンギーゴが眼を開けると、そこには信じ難い光景があった。
目の前にに、瀕死状態の筈であるナツミがバスターの銃口を自分に向けていたのである。
(馬鹿な… ヤツはどうやって氷の棺桶から… いや、仮に脱出できたとしても動ける筈は…)
ペンギーゴは面食らった表情でナツミを見ていた。
「許さない… 貴様だけは許さないよ…このイレギュラーハンター・ナツミがね!」
ナツミがペンギーゴに喋りかけた。
その声のトーンも、先程までの穏やかな雰囲気とは一線を画す鋭さを発していた。
495たぢから:02/06/18 23:05 ID:wlfvaxrC
「罪も無い人を何人も殺して…それでもまだ飽き足らないのかぁ!!」
ナツミは力強い叫びと共にバスターをペンギーゴに放った。
それを彼は間一髪で避けたが、バスターは出力・速射性・飛速度のいずれもが大幅な上昇を見せていた。
そして彼は見た。その時のナツミの顔が、先程とは打って変わった鬼の如くの形相を見せていた事を…
そして次の瞬間、ペンギーゴは後ろにナツミの殺気を感じ取り振り返った…が、
それよりも早くナツミはバスターから蒼色の閃光を放った。
その閃光と威力…明らかにフルチャージブラスターのそれだった。
チャージ時間までもが大幅に短縮された様だ。
真正面から食らったペンギーゴは、数十メートルは吹っ飛ばされた。
(し、信じられへん! 奴にあんな力が残っていたいうんか!? そんな、そんなアホな!)