くノ一娘。物語

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477たぢから
ACT2.SNOW GRAVE
それから数時間後、ナルミはソウヤベースに近い町ホロノベタウンに来ていた。
この町は情報によるとこの地域では一番大きな町で町は明るく、にぎやかであるはずだった。
しかし、町の雰囲気は情報とは違い、暗く、まるでゴーストタウンのような静けさだった。
「情報が得られる…かな…」
とりあえずナツミは目についた酒場らしき店に入っていった。
しかし、そこは若者はおらず、変わりに老人達だけがひそひそと酒をあおっていた。
そして、しばらくすると入ってきたナツミに気づき、その周りを囲むように集まってきた。
そして、一人の老人がナツミの前に立った。
「アンタ…イレギュラーハンターか?」
「はっ…そ、そうですけど…」
突然の質問にナツミは戸惑った。そして、前にいた老人は突如ナツミに頭を下げた。
「お願いですじゃ!ワシらの町を助けてくだされ!!」
478たぢから:02/06/16 23:05 ID:ZL1DzADd
その老人の話によると、数日前にDr.TKの軍勢が突如この町に侵攻し、
20〜40代の男性を捕まえて、基地に連れ去っていったということだった。
そして数時間前、その基地から重い傷を負って逃げてきた若者の話によると、
基地にいる人々は兵器開発の人手として三日三晩寝ずに働いているということだった。
「もしかすると、女や子どもにまで手を出されるかもしれませんし、
 このままでは町が全滅してしまう。お願いです!どうか助けて下さい!」
「…分かりました。」
ナツミの返答は即答だった。それを聞いた町の人々は喜びに溢れ帰った。
(しかし、わざわざ人間にしなくても、レプリロイドの労力を使えばいいのに…)
ナツミはそれが不思議でならなかった。
479たぢから:02/06/16 23:07 ID:ZL1DzADd
そのころ、ソウヤベースの中では激しい労働で今にも倒れそうな人々のうめき声と、
レプリロイド兵士達の怒鳴り声が響きわたっていた。
なぜならば彼らはいっさい機械を使わずに作業をしていたからであった。
重い物もフォークリフトで運ばす、何人かの人で持ち上げ、溶接作業に関しても人の手でされていた。
その為、いつもとは違う重労働に耐えられなくなり、死者がもうすでに5人を越えていた。
「ケケケ…人間とオレ達の立場が逆転しているってのは気持ちええわ!」
指揮官のレプリロイド、“雪原の皇帝”ハマダー・ペンギーゴは奥の部屋でくつろいでいた。
彼は寒冷型のレポリロイドなので、部下と共に人間では行えない極地での労働に従事していた。
そのことに不満を持ち続け、今回の反乱にいち早く加わったのだ。
そして今、新兵器開発の遅れを分かっていながらも、人間だけに労働させているのだ。
480たぢから:02/06/16 23:08 ID:ZL1DzADd
突然、部屋にあるモニターがDr.TKの姿を映しだした。
「ハマダー・ペンギーゴ…新兵器の開発に時間がかかりすぎだ。早くしてくれ。」
そういわれたペンギーゴは少し表情を険しく変えた。
「ええやないですか。愚かな人間を従事させるのは、気分がええですよ。」
「フン…まあいい。でも早く完成させてくれ。ハンターどもも動いているからな。」
Dr.TKは念を押すと通信を切った。
「ケケケ…ハンターなんざオレ一人で充分やで。」
そのとき、基地周辺を守っていた兵士から緊急連絡が入った。
「イレギュラーハンターがこちらへ一人でやってきます!!」
するとペンギーゴはにやにやした顔に戻った。
「早速やってきたか…少しは楽しめるかいな?ケケケケ…」