くノ一娘。物語

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101たぢから
ドドドドドドド・・・
突如地下牢が揺れだした。
「何!?地震だべか?」
「わからないけど、ここは危険ね。みんな早く脱出するよ!」
福田の指示で、全員が出口に向かって駆け出そうとしたその時だった。
天井が崩れて来た。
「危ない!みんな伏せろ!!」
その直後、轟音に混じって、鈍い音が辺りに響いた。
102たぢから:02/04/24 23:07 ID:nNzskldP
一方外では・・・
「なんや、今の爆発音は!?」
「あっ!土倉ごと地下牢への入り口が崩れた・・・!!」
突如起こった異変に、中澤たちは何も出来ずにいた。
その直後、
「裕ちゃん!みんなっ!!」
平家が駆けつけてきた。
「あっ!遅かったか・・・」
「遅かったかって何の・・・」
石黒が訊ねようとしたそのとき、
五人の足元に無数の手裏剣が投げ込まれた。
103たぢから:02/04/24 23:09 ID:nNzskldP
「くせ者ども、日の出城高速暗殺部隊に見つかったからには、タダでは帰さないよ!」
「くっ・・・」
下唇を噛み、正面を睨む平家。
その先には色白で背の高いくノ一と、色黒で少し小柄なくノ一の二人がいた。
「みっちゃん、高速暗殺部隊って・・・?」
事情を知らない中澤が平家に訊ねた。
「裕ちゃん達は知らないだろうけど、日の出城お抱えのエリートくノ一四人衆のことや。
ウチらの情報では、この出城におらんはずやったんやけどな・・・」
額に汗を滲ませる平家を見て、よほどの強敵だと中澤は直感した。
恐らく五対二でも勝ち目があるかどうか、微妙なところだろう。
中澤達五人に緊張が走る。
104たぢから:02/04/24 23:10 ID:nNzskldP
「ヒトエ、ここは私に任せてもらえる?」
色白が一歩前に出てきた。
「別に構わないよ、ヒロ。」
「(ヒロ?・・・まさかあの白いのが島袋寛子!?)皆、耳を塞いで!!」
しかし平家の呼びかけより数瞬早く、ヒロ・・・島袋寛子は歌い始めた。
「なっ・・・なんやこの歌は!?」
「体が重い・・・」
五人は耳を塞ぎながら、膝を落としてしまった。
これが島袋寛子の得意とする、超音波の歌声である。
人並みはずれた高音を辺りに響かせ、相手の鼓膜を刺激し、
三半規管の機能を低下させてしまう、恐ろしい技である。
色黒のヒトエことリーダーの新垣仁絵は特殊な耳栓をしているので、
すぐ隣にいても、ダメージは受けない。
105たぢから:02/04/24 23:11 ID:nNzskldP
「オラオラッ!もっと苦しめよ。」
島袋の歌で苦しむ五人を、新垣は容赦なく蹴りつけていた。
両耳を塞いでいるので、防御もままならない。
いっその事、鼓膜を破れば悪魔の歌声から逃れられるかもしれない。
しかし、五感のうち一つでも欠けてしまえば、忍びにとって致命的な障害となる。
このジレンマに、平家達は苦しんでいた。
「いいザマね。今頃地下牢の連中も、タカとエリに遊ばれている頃ね。」
(馬鹿な・・・他の二人も来てたんか・・・)
106たぢから:02/04/24 23:12 ID:nNzskldP
その地下牢では、高速暗殺部隊の残りの二人、
タカこと上原多香子とエリこと今井絵理子が、安倍達と対峙していた。
先ほどの揺れは、この二人の仕業だったのだ。
その際、福田が人質の老人を庇って瓦礫の直撃を受け、両腕に重症を負った。
戦えるのは、安倍・市井・矢口の三名である。
「タカ、この三匹は私に任せてもらえる?」
「別にいいよ。タカはのんびり見てるから。」
「退屈はさせないよ。」
そう言うと、今井は一瞬のうち安倍の懐に入り、強烈なブロウを放った。
吹っ飛んだ安倍が市井と矢口に当たり、三人は崩れた。
「なっち!真里っぺ!紗耶香!」
107たぢから:02/04/24 23:13 ID:nNzskldP
「はい終わり。タカ、後は自由にしていいよ。」
「OK。じゃあ、あのふっくらした子を殺すわ。」
ふっくらした子=福田のことである。
(くそ・・・両手が使えないのに・・・)
それでも安倍達が倒れた今、自分が戦わなければ生き残る道は無い。
老人を庇うようにして立ち上がる。
「見栄を張っても無駄よ!」
そう言ったときには、上原の拳は福田の目の前にあった。
次の瞬間、一人のくノ一が吹っ飛んだ。
108たぢから:02/04/24 23:13 ID:nNzskldP
「明日香には指一本触れさせないべ!」
吹っ飛んだのは上原で、殴ったのは安倍だった。
市井も矢口も立ち上がり、福田を庇うようにして構える。
今井も上原も、予想外のことに驚いている。
「馬鹿な・・・さっきの一撃は効いてなかったの?」
「確かに当たったべ。でもね、タフさなら負けないべさ!」
夏による地獄の特訓の成果が実戦で現れた。
「くらえ!」
今井と上原の心に隙が見られたので、市井は手裏剣を投げた。
しかし、今井はそれを素手で受け止め、投げ返してきた。
それを何とか安倍が刀で弾く。この間僅か一秒であった。
109たぢから:02/04/24 23:14 ID:nNzskldP
車返しの術・・・相手が投げてきた手裏剣を受け止め、投げ返す技である。
所持できる手裏剣が限られているので、対忍者戦では当たり前に使われる。
「周りが全部刃になってたのに・・・」
市井は同様を隠せない。
「アンタ達みたいなジャリ忍者には真似出来ないわね。」
「さっきは油断したけど、今度は容赦しないよ!」
今井と上原が刀を抜いた。
「ジャリ忍者にも五分の魂だべ!矢口、紗耶香、行くよ!」
「「おう!!」」
安倍達も刀を構え、駆け出した。