小説 『K.M.D 〜加護パシリ日記〜』

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68L.O.D

第8章 Kago's Madly Diary

近頃、時折、ヌメッとした・・・・・・
そう、生理の時の経血によく似た、そんなイメージを
楽屋の中にいると覚える事がある。
それがなぜか、なんなのか分からないまま
加護は黙ってもやってくる仕事を
こなすしかなかった。

「加護?」

気がつくと、矢口が目の前に立っていた。
「はい?」
「ミニモニ。の仕事だよ」
辻が自分の鞄を持って、ドアから出ていく。
「はい・・・」
荷物はまとめてあったから、バッグを抱え
加護もそれに続く。
小さな身体が、ドアを抜ける瞬間
何かに引っ張られるように
楽屋の中を見回した。

そこには、石川梨華はいない。







69L.O.D:02/04/18 01:12 ID:rbtCmTK/
全員が事務所のバンに乗り込んでも
加護は1人、後部座席に座る。
カシャカシャという飴玉の袋を丸める音。
背もたれの間からチラチラと見えるのは
顔を寄せ合い、その飴玉を口の中で行き来させる
矢口と辻の姿。
加護は俯き、携帯を取り出す。
メールが一件入ってた。
気付かなかったが、ほんの少し前に来てた松浦亜弥からのメール。
初めてハロプロのリハーサルで顔を合わせた時から
年はそんなに変わらないのに、どこか大人びた
松浦が気になっていた加護は
3人祭の時にいっぱいしゃべって、仲良くなった。
今もメールが一日に3通は届く。
ちゃんと返してる。
この前のオフは、石川と3人で遊びに行った。
石川の声で回りにばれそうになったが
必死で逃げて、汗をかいて
3人でカフェで冷たいものを飲んだ。
加護はコーラフロートにチョコパフェ。
松浦はアイスカフェラテ。
石川は苺ミルク、だったような気がする。
向いの席に座った石川が物憂げな表情で
窓の向こう、ビルの7階に位置するそこからは
ずっと下に見える交差点を眺めながら
ただの手遊びでストローを回し続けてた苺ミルク。
半乳白色のパステルカラー。
石川の好きな女の子らしいピンクの色。
なぜだか、すごく印象に残っていた。
70L.O.D:02/04/18 01:13 ID:rbtCmTK/
加護は松浦にメールの返事を書く。
『また変だったよ、なんか』
すぐに返信が帰ってくる。
『そっか、梨華ちゃんがあんなになっちゃったから
 みんなピリピリしてるのかな?』
『かなぁ・・・・・・』
『かごちゃんがそんな顔でテレビ出てたら
 ファンが心配しちゃうぞっ、元気!!』
『うん、頑張るわー』
鞄の中に携帯をしまう。
フッと顔を上げると、頬を紅潮させた辻の横顔が見えた。
「・・・・・・」
見なかった事にして、無造作に鞄の中に手を突っ込んで
MDウォークマンのイヤホンを探る。
途中でリモコンに触れてしまったらしく
握った手の中から漏れだした音楽。
『とぉーさん かぁーさん ありがとぉ』
「・・・・・・あ」
小さく声を上げ、加護は誰にもその意味を知られぬように
ずっと、ずっと、車が現場に到着するまで
俯いて、車の壁にもたれかかっていた・・・・・・