小説 『K.M.D 〜加護パシリ日記〜』

このエントリーをはてなブックマークに追加
55L.O.D

第7章 保田圭

いつからだろう。
矢口が自分を避けてるように感じたのは。
同期で入ってきて、半ば嫌がらせのような目にも会いながら
ここまで一緒にやってきた戦友だった。
局のタレントクロークの喫煙所。
幼いメンバーもいる楽屋で吸うわけにはいかないので
吸うなら、こっちでと言われている。
保田は、シガレットケースから一本取り出して、火をつけた。
最近は、矢口だけじゃない。
他のメンバー同士もだ。
モーニング娘。自体が、どこかうまく機能していない感じを
うっすらとだが感じていた。
飯田がリーダーというのがやはり無理があったのか。
いや、それなら逆に最近の方が、何かあった時
うまく誘導してくれてる気がする。
ジジッと煙草が焼けて、灰と代わる。
灰皿に叩き落とす。
誰かが近付いてきたのに、気付いて
顔をあげると、矢口がセーラムの箱を片手に立っていた。
「火、貸して」
「・・・・・・」
ポケットからジッポーを取り出して
セーラムの細い芯に火をつけた。
会話につなげる事が出来ないまま
保田のタバコは終わる。
無言で立ち上がろうとした保田を呼び止める声。
「圭ちゃん、ひさしぶりにさ、ご飯食べにいこうよ?」
「誰か呼ぶ?」
「みんな、一緒だよ」
「ふーん・・・・・・」
「仕事さぁ、バラバラだから
 ごっちんにお店教えておくから
 先に始めていいよ」
「分かった・・・・・・」
矢口の笑顔は、保田が知っている
少し生意気な女の子 矢口真里の笑顔。
保田も微笑み返して、楽屋に向かって歩き始めた。
56L.O.D:02/04/12 22:38 ID:8pUdq0yT

雑誌の取材が終わって、6時半を少し過ぎた頃
保田が後藤と吉澤に連れてこられたのは
壁全体が石造りで、照明は天上に埋め込まれたダウンライトと
時折置かれてる蝋燭や、間接照明の類いだけで
店全体がどこか小奇麗と言うより
アンダーグラウンド的な怪しげな雰囲気を漂わせている。
予約を入れてたらしく、なんなりと奥の小部屋に連れていかれる。
店員がいなくなったのを見て、保田は二人に聞いた。
「ねぇ、、、あんた達はここ来た事あるの?」
「なにー、圭ちゃん、怖いの?」
「いや…だって……ここ、何屋さん?」
「フランス?」
後藤は、隣に座る吉澤を見る。
「Oh〜〜〜、フラァ〜ンス」
「でも、、なんだろねぇ」
「ソビエトですよ、保田さん」
「ソビエトってどんな料理なのよ!」
「んー、、ピロシキとかぁ」
「Yahーー!ピロシキねーーーー」
とか言って、若い二人でもっともらしい説明ごっこ
(怪しげな外国人役の二人がやけにハイテンションで騒ぐだけ)
こうなると、しばらく妄想の世界から帰ってこない。
保田はバッグからタバコを取り出す。
フと一瞬、この光景を第三者の目として
自分は見た事がある。
いつの事なのだろう。
ゆっくりと思考を巡らせる。
お座敷。
たぶん何かの打ち上げ。
お酒を飲んで、バカみたいにはしゃぐ安倍と矢口。
いつか吸ってみたかったあのタバコの匂い。
そう、初めて買ったタバコはあの人と一緒だった。
頬杖をついて、そんな二人を見ながら
幸せそうに微笑んでいた中澤の目。
はっきりと思い出した。
今の自分は、あの時の中澤と一緒だ。
(裕ちゃん・・・・・・)

57L.O.D:02/04/12 22:39 ID:8pUdq0yT
食事には、石川と加護を抜いた全員が参加していた・・・・・・
・・・・ような気がする。確か、みんないた。
お酒はそんなに飲んでいなかった。
人から見れば、飲んでいる方なのかも知れないが
いつも泥酔する事なんてなかった。
目を覚ました時、目の前では飯田が全裸で四つん這いになり
椅子に座った矢口の足を舐めてた。
「おはよ」
とても落ち着いた声だった。
元気のよい矢口でも
怒った矢口でもない。
言うなれば、無感情というか
どこか、全ての感情を乗り越えたような
そんな声に聞こえた。
口元に浮かべた微笑がなおの事
矢口を分からせなくする。
そこで、保田は自分の身体が拘束されてる事を知る。
何も着ていなかった。
後藤などに比べれば、魅せる身体つきではないが
そこは、大人の魅力とごまかしてる・・・・・・
「なによ、、、、これ?」
「さっすが圭ちゃんだね」
「矢口、、、なんの悪ふざけなのよ、、、!
 それに、圭織、あんた、なにやってんのっ!?」
「圭織はねぇ、矢口の奴隷なんだよねぇ」
飯田の頭を掴むと、その顔に向かって、ツバを吐きかける。
それを、飯田は嬉々として、顔に塗り込む。
異常な世界。
保田が記憶してる二人ではない。
「圭ちゃんならさぁ、意図的反転図形って分かるでしょ?」
「見方を変えると、まったく別な絵に見える絵、、、、」
「本当だと信じてた事なんて、自分が信じてただけなんだよ」
矢口は立ち上がり、保田の目をじっと見る。
「見方を変えれば、真実は別にあるんだ」
「矢口・・・・・・」
「バカじゃないから、分かるよね?」
暗闇に目が慣れてきて、今まで見えてたのはライトで煌々と
照らされてた場所だけだったのだと知る。
部屋の様々な場所で、全裸で抱き合い
激しく口付けしあったり、愛撫し合うメンバーの姿が
うっすらと見えてしまった。
「梨華ちゃんを壊したのも矢口だよ」
「・・・・・・!?」
「私はね、モーニング娘。が欲しいんだ。
 モーニング娘。の全てが欲しいんだ・・・・」
「矢口、あんた、もしかして、、ゆ、、、、、」

  パシィインッ!!
58L.O.D:02/04/12 22:40 ID:8pUdq0yT
一瞬、全員が動きをやめて、真ん中を見た。
みるみるうちに赤くなっていくのは、保田の頬。
「ごっちん、アレ頂戴。」
「はい・・・・・・」
強い白色灯の光の中で、キラキラと輝く黄金色の飴玉。
口元に近付けられ、絶対に開かないようにしようと
強く閉じる。
続けざまに3発、平手を喰らうが
保田は睨み付けた。
「強がっちゃって」
矢口の横に立った辻の手には、見るからに拷問系の怪しげな物。
保田の後ろに回ると、顔を抑えつけ、革のベルトについたフックを
口の中や鼻につけ、一気にベルトを締め付けた。
「あぁああ〜!!はがぁああああ!!」
何を怒鳴っても言葉にはならない。
「圭ちゃんには、特別なのあげるよ」
矢口が部屋の片隅に置かれたフラスコを火にかける。
「みんな、媚薬で堕としたけど、圭ちゃんはね
 同期のよしみで特別、すっごい効く麻薬で
 天国に連れていってあげるね」
扉を開けて、他のメンバーは部屋から出ていく。
最後に安倍が全ての電気を消した。
「じゃぁね、圭ちゃん」
ゆっくりと、、煙が充満していく。
(吸っちゃ、、、ダメ)
その思いが断ち切れるのは、これから
1時間過ぎた頃の事だった・・・・・・
59L.O.D:02/04/12 22:41 ID:8pUdq0yT
3日後・・・・・・

矢口はあの扉を開ける。
鼻をつくような汗の匂いと、牝の匂い。
一瞬、顔をしかめ、扉を閉める事は出来ずに
中に入った。
「矢口!」
保田は、矢口の姿を見つけると駆け寄り
ギュッと抱き締める。
「さ、帰ろうか」
「どこへ?」
「私のお家」
「矢口の家?」
「そう、みんなの家だよ・・・・・・」
矢口の手が保田の身体を撫でる。
乳首につけられた大きなピアスを見つけ
指で少し強めに引っ張ってみせる。
「あぁあっ!」
「これは、誰がつけてくれたの?」
「ごっちんとよっすぃが、、、開けてくれたの」
「そう、、、圭ちゃんの身体は矢口の物だから
 ちゃんと分かるように目印つけて置かなきゃダメだよね」
丁寧に剃られた下の毛の痕を撫でながら
備え付けられた産婦人科にあるような分娩台に乗せる。
目の前にこの3日、乾く事のなかった赤い肉がある。
出血はないが、ただれたようになっていた、、、
術式用のゴム手袋をはめ、矢口は微笑んだ。
片手に握られたのは、棒状のボディピアスを身体に刺すための機械。
金属のひやりとした感触が保田の両方の肉壁を挟み込む。
「え・・・・・・」
「へへ・・・・」
「矢口、、、、それって、、、、」
ガシャァン!という重厚な何かが撃ち込まれる音と、
ブチッ!!という肉が破壊される音。
それに、保田圭の絶叫が混ざって
矢口の頭をかき乱していく。
「もっと泣いてよ!泣き叫んでよ!!」
「うわぁああああああああああああああああああ!!」

第7章 終