小説 『K.M.D 〜加護パシリ日記〜』

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4L.O.D
第一章 石川梨華

深夜零時の部屋。
食器の上に置かれた真っ白なショートケーキは
銀色のフォークで切り崩され
色鮮やかなピンクの口紅に彩られた唇に運ばれた。
「でね・・・・・・」
部屋の主 石川梨華の顔はどこか優れない。
「うんうん」
テーブルを挟んで向こうにいる吉澤は
パウダーがたっぷりかかったチョコレートケーキを食しながら
うなづいてみせる。
「なんかこう、前に出ていけないというか」
「うーん・・・・・・」
悩み相談。
いつもの事だった。
時間のある時は、どこかケーキ屋さんで買ってきて
今はコンビニにもケーキや甘い物は置いている。
こうして、石川の好きな物を食べながら
吉澤は結局最後は溜息で終わる長い長い悩みを
聞いてあげるのである。
「ラジオとかじゃ、しゃべれるんだけどなぁ」
「そうだよね」
「しゃべれてるよね、ラジオは」
「台本通りだけどね」
「うん、、、アドリブが効かないのがねー
 これで、よっすぃみたいに
 おもしろい事とか出来たらいいんだけど」
「梨華ちゃんは梨華ちゃんなりでいいんじゃない」
「そうかなぁ」
吉澤の目に映るのは、白いクリームがついてる石川の唇。
そっと横に移動して、背にしてたソファの上に座る。
「おいで」
「よっすぃ・・・・・・」
「私とキスしたら、嫌な事なんて忘れちゃうよ」
細くて綺麗な指が、石川の唇を撫で、
ついてたクリームを舐め取ると
吉澤は優しく微笑んだ。
5L.O.D:02/04/04 20:11 ID:nWvF/OAV
石川が恥ずかしそうにしてるのを見て
少し力強くその身体を抱き寄せながら、唇を奪う。
「んぅ・・・・」
「ふっ・・・・・」
「舌、出して」
「?」
上からかぶさるように見つめられるのが
凄く淫美に感じて、石川は目をつぶる。
差し出された舌に自ら絡んでいく吉澤の舌。
粘膜と粘膜が触れあい
ピチャピチャという音を立てる。
「目隠ししちゃお」
「え、、あ、、、、怖いよ」
「大丈夫、私がリードしてあげるから」
吉澤の手はそこら辺にあったタオルを取り
石川の目の辺りを覆ってしまう。
布の中で目を開けた石川が見たのはうっすらとした光の世界。
何も見えず、ただ白い空が広がる。
だけど、いつもより、吉澤の温もりや感触を近くに感じて
石川は手を伸ばした。
「どうしたの?」
「抱き締めて・・・・」
「怖い?」
「ううん、、気持ちいいから」
「目隠し、、、、いい?」
「うん、いいよぉ」
「そっか、目隠し好き?」
「好きかも・・・・・」
6L.O.D:02/04/04 20:12 ID:nWvF/OAV
「服、脱がせるよ」
吉澤がボタンを開けていく音が聞こえる。
自分の身体が自分のものじゃないような感覚。
恥ずかしさ。
それ以上に、吉澤の視線が気持ちいい。
「梨華ちゃん、もう濡れてるよ」
「や、、、」
「目隠ししてるだけなのにね」
「だって、、よっすぃが見てるから」
「見られてるだけで濡れてるの?」
「うん、、、、なんかすっごいHだよぉ」
「へぇー」
「よっすぃ、触って」
ショーツの上から優しく撫で回す吉澤の手の動きさえ
敏感に感じ取ってしまうほど
全身の感覚が敏感になってる感じがする。
「真っ赤になってるね」
「恥ずかしいんだもん」
「かわいいよ」
「ね、、、ねぇ」
「なに?」
「もっと強くして?」
「なにを?」
「弄るの、、、」
「ここ?」
自分でも熱くなってるのが分かってた
左手でショーツをどけ、右手の人さし指が
グリッとえぐるようにクリトリスの皮を剥いてしまっただけなのに
「ふあぁあああっ!」
石川は腰をビクッとさせていた。
「ちょっとぉ、梨華ちゃん、それは感じすぎじゃない?」
「あぁあ、、、よっすぃ、すごいいいのー」
「そんなによかったの?」
真っ赤に熟れたイチジクの実のような紅。
吉澤は、嬉々とした表情で
石川の肉壁に口をつけていった。
いつものように。
7L.O.D:02/04/04 20:12 ID:nWvF/OAV
翌日。
石川は楽屋の扉を開ける。
今日も仕事。
辛い事は少なくないし
優しくもない。
だけど、仕事は嫌いじゃないし
なにより、モーニング娘。という
このグループが好きだった。
「おはようございまーす」
「おはよ」
「おはよー」
先に来てたメンバーが挨拶を返してくれる。
その中で1人、眼鏡をかけて、本を読む矢口の姿が
目に入って、石川は駆け寄った。
「あらー、矢口さん、眼鏡なんかかけてー」
「似合う?」
「似合いますねー、石川、なかなか似合うのないんですよ」
「かけてみる?」
赤いセルフレームの細めの眼鏡だった。
8L.O.D:02/04/04 20:13 ID:nWvF/OAV
石川は矢口から受け取って、かけてみる。
「あー、似合わないわ、あんた」
保田が真っ先に言う。
「早いですよ、保田さーん。
 でも、似合わないですね・・・・」
「きゃはははは」
眼鏡は矢口に返し、荷物を置いて
とりあえずそこら辺に座る。
手持ち無沙汰にテーブルに置いてあったポッキーに手を伸ばす。
袋を開けながら、厚い本を黙々と読んでる矢口を見てる。
「私も本読もうかなぁ・・・・」
「あんた、パソコンでも覚えたら?」
「買わなきゃヤバいですかねー?」
「中卒だしね」
「ですよねぇ、、矢口さん、中退でしたっけ?」
「え、やぐっつぁん、中学中退?」
さっきまで部屋の隅で寝てた後藤が目を覚まして
ポツリとつぶやいた。
「なんでだよ!!」
「さすがにうちの事務所でも、中学は卒業させるわよ」
「だよねー、ビックリしたよー」
「一応、矢口は高校3年までは在籍してたからね。
 バカだったけど」
「なんかいいんだか、悪いんだか分かりませんね」
「石川は一言多いの!」
すねたようにそっぽを向いて、また本を読み始める矢口。
石川はくすりと笑った。
9L.O.D:02/04/04 20:14 ID:nWvF/OAV
「お疲れさまでしたー」
ラジオの収録が終わる。
ブースから出て、ディレクターやスタッフに一礼したり
世間話をして、廊下に出た後は
飯田と並んであるいていた。
「石川」
「はい?」
「最近、がんばってるね」
「飯田さんは大丈夫ですか?」
「圭織?」
「リーダーになって、交信する時間は減ったんですけど
 お薬とか飲んでるみたいだから・・・・・」
「あぁ、うん。やっぱ、裕ちゃんがいなくなっちゃったから」
そう言って、飯田は苦笑してみせる。
「ダメですよぉ、身体壊したりしたらー」
「ほんとだね、そういう時は助けてよ、石川」
「やぁー、私もまだまだ自分の事で手一杯ですよ」
「あははは、そっか」
玄関の風は少し生暖かくて
季節の変わり目を感じさせる。
「じゃぁね」
目の前にいたタクシーに先に乗り込む飯田。
「お疲れさまでしたー」
すぐに後続のタクシーがやってきて
石川はそれに乗り込む。
自宅の場所を告げると、すぐに走り出した。
窓の外に街が見える。
鞄からそっとMDウォークマンを取り出して
イヤホンを耳に差し込む。
流れ出した音楽が、無駄な思考を掻き消していく。
流れていく景色を見ながら石川は1人、
昨日の夜の吉澤の温もりを思い出してた。
(よっすぃ・・・・・・)

そして、それは全ての始まりだった・・・・・・

第一章 終