【伝説】保田圭がそばにいる生活【再び】

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241名無娘。。。 ◆FairyOo.
なん俺はこんなところへ出てきたんだろう?
明らかな異分子。
そんなことはわかりきっているつもりなのに…

訃報が届いた。
ずっと以前に付き合っていて、別れた二人。
あの頃は若かった。どんな障害だって二人で乗り越えられると信じていた。
…それが、いくつもの挫折を経験するうちに、
二人の関係を解消するしか方法がなくなった。
付き合い始めたのも若さ故なら、別れてしまったのも若さ故だろう。

あれから後に何人もの女性と付き合ったが、
あれほどわかりあえた関係にはなれなかった。
それは現在の妻と比べたとしてもだ。
だが、俺は必要としてもあいつのほうではどう思っていたか?
どうやったって聞けやしなかった。
いや、そんなことを聞かなくたってわかっている。
あいつは、もう俺のことなんか必要としていない。

あいつの夫の訃報を聞いて駆けつけた。
黒い和式の喪服に身を包んだあいつを久しぶりに見た。
あの頃よりも少し太ったのかな?
でも顔には少しやつれが見られる。
あいつも苦労しているんだろうなぁ。
長い髪をアップにしてあの頃と同じおでこを見せていた。
大きなつり目を伏し目がちにして弔問客に応対している。
着ている服は違っていても、あの頃のまんまだ。
30を少し過ぎたくらいか?
場所柄、あのときの無邪気さを醸し出してはいないが、
それでもあの頃と変わっていないあいつを垣間見える。

俺の弔問順番が回ってきて遺族に挨拶をする。
「このたびはご愁傷様でした」
その言葉に無言で挨拶を返す。

これ以上のことなんかあるはずがない。
故人と親交のあったわけじゃない俺はまったくの異邦人だった。

ただ、あいつとはじめて逢ったときと同じような暑い日差しの昼下がり。
あいつの無言の挨拶に、また逢えることを期待してみよう。
こんな不謹慎な考え方しか浮かばない俺は…



No.13