【伝説】保田圭がそばにいる生活【再び】

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175名無娘。。。
「ゴメンもう少しこのままでいさせて」

呼び出された夜の公園で俺を見かけるやいなや、
あいつは胸の中へ飛び込んできた。
そこであいつは顔を深く埋め、声を押し殺しながら泣いている。
ただ強く指を立て俺の体を突き刺す。けっこう痛い。

俺は何もできなかった。
本当に何もできなかった。

ここに来るまではいろんなことを考えていた。
元カレの俺をわざわざ夜に呼び出したんだ、
何もないと考える方がおかしいだろう。
“俺のことをまだ好きなのかな?”
“俺のことを忘れられないのかな?”
“俺とヨリを戻したくなったのかな?”
思いつくのは自分勝手な妄想ばかり。
そんなことを考えることの方が普通だろう?
それなのに…

俺の胸の中にいた時にも考えなかった訳じゃない。
“髪を撫でてあげた方がいいのかな?”
“抱きしめてあげた方がいいのかな?”
“キスした方がいいのかな?”
…でも結局何もできなかった。
いや、何もさせてもらえなかったというのが正解かな。
あいつの強い意志に圧倒されて、どんな行動もあいつに対する冒涜に思えた。
行き場を失った俺の心と手は虚しく空をつかむだけだった。

何もできない俺を尻目にあいつは復活し、静かに顔を上げた。
時間にして10数分だったのかな?
長かったのか短かったのか俺には判断できない。
でもこれだけはわかる。
あいつの顔は涙と鼻水でグチャグチャだったが、
それでも清々しく見えた。
きれいだった。
あいつはこんなにも強く、美しくなったんだな。
2年前に出会った頃のひ弱さや不安定さなどすっかり影を潜めていた。
もう俺なんか必要ないくらいに。

俺から離れたあいつは口を開き何か言おうとした。
だが俺は手をあげて、それを遮った。
それが俺にできた唯一のこと。
その意味がわかり、あいつは微笑んでくれた。

それが保田。