吉澤消防

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85ブラドック
三人で二人前のクッパを食べ終えると、
柊は食後のコーヒーを煎れる。
牛乳が嫌いな矢口には、
ミルクを渡さず砂糖だけつけた。

「なあ、矢口。よう聞いてや」

中澤は矢口に話を始めた。
自分の置かれている状況。
この先の展望、未来感。
そして自分の想い。
中澤の真剣な声は、
確実に矢口の心に届いている。

「でもさ裕ちゃん、全てをなくしたら、どうやって生きて行くの?」
「それは・・・・・・」

中澤は答えに窮した。
確かに矢口の頭はいいが、
学歴もなければ特技もない。
持っている資格といえば、
原付免許くらいなものである。

「おまえがその気なら、一生面倒をみてやるぞ」
「ほんまか!」

困惑する矢口とは対照的に、
中澤は見る見る笑顔になってゆく。
86ブラドック:02/04/16 16:35 ID:IeKpAl2D
「聞いた?矢口、あはっ!」

中澤は嬉しくてしかたがない。
これがプロポーズの言葉だと、
勝手に解釈してしまったのだ。

「嘘だよ。そうやって都合がいい時だけ・・・・・・そして・・・・・・別れれば復讐」
「信用してもらえないのか?」
「どうやって信用しろっていうの?」
「おまえは誰にも渡さない」

二人のやりとりを、
中澤は少女のような眼で見ていた。
三十も近いというのに、
こういったことになると、
夢見る乙女になってしまうのだ。

「証拠を見せてよ。あたしは信用しない。もう騙されない」
「判った。おまえを救う計画を話そう」

柊は自室へゆき、手帳を持ってきた。
そして中身を確認しながら、
ゆっくりと話を始めた。