モームス最大トーナメント

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948決勝戦
本戦に臨みし者達。
紺野あさ美。高橋愛。飯田圭織。市井紗耶香。矢口真里。松浦亜弥。浜崎あゆみ。
後藤真希。ソニン。吉澤ひとみ。石川梨華。福田明日香。加護亜依。鈴木あみ。
惜しくも本戦出場を逃した者達。
小川真琴。保田圭。りんね。藤本美貴。あさみ。アヤカ。中澤裕子。
柴田あゆみ。ミカ。ダニエル。石井リカ。里田舞。新垣里沙。石黒彩。
リザーバーとして挑みし者達。
宇多田ヒカル。MIYU。MIZUHO。TAKAYO。MAIKO。上戸彩。AKINA。BOA。

その他この何十倍もの数の格闘士達の屍を越えて
今二人の娘がこの遥かなる頂きへと手を掛けた。

安倍なつみ。辻希美。
さぁ決勝戦だ!
949回想(安倍なつみ):03/01/05 19:29 ID:sdQwaXw9
捨てられた子犬みたいな眼をして、どこまでも私の後を追っかけてきた。
「悪いけどなっち、弟子とかとる気ないから」
冷たく突き放しても、あんたは首を横に振り続けた。
走って逃げても、あんたは一緒に走って追いかけてきた。
躓いても、泣くのを堪えて、どこまでもどこまでも…
「強くなりたいのなら他にいくらでも方法はあるでしょ?」
ある日、私は言ったよね。そしたらあんたはこう答えた。
「なっちさんらなきゃ駄目なのれす」
私じゃなきゃ?アハハ、あいつは何か勘違いしている。神様でも見る様な眼で私を見てる。
なっちはそんなもんじゃない。自分のことしか考えてない汚い人間だよ。
どうやって後藤真希に借りを返すか?どうやってチャンピオンに戻るか?
考えてるのは、そんなことばっかりだ。
なのにあいつは諦めなかった。私の元を離れようとしなかった。
そして強くなった。後藤真希に勝ってしまう程に。私を脅かす程に。
邪魔だ。邪魔だよ。辻希美。
950回想(辻希美):03/01/05 19:30 ID:sdQwaXw9
なんにもなかったののに、勇気と夢をくれたのは貴方れした。
『安倍なつみダウーーーン!!立ち上がった!!また立ち上がったぁーーー!!!』
あのときの映像は、今もまだ鮮明に瞼に焼き付いているよ。
金色の髪をなびかせ、天使の様に圧倒的な存在感の後藤さんに、立ち向かってゆく姿。
貴方が教えてくれました。力は暴力じゃない。時にそれは人を勇気付ける。
なっちさんの強さは、国境を越える歌みたいに、みんなに響き渡る。
ののもそうなりたかった。
強くなって、ののを見ている子供達に勇気をあげたかった。
だからののは貴方の元へ行った。あなたの様になりたかったから。
でも今は違う。
(今のなっちさんはののが好きだったなっちさんらない)
今の貴方が人に与えているものは恐怖。力は暴力でしかない。
ののがあなたを止めます。
それが、あなたに勇気と強さをもらった者としての義務れす。
ののがなっちさんを倒します。
951出陣(安倍なつみ):03/01/05 19:31 ID:sdQwaXw9
決勝の舞台へと向かおうと腰を上げたなっちの前に、一人の女が立ちはだかる。
その女は全身を包帯で覆われていた。たった今医務室を抜け出てきた様な雰囲気だ。
「…」
なっちはその女を無言で睨み付けた。
「ごめん。負けた」
「…」
「でも悔いはない。私じゃ多分あんたを止められないから」
「…」
「辻は強いよ。あの子ならできるかもしれな…」
「…どけ、負け犬」
なっちは入り口に立つ真希を強引に押し倒した。そのまま無言で去って行く。
安倍と後藤。二人はすでに勝敗を決していた。前回の大会の後、人知れず闘っていたのだ。
そのときの結果、そして今日の結果が、なっちの言葉にそのまま反映されている。
(辻。なっちは私より強いぞ)
真希は、暗い廊下を一人歩くなっちの背中をいつまでも見続けていた。
ずいぶん距離があるにも関わらず響く、殺気で胸が詰まりそうになりながら…
952出陣(辻希美):03/01/05 19:36 ID:sdQwaXw9
伸びた髪を上部で一つに束ねる。ポニーテルが小刻みに揺れた。
(ついこないだまで、まだまだお子ちゃまだと思ってたんだけどな)
ここの所めっきり大人っぽくなってきている辻を、複雑な面持ちで見下ろす飯田。
辻はそれ以上のスピードで、どんどんどんどん強さに磨きを掛けている。
福田戦、加護戦、後藤戦。それこそ一試合ごとにである。
TAPの道場に殴り込みに来たあの頃が懐かしく感じる。
辻がどこか遠くの世界へいってしまうようで、寂しくなった。
「ほえ?ろうしたの?」
そういって顔を覗き込むおチビちゃんは、まだあどけないいつもの辻だった。
「何でもない。勝ってこい!」
「うん!」
飯田は辻の背中を押して送り出した。その手が離れたとき、なぜか胸がチクリと痛んだ。
もう今の辻希美が帰ってこない様な…そんな気がしたのだ。
辻希美は駆け出していた。あの人の待つ場所へと、まっすぐに。