モームス最大トーナメント

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933後藤真希−辻希美 @
寝起きの後藤真希は顔を拭き、鏡に写る己の姿を見つめる。
(やっとここまで、ここまでこれた。あと一つ、あと二つ、それで終わる)
(ううん、終わるんじゃない。それで始まるんだ。私の戦いは…)
宇多田ヒカル、浜崎あゆみ…こんな猛者達が渦巻く世界へのたった一人での船出。
躓く訳にはいかない。後藤真希は最強のまま卒業して行かなければいけないんだ。
(貸しもできた…)
静かに眼を閉じ、未だ見ぬ世界に想いを馳せる。さぁ、行こう…

「ほんまにその怪我でやる気か?ボロボロやでお前」
「あいぼんらって、ボロボロれすよ。」
病室のベットの上で、出て行こうとする相棒に呆れ果てる加護亜依。
あの怪我でもう動ける辻の驚異的タフネスが信じられなかったのだ。
「のの…」
「なに?」
「負けんなや」
辻はニッコリと八重歯を見せて笑い、駆け出していった。
934後藤真希−辻希美 A:02/12/30 16:50 ID:Cflq4F3f
奇しくも昨年の準決勝と同じカード。辻にとってはリベンジマッチとなる。
勝ち残り、決勝でなっちと対峙するのは果たして後藤か?それとも辻か?
宿命の激突が幕を開ける。
『はじめぃ!!』
開始の合図と共に二人は互いの顔を見詰めあった。
「楽しみだよ、この一年でどのくらい腕をあげたか」
「今度は絶対に勝つからね!」
スイッチが入る。昨年の激突と同じ様に…。
両者共、宇多田ヒカルと加護亜依にやられた怪我で、とても五体満足とはいえない。
それでも、その攻防は昨年のそれを遥かに上回る勢いだ。
競い合っているのだ。この一年でどちらがどれだけレベルアップしたか。
突きの一つ、蹴りの一つに到るまで、五臓六腑に染み渡る。
汗が舞い、血が飛び交う。二人は止まらない。笑っている。
「ぷいん!ぷいん!ぷいん!」
「双龍脚!」
互いの技と技がぶつかり合う。ダウンしてもすぐに立ち上がる。またぶつかる。
怪我や痛みのことなど、もう二人の頭にはなかった。
935後藤真希−辻希美 B:02/12/30 16:51 ID:Cflq4F3f
(鈍らせる)
(この子は本当に、私の決意を鈍らせる)
(こんな闘いができるなら、まだここに残ってもいいのではと私に思わせる)
(最高に楽しい!最高だ!この感じなんだよね。私が望んでいたもの)
(あのなっちとの闘いだよ。あれと同じ)
(でもいけない、私はもうここに残っていてはいけない)
(ここにいたら私は、いつまでもあんたやなっちに甘えて生きることになる)
(後藤真希だ。私は後藤真希なんだ。そうやって生きるんだ!)
(辻、あんたを倒して、そしてなっちを倒して!さらに上へ行くんだ!)
(もう…ここにはいないぜぃ!)
ふいに後藤の体が大きくブレル。その数分の一秒、辻は彼女を見失う。
その技は、外の世界での闘いにととっておいた新必殺技。
「サン・トワ・マミー!」
上中下から成る三連打に、辻の体は波打つ様揺れ落ちた。
(とっておきなんていらない。今このときに全てを出し尽くす)
(後藤真希の全てを賭けて、辻希美をぶっ倒す!)
936後藤真希−辻希美 C:02/12/30 16:52 ID:Cflq4F3f
(やっぱり強い、れも負けない!あいぼんと約束したんら!)
崩れ落ちた辻はすぐに起き上がろうとする。しかし足に力が入らずまた転ぶ。
顔を上げると、後藤が静かに自分を見下ろしていた。
「立て、まだ終わっていない。まだ全てを出し切ってはいない」
ゾクッとした。辻は息を整えすぐに立ち上がる。
(後藤さんは全てを見せようとしている)
嬉しかった。後藤真希が自分を認めたのだ。ようやくなっちに並んだ気がした。
「辻も辻の全てで貴方を受け止めます」
まだ子供じみていた辻の表情に、大人の影が浮かび上がった瞬間である。

安倍なつみはじっと激闘の行く末を見守っていた。
去り行く最高にして最強のライバルか!?
ずっと自分を追いかけてきた愛弟子か!?
決着の瞬間は近づいている。
モームス最大トーナメント、そのラストバトルのカードが決まる瞬間だ。